2050年のカーボンニュートラル(脱炭素社会)実現に向けてさまざまな施策が進められるなか、脱炭素先行地域への関心もさらに高まっています。
2022年前半に行われた第1回選定に続き、同年11月には第2回選定結果が発表されました。そこで今回は、第2回脱炭素先行地域の選定数や取り組み事例、交付金について詳しく解説します。
目次
そもそも脱炭素先行地域とは
脱炭素先行地域とは、日本が目標とするカーボンニュートラル(脱炭素社会)に向けた具体的な施策を、先行して実現するモデル地域のことです。
環境問題の一つである地球温暖化は、気候変動や海水面の上昇など、世界各地に深刻な影響を及ぼしています。各国で対策が進められているなか、日本が掲げているのが「カーボンニュートラル:CO2の排出量と森林などによる吸収量をイーブンにすることでCO2排出量を実質ゼロにする」です。
カーボンニュートラルに向けた具体的な目標や施策が示された「脱炭素ロードマップ」によると、まず2025年までに先行モデルとなる脱炭素先行地域を構築します。その後、全国各地に脱炭素化が伝播する「脱炭素ドミノ」を起こし、目標の達成期限である2050年を待たずにカーボンニュートラルを実現するとしています。
第2回脱炭素先行地域選定の概要
脱炭素先行地域の選定は、各地方公共団体から希望を募り、寄せられた計画提案をもとに行われます。
選考では、再生可能エネルギーの導入割合や、CO2・温室効果ガス排出削減の達成率など脱炭素への貢献度に加え、その地域が抱える課題を改善する「地方創生」が両立可能かどうかも重要視されます。
2022年4月に選定結果が発表された第1回に続き、同年6月に第2回の募集要領・ガイドブックが公表され、11月には50件の応募から新たに20の脱炭素先行地域が選ばれました。
第1回、第2回の選定で46の地方公共団体が脱炭素先行地域となり、国の支援を受けながら脱炭素への取り組みを進めることになります。また、2025年まで年2回程度の募集が行われるとされているため、今後も脱炭素先行地域は増える見通しです。
第2回選定地域の提案事例
ここからは、第2回選定における脱炭素先行地域の提案事例を見ていきましょう。選出された20の地方公共団体から、神奈川県小田原市、山口県山口市、新潟県関川村が、それぞれどのような計画提案を行ったのかを紹介します。
神奈川県小田原市
神奈川県小田原市、東京電力パワーグリッド株式会社小田原支社は、“エネルギーと地域経済の好循環”を基軸とした、脱炭素と市街地の活性化を両立する計画を共同提案しました。
計画では再生可能エネルギーや電気自動車など、地域資源を活用した製品に着目しています。太陽光発電や蓄電池を最大限導入し、地域の需要・供給バランスや取引システムを構築する狙いです。さらにEV(電気自動車)充電器やEVタクシーなどを取り入れた「EV宿場町」を創出し、観光客の増加も図るとしています。
さらに、大手電気事業者が共同提案者である強みを生かして、配電網からエネルギー供給にアプローチします。全国的に問題となっている、再生可能エネルギーによる電力供給系統の混雑を解消するとともに、エネルギーの地産地消を実現することが可能です。
山口県山口市
山口県山口市が西日本電信電話株式会社、NTTアノードエナジー株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所、NTTビジネスソリューションズ株式会社、株式会社山口銀行、株式会社YMFG ZONEプラニングと共同提案しているのが、「ゼロカーボン中心市街地」です。
山口市は、テレワークなど新しい働き方の拡大や、人々の地域移住への高い関心、デジタル技術の進化などをふまえた「スマートシティ」を計画するなど、先進的な街づくりを行っています。
今回の計画提案では、中心市街地の商店街周辺を対象に、太陽光電池・廃棄物発電を活用したソーラーアーケードなどの設置を推進し、加えて公用車や観光地への乗り合いバスをEV化して、CO2排出削減を狙います。さらに、商店街の電力量・CO2排出量の可視化やエコポイント制度などの導入によって、市民や観光客が積極的に脱炭素に取り組めるよう促すのも目的です。
新潟県関川村
新潟県関川村は、山形県との県境近くに位置し、豊かな自然や歴史を感じさせる街並みを持つ村です。今回の計画提案では、太陽光・地熱・小型風力・木質バイオマスなど、豊富な自然資源を活用した再生可能エネルギーが中心となっています。
計画内では、再生可能エネルギーの導入と共に、独自の送電線や大型蓄電池を用いた地域マイクログリッド(地産地消の小規模電力網)を構築します。村役場など防災拠点にレジリエンスを強化した電力システムを置くことで、災害に強い地域づくりを目指すとしています。
さらに、木材価格の低迷によって荒廃が問題視されている山林への対策として、村の森林資源を活用した木質バイオマス発電やスマート林業の導入を推進するのも計画の一つです。耕作放棄地の有効利用やソーラーシェアリングの導入により農業の活性化を図るなど、脱炭素・地域産業の両面にアプローチするとしています。
脱炭素先行地域づくりに関する交付金
脱炭素先行地域の取り組みを後押しするのが「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」です。太陽光発電設備や建物の省エネ化など、脱炭素への取り組みに対する包括的な支援が数年にわたり受けられます。
交付要件・対象事業は以下の通りです。
1.脱炭素先行地域づくり事業への支援
交付要件…脱炭素先行地域に選定されていること等
対象事業…再エネ設備の導入に加え、再エネ利用最大化のための基盤インフラ設備(蓄電池、自営線等)や省CO2等設備の導入、これらと一体となってその効果を高めるために実施するソフト事業2.重点対策加速化事業への支援
引用元:環境省|地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
交付要件…屋根置きなど自家消費型の太陽光発電や住宅の省エネ性能の向上などの重点対策を複合実施等
脱炭素の実現には地域の取り組みが欠かせない
日本は、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現を掲げています。
この目標を達成するために不可欠なのが、脱炭素先行地域をはじめ各地域の取り組みです。環境問題のみならず、過疎化や産業の減衰など、それぞれの地方が抱える問題の解決にもつながります。
e-dashは、エネルギーコストの削減から環境報告への対応まで、脱炭素へのサポートを提供するトータルプラットフォームです。CO2排出への取り組みのベストパートナーとして、今後もカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。