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政府間パネル「IPCC」とは?報告書など簡単にわかりやすく解説

気候変動や地球温暖化について調べていると、「IPCC」という言葉を目にしたことはありませんか?言葉自体は知っていても、その意味については知識がないという人も多いかもしれません。

本記事では、IPCCについてしっかり理解できるよう、意味や存在する目的、役割などをご紹介します。IPCCが公表している報告書が、政策にどのような影響を与えているのかも詳しく解説するので、参考にしてみてください。

「IPCC」とは?

ipcc 世界 環境問題

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Changeの略)とは、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって、1998年に設立された組織のことです。2021年8月時点で195の国と地域が参加、スイス・ジュネーブに事務局を置いています。

そもそも地球規模で起きている気候変動や温暖化といった環境問題は、人間活動によって引き起こされています。IPCCは、気候変動における影響やリスク、対策などを科学的・技術的な情報をもとに評価し、結果を各国政府や人々に提供することが活動の目的です。

この活動は高く評価され、2007年にはノーベル平和賞を受賞しています。

IPCCの組織構成

IPCCは、「3つの作業部会+イベントリー・タスクフォース」で構成されています。

それぞれが担う役割は、以下のとおりです。

・第1作業部会(科学的根拠):気候システムおよび気候変化についての評価を行う

・第2作業部会(影響、適応、脆弱性):生態系、社会・経済等の各分野における影響および適応策についての評価を行う

・第3作業部会(緩和策):気候変化に対する対策(緩和策)についての評価を行う

・イベントリ―・タスクフォース:各国における温室効果ガス排出量・吸収量の目録(イベントリ)策定のための方法論の作成、改善を行う

IPCC総会が開催される際は、取りまとめ役として議長団(ビューロー)が置かれます。

IPCCの主な活動内容

会議 話し合い

IPCCの主な活動は、気候変動における最新の科学的・技術的・社会経済的な評価を行い、報告書にまとめることです。報告書は各国の政府から推薦された専門家や科学者が作成します。1990年に第1次報告書が公表されて以降、数年ごとに新しい報告書が作成されてきました。最新の第6次報告書は、8年ぶりとなる2022年に公表済みです。

IPCCが作成した報告書は科学的根拠に基づいたうえで、多くの専門家・科学者の意見や論文が採用されています。信頼性が高いため、報告書で示されていた「世界の平均気温を1.5℃に抑えること」は、その重要性が認められ、パリ協定に盛り込まれています。さらに、2021年に開かれた国連の気候変動対策の会議「COP26」においては、議論の指針になるほど、IPCCが作成する報告書は重視されているのです。

評価報告書の種類

気候変動における問題を、最新の科学的知見でまとめた「評価報告書」は4つの報告書から構成されています。

・第1作業部会(WG1):科学的根拠

・第2作業部会(WG2):影響・適応・脆弱性

・第3作業部会(WG3):緩和策

各作業部会でまとめた報告書と、3つの報告書を一本化した統合報告書。それぞれ「政策決定者向け要約」と「技術要約」があるのが特徴です。

2013〜2014年に公表されたIPCCの第5次評価報告書では、人間活動が及ぼす温暖化への影響は「可能性が極めて高い」と結論付けられています。20世紀半ば以降の温暖化の主な原因は、人間によるものである可能性が極めて高いと報告されたのです。この結論に至るまでは段階を踏んでおり、第3次報告書では「可能性が高い」、第4次報告書では「可能性が非常に高い」とされています。

IPCC報告書と気候変動政策の関係

地球 温暖化 記録

最新の研究結果をもとに作成されたIPCCの報告書は、政策決定者などに対して科学的基盤を提供し、気候変動政策の検討や決定する際に役立てられています。「気候変動枠組条約」や「京都議定書採択」などの国際交渉(UNFCCC)、国内政策において議論の指針にもなっているのです。

実際に、2015年に発表されたパリ協定の長期気温目標は、IPCCの報告書と関係があります。パリ協定の目標に盛り込まれている「世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2℃より十分低く保つとともに1.5℃に抑える努力をすること」といった内容は、第5次評価報告書を参考にしたものです。ただし、当時は長期の気温目標は科学的知見が十分ではないとされ、IPCCには特別報告書の作成が求められました。それが「1.5℃特別報告書」です。

報告書のなかでは「地球温暖化を2℃、またはそれ以上ではなく1.5℃に抑制することには、あきらかな便益がある」と警鐘を鳴らしており、その後開催された主要7ヶ国首脳会議(G7サミット)や、第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、「1.5℃努力目標」と「2℃目標」の重要性が再確認されています。

また第6次評価報告書では、「2040年までに世界的平均気温の上昇が1.5℃に達する可能性が50%を超える」と新たな予測を立てました。報告書の公表を受けた国連のグテーレス事務総長は「報告書は人類に対する警鐘だ。温室効果ガスの排出が地球を窒息させ、何十億もの人たちを差し迫った危険のもとにさらしている」と注意を促したうえで、直ちに動く必要があることを訴えています。

一方で、IPCCそのものは世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された組織であり、特定の政策の提案は行いません。あくまでも情報を提供することを目的とし、中立的な立場を重視しています。

IPCCは、地球温暖化に関して訴え続けてきた国際的な組織

世界 国旗

IPCCとは、地球温暖化に関する協議や決定を行う際に、指針となる報告書を作成する組織のことです。報告書は、世界の研究者・科学者たちによって、最新の研究結果をもとに作成されています。これにより、地球温暖化の現状や予測を科学的に把握できるため、「何年先までに温室効果ガスをどのくらい減らさなければいけないのか」「どんな取り組みが必要なのか」が明確になります。

IPCCの取り組みは、国際交渉や国内政策の議論に役立てられており、地球温暖化の進行を抑制するのに一役買っています。今後もIPCCが公表する報告書は注目されるでしょう。

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