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ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?企業の取り組み事例を解説

近年では企業が環境問題解決へ向けた活動を行っていますが、注目されているのがライフサイクルアセスメントと呼ばれる評価手法です。

ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)」とは、商品やサービスを調達・提供するまでの過程から、廃棄やリサイクルに至るまでの一連のライフサイクルにおける環境負荷を算出する手法のことを指します。

あまり馴染みのない言葉ですが、このライフサイクルアセスメントを理解し、活用することで、自社製品が環境に及ぼす影響を見える化することが可能です。

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、企業活動だけでなく、自治体における環境政策にも活用されています。企業においても、生活に密着することの多いLCAへの取り組みが重要になっています。

この記事ではライフサイクルアセスメント(LCA)とはなにか、また企業の取り組み事例を解説します。

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?

ライフスタイルアセスメント(LCA)とは、製品やサービスに対する資源採取から、原料や製品生産、流通、廃棄までに関するライフスタイル全体において、環境負荷に対して定量的に評価する手法のことをいいます。

LCAはISO(国際標準化機構)において国際規格に定められているマネジメントにのっとっています。日本でもCSR報告書などにおいてLCAが導入されるケースが増えています。

例えば、自動車の燃費は「走行距離×ガソリン量」で計算されますが、この数値は車種によって異なるため、一概に「ガソリンをたくさん使う=環境負荷が大きい」という図式にはなりません。また、燃料の価格は変動することがあり、同じガソリンを使う場合でもハイブリッド車」と従来のエンジン搭載車では、CO2排出量に大きな差が出てしまうこともあります。このように、製品やサービスのライフサイクル全体を通した際に、どのような形で環境負荷が発生しているのかを評価することがLCAの目的です。

LCAは自然環境や普段の生活を守ることに密着しており、企業にとっても社会貢献として大きな課題となっています。

ライフサイクルアセスメントの重要性

ライフサイクルアセスメントの重要性

近年、世界中において環境問題への意識が高まっています。そこで、環境負担の少ない製品やサービスを提供することが、社会への貢献につながり企業の評価にも大きくかかわるようになりました。平成13年には循環型社会形成推進基本法が施行され、製品を生産した人が製造段階から製品を使ったあとまで環境負荷の低減に対して一定の責任を持つことが重要であるといった考え方が一般的になっています。この考え方を拡大生産者責任(EPR :Extended Producer Responsibility)といいます。

こうした背景から、「モノ」ではなく「サービス」を提供する企業が注目されてきています。例えば、宅急便は荷物を持って配送するだけでなく、トラックを走らせる燃料が必要になったり配達員の人件費も必要になったりします。一方、大手運送会社ではドライバー1人当たりの年間走行距離を抑えたり、エコドライブの実施により燃費の向上を図りながら、CO2排出量の削減に取り組んでいます。つまり、消費者が便利で快適な生活を送るためには、それを支えるために働いている人たちの努力があり、それがまた次の世代の経済活動に繋がるのです。

このように、人々の生活と経済活動は密接に関係しており、どちらかが欠けても成り立ちません。そして、両者の間には相互依存の関係性が生まれます。つまり、環境に配慮した商品やサービスを提供している企業の製品・サービスは高く評価されるとともに、それらを供給する企業自身も社会的評価を高めていくことができるのです。

企業イメージを高めることによって、新たな顧客の獲得にも役立つでしょう。さらに、企業活動を通じて社会に貢献することもできます。環境に配慮した事業活動を行うことにより、CO2削減量に応じて国から補助金・助成金を受けることも可能です。これは、経営戦略として非常に大きな意味を持ちます。

ライフサイクルアセスメントの現状と課題

ライフサイクルアセスメントの現状と課題

日本でも、2050年までに温室効果ガスの排出をなくす脱炭素化にむけた目標をかかげています。そのためには、温室効果ガスの量を二酸化炭素に換算して表示をするライフサイクルアセスメントを活用することが推奨されています。

そこでライフサイクルアセスメントの現状や課題を解説していきます。

ライフサイクルアセスメントの現状

日本を含め世界では2050年までに脱炭素目標を掲げています。この目標を達成するためには、温室効果ガスの排出を実質なくす必要があります。

温室効果ガスの排出をなくすためには、現状どのくらいの温室効果ガスを排出しているかを把握する必要があります。そこで重要になるのがライフサイクルアセスメントです。しかし、現状では課題を抱えている企業は少なくありません。

例えば、農業分野においては、生産効率向上のために化学肥料や農薬をたくさん使用することに伴い、CO2排出量も増加しています。また、森林伐採により発生する間伐材なども有効利用されず放置されるケースもあり、プラスチックゴミなどの廃棄物処理の問題もあります。

こういった問題に対処するためには、温室効果ガスの削減だけでなく、環境負荷の少ない持続可能な社会システムの構築が必要になります。

しかし、専門的な知識が必要なため、企業内に専門家がいないと何から始めたらいいのか整理するのが難しいです。

ライフサイクルアセスメントの課題

ライフサイクルアセスメントは一つの企業だけが取り組むのではなく、業界全体で取り組みを進めていかなければいけません。そのため、導入が進んでいる業界と進んでいない業界の差が出ているのが現状です。

地球環境問題に取り組むためには、多額の投資が必要なため、どうしても「大きな会社でなければできない」「中小企業では無理だ」といったイメージが付き纏うものです。それに加えて、環境に関する法令が多く管理体制の整備にも膨大な時間を要するなど、全面的に取り組むにはハードルが高いのが現状です。

しかし、実際にはライフサイクルアセスメントに取り組むにはさまざまな方法があり、中小企業であっても取り組みやすい方法があります。

例えば、省エネは中小企業でも取り組めるはずなのに、大企業ばかりに目が行ってしまって、省エネ対策がなされていないということがよくあります。しかし、環境に配慮した製品を作るために、原材料から見直してリサイクルや廃棄処分などの資源削減を行うことができます。

ライフサイクルアセスメントのメリット

ライフサイクルアセスメントのメリット

ライフサイクルアセスメントには次のようなメリットが挙げられます。

  • 企業のブランド力が上がる
  • コスト削減
  • 経営に好影響を与える

企業のブランド力が上がる

環境対策に積極的に取り組むことで、社会にとっても環境にとっても良い活動をしている企業として、取引先や消費者からの好感度が上がるケースがあります。つまり、企業のブランド力が高まるきっかけになり得えます。地球温暖化防止対策の一環として、全社を挙げて取り組むことにより、社会的な評価も高まります。

「CSR(企業の社会的責任)」とは、「企業活動によって生じる利益を社会に還元する」という考え方です。

この考え方に基づき、積極的に環境問題への取り組みを行う企業のことをCSR企業と言います。

ライフサイクルアセスメントは地球の自然環境保護に繋がることから、立派なCSRだといえるでしょう。また、CSRにはさまざまな方法がありますが、その中でも重要なのが、環境に配慮した製品の開発・製造・販売を行うことです。

例えば、自動車業界ではエコカー減税と呼ばれる制度により、低燃費で環境負荷の低い車を購入すると税制面で優遇されています。これによってメーカー各社は、より一層高い水準での商品開発に取り組めるようになりました。その結果、地球環境保全に貢献することになったのです。このように、CSRは地球環境の保護につながるだけでなく、企業イメージの向上にも役立ちます。

コスト削減につながる

ライフサイクルアセスメントの一貫としてエコドライブの推進や廃棄物の削減、節電・節水などに取り組むことで、コスト削減が期待できます

例えば、二酸化炭素排出量を減らすために、これまでプラスチックのみを使っていたのを、紙とプラスチックの服装素材に変更したとします。さらに、プラスチック容器を薄肉化することによってコストが上がっているプラスチックを使う量を減らし、結果的にコスト削減に繋がります。

経営に好影響を与える

LCAの導入により、企業の環境経営がスムーズになります。例えば、製造部門であれば生産工程の改善や新技術の開発に注力できるようになりますし、販売部門なら商品企画・開発にも役立ちます。また廃棄物の削減とリサイクル率の向上で企業イメージを向上させることも可能です。

さらに将来的な事業戦略を見据えた投資の判断材料にもなり得ます。地球温暖化対策のために投資した分だけ回収できれば、その利益を使って他の分野へさらなる投資が可能であることが要因です。

LCAを導入する最大のメリットは、環境問題に対する意識向上による社会全体の波及効果が期待できることです。これまでは一部の業種だけが取り組んでいた環境対策を、全業界・全企業が取り組むようになるため、環境保護の機運が高まります。

企業のLCA事例

企業のLCA事例

LCAは企業では次のように導入されています。

  • キヤノン株式会社の事例
  • マツダ株式会社の事例
  • NISSANの事例

キヤノン株式会社の事例

キヤノンではLCAを活用することで、環境配慮設計を進めています。国際規格に準拠することで、世界にも通用する取り組みをしています。

キヤノンは、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が運営する「エコリーフ環境ラベルプログラム」を利用し、環境ラベル登録をおこなっています。

エコリーフ環境ラベルプログラムは、製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルまでの製品ライフサイクル全体における環境に及ぼす影響を定量的に「見える化」することを目的としています。算出項目は、温暖化ガス排出量に加え、エネルギー資源消費や鉱物資源消費、酸性化に対して、ライフサイクルの各ステージが与える影響を評価しています。

引用元:キヤノン|Canon’s LCA

マツダ株式会社の事例

マツダでは車の製造やリサイクル、廃棄などにおける環境影響をLCAにおいて定量的に評価しています。

マツダは、LCAをクルマのライフサイクルにおける環境負荷低減の機会を特定する手段として2009年より採用し、各段階における環境負荷低減に向けた活動に積極的に取り組んでいます。 また、環境性能に関わる新技術を搭載したクルマにおいては、LCAの国際規格(ISO14040/ISO14044)に準拠した手法に基づき、客観性と信頼性のある評価を進めています。

マツダでは、各地域における自動車のパワーソースの適性やエネルギー事情、電力の発電構成などを踏まえた適材適所の対応が可能となるマルチソリューションをご提供できるよう、開発を進めています。

引用元:マツダ|LCA(ライフサイクルアセスメント)

NISSANの事例

NISSANでは環境負担の低減を目的としてLCAを導入しています。NISSANでは車だけでなく製造に必要な原料採掘のプロセスにおいて製造から廃棄まで全ての段階で環境負担を定量的に把握することで評価をしています。

「ニッサン・グリーンプログラム 2022(NGP2022)」の期間中に環境活動における現状を把握し、将来の環境負荷削減に向けた道筋を検討するなど、環境への取り組みを確実に実行するためにLCAによる評価を活用しています。新規導入技術についてもLCAを実施し、より環境に配慮したクルマの開発に取り組んでいます。

日産は、2010年に社団法人産業環境管理協会による第三者認証を、2013年12月にはLCAの算出手順についてドイツのテュフラインランドによる第三者認証を受けました。この認証は、ISO14040 / 14044の規格に基づいており、商品ライフサイクルにおける日産の環境負荷の算出手順を保証するものです。

引用元:NISSAN|ライフサイクルアセスメント (LCA)

企業に対するライフサイクルアセスメント支援の取り組み

企業に対するライフサイクルアセスメント支援の取り組み

企業に対するライフサイクルアセスメント支援の取り組みに関して説明していきます。

企業に対してのLCAコンサルティング

LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品の製造から廃棄まで全てのプロセスを通じて環境影響を定量評価することで、環境配慮設計に治して信頼性を与えます。世界では2050年までに温室効果ガスの排出をなくす脱炭素目標を掲げており、日本も参加メンバーです。

そのためには、企業において原料の調達から制作、販売、運搬、廃棄など全てのプロセスにおいて温室効果額の排気量を把握する必要があります。しかし、実際にはどのように進めればいいかわからない企業も少なくはないでしょう。そこで企業がLCAに取り組むために全面的にサポートするのがLCAコンサルティングサービスです。

例えば、新商品を作るにあたって、環境負荷がどれくらいあるのかを知りたい場合や、製造や流通の過程で発生するCO2排出量を算出したい場合でもプロがサポートをしてくれます。また、工場の省エネ化を検討している場合もおすすめです。工場のエネルギー消費量を削減するためには、エネルギー効率の高い設備を導入するだけでなく、稼働中の設備を適切に運用することも重要になります。このようにLCAを導入するにあたり、さまざまなアドバイスをするのがLCAコンサルティングです。

ソフトウェアの導入

近年ではLCAを実施するためにさまざまなサポートをするソフトウェアも登場しています。それぞれの企業において資源の調達から、製品の制作、販売、廃棄に至るまで全てのプロセスデータを管理し、LCAケーススタディーを実施させるためにさまざまなサポートをしています。

サプライチェーンを通じた取り組みを推進したり、取引先などにLCAデータを提供できるようにしたりするなどLCAに関する管理をすべてソフトウェアで進めることが可能です。

e-dashとは

e-dashとはCO2排出量の可視化から削減までを、総合的にサポートしているサービスプラットフォームです。例えば、電気代やガス代の請求書をスキャンすることで、毎月の使用料やコストをデータ化し、全ての拠点においてのデータを可視化することができます。さらに、Scope1からScope3までそれぞれのフェーズにおいての排出量を把握したり、原単位の管理をしたりCO2排出量の目標設定に向けて、進捗状況の管理や対策まで実現することが可能です。

必要なエネルギーの調達から環境の取り組みまでを提案します。そのため、どのようにLCAに取り組んでいいのか、またすでに取り組んでいる施策に効果がでているのかわからないといった企業など、LCAに取り組んでいる、また取り組もうとしている企業のサポートをします。

e-dashの導入事例はこちら

ライフサイクルアセスメント(LCA)はどのように使うのか

ライフサイクルアセスメント(LCA)はどのように使うのか

ライフサイクルアセスメント(LCA)を仕事で使う場合は、業務において製品などの制作から販売におけるまでどれくらいの温室効果ガスを排出しているのかを計算するのが一般的な方法です。この計算をしていく上で排出原単位とよばれるそれぞれの業務においての二酸化炭素排出量を表す排出原単位を明確にすることが重要です。

環境省のページに排出原単位について次のように記載されています。

排出原単位データベース

この他にもさまざまなデータベースがあるため、それぞれの企業の特徴にあったものを活用することができます。

ライフサイクルアセスメント(LCA)まとめ

今回は、環境問題の対策の一環として実施できる製品開発のライフサイクルにおける環境負荷を定量的に算定するための手法であるライフサイクルアセスメントの概要や、企業の取り組み事例についてご紹介しました。

ライフサイクルアセスメントを活用することで、自社製品の開発・改良を環境問題への対策につなげることが可能です。

「自社の製品やサービスを見直す活動の一環で環境問題へ貢献したいと考えている」「今後環境問題への取り組みを実践しようと検討しているが何から始めるべきかわかならい」、そのような場合には、ぜひライフサイクルアセスメントを取り入れてみてはいかがでしょうか。