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カーボン・クレジットとは?民間市場拡大の背景や仕組み、取引方法もわかりやすく解説!

カーボン・クレジットとは?民間市場拡大の背景や仕組み、取引方法もわかりやすく解説!

現在、世界的に国や企業では環境保護や温暖化対策の動きを強化しています。京都議定書の発行やパリ協定の影響もあり、企業は二酸化炭素などの温暖化ガスの制限を考える必要があります。国は森林保護や省エネ技術、再生可能エネルギー導入といった事業による温暖化ガスの排出削減効果を取引できるシステムを運用し「カーボンクレジット」を活用することで取引ができます。

本記事では、温暖化対策を行う上でのカーボンクレジットについて解説していきます。

カーボンクレジットとは?

カーボンクレジットとは?

カーボンクレジットとは森林の保護や省エネ技術の向上、再生可能エネルギーの導入を促進することを目指して温暖化ガスの排出削減効果を取引できるように共通認識を形成した制度です。最近では、民間事業者間での自主的な売買が活発化しており、民間事業者の温暖化対策・地球環境の保護を目的とした社会貢献活動のために行われています。欧州連合(EU)の排出量取引制度である排出量取引制度(ETS)に代表される規制上の取引には原則として使用することができませんが、自社の排出量を相殺して自主的にアピールしたい企業が購入しています。

二酸化炭素を大量に排出している企業が、二酸化炭素削減効果を大きくしている企業からクレジットを購入しています。

発行事業者は民間の認証機関が定めるルールに基づいて事前に計画を作成したり、第三者の審査を受けています。投資家やNGO、消費者からの脱炭素に向けた要請が強まっているため、市場としては拡大傾向にあります。

カーボンクレジット市場の概況

カーボンクレジット市場は年々拡大傾向となっています。2021年1月から8月までの取引量は2、4億トンと2020年を通した数量と比べると3割増加しています。市場でも投資家や消費者からの脱炭素に向けた要請が強まっています。二酸化炭素に換算すると1トンあたりの価格では平均3ドルほどとなっており、温室効果ガス削減効果の裏付けとなる事業の種類や年代で価格は異なっています。森林系の買い手では平均4ドル台で取引されており、人気が高くなっています。

カーボンクレジット市場の概況

ただクレジットを購入するだけでは自社の温暖効果ガス排出量を純粋に減らせないため、二酸化炭素などの温室効果ガスの削減に結びつかないといった課題もあります。

実際に温室効果ガスを減らすことが難しい事業として、エネルギー業界や航空業界、製造業の工場などではカーボンクレジットの取引が盛んに行われています。パリ協定から日本でも排出削減の数値を削減する目標を立てて、目標達成に使える公的なクレジットを使って削減を目指しています。

カーボンクレジットのメカニズム

カーボンクレジットで用いられるクレジットは信頼性を維持するために4つの基準を満たしている必要があります。

・確実な排出削減や吸収が実現されていること

・排出削減や吸収量一定の精度で算定されていること

・温室効果ガス吸収の永続性が確保されていること

・クレジットの二重登録や二重使用が回避されていること

これらが基準として設定されています。

より細かい内容は2022年6月に経済産業省から出されている「カーボン・クレジット・レポートの概要」で確認できます。

国際的なクレジットメカニズム

国際的なカーボンクレジットの取引では代表される例として、クリーン開発メカニズム(CDM※)があります。このメカニズムは京都議定書によって運用されていますが、2021年にイギリスのグラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、CDMの後継となる枠組みが議論されていました。CDMの後継の取り組みとしてパリ協定による持続可能な開発に資するクレジットメカニズムに沿っていることから64メカニズムと呼ばれています。パリ協定第6条4項に沿っていることからそのように呼ばれています。

※クリーン開発メカニズムとは、先進国が開発途上国において技術・資金等の支援を行い、温室効果ガス排出量の削減または吸収量を増加する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を支援元の国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度です。

政府・自治体によるクレジットメカニズム

世界各国や地方の自治体でもクレジットメカニズムの導入が進んでいるため、日本でも2013年より「J-クレジット制度」、「二国間クレジット(JCM)」が運用されています。日本国内の動きとして、2021年12月に経済産業省が新たに「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」を立ち上げています。また、カーボン・クレジット市場の環境整備やエコシステム形成を行うために議論が進んでいます。

海外では、オーストラリア炭素クレジット(ACCUs※)やCalifornia Compliance Offset Program、Australia Emissions Reduction Fund等が運用されている実例があります。

※ACCUs:オーストラリアが政府主導で推進している農地や土地利用等のCO2吸収力を炭素クレジット

ボランタリーなクレジットメカニズム

民間事業者によるボランタリーなクレジットメカニズムは、上に記載したように増えてきています。代表的な例として、2つ挙げます。

・Verified Carbon Standard(VCS)

・God Standard

ボランタリークレジット市場に関連して2020年9月には、元イングランド銀行総裁や国連気候アクション・ファイナンス大使であるマークカーニー氏らが民間セクターにおけるクレジット市場拡大を目的としたタスクフォース「Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets」(TSVCM)を設立しています。TSVCMはカーボンニュートラル実現のために現在のクレジット市場を2030年までに15倍以上にする必要があると提言しています。ボランタリークレジット市場は今後もさらに発展が見込まれています。

クレジットを購入するには

クレジットを購入するには

クレジットを購入する方法は2種類の方法があります。

自社のクレジット口座を保有している場合

クレジットの保有者よりクレジットを購入し、購入先から自社口座へクレジットを移転することができます。その後、自社口座から無効化・取り消し口座へクレジット移転手続きをすることで、カーボンオフセットを実現することになります。

自社でクレジット口座を保有していない場合

クレジットの保有者よりクレジットを購入し、購入先から無効化・取り消し口座へ直接クレジットの移転手続きを行うことも可能となります。この場合、売買契約においてクレジットの所有権が購入者に移る契約が必要です。

また、J-クレジットなどの国内で流通されているクレジットでは、無効化申請を行う際に誰が何のために無効化を行うのかの記載をすることができます。記載した内容は無効化証明書にも転記されるため、特に無効化手続きを代行してもらう場合に対外的な説明をする上で有効となります

カーボンクレジットの課題

カーボンクレジットには批判や指摘も数多く挙げられています。例えば、国際的な環境団体であるGreenpeaceは、カーボンニュートラルを達成するツールとして森林系のクレジットが注目されている状況に対して、カーボンオフセットは本質的な解決策ではない点、森林で固定された二酸化炭素は永久的に固定されているものではないことを主張しています。

また、アメリカの環境団体であるRAINEFOREST ACTION NETWORKは銀行に対して、融資先がクレジットによってカーボンニュートラルを達成する際には、特に現地住人の人権を侵害しているクレジットを使用しないことを要求しています。

イギリスの広告業界で広告規制を管轄している組織であるAdvertising Code CommitteeはShell社が実施するカーボンニュートラル主張について、炭素クレジットでShell社が排出するCO2が補償されていることを証明や説明が明確にできていないために、誤解を招く訴求内容であることについて環境広告コード(MRC)違反であると判断しています。

このような状況から本質的な排出削減策の必要性やクレジットの品質・透明性の担保、クレジット創出側・活用側の双方で留意する課題が多いことが課題として出されています。

カーボンニュートラル実現に向けて有効なスキームを作り出して行くために、質や量ともに高いレベルを目指して行く必要があります。

カーボンクレジットまとめ

世界各国の政府は、企業を中心に地球環境の保護や温暖化対策を行うことで温室効果ガスを削減し、持続可能な環境整備を目指しています。実現させる手段の1つがカーボンクレジットを購入することです。CO2排出枠に余裕のある企業や国では枠を売ったりすることもあります。国際的なクレジットメカニズムや国・自治体によるメカニズム、ボランタリーなクレジットメカニズムに分けられています。ただ実態として効果を明確な証明に基づき説明を行うことができていないことによる批判や違反もあります。そのためカーボンニュートラル実現に向けて有効なスキームを作り出して行く必要があります。

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