気候変動問題について、新聞、テレビ、インターネットなどで連日報道されています。気候変動の原因は何であり、どのような影響があるのでしょうか。
ここでは、気候変動の原因とその影響を解説し、対策についてご紹介します。世界で行われている気候変動への緩和策と適応策をふまえ、個人でもできることに取り組みましょう。
目次
気候変動とは?
気候変動とは、地球の気象の長期的な変化のことです。地球上で起こる大気現象は根源的には太陽エネルギーを源としていますが、このエネルギーの流れによる地球の全システムを「気候系」、大気の平均状態を「気候」と呼びます。そして、この気候はさまざまな時間単位で変動します。
気候変動に似た言葉に「異常気象」があります。異常気象が短いスパンでの変動を指すのに対し、気候変動はもっと長いスパンでの変動を指します。
気候変動による観測事実として、平均気温の上昇、大雨の増加、強い台風の発生割合の増加、北極の海氷の減少、海面水位の上昇などがあります。
気候変動による影響
気候変動は生態系に大きな影響を与えるとともに、人間の生活にも多大な影響を及ぼしています。
まずは挙げられるのは、気温の上昇です。日本では、夜間の最低気温が25℃以上の熱帯夜、日中30℃以上の真夏日、35℃以上の猛暑日がともに増加しています。毎年のように最高気温が更新されているスペインでは、今年の夏南部のセビリアで気温47.5℃が記録されました。
気候変動により、降水量も変化しており、中緯度と亜熱帯の多くの乾燥地域などでは、降水量の減少によって干ばつの増加が懸念されています。一方、高緯度の国では、大雨の増加によって大きな被害が増えると予測されています。
農業への影響も深刻で、主要穀物であるとうもろこし、小麦、大豆の世界平均収量が低下していることが報告されています。日本では、果実の着色不良や日焼けの発生など品質への影響が懸念点です。
気候変動が起こる原因
気候変動の原因には、大別して「自然的要因」と「人為的要因」があります。
自然的要因としては、海洋の変動、火山の噴火、太陽活動の変化など。例えば、火山が噴火すると二酸化硫黄や火山灰などの微粒子(エアロゾル)が空気中に放出され、地上に届く太陽光が弱まり、平均気温が下がる現象が起きます。
人為的要因としては、人間の経済活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量の増加や、森林伐採によるCO2吸収効果減少などが挙げられます。
とくに、産業革命以降の化石燃料の使用によるCO2の排出量増加は著しく、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書では、2019年の大気中CO2濃度は410ppmにまで達しており、産業革命以前より約47%高くなっていることが報告されています。
CO2濃度の上昇とともに世界の平均気温は上がっており、産業革命以前から約1.09℃高くなっています。
気候変動の対策には2種類ある
気候変動対策には、気候変動そのものを食い止める「緩和策」と、気候変動による影響を軽減する「適応策」の2つがあります。
【緩和】のための対策
気候変動の緩和策は、再生可能エネルギーの拡大や省エネルギーの普及などによる温室効果ガス排出量の削減と、森林の増加によるCO2吸収源の確保やCO2回収・貯蔵技術の開発などがあります。
長らく経済社会を支えてきた火力発電は、大量のCO2を排出し、地球温暖化と気候変動を招くことが懸念されており、これを再生可能エネルギーなどのCO2を排出しないエネルギー源へと代替していくことが求められている対策です。
また、どうしても排出してしまうCO2を大気中から吸収・固定化するものとして、森林の保全・拡大やCO2を回収・貯蔵するCCS技術の開発が取り組まれています。
【適応】としての対策
温室効果ガス排出削減努力を最大限に行っても、過去に排出した温室効果ガスの大気中への蓄積があるので、どうしてもある程度の気候変動は避けられません。
その影響に対してとり得る対策として、気候変動のもとでの悪影響を最小限に抑える適応策が求められることになります。
持続可能な開発目標(SDGs)では、そのNo.13で「気候変動に具体的な対策を」という目標を設定していますが、ターゲット13-1で「すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及および適応の能力を強化する」としています。
日本では2018年に「気候変動適応法」という法律が制定され、国・地域・事業者・個人それぞれが適応策を担うことが謳われています。
具体的事例としては、以下のような取組事例があります。
・台風や集中豪雨による高潮や洪水に耐えうる堤防の開発・施工
・温暖化にともなう海水温上昇に対応した人工魚礁の形成
・高温障害から農作物を守る不織布の普及
・自治体と連携した無料給水スタンドの設置
気候変動に対する世界の取り組み
気候変動への対策は、世界的に最優先の課題となりつつあります。
2015年にフランス・パリにおいて開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(通称COP21)で、新たな枠組みとなる「パリ協定」が採択されました。
パリ協定では、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることが目指されています。そのため、できるだけ早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半にはカーボンニュートラルを実現することが掲げられました。
パリ協定が画期的なところは、気候変動枠組条約に加盟する196ヶ国すべての国が参加していること、途上国を含むすべての国に温室効果ガス排出削減の努力を求める枠組みであることです。先進国にのみ温室効果ガス排出削減が課せられていた「京都議定書」から大きく前進しています。
課題も多い再生可能エネルギーですが、着実に普及が進んでいます。1985年には世界で再生可能エネルギーの発電量は2,059TWh(テラワット時)だったものが、2021年には7,931TWhまで拡大しました(※)。
どのような対策が行われているのか
パリ協定の成立以降も、世界各国は気候変動対策の具体的な取り組みを進めています。
2021年イギリスで開催された第26回締約国会議(COP26)では、190の国・企業が「脱石炭」を宣言しました。これらの国と企業は、国内外での新たな石炭火力発電への投資を段階的にすべて終了することを約束しています。
また、同会議では日本を含む世界100ヶ国超が、2030年までに森林破壊を終わらせるとの共同声明を発表しました。この共同声明には、ブラジルやインドネシア、コンゴ民主共和国など世界の森林の85%を占める国々の首脳が支持しています。
日本では、2021年に「地域脱炭素ロードマップ〜地方からはじまる、次の時代への移行戦略〜」が策定されました。ロードマップでは、再生可能エネルギーの導入拡大、省エネルギーの促進、電気自動車・燃料電池車の利用、カーボンニュートラル燃料の活用などの推進が計画されています。地域の活性化と脱炭素をともに実現することがロードマップの目標です。
今、私たちにできることは?
気候変動対策は、国や企業だけが取り組めば良いものではありません。私たち一人ひとりにできることは何でしょうか。
〈緩和策〉
家庭で節電・省エネを心がける
家庭で電化製品を使用する時に、火力発電所で発電した電気を使います。暖房のために石油ファンヒーターを使えば、灯油が燃やされます。そのため、省エネ型の最新家電への買い替えや、家の断熱性能の向上を図ることが有効です。
徒歩や自転車で移動する、または公共交通機関を利用する
移動のために自家用車を使うと、ガソリンや軽油が燃やされ、CO2が排出されます。なるべく徒歩や自転車で移動するようにし、長距離の場合は公共交通機関を利用しましょう。
家庭のエネルギー源を再生可能エネルギーに切り替える
再生可能エネルギー由来の電気も販売されていますので、それに切り替えることができます。戸建て住宅にお住まいならば、屋根に太陽光パネルを搭載することも可能です。
〈適応策〉
デング熱への対策を行う
気候変動によって、日本でもデング熱が発生してきました。デング熱を媒介する「ヒトスジシマカ」を発生させない、刺されないことが重要です。長袖・長ズボンを着用したり、虫よけスプレーを使用したりして、蚊に刺されないよう対策しましょう。
熱中症から自分自身を守る
熱中症警戒アラートや暑さ指数のメール配信サービスがあるので、それを利用して状況を把握し、こまめな水分補給に努めましょう。
災害時の避難場所の所在地と行き方を確認する
地域の避難場所の所在地を把握して、そこまでの行き方を確認しておきましょう。また、防災気象情報を受け取る態勢を整えて、大雨・台風などの災害発生時には早めの行動をとることが大切です。
気候変動への対策は、個人の意識が大切
気候変動は世界大のスケールで起きている事象なので、どこか他人事のように思ってしまいがちです。しかしながら、気候変動の主たる原因は、ほかならぬ私たちが出した二酸化炭素にあります。そして、気候変動が引き起こす災いも私たちに降りかかってきます。
気候変動は身近なことなのだと意識することから、対策を始めることが大切なのです。
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