世界的な平均気温の上昇、毎年各地で発生する豪雨や干ばつなどの異常気象は、いずれも気候変動の影響によるものと考えられています。気候変動はいつから、どのような原因により起こっているのでしょうか。
本記事では、気候変動の原因や現状について、また気候変動によってどのような影響がもたらされるのかを紹介します。さらに、このまま気候変動が続いた場合に起こりうることや、気候変動を抑える対策などについても解説します。
目次
気候変動とは?

「気候変動」とは、さまざまな要因による気温および気象パターンの長期的な変化のことです。「異常気象」と似ている言葉ですが、異常気象は数カ月程度の短いスパンでの気象変化を指すのに対し、気候変動は10年以上の長いスパンでの変化を指します。
気候変動の要因には、自然の要因と人為的な要因があります。自然の要因として挙げられるのは、太陽周期の変化や火山の噴火、海洋の変動などです。人為的な要因としては、石炭や石油などを燃やすことで発生する二酸化炭素などの温室効果ガスや、森林伐採などが挙げられます。
気候変動は地球環境にさまざまな影響を及ぼします。一例として、気温の上昇や干ばつ、水不足、海面上昇、豪雨、洪水、生物の多様性の減少などが挙げられます。
気候変動の現状

各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えるために、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された政府間組織「国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)」があります。IPCCは、気候変動に関する最新の科学的知見に基づいた「評価報告書」を数年おきに発行しています。
気候変動の要因に自然の要因と人為的な要因の2つが考えられることは、先述した通りです。しかし、IPCCは2021年に発行した報告書のなかで、1850~1900年から2010~2019 年までの世界平均気温の上昇の要因は「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」とし、人為的な要因であると断定しました。
平均気温の上昇
19世紀後半以降、世界の年平均気温は100年あたり0.73℃の割合で上昇しています。とくに1990年代半ば以降は高温となる年が多くなり、なかでも2016年は、統計を開始した1891年以降では最も高い気温になりました。
地球温暖化をもたらす温室効果ガスには、二酸化炭素、メタンガス、一酸化二窒素、フロン類などがあります。IPCCの報告書によると、このなかで地球温暖化への寄与が最も高いのが二酸化炭素で、76.7%になっています。石油や石炭などの化石燃料を燃焼させることで発生する二酸化炭素が、地球温暖化の最大の温暖化の原因と言えます。
海面水温の上昇
海面水温も、1900~2019年の間で100年あたり0.55℃上昇しています。日本の近海ではこれをさらに上回り、100年あたりの上昇幅は1.14℃です。一般的には、陸地の方が温まりやすいことや暖流の影響により、大陸に近い海域は海面水温が上昇しやすいことがわかっています。
日本近海は、世界平均よりも大幅な海面水温の上昇が予測されています。パリ協定の2℃目標(産業革命後の気温上昇を2℃以内に抑える)を達成したとしても、21世紀末には日本近海の海面水温はさらに1.14℃上昇すると考えられているのが事実です。なお、昇温の度合いは一様ではなく、海域により異なります。これらの要因として、偏西風の北上に伴う亜熱帯循環の北上の影響が挙げられます。
北極海の海氷の減少
北極海の海氷面積は、温暖化にともない減少し続けています。オホーツク海においても同様に、1971~2020年の間、10年当たりで6.1万㎢(最大海氷面積の平年値の5.3%に相当)の割合で減少。また、1956年以降のオホーツク海沿岸海氷観測データからは、1980年代後半以降に流氷が激減していることも読み取れます。
こうした状況から、パリ協定の目標が達成できずにこのまま気温上昇が続いた場合、北極域の氷は21世紀半ばまでにほとんど融解してしまうとのことです。また、21世紀の間には海氷面積が減少するだけでなく、海氷の厚さも薄くなることも予想されます。
気候変動の影響

1990年代半ば以降は平均気温が高くなる年が増えていますが、気温が高い状態が長期化すると、気候のパターンが変わって自然界のバランスが崩れてしまいます。これは、人間を含めたすべての生命体にとって大きなリスクです。気候変動によってもたらされるさまざまな影響について解説します。
猛暑日の増加や台風の大型化
近年、日本では真夏日や猛暑日の年間日数が増え続けています。高温化は日本だけでなく、世界的な現象です。また、冬は本来寒かった地域が以前ほど寒くなくなっており、日本海側の積雪データを見ると、降雪量や積雪量は減少傾向にあります。
一方で、日本では記録的な豪雪となる年や地域があり、世界的に見るとアジア、オーストラリア、中近東を中心に、頻繁に異常低温が発生しています。
サイクロン、ハリケーン、台風などの嵐は大型化し、発生する頻度が増えています。台風やハリケーンは海上で水蒸気を含んだ上昇気流が上空で冷やされ、周囲の水蒸気を巻き込むことで起こる現象です。気温の上昇は蒸発する水分を増加させるため、より大型化すると考えられています。
ただし、これらの気象現象は気候変動の影響として裏付けられたわけではなく、さらなるデータの蓄積と分析が必要です。現段階で言えることは、温暖化がもたらす気象への影響として、従来の気候システムが変化し、予期せぬ異常気象が増える可能性が大きくなる、ということになるでしょう 。
自然災害の増加
豪雨による水害や土砂災害は、年々増加傾向が続いています。また、台風による高潮被害の増加も懸念されています。高潮は、気圧や風によって海面が平常より高くなる現象です。台風による高潮は、内湾の奥で顕著になることが知られており、日本でも沿岸部の建造物や道路に浸水被害が及ぶことが増えています。
過去の例として、香川県高松市では2004年の台風第16号により、沿岸部の冠水とともに、河川沿いに海水が逆流し、大規模な浸水被害が発生しています。今後も台風の大型化により被害が甚大化する可能性があります。
動物への悪影響
気候変動による気温や気候の変化は、動植物に深刻な影響をもたらします。温暖化により植物分布が変わると、野生動物のなかには食物が摂れなくなったり、繁殖できなくなったりして絶滅する種も出てくるでしょう。一方、新たに生息域を広げて繁殖する種もあると考えられます。
広範囲で変化が起こると、地域の気候自体が変わってくる可能性もあります。干ばつなどによる森林や草原だった場所の砂漠化によって、その地域の気候システムが変化し、それがさらに在来の動植物や生態系を脅かす原因になるのです。
気候変動がさらに進むとどうなる?

気候変動がこのまま進んでいくと、地球環境にどのような影響が出るのでしょうか。IPCCの第5次報告書によると、「今世紀末の世界平均気温変化はRCPシナリオによれば0.3~4.8℃の範囲、平均海面水位の上昇は0.26~0.82mの範囲となる可能性が高い」としています。RCPとは、代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways)のことで、数値が高いほど温室効果ガスの濃度が高く、地球温暖化を引き起こす効果が高くなります。
IPCCが21世紀末(2081~2100年)の気温を、さまざまなシミュレーションを行い予測したところ、現在より上昇するのは明らかであり、最大で4.8℃も上がる可能性があることがわかりました。これにともない、平均海面水位は最大で0.82m上昇するかもしれないとしています。
気候変動を抑制するには、温室効果ガス排出量の抜本的かつ持続的に削減してくしかありません。これ以上気候変動における問題を拡大させないために、私たち一人ひとりが日々の生活を見直し、改善するようにしていくことが必要です。
自分にできることから改善を始めよう

気候変動の進行を少しでも抑制するために、私たちにもできることがあります。住宅の断熱性を高め、省エネ家電を使うなどして省エネ化すれば、生活に利用するエネルギーの削減が可能です。さらに、食品ロスを減らし、ゴミを減らすこともCO2排出量削減につながります。移動の際はCO2排出量の少ない公共交通機関を利用し、自転車や電気自動車などCO2を排出しない移動手段を選ぶことも大切です。
個人レベルで気候変動に対する危機感を抱き、これ以上進まないために何ができるのかを考え、実践していきましょう。
気候変動の影響を理解し、一人ひとりが危機感を持つことが大切
私たちの生活を脅かす地球温暖化や海面上昇、自然災害の増加などは、いずれも気候変動の影響によるものと考えられます。気候変動の要因には自然のものと人為的なものがありますが、近年の世界平均気温の上昇は人為的な要因です。このまま気候変動が進むと、地球環境は激変し、私たちを含め多くの生命体が存亡の危機に直面するでしょう。
気候変動の進行を少しでも緩和するために、私たちにできることがあります。日々の生活の中でできることを、今日から始めていきましょう。