
「省エネ法」はオイルショックを契機に、エネルギーのムダ遣いを規制することを目的として1979年に制定された法律です。また、1990年代以降はCO2排出量削減の実現にも有効な役割を担うとされ、2018年までに8回も改正されています。
この記事では、省エネ法の概要や2023年4月の改正による変更点について詳しく解説します。
目次
省エネ法とは

省エネ法(正式名称:エネルギーの使用の合理化等に関する法律)とは、オイルショックを契機に1979年に制定された法律です。エネルギーを効率的に利用し、エネルギー効率を向上させることを目的に制定されました。
その目的については、経済産業省資源エネルギー庁ホームページで、以下のように解説してあります。
“内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため、工場等、輸送、建築物及び機械器具等についてのエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置、電気の需要の平準化に関する所要の措置その他エネルギーの使用の合理化等を総合的に進めるために必要な措置を講ずることとし、もって国民経済の健全な発展に寄与すること(引用:資源エネルギー庁|省エネ法の概要)”
電気需要の標準化に関しては、2013年改正時に導入されました。
省エネ法のエネルギーの対象

省エネ法におけるエネルギーの対象は「燃料」「熱」「電気」の3つです。つまり、化石燃料を熱源・起源とするエネルギーが対象となります。
一方、廃棄物からの回収エネルギーや風力、太陽光などの非化石エネルギー(再生可能エネルギー)は対象外です。ここでは、対象となる3つのエネルギーについて見ていきましょう。
燃料
経済産業省資源エネルギー庁ホームページでは、燃料は以下のように定義されています。
・原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、 石油コークス、石油ガス)
・可燃性天然ガス
・石炭及びコークス、その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス) )であって、燃焼その他の用途(燃料電池による発電)に供するもの
バイオ由来燃料は対象外となります。
熱
熱の定義は以下の通りです。
・燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水など)
太陽熱や地熱、燃料を熱源としない熱のみであることが特定できる場合は対象となりません。
電気
電気の定義は以下の通りです。
・燃料を起源とする電気
ただし、太陽光発電や風力発電、廃棄物発電などの燃料を起源としない電気のみであることが特定できる場合は対象外となります。
省エネ法の規制対象
ここからは、省エネ法の規制対象について解説します。
直接規制
「直接規制」とは、特にエネルギー消費量が多い企業に対しての規制です。「工場等の設置者」「貨物/旅客輸送事業者または荷主」が対象となります。「工場等の設置者」の場合、年間エネルギー使用量が「1,500kl未満」「1,500~3,000kl」「3,000kl以上」のいずれかによって必要となる取り組みが変わります。
法人単体で年間エネルギー使用量が1,500kl以上の場合、国に届け出て特定事業者の指定を受けることが必要です。「1,500kl未満」の場合は、努力義務の対象者となります。グループ企業の各拠点を合わせて1,500kl以上となる場合は、「特定連鎖化事業者」に分類されます。
一方、「貨物/旅客輸送事業者」の場合、保有所有数が200台以上であれば「特定輸送事業者」に分類されます。「荷主」の場合は年間輸送量が3,000万トンキロ以上であれば「特定荷主」に分類され、これらの指標よりも低い事業者は努力義務の対象者となります。
上記の特定事業者や特定輸送事業者、特定荷主に該当する場合は努力義務に加え、エネルギー管理者などの選任・エネルギー使用状況などの定期報告・計画書の提出などの対応が必要です。
間接規制
「間接規制」とは、「生産量等が一定以上の製造事業者など」または「家電などの小売事業者やエネルギー小売事業者」といった、一定のエネルギーを使用する企業を対象とする規制です。「生産量等が一定以上の製造事業者など」の場合、家電や自動車などの機械器具32品目のエネルギー消費効率の目標を設定し、その達成を促すものです。
一方、「家電などの小売事業者やエネルギー小売事業者」の場合は、可能な範囲で消費者への情報提供が求められます。特に、これら事業者のうちエネルギー種別の小売契約件数が30万件を超える事業者については、毎年『一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化に資する情報の提供の実施状況』を公表するよう努めなければならないとされています。
2023年4月の改正による変更点

2023年4月1日から改正省エネ法が施行されました。対象となるのは現行法と同様、年間エネルギー使用量が1,500kl以上の企業で、改正により企業が対応すべき内容が増えたため注意が必要です。ここでは、改正による変更点について解説します。
エネルギーの定義の拡大
省エネ改正法に伴い、エネルギーの定義が拡大されました。これまでは化石エネルギーが対象でしたが、2023年4月以降は太陽光由来の電気や熱といった非化石エネルギー(再生可能エネルギー)も対象となります。
今後、非化石エネルギーの導入拡大が必要と考えられるものの、アンモニアや水素などの資源は海外からの輸入に頼っているため、規制の対象となるといった背景があります。
また、再生エネルギーにも算出係数が設けられ、既存の係数も見直されるなど、ますます再生可能エネルギーのムダ遣いができない状況になるでしょう。
非化石エネルギーへの転換
カーボンニュートラルを実現するためには、非化石エネルギーへの転換が必要です。しかし、これまでは非化石エネルギーの導入は各企業の自主性に委ねられていたため、改正法によって明確なルールが作られることになりました。
対象となる企業は非化石エネルギーの導入が必要となり、さらにそれらをどのように増やしていくかといった中長期計画の作成・エネルギー使用状況の定期報告などが義務付けられます。
カーボンニュートラルの実現に向けては一部の企業だけでなく、産業界全体での非化石エネルギーへの転換が求められます。今後は、太陽光発電や風力発電、地熱発電、バイオマス発電、また再エネ由来の電力などへの転換も検討する必要があるでしょう。
電気需要の最適化
これまでは「電気需要の平準化」が求められていましたが、改正法では「電気需要の最適化」が求められる動きに変わりました。例えば太陽光発電の場合、昼間の発電量が増加したものの、電気を消費しきれずに余ってしまうケースも多く見られます。
そのため、電気の使用量を24時間一定にするのではなく、余剰エネルギーが発生する時間帯に需要をシフトし、需給逼迫時に需要を抑えるなど、供給に合わせて需要を変化させる動きが必要となります。
電気の使用量を供給量に合わせて変化させることを「デマンドレスポンス」と呼び、改正法では、デマンドレスポンスの実施・報告が義務化されます。また、電気の供給状況に合わせて電気の換算係数が変動する、換算係数として再エネ係数が適用されるなどの見通しです。
省エネ法の改正を踏まえた対応が必要

2023年4月の省エネ法改正は、「エネルギーの定義の拡大」「非化石エネルギーへの転換」「電気需要の最適化」が3つの柱となります。対象となる事業者の対応内容が変更になるため、報告や書類の提出などを適切に行うようにしましょう。
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