みなさんはCDPをご存じですか?
CDPは「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」の略で、企業に対する気候変動への戦略や、具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトです。
CDPは2000年に英国で発足しました。
今では多くの機関投資家(顧客から拠出された資金を運用・管理する法人投資家)が、CDPを通じて企業への情報開示申請を行っています。
この記事では日本でも2005年に活動が始まったCDPについて詳しくご紹介していきます。
目次
CDPとは?
CDPでは環境情報の開示が行われている
CDPはイギリスで設立された国際的な環境非営利団体(NGO)です。
CDPは「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」という活動目的を掲げています。
2000年の発足当初は二酸化炭素排出量や気候変動への取り組みが中心だったため「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」が正式名称でした。
現在は、カーボン(炭素)だけでなく水セキュリティ、フォレストも対象となったため、略称のCDPが正式名称となりました。
CDPは世界各国の企業や団体、自治体に対して二酸化炭素排出量や気候変動への取り組みに関する質問書を出すことで情報を収集し、その情報を開示しています。
CDPが集めた情報は企業に投資する基準の一つとして重視されるようになり、世界中の投資家や企業、政策決定者の意思決定に大きな影響を与えています。
CDPは年々拡大し、日本でも2005年から活動が始まりました。
日本では、環境省が環境報告を行うすべての事業者に向けた「環境報告ガイドライン」の2012年版改訂にも影響を与えています。
CDPで作成される3つの質問書
CDPで作成される質問書は、機関投資家や大手購買企業の要請に基づき、企業の環境情報を得るために送付されます。
企業向けには
- 気候変動
- フォレスト
- 水セキュリティ
の3種類の質問書があります。
それぞれ解説します。
気候変動
現在、地球温暖化への対応が急がれている中で、すでに多くの企業が気候変動への対策をはじめています。
気候変動の質問書は、温室効果ガス排出量および削減目標についての情報開示と、気候変動に伴って企業が直面すると考えられることの理解促進を目的として構成されています。
気候変動の質問書は14項目です。
各項目の質問は次のとおりです。
[C0]基本情報
引用元:CDP|企業向け質問書&ガイダンス
[C1]ガバナンス
[C2]リスク・機会
[C3]事業戦略
[C4]目標と実績
[C5]排出量算定方法
[C6]GHG排出量
[C7]排出量詳細
[C8]エネルギー
[C9]追加指標
[C10]第三者検証
[C11]カーボンプライシング
[C12]エンゲージメント
[C13]土地利用の影響
[C14]サインオフ
フォレスト
世界の温室効果ガス排出量の約15%は森林減少が原因であり、企業における森林減少に対する取り組みは今後の株価に大きな影響を与えると言われています。
フォレストの対象商品は木材・パーム油・ゴム・大豆・牛製品となっています。
フォレストの質問書は18項目です。
各項目の質問は次のとおりです。
[F0]イントロダクション
引用元:CDP|企業向け質問書&ガイダンス
[F1]現状
[F2]手順
[F3]リスクと機会
[F4]ガバナンス
[F5]事業戦略
[F6]対応
[F7]リンゲージとトレードオフ
[F8]検証
[F9]障害と課題
[F10~17]※金属または鉱業セクターのみの質問
[F18]最終確認
水セキュリティ
世界の水供給は、人口増加などにより2030年までに56%不足すると言われています。
水不足は深刻な経営悪化につながります。
水不足を見据えた対策は、早急に行うべきです。
水不足を解決するビジネス市場は、今後さらに広がりを見せると考えられます。
水セキュリティの質問書は10項目です。
各項目の主な質問は次のとおりです。
[W1]現状
引用元:CDP|企業向け質問書&ガイダンス
[W2]事業への影響
[W3]手順
[W4]リスクと機会
[W5]施設別水のアカウンティング
[W6]ガバナンス
[W7]事業戦略
[W8]目標
[W9]検証
[W10]最終承認
CDPによる格付けとESG投資の関連
財務情報は企業に投資する際の判断基準のひとつです。
財務情報は企業に関する情報のうち、財務諸表によって提供される情報を指します。
財務情報では企業の資産の状況、収支の状況、お金の流れを把握できますが、企業の社会的責任や環境問題への対策は見えません。
企業が社会や消費者から支持され、長期的に安定して発展していくか評価するには財務情報だけでは不十分です。
そこで新たな判断材料を与えてくれるのがCDPスコアです。
CDPスコアを利用すれば、「環境」「社会」「ガバナンス(企業統治)」の3つの要素を重視した企業の選別を行うESG投資が可能になります。
CDPによる格付けともいえるCDPスコアは、株価情報にも掲載され、機関投資家の判断材料の一つとなっています。
スコアリングの基準
CDPは質問書の回答結果をもとに、スコアリングを実施します。
スコアリングでは
- 情報開示
- 認識
- マネジメント
- リーダーシップ
という4つの対応レベルに分けられ、全レベルに渡って評価が行われます。
合計点に基づいて、Aを最高評価、D-を最低評価として8段階で評価・ランク分けされるのです。無回答の場合はFとなります。
DからAに近づくにつれ、企業や自治体が環境問題への当事者責任を果たしていると言えます。
より詳しくスコアリングの基準を知りたい方はこちらの情報を参考にしてください。
CDPの質問書に回答するメリット
自社における環境問題やリスクが把握できる
質問書に回答するには、自社の状況を把握する必要があります。
企業はそのプロセスにおいて、あらためて自社のリスクと機会が把握できるため、環境問題を考慮した戦略の策定ができます。
質問書への回答は自社として「出来ていること」「出来ていないこと」の把握に役立つ構成となっています。
複数の取引先や投機家へ情報開示ができる
企業はCDP質問書に回答することで、複数の投資家や取引先企業に対する情報開示を完了させます。
情報開示は現状を把握して情報開示を行っている企業という評価につながるのです。
一方、回答しない企業は企業名とともに公開されるため、情報開示姿勢が消極的だと評価されることになります。
企業イメージの向上
質問書への回答と評価は世界中の機関投資家や企業に公開されます。
高い評価が得られれば、さらなる投資を受ける機会が生まれ、また企業イメージの向上も期待できます。
企業はCDP質問書への回答を通じて、自社の気候変動対応の向上だけでなく、コーポレートガバナンス・コードで求められている情報開示の充実を図ることが可能なのです。
CDPの質問書に回答するデメリット
回答事務費用が必要
CDPは環境非営利団体です。
非営利団体の利益は事業をより良くする目的以外で利用できないため、参加企業と投資家が回答事務費用の一部を負担することになります。
参加企業は3つの質問書のうち1つでも回答すれば、年間の回答事務費用を支払う必要があるのです。
標準的な費用は 272,500 円ですが、標準的な費用を支払う立場にない企業や、より多くの支援を希望する企業には、別の料金オプションが用意されています。
回答の準備に時間がかかる
CDP質問書に回答を行う場合、それぞれの質問項目に合わせて自社の状況を把握し、回答を作成する必要があります。
また、日本語での回答も可能ではありますが、英語での回答が推奨されています。そのためハードルが高くなっているのも事実です。
日本でも多くの大手企業が取り組んでいるCDP
日本での質問書は2006年から開始され、今日まで多くの日本企業が取り組んでいます。
2020年度の情報開示では66社がAランクを獲得し、国別のAランク企業数で世界一位となりました。
中でも花王と不二製油グループ本社の2社は気候変動、フォレスト、水セキュリティのすべての分野でAランクの評価を獲得しています。
日本では、エネルギー管理を目的とした改正省エネ法や関連制度を通じてさまざまな取組みが行われています。
環境と調和した未来に向けて、CDPの存在価値は今後も高まりそうです。
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