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循環型社会とは?求められる理由と実現のためにできること

循環型社会のイメージ

環境問題に関するトピックで近年よく見聞きするようになった「循環型社会」 。廃棄物問題や温暖化などと深く結びついています。

また、日本が目指すCO2排出実質0の「カーボンニュートラル」も、循環型社会と切り離せません。

この記事では、循環型社会がどのようなものか、実現のためにどんな取り組みがされているのかなどを解説します。

循環型社会の意味

循環型社会とは

循環型社会とは、産業などから出る廃棄物を再利用することによって、資源を循環的に利用できる社会を指します。

大量生産・大量消費が行われている従来の社会では、大量の廃棄物が生じます。そのため、資源の枯渇や地球温暖化などの環境問題が浮き彫りになり、「SDGs(持続的な開発目標)」など、地球全体の未来を見据えた社会システムが求められるようになりました。

「限りある天然資源を守り持続的に利用するためには、循環型社会の実現が必須である」という見解のもと、すでに国内外で循環型社会を目指す取り組みが行われています。

循環型社会が求められる理由

環境問題

循環型社会が求められるようになった背景には、現在世界が直面するさまざまな問題があります。将来の世代に持続可能な社会を受け継ぐためにも、諸問題の解決が急がれています。

ここからは、循環型社会が求められるようになった主な理由について、詳しく見ていきましょう。

地球温暖化の進行

循環型社会が求められるようになった大きな理由の一つが、 地球温暖化です。

2021年の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」による第6次評価報告書によると、1850年から2020年の間に世界の平均気温は1.09℃上昇。特に、直近30年間の気温上昇率を10年単位で比較すると、1850年以降どの10年間よりも高いという結果が出ています。

同報告書では「少なくとも過去2000年間で前例のない速度の気温上昇」という調査結果を受け、「地球温暖化の原因は人間の活動によるものである」と初めて断定しました。気候変動・海水面上昇をはじめとする世界各地へのさまざまな影響に、強い懸念を示しています。

地球温暖化の主原因とされているのが温室効果ガスです。中でも、石油・石炭などの化石燃料や廃棄物の燃焼で生じる二酸化炭素(CO2)の影響は7割以上を占めており、温暖化阻止のためにはCO2排出削減が欠かせません。

日本でも「低炭素・循環型社会」が提唱されているように、地球温暖化への対策と循環型社会の実現は、切り離せない関係にあるのです。

世界的な廃棄物の増加

廃棄物が世界規模で増加している点も、循環型社会が求められるようになった一因です。

国際機関・世界銀行による「What a Waste 2.0:2050年に向けた世界の廃棄物管理の現状と展望」では、対策が講じられなかった場合、廃棄物量が2050年までに70%増加するとの予測を発表しています。廃棄物の不適切な管理で起きる環境汚染や、焼却処理で生じるCO2など、さまざまな悪影響を指摘しました。

また、先進国と開発途上国でのリサイクル率の格差も問題視されています。廃棄物削減や、リサイクルプログラムの構築は、循環型社会の根幹とも言えるでしょう。

資源枯渇への不安

石油や石炭、天然ガスなどの資源枯渇にも注目が集まっています。

化石燃料と呼ばれるこれらの資源は、太古の堆積物が長い時間をかけて変化したものです。地中から採掘され、発電燃料やガソリン、プラスチックの原料など、幅広く利用されています。

採掘技術の向上や、新たな油田・ガス田の発見などにより枯渇期限は伸びているものの、化石燃料の埋蔵量には限りがあります。バイオマス発電など、再生可能エネルギーを活用した循環型社会の実現は、枯渇性資源の消費を抑えることにもつながるのです。

循環型社会に欠かせない3Rとは

3Rのイメージ

地球温暖化や気候変動、廃棄物問題、資源枯渇など、私たちが直面するさまざまな環境問題を解決し、循環型社会を実現するために欠かせない取り組みが「3R」です。

ここからは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)から構成された3Rについて詳しく解説します。

Reduce(リデュース)

Reduce(リデュース)とは、もともと「減らす」「縮小」などを意味する英単語です。3RにおけるReduceは「ゴミの発生を減らす」ことを指します。過剰包装や使い捨て容器などを避け、繰り返し使えるものに替えることで、日常的に発生するゴミを減らす取り組みです。

Reduceの身近な取り組みとしては、レジ袋の有料化や食品ロスの削減、商品包装の簡略化などが挙げられます。マイ箸やマイボトルを持つことも、Reduceにつながる取り組みです。さらに、ペットボトルや自動車の軽量化などの省資源や、製品の長寿命化など、企業によるReduceも進んでいます。

Reuse(リユース)

Reuse(リユース)は「再利用」を意味する英単語で、3Rでは同じ製品や部品を繰り返し利用することを指します。次に紹介するRecycle(リサイクル)と似ていますが、Recycleが使用済みの製品を加工して再利用するのに対し、Reuseは基本的にそのまま再利用します。

例えば、企業が使用済み製品を回収し、製品の一部を再生・再利用するのもReuseです。フリーマーケットや古着屋、古道具屋などで不用品を売ることもReuseの一環と言えるでしょう。

Recycle(リサイクル)

Recycle(リサイクル)は、廃棄物や産業の副産物などを資源として有効利用することを指します。日本では1991年に「再生資源の利用の促進に関する法律(リサイクル法)」をはじめとする各法律が施行され、容器包装や電化製品、自動車などのリサイクルが促進されてきました。

一般ゴミではペットボトルやガラス瓶、アルミ缶、古紙などを「資源ゴミ」と名付け、多くの自治体が分別回収に取り組んでいます。

Refuse・Repairを加えた5Rも注目されている

5Rが循環型社会をつくる

前項で紹介した3RにRefuse(リフューズ)・Repair(リペア)を加えた5Rも、注目されているキーワードです。

Refuse・Repairが加わることで、実生活での環境への取り組みがより具体的にイメージでき、循環型社会が身近に感じられるようになります。2つの項目について、さらに詳しく見ていきましょう。

Refuse(リフューズ)

Refuse(リフューズ)は「拒否する」という意味を持つ英単語です。5Rにおいても「ゴミの元になるものを断る」という行動を指します。

例えば、レジ袋や使い捨て容器を断り、エコバックやマイボトルを活用するのもRefuseの一つ。店舗で簡易的な包装を選んだり、不要な広告・パンフレットの受け取りを断ったりするのもRefuseです。

Repair(リペア)

Repair(リペア)は、「修理」「回復」などを指す言葉です。5Rにおいても同様に、「修理・修繕によって製品を長く使用する」ことを意味します。

例としては、洋服や靴、家具、電化製品など、日常的に使うものが汚れたり壊れたりしたときに、修理が可能かどうかを調べ、捨てることを回避することが挙げられます。製造元の修理保証や修理専門サービスも積極的に利用したいところです。

循環型社会を実現するための国内外の取り組み

循環型社会への国際的な取り組み

循環型社会を実現し、環境問題を改善するために、国内外ではさまざまな取り組みが進んでいます。

この項では、日本、アジア、ヨーロッパで行われている循環型社会への主な取り組みについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

【日本】循環型社会形成推進基本法

2000年に公布された「循環型社会形成推進基本法」は、日本が目指す循環型社会の姿を明確にし、実現のための具体的な方法や、国・自治体・事業者・国民それぞれの役割分担・責任について定めた法律です。

同法では、循環型社会を「1.廃棄物等の発生抑制、2.循環資源の循環的な利用及び 3.適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」と定義づけ、有用な廃棄物「循環資源」の有効活用を促進。

廃棄物の処分に関しても、発生抑制・再使用・再生利用・熱回収・適正処分の順で優先順位を法定化しました。

【日本】循環経済パートナーシップ

2021年3月に経済産業省と環境省、日本経済団体連合会の間で設立されたのが「循環経済パートナーシップ(J4CE、ジェイフォース)」です。

「循環経済(サーキュラーエコノミー)」とは、資源や製品の価値を長く維持し、廃棄物の発生などの環境負荷を可能な限り抑える経済システムを指します。

同年1月に経済産業省によって開催された「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス(開示・対話ガイダンス)」では、この循環経済に特化した企業・投資家と政府が対話し、循環経済パートナーシップの設立に至りました。

同フォーラムでは、世界人口の増加に伴う資源利用の加速や、新型コロナウイルスの影響、国際情勢の目まぐるしい変化などをふまえ、特定の国への依存から脱した独自の循環経済システムが提言され、環境問題と経済、両面へのアプローチを目指すとしています。

【アジア】アジア太平洋3R推進フォーラム

「アジア太平洋3R推進フォーラム」は、アジア各国の政府や公的機関、研究機関などが協力して、3Rの推進を目指す国際会合です。2009年に日本の提唱ではじまり、2020年時点で10回の会合が行われました。3Rに関する情報共有や、各国が進める3Rプロジェクトへの支援、関係者のネットワーク構築などが推進されています。

参加国はアフガニスタン、 オーストラリア、 ブータン、中国、インド、インドネシア、韓国、ラオス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなどのアジア太平洋諸国です。

2013年の第4回会合では、各国の目標および達成度をはかる指標が設けられた「2013-2023年におけるアジア太平洋地域の持続可能な3R目標(3RGs、ハノイ3R宣言)」が定められ、より具体的な取り組みが進められるようになりました。

【EU】使い捨てプラスチック流通禁止指令

EU(欧州連合)では、2019年に「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令(使い捨てプラスチック流通禁止指令)」が発行されました。

同法例では、一部の医療用プラスチックを除き、使い捨てプラスチックの食器やストロー、飲料容器などを対象に、市場流通の規制および消費削減のための規制措置がEU加盟国に求められています。

さらに、今後もプラスチック消費を抑えるためのさまざまな要件が追加予定です。生産者への廃棄物回収・消費者啓蒙費用などの負担義務や、ペットボトル原料における再生プラスチック使用率の規定など、プラスチック削減の取り組みが加速しています。

循環型社会を実現するには?私たちができること

循環型社会の実現

循環型社会を実現するために、すでに世界各国ではさまざまな取り組みが進められる一方で、政府や企業によって環境問題が周知されるようになりました。私たち一人ひとりが問題意識を持ち、環境保全のために努力することが求められています。

個人ができる環境問題へのアプローチには、どんなものがあるのでしょうか。

5Rを実践する

この記事で紹介したReduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Refuse(リフューズ)・Repair(リペア)の5Rは、今日から実践できる取り組みです。

買い物にはマイバッグを持参してレジ袋をなるべく断る、マイボトルを持ち歩きペットボトル飲料の購入を控える、ゴミの分別や不用品の再利用など、できるところから1つずつ実践してみましょう。

また、製品購入の際に循環経済に特化した企業の製品や、バイオマス資源など、再資源化された原料を使用した製品を選ぶことも5Rの実践につながります。

排出者責任と拡大生産者責任を意識する

2000年に日本で公布された「循環型社会形成推進基本法」は、3Rの促進および「排出者責任」「拡大生産者責任」という考え方がベースになっています。

「排出者責任」とは、簡単に言えば「ゴミを出した人が負うべき責任」です。ゴミの捨て場所や分別などのルールは、ゴミを出した本人が守らなければなりません。

また、「拡大生産者責任」とは、「製品の生産者に問われる責任」です。製品使用の際に発生する環境負荷から、廃棄後のリサイクル率まで、その責任は生産者にあります。環境保全のためには、使用する原料や製品設計をする際にリサイクルをふまえたものにすることが重要です。

生産・消費・廃棄というサイクルの中で、この2つの責任を意識することは、循環型社会の実現に欠かせない要素だと言えるでしょう。

再生可能エネルギーでつくる電気を使う

私たちの生活に欠かせない電気を、環境負荷の低い「再生可能エネルギー」を利用したものに変えることも有効な取り組みです。

2016年の電気小売の全面自由化で、一般家庭や商店も契約する電気事業者を選べるようになりました。CO2が削減できる方法で電気を提供する事業者と契約することで、循環型社会の実現に貢献できます。

一人ひとりの取り組みが循環型社会につながる

限りある資源を有効活用し、環境負荷の少ないサイクルを構築する循環型社会は、さまざまな環境問題に直面する世界が目指す姿です。また、廃棄物を減らす「5R」を意識することで、一人ひとりが環境保全への取り組みを進められます。

日本では、2050年までにCO2排出を実質0にする「カーボンニュートラル」を掲げています。目標達成のためには、企業や自治体の積極的な取り組みが重要ですが「何からはじめ、どう歩めばいいのか」という迷いや課題が立ちはだかることもあるのではないでしょうか。
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