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京都議定書の意義と課題とは?後継のパリ協定についてもご紹介

「京都議定書」は、2020年までの地球温暖化対策についての取り組みを定める国際的な枠組みです。国際社会が協力して温暖化対策に取り組むきっかけになったとも言われており、2020年以降の温暖化対策の枠組みである「パリ協定」の礎となりました。

企業や個人としてCO2の削減や省エネ対策に取り組む上で、世界情勢を無視することはできません。この記事では、京都議定書の概要や仕組みだけでなく、今後の取り組みにおいて重要となるパリ協定についても紹介します。

京都議定書とは?

CO2の文字が書かれた黒板

京都議定書とは、1997年12月に定められた気候変動への国際的な条約を指します。先進国の排出する温室効果ガスの削減について、法的拘束力を持つ数値目標が設定されました。

同議定書が採択された気候変動枠組条約締約国会議(COP3)の開催地が京都であったことから、京都の名を冠しています。

京都議定書の概要

京都議定書では基準年と比較して、設定した約束期間に先進国全体で、一定の温室効果ガスを削減することが約束されました。

削減対象となる温室効果ガスは、温室効果ガスの一種であるとされる二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素(亜酸化窒素)、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六ふっ化硫黄の6種類。

排出分のうち森林の炭紡吸収による吸収源の算入が認められています。吸収源の数値は国によって異なり、日本は3.8%が吸収源として認められました。

京都議定書の削減目標

京都議定書では批准した先進国全体に対して、2008年から2012年の間に1990年比で5.2%の温室効果ガスの削減が求められました。

一方で、途上国については削減義務がありませんでした。これは、気候変動枠組条約の「世界全体の温室効果ガスの大半は先進国から排出されたものであり、先進国が率先して削減対策を行うべきである」という考え方が反映されました。具体的な目標数値は国や地域によって異なりますが、日本では6%、米国は7%、EUは8%の削減目標となりました。

京都議定書の発効条件

京都議定書の発効(実際に効力を発すること)条件として、次の2つの要件を満たした後、90日経過する必要があります。

  • 55カ国以上の国が締結すること
  • 締結した附属書Ⅰ国の1990年における温室効果ガス合計排出量が、全附属書Ⅰ国の合計排出量の55%以上であること

※附属書I国とは西側先進国(OECD加盟諸国)の大半及び旧ソ連・東欧諸国の一部を指す

先進国の中で最初に議定書に批准したのはルーマニアで2001年3月、同年11月にはチェコ共和国が批准しました。

一方で、2国だけで附属書Ⅰ国全体の排出量の過半数を占める、米国とロシアが京都議定書への参加を見送ったこともあり、一時は発効が非現実的という事態に陥りました。

しかし、その後2002年に日本が、2004年にはロシアも批准したことにより、2005年2月に発効される運びとなりました。

京都メカニズムとは?

京都メカニズムとは、温室効果ガスの削減目標を達成するために京都議定書内で認められた、国際的な枠組みを指します。国内での対策だけではなく、排出量取引、クリーン開発メカニズム、共同実施の3つの仕組みを利用することで、他国間での協力が可能となり、より削減目標を達成しやすくなるというものです。

項目名概要
排出量取引(第17条)先進国間で温室効果ガスの排出枠を取引できる制度
クリーン開発メカニズム(第12条)先進国が途上国で温暖化防止プロジェクトにより排出量を削減した場合、削減量を自国の削減分に換算できる制度
共同実施(第6条)先進国間で支援を行い排出量の削減に貢献した場合、他国での削減量の一部を自国の削減分に換算できる制度

京都議定書のきっかけとなった地球サミット

各国の国旗と空

京都議定書が誕生するきっかけとなったのは、1992年にブラジルで開催されたリオ・サミット(地球サミット)です。このサミットで採択された国連気候変動枠組条約は、地球温暖化によるさまざまな悪影響を防止するための国際的な枠組みで、1992年に採択、1994年に発効されました。

発効時には日本を含む155カ国が署名していましたが、地球温暖化対策として強制力のある実施策がなく、各国の具体的な取り組みを求めるには不十分でした。

京都議定書では、気候変動枠組条約で不十分であった点を補完する形で、温室効果ガスの削減計画の策定と実施、そして吸収・排出量の実績公開など、各国の具体的な行動が義務付けられました。

京都議定書の意義と課題

虫眼鏡

京都議定書は、世界初となる温室効果ガス排出量削減に向けた取り決めでした。国際社会が協力して、温暖化に取り組む大切な一歩となったという大きな意義をもつ反面、当初期待していたほどの結果を得られなかったという課題も残りました。

ここでは、京都議定書の持つ意義と課題について解説します。

CO2削減に向けた初の取り決め

京都議定書では、温室効果ガスの削減目標として具体的な数値目標を設定し、それを遵守するための仕組みが組み込まれています。

京都議定書の存在は、温室効果ガスの削減に関する国際社会の意識を高め、国や地域を超えて協力することの重要性を国際社会に認識させることとなりました。地球温暖化対策を単なるスローガンで終わらせず、各国が具体的な対策に取り組む契機となったことから、京都議定書には大きな意義があったと言えます。

京都議定書の基本的な枠組みは、その後に続くパリ協定などの礎となりました。

CO2削減の成果は不十分だった

京都議定書の基準年である1990年から2016年まで、日本を含めた一部の国や地域ではCO2の排出量は減少しましたが、世界全体の温室効果ガスは増加傾向にありました。

第一約束期間である2008年から2012年における世界全体の温室効果ガス排出量も基準年比で増加していたため、京都議定書は失敗だったとの見方もあります。

排出量削減に至らなかった主な原因として、米国の議定書からの離脱や途上国に削減義務が課されなかったことが挙げられます。

しかし一方で、京都議定書の下で各国が排出量削減に向けた取り組みをしていなければ、より増加幅が大きかった可能性もあります。不十分な面はあったものの、京都議定書は温室効果ガス削減に一定の効果があったと言えます。

京都議定書からパリ協定へ

高層ビル

地球温暖化対策の新しい枠組みが、パリ協定になります。パリ協定は京都議定書の後継と言われていますが、両者にはいくつか相違点があります。

ここではパリ協定と京都議定書の相違点や、パリ協定について詳しく解説します。

パリ協定とは

2015年、フランスのパリで国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されました。この時採択されたのがパリ協定です。パリ協定は京都議定書の後継で、2020年以降の地球温暖化対策に関する国際的な枠組みです。

締結国は温室効果ガスの削減計画や実施状況、実績を公表する義務を負い、5年ごとに確認する仕組みとなっています。

パリ協定では、次の2つが発効条件とされました。

  • 55カ国以上が参加すること
  • 世界の総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准すること

一部では発効までに時間を要するだろうとの見方もありましたが、当時の米国・オバマ大統領の働きかけなどにより中国、インド、EUが批准し、採択の翌年2016年11月に発効されました。

パリ協定と京都議定書の違い

パリ協定と京都議定書は、どちらも地球温暖化対策への国際的な枠組みであり、基本的な方針は共通しています。

パリ協定が京都議定書の後継である理由として、京都議定書が2020年以前の地球温暖化対策であったことに対し、パリ協定は2020年以降を対象とした枠組みとなっています。

ただし、パリ協定と異なり京都議定書では削減義務を負うのが先進国のみであり、年々温室効果ガスの排出量が増加している途上国は対象外でした。

世界全体としての排出量削減に向けた対策としては不十分であったという反省を生かし、パリ協定では先進国だけでなく途上国を含む、批准したすべての国が削減目標の対象となりました。

CO2削減の取り組みは企業にとっても重要となる

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京都議定書が採択された1997年から今日に至るまで、世界全体の温室効果ガス排出量は増加の一途をたどってきました。また、国際社会としても地球温暖化によるさまざまな悪影響への危機感が高まり、現在では先進国、途上国の枠組みを超えた対策が行われています。

地球の未来のために、日本としてパリ協定へ取り組み続けることは今後も重要です。それだけでなく、SDGsやカーボンニュートラルへの認識の広がりに伴い、国としての対策に加え、今後は企業の温室効果ガス削減への取り組みが求められています。

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