近年、世界的に地球温暖化などの気候変動が問題視されています。そんな地球温暖化防止には、CO2などの温室効果ガスの削減が効果的です。
また、温室効果ガスを削減し将来的に脱炭素化を達成するために、国や企業は様々な取り組みを行っています。今回はその中でもガス業界に着目し、東京ガスやガス業界全体での脱炭素への取り組みや、カーボンニュートラルLNGについて解説します。
目次
東京ガスが行う脱炭素への取り組みを分かりやすく解説!
脱炭素化の実現へ向けて、東京ガスは様々な取り組みを行っています。
東京ガスが行っている以下の3つの取り組みについて分かりやすく解説します。
・Compass2030
・メタネーションの実証実験
・カーボンニュートラルLNG
Compass2030を公表
東京ガスは、次世代のエネルギーシステムをリードしながら価値を創出し続けることを目指しており、その一環として2019年11月に「Compass2030」を公表しました。
Compass2030では「3つの挑戦」として「CO2ネット・ゼロをリード」、「価値共創のエコシステム構築」、「LNGバリューチェーンの変革」を目標としています。
脱炭素社会への移行だけでなく、様々な課題を解決するソリューションの提供や多様な価値の創出を目指しているのです。
また、3つの挑戦を実現する具体的な5つのアクションとして「再生可能エネルギーと天然ガスの調和」、「脱炭素化技術のイノベーション」、「暮らしやビジネスの課題解決」、「天然ガスを活用したレジリエンス機能の強化」、「海外への展開」に取り組んでいます。
メタネーションの実証実験を開始
2022年4月、東京ガスは脱炭素社会の実現に向けてメタネーション実証実験を開始しました。
メタネーションとは、水素と二酸化炭素を原料に合成メタンを作る技術です。メタンは都市ガスの主成分として使われています。合成メタンの燃焼によって排出されたCO2とメタネーションのために回収されたCO2が相殺されるため、大気中のCO2が増加しない仕組みです。
また、原料となる水素には、製造過程でCO2が排出されない「グリーン水素」を用いています。今後は国立研究所、大学、企業など様々な機関と連携して技術開発を進め、早期の実用化を目指しています。
カーボンニュートラルLNGに関する基本条約をシェルグループと締結
2019年6月、東京ガスはカーボンニュートラルLNGの購入に関する基本条約をシェル・イースタン・トレーディング社と締結しました。LNGとは、液化天然ガスの略称です。
この契約は東京ガスがシェルグループからLNGを購入する際に、天然ガスの採掘から燃焼の工程で発生するCO2とシェルグループが保持するCO2クレジットを相殺するものです。結果としてCO2排出量を実質ゼロにすることができ、カーボンニュートラルが実現できます。
カーボンニュートラルLNGという新たな取り組みを通じて、東京ガスは低炭素化の取り組みを強化し、新たな低炭素商材の提供にも取り組むとしています。
カーボンニュートラルが求められている背景は?日本のガス業界の取り組みも紹介!
近年、カーボンニュートラルという言葉をよく耳にするようになりましたが、なぜ世界的にカーボンニュートラルが求められるようになったのでしょうか。
日本のガス業界の取り組みと併せて紹介します。
2015年のパリ協定で温暖化対策の新しい枠組みが決定された
2015年のパリ協定で、温暖化対策の新しい枠組みが決定されました。
パリ協定は気候変動枠組条約に加盟する196カ国全ての国が削減目標・行動をもって参加することをルール化しています。世界共通の長期目標として「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」が掲げられており、各国の削減目標が定められました。さらに、「今世紀後半には、温室効果ガスの人為的な排出と吸収源による除去の均衡を達成するよう、排出ピークをできるだけ早期に迎え、最新の科学に従って急激に削減すること」も目指されています。
日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言している
2020年10月、日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。
カーボンニュートラルは「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを意味しています。カーボンニュートラル達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減、温室効果ガスの吸収量の増加の2つの手法があります。
温室効果ガスは気候変動の原因となっており、豪雨や猛暑のリスクをさらに高めると予想されています。温室効果ガスの排出を削減することは気候変動問題を解決する上で最重要事項なのです。
日本のガス業界は取り組みとしてカーボンニュートラル2050を策定した
日本ガス協会は、2020年11月に「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定しました。
カーボンニュートラルチャレンジ2050は、2050年までに脱炭素社会を実現するため、多様なアプローチを組み合わせた施策を行うものです。
具体的には「徹底した天然ガスシフト・天然ガスの高度利用」、「ガス自体の脱炭素化」、「CCU/CCSや海外貢献等の取り組み」の3つの取り組みを行うとしています。
また、ガス協会は「2030年目標」も設定しており、2030年までに「ガスのカーボンニュートラル化率5%以上を実現」「メタネーションの実用化」を掲げています。
カーボンニュートラルLNGの仕組みやメリットは?価格も解説!
日本ガスが導入を進めているものに「カーボンニュートラルLNG」の都市ガスへの導入があります。
カーボンニュートラルLNGとはどのような仕組みなのでしょうか。メリットや価格とともに紹介します。
カーボンニュートラルLNGの仕組み
カーボンニュートラルLNGは、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、環境保全プロジェクトで創出されたCO2クレジットで相殺する仕組みです。
この仕組みにより、地球規模では天然ガスを使用してもCO2が発生しないとみなされます。
環境保全プロジェクトは世界各地で行われており、森林保全や植林、生物多様性・土地保護などの活動を行っています。
天然ガスはもともと環境負荷が小さく、レジリエンスの観点でも優位性のあるエネルギーです。カーボンニュートラルLNGはこれらの天然ガスの特徴があるとともに、実質的なCO2排出量ゼロを達成した持続可能な社会の実現のためにさらに進化した天然ガスなのです。
カーボンニュートラルLNGを導入するメリット
カーボンニュートラルLNGを導入するメリットは以下の3つです。
・地球規模での温室効果ガス削減・排出抑制
・国際社会への貢献
・ESG経営への活用
カーボンニュートラルLNGを導入することで、地球規模での温室効果ガスの削減はもちろんのこと、SDGsの目標達成にも貢献できます。
また、導入にあたって設備を更新する必要はなく、導入について統合報告書やCSRレポート等に記載して対外PRに活用することも認められています。
CNLバイヤーズアライアンスに加盟して、カーボンニュートラルLNGのロゴを活用することも可能です。
カーボンニュートラルガスの価格は相対取引
カーボンニュートラルガスの供給量に対する必要償却クレジットの算定・管理は、第三者機関によって適切に検証されており、カーボンニュートラルガスの価格は相対での交渉で決定されます。
カーボンニュートラルガスの価格にはクレジット分のコストが上乗せされるため、従来の天然ガスよりやや割高になります。しかし、CO2を減らす手近な手段ということもあり、カーボンニュートラルガスの売買は年々増えつつあります。
脱炭素を目指す東京ガスやガス業界の今後に注目しよう
今回の記事ではガス業界に着目し、東京ガスやガス業界全体での脱炭素への取り組みや、カーボンニュートラルLNGについて解説しました。
脱炭素化達成へ向け、東京ガスやガス業界は様々な取り組みを行っています。
ガスは私たちの生活の身近にあるもののため、脱炭素化への意識を高め、東京ガスやガス業界の今後の動きにも注目していきましょう。
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