近年では、地球温暖化が地球環境や生態系に与える影響が問題視されることが多くなってきました。それに伴いよく見聞きするようになった言葉に「カーボンニュートラル」というものがあります。
大企業を始めとして、実際にカーボンニュートラルに取り組んでいる企業が年々増えてきていますが、実際にカーボンニュートラルがどのような意味をもつのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、なぜカーボンニュートラルが注目されるようになったのか、カーボンニュートラルに取り組むにあたってどのように計画を進めていけばいいのかについて解説します。
目次
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることです。
具体的には、温室効果ガスの排出量を出来るだけ削減し、削減しきれなかった分を植林や森林管理によって吸収して実質的にゼロに抑えます。
削減対象が「温室効果ガス」となっているのがポイントで、二酸化炭素だけではなく、メタンや一酸化炭素なども対象になっています。
経済産業省資源エネルギー庁(https://www.enecho.meti.go.jp/)によると、2021年4月時点で125ヵ国・1地域が2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明しています。実現を表明した国における二酸化炭素排出量は世界全体の37.7%を占め、世界的にも脱炭素化に向けた意識が強いことが伺えます。
気温上昇や海面上昇の原因となっている温室効果ガスを削減することで、人間だけでなく、地球上のすべての生物の未来が守られるのです。
カーボンニュートラルへの取り組みが重要視される理由
カーボンニュートラルへの取り組みが重要視される背景には、地球温暖化が深く関係しています。
世界平均気温は年々上がり続けており、平均気温の上昇によって積雪や氷河・氷床などが減少、それに伴い海面水位も上昇の傾向にあります。
地球温暖化は日本においても影響を及ぼしており、特に顕著なのは農作物への被害です。
特にお米やトマトで影響が報告されており、お米は白く濁ったり、亀裂が生じたりしているほか、気温上昇により増加した斑点米カメムシによる被害が報告されています。
また、大雨の日数が増加していることも、地球温暖化が影響している可能性があると考えられています。
トマトは花のつく割合および実のつく割合の低下、果実の変色・陥没などの影響が発生しています。
なんらかの対策を講じなかった場合、世界平均気温はさらに上昇すると予測されており、仮にわずかな上昇であったとしても水や生態系、食料などに影響を及ぼしてしまいます。
気温が1℃~2℃程度上昇するだけでも、水利用可能量の減少・サンゴの白化進行によるサンゴの死滅・洪水や暴風雨による被害の増加・感染症媒介生物の分布変化などの決して無視できない変化が訪れることになるでしょう。
これら地球温暖化が及ぼす影響はすさまじく、わずかな気温上昇でも悪影響を被る地域が出てきてしまう現状を鑑みて、カーボンニュートラルへの取り組みが重要視されてきているのです。
日本におけるカーボンニュートラルへ向けた取り組み
カーボンニュートラル実現へ向けて、日本でもさまざまな取り組みが行われています。
今回は、カーボンニュートラル実現への道筋として発表・宣言された以下の3つの取り組みについて見ていきましょう。
・2050年カーボンニュートラル宣言
・2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
・地球温暖化対策推進法の改正
2050年カーボンニュートラル宣言(2020年10月)
2020年10月、菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。グリーン社会の実現を目標としたもので、「革新的なイノベーションの推進・エネルギー政策の推進・脱炭素ライフスタイルへの転換・サステナブルファイナンスの推進・食品ロスの削減」などが掲げられています。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」策定(2020年12月)
2020年12月、経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。
この戦略は、菅首相が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を「経済と環境の好循環」につなげるための産業政策です。
14の重要分野ごとに高い目標を掲げた上で、現状の課題と今後の取組を明記し、予算や規制改革、国際連携など、あらゆる制作を盛り込んだ実行計画を策定しています。
地球温暖化対策推進法の改正(2021年5月)
1998年10月に成立した地球温暖化対策推進法は、地球温暖化防止を目的とする世界最初の法律です。数年ごとに改正されており、2021年5月に7度目の改正を受けました。
2021年の改正では、2020年秋に宣言された2050年カーボンニュートラルを基本理念として法に位置づけるとともに、その実現に向けて地域の再エネを活用した脱炭素化の取組や、企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化を推進する仕組み等を定めました。
企業におけるカーボンニュートラルの重要性とは
近年では、世界中の数多くの企業がカーボンニュートラル実現へ向けてさまざまなことに取り組んでいます。
企業におけるカーボンニュートラルの重要性としては以下の3つが考えられます。
・エネルギーコストの削減
・他の企業や個人からの評価につながる
・収益化が可能
それぞれ見ていきましょう。
エネルギーコストの削減
日本における二酸化炭素の排出量は、化石燃料による発電が全体の4割を占めているため、企業がカーボンニュートラルに取り組むことで大きな脱炭素効果が期待できます。
現状では日本の再生エネルギー(再エネ)市場は規模が小さいためコストが高くついてしまいますが、再エネを日本の主力エネルギーにするために導入された「FIP制度」が2022年4月よりスタートしています。
FIP制度により再エネを導入する企業が増え、市場が拡大すればコスト低減が期待できるでしょう。
他の企業や個人からの評価が向上
地球温暖化は誰もが関心を持っている環境問題なので、必然的に注目度も高いものとなります。
そのため、地球温暖化防止を目的とするカーボンニュートラルへの取り組みを表明することは、他の企業や個人からの評価につながります。
企業自体の社会的な評価が向上すれば、認知度向上や売り上げアップなど長期的な目線で多くの効果が期待できるでしょう。
収益化が可能
「J-クレジット制度」を利用することで、カーボンニュートラルへの取り組みを収益化につなげることが可能です。
J-クレジット制度は、削減・吸収した温室効果ガスをクレジットとして認証できる制度で、クレジット化したものを他の企業に販売することで利益を得られます。
J-クレジット制度の償却額は年々増加傾向にあるため、今後も安定した収益が期待できます。
カーボンニュートラル実現へ向けて企業がするべきこと
先述したように、カーボンニュートラルに取り組むことは企業としても明確なメリットがあります。では、カーボンニュートラル実現へ向けて企業は何をするべきなのでしょうか。
企業がするべきことについて、順を追って見ていきましょう。
削減目標の整理・決定
まずはカーボンニュートラルに取り組む目的や期待する効果を整理しましょう。
取り組む目的は企業の特徴や取り組んでいる事業活動が環境に与える影響なども含めて整理する必要があります。
期待する効果については、カーボンニュートラルに取り組むことが、自社および従業員にどのような効果・成長をもたらすのかを考慮します。
以上のように整理した内容をもとに、具体的な削減目標を決定しましょう。
サプライチェーン排出量の確認
次に、サプライチェーン排出量を確認しましょう。
サプライチェーン排出量とは、企業の活動によって発生した温室効果ガスの排出量を指します。
サプライチェーン排出量は「Scope1」・「Scope2」・「Scope3」の3つに分かれており、これら3つを合計したものが最終的なサプライチェーン排出量となります。
Scope1は企業による直接の二酸化炭素排出量、Scope2は他社から供給された電気や熱を使用して発生した二酸化炭素排出量、Scope3はScope1、2以外から排出される二酸化炭素排出量です。
気候変動によるリスクを検討
カーボンニュートラルに限らず、事業計画や活動を行う場合は気候変動によるリスクを検討する必要があります。
検討する際には、「外部環境」と「不安要素」を考慮することが大切です。
外部環境とは、気候変動によって発生する可能性がある自然災害や政府の方針変更などで、不安要素とは、自然災害が発生した際に生じる可能性がある原材料などのコスト増加や供給遅れなどです。
導入に向けての議論
上記3つのことを踏まえ、現場での導入に向けての議論を進めましょう。
議論は基本的に担当者・経営者が中心となって進めていきますが、社内だけの議論に固執してしまうと視野が狭くなりがちです。
関連企業やパートナー企業も加えた上で議論に臨むと、特に自社内で知識や技術が十分に進んでいない中小企業において効果的となるでしょう。
今後の課題の整理
最後に今後の課題の整理をしましょう。
議論を進めて決定されたカーボンニュートラルの方法やプロセス、期間などを改めて確認し、今後の課題は何なのかを明確にします。
今後の課題を社内で共有することで、カーボンニュートラルにスムーズに取り組めるようになるでしょう。
企業がカーボンニュートラルへ取り組む方法
カーボンニュートラル実現へ向けて、企業はどのようにカーボンニュートラルへ取り組むべきなのでしょうか。
企業がカーボンニュートラルへ取り組む方法としては、以下の3つが挙げられます。
・省エネルギー(省エネ)の推進
・再生可能エネルギー(再エネ)への切り替え
・e-dashの導入
それぞれ詳しく見ていきましょう。
省エネルギー(省エネ)の推進
省エネルギー(省エネ)とは、石油や石炭などの限りある資源を無駄なく効率的に使用することで、日本では資源エネルギー庁が中心となって推進しています。
近年では多くの企業が省エネに取り組んでいますが、そのきっかけとなったのは1979年に制定された「省エネ法」です。
オイルショックをきっかけに制定された省エネ法は、主に事業者に対する各種報告義務や努力義務を求めたものとなっています。
省エネを推進していく上で3つの大切なポイントがあります。
1つ目は「エネルギーの見える化」です。エネルギーの使用状況を把握しやすくすることで、どのように改善すればいいのかが明確となります。
2つ目は「電力調達方法の見直し」です。CO2フリー電力への切り替えや太陽光発電設備の導入などが考えられるでしょう。
3つ目は「設備投資の計画」です。古い設備の更新や最新設備の導入など、中長期的に見て何を優先するべきかを順位付けして計画を立てる必要があります。
再生可能エネルギー(再エネ)への切り替え
再生可能エネルギー(再エネ)とは温室効果ガスを排出しないエネルギーのことで、太陽光や風力、地熱などが該当します。
温室効果ガスを排出しないというだけでも大きなメリットですが、国内で生産できるためにエネルギー安全保障にも寄与するとされています。
再エネへの切り替え手段には「太陽光発電の実施」や「再エネ主体の電力を導入」などがあります。
太陽光発電の実施については事業所などへの太陽光パネル導入、再エネ主体の電力を導入については
「トラッキング付非化石証書を活用した再エネ100%プラン」の契約が一般的です。
カーボンニュートラルへの取り組みにはe-dashの導入を推奨
省エネや再生エネルギーと併せてぜひ導入することを推奨するのが当社が運営する「e-dash」(https://e-dash.io/)というソフトウェアです。
e-dashは二酸化炭素排出量削減への取り組みを総合的にサポートするサービスプラットフォームで、カーボンニュートラルの実現へ向けて強い味方となるベストパートナーです。
二酸化炭素排出量の自動算出・分析やコスト削減などの具体的な見積もり、目標設定やロードマップの作成など、さまざまなサポートが受けられます。
比較的低コストで導入することができ、月額10,000円からスタートできます。
資料請求やデモの申し込みが可能なため、カーボンニュートラルへの取り組みを検討している企業は一度お問い合わせください。
カーボンニュートラルまとめ
今回の記事では、カーボンニュートラルへの企業の取り組みについて、企業がカーボンニュートラルに取り組むことの重要性や、企業がするべきことについて解説しました。
地球温暖化を始めとする環境問題への意識が高まっている昨今、カーボンニュートラルに取り組むことは企業のイメージアップにもつながり、明確なメリットがあります。
特にe-dashの導入はカーボンニュートラルに取り組むにあたって非常に効果的なため、ぜひ導入を検討してみてください。