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脱炭素経営

CDP水セキュリティとは?メリットや企業の取り組み事例まで徹底解説

CDP水セキュリティとは、水資源のリスク管理や持続可能な利用を促進する国際的な枠組みです。本記事では、CDP水セキュリティの概要や企業にとってのメリット、具体的な取り組み事例を詳しく解説します。水リスク対策の重要性と持続可能な経営への影響についてしっかりと理解しましょう。

CDP水セキュリティとは?

CDP水セキュリティとは、企業が水資源の使用状況や関連リスクの情報開示と評価を行う国際的な枠組みです。企業はこの枠組みを活用することで、水管理の課題を明確化し、持続可能な経営戦略を策定できます。

CDPの評価結果は企業の透明性を高め、環境への責任ある取り組みを示す重要な指標です。投資家やステークホルダーからの信頼を獲得し、ESG経営を推進するうえでも、CDP水セキュリティの活用は重要な役割を果たします。

【CDPについて】
CDPはどんな団体?
CDPは、企業や政府に対し環境への影響を開示し、対策を講じるように促す国際的な非営利団体で、本部はイギリス・ロンドンにあります。5つのテーマで活動していますが、気候変動、水セキュリティ、フォレストなどが有名です。

■CDPの目的は?
CDPの目的は、企業や自治体が環境に与える影響を把握し、適切な対策を講じることです。これにより、持続可能な経済の発展を促し、長期的な成長と環境保全の両立を支援します。

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水セキュリティとは?

水セキュリティとは?

水セキュリティとは、水資源の持続可能な管理と利用を確保するための概念のことです。環境問題や気候変動対策として重要視されており、企業の経済活動にも深く関わります。とくに、水資源に関するリスクは「水リスク」と呼ばれ、事業の安定性を左右する要因です。企業は水セキュリティを強化することで、水リスクを予防し、持続可能な成長を実現できます。

水リスクとは?

水リスクとは、水不足、洪水、水質の悪化など、企業が直面する水に関連するリスク全般を指す言葉です。これらは大きく下記の3つに分類され、企業の生産活動やサプライチェーンに直接的な影響を及ぼします。水リスクを理解し適切な管理を行うことで、企業は環境負荷を軽減しつつ、持続可能なビジネス運営が可能です。

水リスク

なぜ今CDP水セキュリティが必要なのか

なぜ今CDP水セキュリティが必要なのか
水資源問題の観点から
事業活動の観点から
ESG投資増加の観点から 

CDP水セキュリティは、近年急速に企業経営において重要性が増しています。その背景となる要因は主に下記の3つです。

水資源問題の観点から

世界的な気候変動により水資源の枯渇や汚染が深刻化し、企業や社会に大きな影響を及ぼしています。水は人々の生活だけでなく、野生生物の生存にも不可欠です。安定した水供給の確保は経営課題の一つであり、今後はさらに水管理の適切な管理が求められるでしょう。

水資源問題の原因

出典:国土交通省「水資源」をもとに作成

事業活動の観点から

気候変動に伴う豪雨や洪水は、事業設備の損壊や物流の混乱を引き起こし、経済活動に大きな影響を与えます。また、水資源の確保や供給が、生産や収益に直結する企業も多く、水管理のリスクを軽減する対策が重要です。持続可能な事業運営のために、水セキュリティ対策を強化しましょう。

ESG投資増加の観点から

経済産業省「令和2年度エネルギーに関する年次報告」によると、自然災害経済損失額のうち77%が気候変動による経済損失額と推計されており、企業の財務リスクとして無視できません。こうしたリスクの顕在化により、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する投資が増加しています。水リスク管理を強化することは、ESG評価の向上につながり、持続可能な成長を支える重要な要素の一つです。

■ESG投資とは?
ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を考慮して行う投資のことです。企業の環境保護への取り組み、社会貢献、適切な企業統治などの非財務情報を評価し、持続可能な成長とリスク低減を図ることで、長期的なリターンの向上を目指します。

企業がCDP水セキュリティに回答するメリット

環境対策に取り組める
企業のイメージアップにつながる
持続的な経済活動を行える

企業側にもメリットがないと、CDP水セキュリティへの回答は進みません。ここでは3つのメリットについてご紹介します。

環境対策に取り組める

企業がCDP水セキュリティに取り組むことで、水資源の適切な管理を行い、環境負荷の軽減や生態系の保護に貢献できます。さらに、効果的な環境対策を講じることで、持続可能な社会の実現に向けたリーダーシップを発揮できる点も大きなメリットです。環境配慮型の取り組みは、企業の社会的価値を高め、持続可能な成長への道を開きます。

企業のイメージアップにつながる

昨今、消費者や投資家が持続可能な企業活動を重視する傾向が高まっています。そのため、CDP水セキュリティへの対応を通じて水資源管理の透明性を示すことで、ステークホルダーからの評価が向上し、ESG投資を受けやすくなります。また、環境配慮を実践する企業は競争力を維持し、意識の高い企業としてブランド価値の向上も可能です。

持続的な経済活動を行える

CDP水セキュリティへの取り組みは、企業が持続的な経済活動を行うための基盤づくりに役立ちます。水資源を効率的に管理することで、コスト削減やリスク低減を実現できるほか、環境に配慮した経営により、法規制の変化への柔軟な対応が可能です。これにより、企業は長期的な成長を確保し、安定した経営を維持できます。

企業が水リスクを評価する際に使用する無料ツール3選

企業が水リスクを評価する際に使用する無料ツール3選
Aqueduct – Water Risk Atlas
Water Risk Filter
WATER WATCH

水リスクを評価するためには、システムの導入が必須です。ここではおすすめのツールを3つご紹介します。

Aqueduct – Water Risk Atlas

Aqueduct – Water Risk Atlas」はWRI(世界資源研究所)が提供する無料ツールで、水ストレスや洪水リスク、干ばつリスクをマップ化できます。企業のサプライチェーンや拠点ごとの水リスクを評価し対策の検討、データのカスタマイズも可能です。

Water Risk Filter

Water Risk Filter」WWF(世界自然保護基金)が提供する無料ツールで、地域ごとの物理的・規制的・評判リスクを評価できます。企業はサプライチェーンや投資評価の指標として活用し、水リスクを総合的に把握しながら適切な経営戦略を立てることが可能です。

WATER WATCH

WATER WATCH」はCDPが提供する無料ツールで、国連などの出版物や学術出版物など信頼性の高い情報に基づいて作られています。サプライチェーンや製品使用時の影響も加味した影響度が測定される点については、利用の際に注意が必要です。

2023年CDP水セキュリティレポートからわかること

1.企業の水リスクの管理状況
・日本企業1,207社に回答要請があり、そのうち513社が回答
・Aランクを獲得したのは36社で世界最多

2.企業の水リスクに対する関心
・水リスクを事業継続の重要課題と認識し、水使用の最適化や流域全体での管理強化を進めている
・開示を通じて投資家や顧客への透明性向上を図る動きも強まっている 

1.企業の水リスクの管理状況

2023年のCDP水セキュリティ質問書では日本の対象の1,207社のうち、513社が回答しました。とくに、日本企業の水管理への取り組みは評価が高く、Aランクを獲得した企業は36社で世界最多です。これは、日本企業が水資源管理の重要性を認識し、積極的に対策を講じていることを示しています。

2.企業の水リスクに対する関心

企業は水リスクを事業継続の重要課題と捉え、水使用の最適化や流域全体での管理強化を推進しています。また、CDPへの開示を通じて、投資家や顧客への透明性向上を図る動きにも積極的です。水リスクへの関心の高まりは、企業が持続可能な経営を実現するために欠かせない要素であるとして認識されていることがうかがえます。

日本の水セキュリティ取り組み事例

日本の企業は持続可能な水管理の重要性を認識し、CDP水セキュリティへの取り組みを強化しています。このような取り組みは企業の環境負荷を軽減し、コスト削減にも寄与するでしょう。

出典:CDP「CDP水セキュリティレポート2021
CDP「CDP水セキュリティレポート2022
CDP「CDP水セキュリティレポート2023

花王株式会社

【取り組み例】
・サプライヤーの水管理レベルの向上を促進
・生産拠点の水リスク評価
・節水型製品の提供
・節水方法の啓発など

花王株式会社は、水資源の保全に向けてサプライチェーン全体で取り組んでいます。原材料調達では、CDPサプライチェーンプログラムに参加し、水リスクの高いサプライヤーの水管理向上を支援。独自の評価法で管理状況を分析しています。生産工程では、工場や物流拠点の水リスクを評価し、今後は対象を拡大し予防策を強化予定。製品使用では、すすぎ水を削減する洗剤の開発を進め、消費者への節水啓発活動にも力を入れています。
水セキュリティ分野におけるAリスト評価を8年連続で獲得している企業です。

出典:花王株式会社「サステナビリティレポート 水保全

不二製油グループ本社株式会社

【取り組み例】
・環境監査を通じた社内啓発の実施
・運河水の利用や排水リサイクル率の向上による取水量の削減
・水量メーター増設による取水量管理の強化
・パーム油小規模農家への環境再生型農業の支援を通じた化学肥料の使用低減など

不二製油グループは、水使用量単位での削減目標を掲げ、グループ全体で水使用量の削減に取り組んでいます。基準年の2016年度に対し2023年度の水使用量は33%削減、目標である2030年度の20%削減に対しての達成度は166%です。取り組みとしては、日本の生産ラインにおける水使用量最適化の見直しや海外での水再生システムの改善、生産設備の洗浄回数の見直しなどが挙げられます。また、サプライヤー以外との積極的なエンゲージメントを行い、河川汚染防止へも貢献。これらの取り組みにより2020年から2022年、2024年に水セキュリティ分野でA評価を獲得しています。

出典:不二製油グループ本社株式会社「水使用量の削減

塩野義製薬

【取り組み例】
・中長期目標の設定
・各事業所での水使用量の可視化
・排水中の抗菌薬の環境排出管理
・Aqueduct(※)を用いた水リスク評価、影響の低減・未然防止策の検討
(※)WRIが開発した水リスクを評価するツール

塩野義製薬では、水資源の保全を重要な環境課題と位置づけ、適切な評価と管理を推進しています。2035年までに「水資源還元率85%以上」という目標を掲げ、現場の取り組みが成果につながりやすい指標を設定することで、水使用量の削減を強化。各事業所で従業員への節水意識を高める活動を行うとともに、感染症薬を取り扱う企業の責任として排水中における薬物濃度の確認を徹底しています。また、サプライヤーにおける排水対策や状況を直接確認し、継続的な関与を通じた改善にも取り組み、2022年から2年連続A評価を獲得しました。

出典:塩野義製薬「サステイナビリティ 水

評価ツールについて詳しくはこちら

CDP水セキュリティへの回答方法

CDP水セキュリティへの回答方法

水セキュリティ質問書では、水管理に関わる事項について回答が求められます。ここでは、その回答方法についてご紹介します。

【調査対象企業】
製造過程などに水を多く使用する企業、水資源に影響を与える事業を行う企業
■例:食品メーカー・電力会社・化学産業・アパレル業など

CDP水セキュリティへの回答方法

1.CDPからの要請確認
・調査対象になった企業には、CDPの署名機関(投資家や取引先)から質問書が送付される

2.CDPのポータルサイトへの登録
・CDPのオンラインプラットフォームへアクセスし、企業アカウントを作成する
・企業の基本情報を入力し、「水セキュリティ質問書」の回答対象であることを確認する
・回答事務手数料を支払う

3.質問書の内容確認、回答準備
・質問書の内容を確認する
・回答に必要なデータを社内で集める

4.回答の作成および社内レビュー
・企業の水リスク対策について具体的に記述する
・経営陣や関係部門とレビューを行い、調整をする

5.CDPポータルサイトより回答提出
・提出後、CDPが審査を行い、スコアリングを実施

6.スコアを確認、改善につなげる
・CDPが発表するスコアを確認する
・ 企業の水リスク対応がどのレベルにあるかを分析し、次年度の改善策を立案する

CDP水セキュリティに関するよくある質問

最後に、水セキュリティに関するよくある質問をQ&Aの形式で解説します。水セキュリティに関する疑問や不安を解消しておきましょう。

Q.ウォータープライシングとは?

A.水資源の使用に対する価格設定のことで、水の持続可能な利用と適正な供給・需要のバランスを維持する手段です。

ウォータープライシングとは、水資源の使用に対する価格設定のことです。適切な価格を設定することで、水の無駄遣いや過剰な使用を抑制し、持続可能な水利用を促進します。また、供給と需要のバランスを保つ重要な手段として、水不足のリスク管理や企業の水資源戦略にも有効です。

Q.CDPから回答要請を受けていない企業は回答できない?

A.公式サイトを通じて自主的な回答が可能です。

CDPからの要請がなくても、公式サイトを通じて自主的に回答ができます。環境への取り組みを積極的に開示することは、企業にとって社会的評価の向上や、ブランド価値の強化、新たなビジネスチャンスの創出につながります。また、環境データの開示は投資家や金融機関からの信頼獲得にもつながるでしょう。

Q.CDP水セキュリティに回答することにデメリットはあるの?

A.回答には費用や手間が発生することがデメリットとして挙げられます。

CDP水セキュリティへの回答のデメリットは、費用や手間がかかる点です。一方で、環境意識の高まりを踏まえると、今後ますます重要な取り組みの一つといえます。
一時的な負担は大きいですが、持続可能な成長を目指す企業にとっては、長期的に見れば大きなメリットが見込めます。将来的に調査対象が拡大する可能性もあるため、早い段階で水資源管理の戦略を整えておくとよいでしょう。

CDP水セキュリティへの取り組みで、持続可能な企業を目指そう

水資源の持続可能な管理は、企業にとって避けて通れない課題です。CDP水セキュリティへの対応を進めることで、環境負荷の低減や企業価値の向上、リスク管理の強化を期待できます。今後、規制強化や投資家の関心の高まりが予想される中で、積極的な取り組みが競争力を高める鍵となることは間違いありません。水資源を守る行動を、企業の成長戦略の一環として考えることが重要です。

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以下の資料では、CDPについてわかりやすく解説しています。ぜひご参考にしてください。

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