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バイオマス発電の課題と解決策!事例と取り組みも含めて徹底解説

LNGタンカー

バイオマス発電は、再生可能エネルギーとしてその活用方法に期待が高まっています。

しかし、バイオマス発電のメリットは確かに大きいのですが、日本ではまだ十分に普及していない現実があります。環境に優しいという点は、果たしてそれだけで十分なのでしょうか?

この発電方法が抱える課題をどのように克服し、更なる可能性を引き出せるか、本記事では、バイオマス発電の課題を掘り下げながらその解決策と、具体的な取り組みを交えて徹底的に解説していきます。

バイオマス発電を含む再生可能エネルギーの普及はどのように進んでいるのか、一緒に探っていきましょう。

「バイオマス発電」とは?まずは基本のしくみを理解しよう

自然エネルギー

バイオマスとは、植物や動物など、自然界で育つ生物資源の総称です。この生物資源であるバイオマス燃料を使って、燃焼させて蒸気を発生させたり、ガス化する手法で発電を実現します。バイオマス発電の特徴は、CO2排出量が少ないことです。また、再生可能エネルギーの一つであり、環境に優しいエネルギーとして注目されています。

また、技術の発展により、日本でもさまざまな種類のバイオマスが活用されています。一体、どんなメカニズムで動いているのでしょうか。

バイオマス発電の種類とそれぞれの特徴を紹介

発電所

この章では、バイオマス燃料で発電を行う際の方法別に、仕組みや特徴を簡単に紹介します。

①直接燃焼方式

直接燃焼とは、バイオマス燃料をそのまま燃やし、生じる水蒸気でタービンを動かす方法です。特に乾燥して持ち運びやすい燃料が向いており、他の方法に比べて、燃料の前処理や加工が少なく、シンプルなプロセスで発電が行えるのが特徴です。

②熱分解ガス化方式

熱分解ガス化は、バイオマス燃料を直接燃やす代わりに、高温で熱処理を行うことによって、ガス化することで発電します。このガスは可燃性の成分が多く、効率的に発電できます。この方法は、木炭製造のプロセスと似ており、長い間多くの地域で実施されてきました。

③生物化学的ガス化方式

家畜の排泄物や生ごみなどのバイオマス燃料を、微生物の作用で発酵させる方法もあります。その結果、メタンガスなどの可燃ガスが発生し、これを燃料としてタービンを回転させ、発電を行います。この方法の特徴は、燃料としてメタンガスを主体に使用する点にあります。

バイオマス発電が普及しない理由は?課題と解決策について

ウッドチップ

環境にやさしいと言われているバイオマス発電でも、まだ日本での普及が進まない現状にあります。なぜあまり普及していないのか、その背景にある課題と、それを解決するために行われている取り組みについて解説します。

日本でのバイオマス発電の現状と目標

2019年度の実績によると、日本の電力供給におけるバイオマスの割合はわずか2.6%に過ぎません。しかし、第6次エネルギー基本計画においては、2030年までの目標としてバイオマス発電の割合を5%、全再エネルギーの割合を36〜38%として検討が進められています。

経済産業省「今後の再生可能エネルギー政策について」
19ページ「(参考)再生可能エネルギーの導入状況」

課題1 収集・運搬・管理にコストがかかる(発電コストが高い)

バイオマス発電は、例えば太陽光発電と比べて、コストが高いという点が課題となっています。理由のひとつとして、生物資源が広範囲に分散しているため、収集や運搬、そして管理の段階でのコストが増大してしまうという現状があります。それに伴い、設備が小規模分散型の設置になりがちになってしまいます。

<解決策>

生物資源が豊富に発生する地域に、直接バイオマス発電所を建設する動きも進められています。これにより、運搬や管理にかかるコストの削減が期待されています。

課題2 食料となりうるものを燃料としている(食料競合)

バイオマス燃料に、食料として利用できるものを使用すること、これが「食料競合」と呼ばれる問題です。燃料としての利用が増えることで、食料供給が減少する懸念があるため、食料となりうる物資の燃料利用は制限的であるべきという意見が出ています。

<解決策>

食料として使用されないバイオマス燃料をメインに使用することや、①可食ではなく

②他の可食バイオマス種の土地利用変化への影響がないバイオマス種を利用する、などの判断基準を設ける検討を進めています。

課題3 木材燃料等のほとんどを輸入に頼っている

日本のバイオマス発電所のうち、国内だけで調達しているのは24%に過ぎません。残りの76%は、パーム油やPKSなどの輸入材を原料として利用しており、国外依存の問題が指摘されています。

<解決策>

持続可能性が保証できるような基準の整備が進められています。参考として、FIT制度の支援を受ける際は、持続可能性が確保されていることを第三者認証を通じて確認する取組みが求められています。

経済産業省「今後の再生可能エネルギー政策について」
64ページ目「一般木材等・バイオマス液体燃料のFIT認定内訳(設備容量)」

バイオマス発電のメリットや特長について

国営昭和記念公園のケヤキの大木

ここまで、バイオマス発電の課題を考えてきました。しかし、バイオマス発電が持つメリットは、環境にやさしい点以外にも社会の発展に寄与するものがあります。それぞれ具体的なポイントごとに説明していきます。

1.地球温暖化対策に繋がる(一部がカーボンニュートラルである)

燃料に使用されている「バイオマス資源」は、成長の過程で光合成によりCO2を吸収するため、「京都議定書」における取扱上は、一部CO2を排出しないものとされています。そのため、一部がカーボンニュートラルという扱いになり、地球温暖化対策に有効とされています。

ただし、バイオマスの伐採や輸送時に化石燃料が利用されると、その部分はカーボンニュートラルとは言えないため注意が必要となります。

2.廃棄物を有効利用することで循環型社会の構築に繋がる

バイオマス発電には、廃棄物の種類や処理方法によりエネルギー源として利用できる利点があります。有害物質を含む廃棄物や発酵性の高い廃棄物はバイオマス発電に適さない場合がありますが、再利用できる部分を積極的に使用することで、廃棄物全体の量が減少し、循環型社会の構築へ繋がると考えられています。また、発電と同時に廃棄物を処理できるので、地域環境の向上にも寄与します。

3.資源が分散しているため地産地消に繋がる(農山漁村の活性化)

国内の農産漁村に存在するバイオマス資源(例えば家畜の排泄物や稲ワラ、林地の残材など)を有効活用することで、地域の自然循環環境を保護し、さらにはその持続的な発展を図ることが可能です。地域で資源を生産し、そのまま発電に使う地産地消のスタイルは、地域の特性やニーズを把握し、他のエネルギー源や市場との関係を考慮することで、地域の活性化や新たな雇用機会の創出にも繋がります。

4.資源の貯蔵や輸送が出来るため発電量の調整がしやすい

バイオマス発電は、再生可能なエネルギーの中でも、発電量を容易に調整することができる特長を持ちます。バイオマスという燃料を貯蔵しておき、必要に応じて発電に使用したり、他の場所へと輸送することができるからです。この柔軟性は、エネルギー供給の安定性向上に大きく貢献します。

バイオマス発電の普及に向けた国の取り組み

SDGs 日本

バイオマス発電の普及状況とその意義を理解した上で、次に、国がどのような施策や取り組みを進めているのかを詳しく探っていきます。国の方針、具体的な制度の導入や補助、技術開発について紹介します。

1.FIT(固定価格買い取り)制度の対象になっている

バイオマス発電は、国が進める「再⽣可能エネルギーの固定価格買取制度」、通称FIT制度の対象となっています。この制度は、再エネで発電された電気を、電⼒会社が一定の期間、一定の価格で買取ることを国が保証するものです。使用するバイオマスの種類や規模によって買取価格は異なりますが、太陽光や風力に比べて、バイオマス発電はより優遇されていると言えます。

2.国立研究開発法人NEDOによる技術開発が進められている

国の技術開発の一翼を担うNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、バイオマス発電の技術開発を進めています。最新の技術や研究成果をもとに、より効率的で持続可能なバイオマス発電の実現に向けた研究が続けられています。

3.バイオマス発電導入への補助金制度が設けられている

バイオマス発電の普及を支援するため、多くの都道府県や市区町村では補助金制度を設けています。北海道では新たなバイオマス発電設備の導入に対して補助が出される一方、熊本県では既存施設の改修に対する補助が行われています。これらの支援制度により、地域ごとのニーズに応じた発電設備の普及が期待されています。

ベトナムのバイオマス燃料をめぐる動きが注目されている?

ダナン駅

ベトナムは、エネルギー需給の面で大きな変革の渦中にあります。この章では、ベトナムが直面するエネルギー問題と、都市と地方のエネルギー事情や、ベトナムを取り巻く投資環境について解説します。

「都市ガス」が無いベトナム

ベトナムでは、電気を利用する家庭が増加していますが、特に地方部や大都市圏の周辺では電化がまだ十分進行していません。そのため、多くの家庭はLPガスや木炭を主なエネルギー源としています。

また、電力需要の増加に伴い、送電問題が顕在化してきました。ベトナムのエネルギー供給設備がこの急激な変化にどう対応するかが大きな課題となっています。

「バイオマス資源大国」に注目

ベトナムは豊富なバイオマス資源を有しており、そのためベトナム国内でのバイオマス発電への投資を検討する企業が増加しています。また、輸出向けや国内の燃料需要を満たすために、ベトナムのバイオマス燃料の有効活用を研究する日本企業も増えてきました。ベトナムのバイオマス資源が国内外から注目されています。

国内でのバイオマス発電の活用事例を紹介

高知の美しい仁淀川

日本国内におけるバイオマスエネルギーの取り組みは、各地で様々な形で進められています。この章では、特に注目の事例をピックアップし、それぞれの取り組みや成功要因、課題について紹介してまいります。

【木質バイオマスの活用】グリーン発電会津(福島県会津若松市)

福島県会津若松市では、「エネルギーの地産地消」を目標とし、持続可能なまちづくりを推進しています。特に木質バイオマスの活用を進めており、会津地域の山林未利用間伐材を主原料にバイオマス発電所の運営を手がけています。また、森林機能を十分に発揮させるためには、間伐や伐採など適切な森林保全が不可欠であり、森林再生にも取り組んでいます。

【国内最大級のバイオマス】バイオマス産業杜市真庭(岡山県真庭市)

岡山県真庭市は、関係7府省共同で推進している「バイオマス産業都市」に選定されました。地域のバイオマス資源を活用した持続可能なエネルギー供給を目指しており、国内でも大規模なプロジェクトとして注目されています。

更に、バイオマスツアー真庭として、バイオマス事業の視察、里山の暮らしやものづくりを体験するツアーが開催されており、好評を博しています。

【循環のみち下水道賞】バイオマス利活用センター(愛知県豊橋市)

愛知県豊橋市のバイオマス利活用センターは、平成29年度に国土交通大臣賞「循環のみち下水道賞」のイノベーション部門を受賞しました。下水道のバイオマス資源を100%エネルギー化し、新たなエネルギー供給源として活用しています。この取り組みは、都市部での循環型エネルギー利用の一例として注目されています。

バイオマス発電の課題とメリットを理解し、柔軟に検討しよう

大地と電球、カーボンニュートラル

バイオマス発電には、再生可能エネルギーとしての明確なメリットがあります。しかし、その導入や運用には課題も少なくありません。これまでの国内事例を参考にしながら、バイオマス発電の普及状況や日本の発電割合を正確に把握することは、より良い未来を築く上で不可欠です。

バイオマス発電の持つ課題と向き合いつつ、可能性を最大限に活用する方法を模索することが求められます。

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