
化石燃料の枯渇や地球温暖化問題の解決が期待されている水素ですが、日本が水素に強い国であることをご存じでしょうか。日本の水素における特許率は24%と世界トップです。
東京オリンピックを機に水素自動車や水素バスが走るようになり、自動車業界のみならず医療や美容など、さまざまな分野で水素が使用されています。
今回は、次世代エネルギーとして注目を浴びる「水素発電」について詳しく解説します。
目次
水素発電とは?発電の仕組み

水素発電は、石油や石炭の天然ガスのような化石燃料とは違い、燃焼させても温室効果ガスを発生しません。発生するのは「水」だけです。
水素発電の基本は「火力発電」と同じで、水素を燃やし、発生した蒸気でタービンを回し発電します。水素を燃料とした発電の種類は以下3つです。
- ガスタービン発電
- 汽力発電
- 燃料電池発電
ガスタービン発電は「水素」または「水素+ほかの燃料」をガスタービンで燃焼し、回転力を得て発電機を駆動させて発電します。
汽力発電は「水素」または「水素+ほかの燃料」をボイラーで燃焼し、発生した蒸気により回転力を得て、発電機を駆動させて発電します。
燃料電池発電は、水素と酸素の化学反応から直接電力を取り出します。
※ガスタービンと汽力では水素単体の燃料ではない場合、温室効果ガスを0にはできません
水素発電のメリット

近年、「再生可能エネルギー」の導入が増えており、二酸化炭素を排出しない発電が注目を浴びるようになりました。
そして、次世代エネルギーとして期待されているものが「水素エネルギー」です。ここからは、水素発電のメリットについて紹介します。
発電時に二酸化炭素を排出しない
現在主流の発電である、「火力発電」「原子力発電」などを使用した発電方法は、発電時に二酸化炭素が排出されることが当たり前でした。
しかし、水素発電の場合、水素と酸素を使用し化学反応を起こすことで、「水」を排出させます。
世界規模で問題となっている地球温暖化の原因は二酸化炭素であり、従来のエネルギーでは排ガスの問題は避けられません。
そのため、水素エネルギーは、脱炭素社会に大きな貢献ができると期待されています。
水素は多様な資源から製造できる
水素は、水の電気分解・都市ガス・バイオガス・廃プラスチックなど多様な資源から製造され、製鉄所や化学工場などの製造プロセスの中でも、副次的に「水素」が発生します。
日本国内での製造や、海外からの資源の調達先が多様化し、日本国内のエネルギー供給・調達リスクが低減されることで、エネルギーセキュリティの向上にもつながります。
現在の日本は90%以上の化石燃料を海外輸入に頼っている状態のため、水素の発展により安価な電気料金を実現できる日もそう遠くないでしょう。
水素発電のデメリット

水素発電にはメリットばかりではなく、デメリットも存在します。各家庭や企業で水素を問題なく使用できるようになるには、もう少し開発の時間が必要です。
ここからは、水素発電のデメリットについて紹介します。
扱いが難しい
水素は便利な反面、扱いに注意が必要な物質です。
水素は可燃性ガスであり、支燃性ガスが共存する場合に特定のガス濃度の範囲で爆発する性質があります。
ガソリンと比べると燃焼速度は7倍速く、ファンを回し流れを作ると、すぐに着火してしまうことが扱いにくいと言われる理由です。
さらに、燃焼が速いと高圧になりやすく、周辺のものを破壊する可能性も高くなります。
これらを解決するには着火を素早く制御し、燃えてほしいタイミングで燃えるシステムを作らなければなりません。
コストが高い
水素を発電するコストは液化天然ガスの7倍もかかります。水素の輸送方法は、高圧での圧縮・低温化での液化・ほかの物質に変換してからの輸送などがあげられますが、化石燃料よりもエネルギー密度が低く、気体の水素とガソリンを比べても密度は3000分の1です。
そのため、輸送コストや供給コストが高くつく傾向があります。
では、どのような条件であれば低コスト化を測れるのでしょうか。ここからは、低コスト化の3条件を以下に記載します。
【低コスト化の3条件】
- 安価な原料を使って水素をつくる
- 水素の大量製造や大量輸送を可能にするサプライチェーンを構築する
- 燃料電池自動車(FCV)や発電、産業利用などで大量に水素を利用する
以上の条件が揃うためには、日本全体での取り組みが必要です。
水素発電の実現に向けた取り組み

神戸市では、二酸化炭素の排出を減らす社会を目指し、水素エネルギーを活用した「水素スマートシティ神戸構想」に取り組んでいます。水素発電の実現に向けて「水素コージェネレーションシステム」の実証実験を行っています。
このシステムは、1次エネルギー(天然ガスと水素)を使用してガスタービンを駆動し、複数の2次エネルギー(熱・電気)を連続的に取り出すことで、熱を廃棄することなく利用ができます。さらに、経済性と環境性を確保できると期待されている画期的なシステムです。
神戸市では、市街地で水素による熱と電気をポートアイランドスポーツセンター・神戸国際展示場・下水処理場・中央市民病院に供給しています。
市街地で水素による熱と電気を近隣の公共施設に供給するシステムの実証実験は、世界初の取り組みです。
水素発電によるカーボンニュートラルの実現が期待される

化石燃料の枯渇問題や、地球温暖化問題の解決が期待される「水素発電」。排出されるのが「水」のみであること・多様な資源から製造できることが魅力的ではありますが、高コスト・扱いが難しいことに関しては、日本全体で取り組まなければならない課題です。
神戸市のように市町村をあげて水素の研究を試みる自治体が増えてきているため、以前に比べ水素事業に参入しやすいのではないでしょうか。
e-dashでは、脱炭素や地球温暖化への企業の取り組みをサポートしています。カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを検討されている企業様は、お気軽にご相談ください。