社会全体でサステナビリティへの関心が高まっています。しかし、具体的にどのようなことを指すのか、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、サステナビリティとは何かをわかりやすく解説しました。サステナビリティに取り組むメリットや企業・団体の事例も挙げています。企業としてサステナブルな活動に取り組んでいきたい、と考えているご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
目次
サステナビリティとは
「サステナビリティ(sustainability)」とは、日本語では「持続可能性」という意味です。これは「将来に渡り地球の機能を失わず、継続できるシステムやプロセス」を指しています。
たとえば、いずれは枯渇するエネルギーだけに頼り、温室効果ガスを排出し続けるような生活は、地球環境への負荷が大きく、サステナビリティではありません。環境を守り維持できるビジネスモデルや社会を目指すことこそ、サステナビリティに基づく行動です。
サステナビリティが注目されたきっかけ
サステナビリティが注目され始めるきっかけは、サステナビリティの由来ともいえる概念「持続可能な開発(Sustainable Development)」の誕生です。この言葉は、国連の機関である「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に発表した報告書で登場しました。
その後、1992年に行われた国連環境開発会議(地球サミット)でもサステナビリティが注目されています。この時代は経済発展が目覚ましく進む一方で、熱帯雨林の破壊などといった環境問題が深刻となっていました。
そのような状況を受け、国連環境開発会議で重視された議題が、次世代の環境の保護と経済発展の両立です。これを一言で表す言葉として「サステナビリティ」が頻繁に使われるようになりました。
さらに2015年にSDGs(Sustainable Development Goals)が制定されたことも、サステナビリティの社会への浸透を後押ししています。
サステナビリティとその他の用語の違い
環境問題の情報に触れていると「SDGs」や「CSR」といった用語もよく目に入ります。サステナビリティとの違いがよくわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで、サステナビリティとその他の用語の違いや、サステナビリティとの関係について解説します。
SDGsとの違い
SDGsとは、国連サミットで採択された2030年までの達成目標のことです。日本語では「持続可能な開発目標」といい、さまざまな地球の問題に関する17の目標と169のターゲットが設定されています。
「持続可能な」と名前にある通り、SDGsはサステナビリティの考え方をベースに定められています。サステナビリティが概念であるのに対し、SDGsはサステナビリティを実現するための行動を示したものです。
CSRとの違い
CSRとは「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」のことです。これは企業が単に利益を追求するのでなく、すべての関係者の利益を考えて行動するべきだという責任を意味しています。
サステナビリティは、政府、企業、個人など、すべての人にかかわる概念です。一方でCSRは、企業の活動に限定しているという違いがあります。サステナビリティを実現することも、CSRの一環です。
サステナビリティの3つのEとは?
サステナビリティは、環境(Environment)、経済(Economy)、公平性(Equity)の3つの側面から考える必要があります。これが「サステナビリティの3つのE」です。ここで、それぞれの意味を解説します。
環境(Environment)
1つ目の「E」は環境(Environment)です。人間は食料生産をはじめ、さまざまな面で自然環境の恩恵を受けています。地球を持続可能な場所として後世に残すためには、この環境の保護が重要です。
現在、私たちは気候変動や森林破壊、海洋汚染などいくつもの深刻な環境問題を抱えています。持続可能な社会を実現するには、それらの問題を早期に解決しなければなりません。
経済(Economy)
2つ目の「E」は経済(Economy)です。経済面のサステナビリティとは、世界中の人々の生活が持続可能なものになるということです。劣悪な労働環境や、社会保障などのセーフティーネットが整っていない状況では、経済のサステナビリティが実現できているとはいえません。
経済を回す3つの主体は政府と個人、そして企業です。企業の努力は、経済のサステナビリティの実現に向けて大きな役割を担っています。
公平性(Equity)
3つ目の「E」は公平性(Equity)です。サステナビリティにおける公平性は、貧困や、ジェンダー、障害の有無などによる格差の問題に取り組むことを指しています。
格差は経済成長を鈍化させ、持続可能性を減少させてしまいます。不平等は社会正義のみならず、サステナビリティの観点からも取り組むべき重要な問題です。
サステナビリティを測る方法
サステナビリティを測定するには、GRIスタンダードとDJSIという2種類の方法があります。一般的に実施されている方法は、GRIスタンダードです。DJSIの評価対象は時価総額の世界上位の約3500社であるため、あまり一般的ではありません。ここからは、それぞれの方法を詳しく解説します。
GRIスタンダード
GRIスタンダードは、国連環境計画(UNEP)の公認団体であるGRIが作成した報告書に基づき、作られたガイドラインです。GRIスタンダードを用いると、環境や社会、経済に関する33のテーマをもとに、企業のサステナビリティが評価されます。
このやり方で測定と分析ができるのは、企業が社会に与えるインパクト(影響)です。プラスの影響、およびマイナスの影響いずれの情報も提供されるため、企業のCSR活動に役立ちます。
DISI
DJSI(Dow Jones Sustainability Index)は、アメリカとスイスの企業によって開発されたサステナビリティを測るための株式指標を指します。DJSIの調査対象は、前述のとおり、時価総額の世界上位の約3500社です。
対象企業は、CSA(コーポレートサステナビリティ評価)という、業界ごとに決められた質問表によって調査されます。この質問票の基準は、環境、経済、社会の3点です。
企業がサステナビリティ経営を行うメリット
今からサステナビリティ経営に取り組もうと考えている企業も多いのではないでしょうか。サステナビリティ経営には負担もありますが、それを補うほどのさまざまなメリットがあります。ここでは、企業がサステナビリティ経営を行うと得られる4つのメリットを紹介します。
企業好感度が向上する
サステナビリティ経営には、企業の好感度の向上というメリットがあります。近年はSDGsへの社会的な関心が高まってきました。それにつれて、環境や社会によい商品を購入したい消費者や、サステナブルな企業を応援したいと考える人が増えています。
それを受けて、サステナビリティへの取り組みは「利益追求だけでなく、社会を考えた誠実な企業」であるという印象を社会に与えるかもしれません。結果的に、企業の好感度向上の可能性が高まります。
ESG投資などビジネスチャンスが広がる
ESG投資とは、環境や社会によい取り組みをしている企業を評価して行う投資のことです。サステナビリティ経営に取り組む企業は、このような投資を得られるというメリットがあります。
また、環境問題を解決する技術を応用して新規事業を創出するという事例もあります。取り組みの方法によっては、ビジネスチャンスが広がる点も大きなメリットです。
従業員満足の向上と人材確保につながる
従業員の労働環境や賃金の側面でも、サステナビリティ経営の導入が可能です。従業員の働きがいや、働きやすさを追求することで、従業員の満足度が向上するというメリットがあります。
また、若い世代には社会問題への関心が高く、社会貢献をできる企業で働きたいという願望が強い人材が多い傾向にあります。サステナビリティ経営に取り組んでいると、社会貢献に関心のある人材を確保できるかもしれません。
コスト削減につながる
環境へ配慮し、省エネやリサイクルなどの取り組みを行うと、事業活動にかかるコストの削減が可能です。初期投資が必要なケースも多々ありますが、長期的に見るとコスト削減となるパターンも数多く見られます。
コスト削減を目指し生産や業務の効率化が実現すると、人件費の削減も可能です。結果的に企業の利益を最大化できる可能性が高まります。
サステナビリティに取り組む企業・団体の事例
最後に、サステナビリティに取り組む企業や団体の具体的な事例を紹介します。サステナビリティ経営は、ほとんどの企業で取り入れられる基礎的なことから、オリジナリティのある取り組みまでさまざまです。自社ではどのような取り組みができるのかを検討するためにも、いろいろな事例を参考にしてはいかがでしょうか。
トヨタ自動車
トヨタ自動車株式会社では、お客様、従業員、取引先など、かかわるすべての人に対し、サステナビリティ基本方針を制定しています。地球環境憲章や人権方針などの個別方針も定め、それに基づいてサステナビリティの推進に力を尽くしている点が特徴です。
具体的にCO2排出量削減に取り組み、水使用による環境負荷の低減や、生物多様性を取り戻すための自然保全活動も進めています。
エーザイ
エーザイは、ヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念を実現するために、長期的視野に基づく企業施策を行っている企業です。環境や社会的課題の解決にも積極的に取り組み、サステナビリティに貢献しています。
外部の専門家からアドバイスを受ける、サステナビリティ推進体制もエーザイの特徴です。この他、医薬品アクセスの向上への取り組みも高く評価されています。
上智大学
上智大学では、学生も参加できるサステナブル推進本部を設け、さまざまな取り組みを進めています。
サステナブル推進本部では、研究活動や情報発信を実施。さらに「誰もが安心で快適に過ごせるインクルーシブなキャンバスづくり」を掲げ、ユニバーサルデザインの看板の設置や、環境負荷低減への取り組みも進めています。
サステナビリティ経営を目指そう
サステナビリティとは「持続可能性」を意味し、環境、社会、経済の課題解決を目指す概念をさします。近年は社会的な意識の高まりから、経済面や企業において重視されている言葉です。
サステナブルな経営体制にはさまざまなメリットがあります。初期投資が必要かもしれませんが、長い目で見ると企業価値の向上につながるでしょう。
「サステナビリティ経営を行うには何から始めたらいいのだろう」とお悩みの担当者様は、e-dashにご相談ください。CO2排出量の可視化や、CO2削減への取り組みなど、お客様に合わせてサステナビリティ経営を支えるご提案をいたします。