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脱炭素について

原子力発電のメリットとは?仕組みやデメリットも含めてわかりやすく解説

原子力発電所

原子力発電とは、どのようなメリットを持っているのでしょうか?多くの人が日常的に電力を利用している中、発電方法の一つとなる原子力発電について、しっかりと理解している人は少ないかもしれません。
この記事では、原子力発電のメリットに焦点を当てながら、発電の基本的な仕組みやデメリットについても解説していきます。持続可能なエネルギー供給の鍵とも言える原子力発電について理解していきましょう。

原子力発電の仕組みを解説

原子力発電の仕組みを解説

原子力発電は、核分裂で生み出された熱を活用し、火力発電と同様に蒸気の力で発電する仕組みです。

具体的には下記の流れで電力を生み出しています。

  1. ウランが核分裂し、大量の熱を生み出します。
  2. この熱は水を沸騰させ、蒸気を生み出します。
  3. 蒸気は蒸気タービンを回転させ、電気を生成する役割を果たします。
  4. 最後に生成された蒸気は冷却され、再び水に戻されるのです。

発電に使用されるウラン燃料や、原子炉の種類については次の項目で詳しく解説していきます。

原子力発電はウラン燃料を使用する

ウラン燃料はウラン鉱石から取れるもので、核分裂しやすいウラン235を約4%と、核分裂しにくいウラン238を約96%混ぜて作られます。ウラン235は原子炉の中で中性子が当たることで核分裂反応を開始し、膨大な熱エネルギーを放出するため、この熱エネルギーを利用して発電を行う仕組みです。発電燃料に使用する際は、ウランをセラミック状に焼き固められた小さな円柱形に加工し、束ねて燃料集合体として使用します。これはペレットと呼ばれ、大きさやウランの濃度、そして使用される原子炉の種類や効率などによりますが、大体ペレット1個で家庭の電気を6〜8か月分生み出すことができます

原子炉にも種類がある

原子炉は核分裂時の熱エネルギーを取り出す装置です。主要な種類について簡単に説明します。

  • 軽水炉:普通の水を冷却材として使用する。
  • 重水炉:重水を冷却材として使用する。
  • ガス冷却炉:炭酸ガスやヘリウムガスを冷却材として使用する。
  • 高速炉:液体ナトリウムを冷却材として使用する。
  • 沸騰水型原子炉(BWR):原子炉内で蒸気を発生させ、その蒸気を直接タービンに送って発電する。
  • 加圧水型原子炉(PWR):原子炉内で作った高温高圧の水を蒸気発生器に送り、別の水を沸騰させて蒸気を作る。その蒸気でタービンを回して発電する。

それぞれの原子炉の特性により、適した用途や条件で使用されています。

また、日本では、特に「沸騰水型軽水炉(BWR)」を多く採用しています。

次世代軽水炉や小型の原子力発電に注目が集まっている

現在、これからの原子炉開発のモットーとして「これまでにない使いやすくて安全な原子炉」が掲げられ、原子力技術の開発が進められています。

特に、近年では「小型」「モジュール」「多目的」の3つの特徴を持つ、小型モジュール炉(SMR)という次世代の原子炉が大きく注目されています。世界各国で開発が進められており、コストの削減や経済性の向上が期待されています。

原子力発電のメリットとは?

メリット

この章では、原子力発電のメリットや、原子力発電が利用されている背景を紹介します。

①発電時に二酸化炭素の排出が少ない

原子力発電の大きなメリットは、発電の際の二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないことです。火力発電が燃焼時に二酸化炭素(CO2)を多く排出するのに対し、原子力発電はウランの核分裂で生じる熱を利用するため、二酸化炭素(CO2)の発生を抑制することができます。

電力中央研究所が公表している「各種電源のCO2排出量」によると、原子力発電での二酸化炭素(CO2)の排出は、地熱発電に次いで3番目に低い量となっています。

引用:電気事業連合会|日本はなぜ原子力発電を使うの?

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出は、地球温暖化の原因となります。そのため、日本では2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」への移行が進められています。

②安定的なエネルギー供給の確保に役立つ

2020年度の資源エネルギー庁の公表によると、日本のエネルギー自給率はわずか11%程度でした。

引用:電気事業連合会|日本はなぜ原子力発電を使うの?

また、一次エネルギー供給構成の中で石油が約36%を占めており、政情などに左右され不安定な電力供給となることが不安視されています。

そのため、特定のエネルギーに依存しない多様性は極めて重要とされており、このような観点から、石油に代わるエネルギー資源として、原子力発電が必要とされています。

③発電効率が良くコスパが高い

原子力発電は他の発電方法と比較して発電効率が良く、コストパフォーマンスが高い点がメリットとされています。

例として、100万kWの電力を生み出すために必要な燃料を比較してみましょう。濃縮ウランを使用した際の原子力発電の場合は21トンの燃料が必要です。火力発電を行うための燃料である天然ガスは95万トン、石油は155万トン、そして石炭は235万トンが必要です。

発電方法燃料の種類100万kWの電力を生みだす発電所を、1年間運転する為に必要な燃料の量
原子力発電濃縮ウラン21トン10トントラック 2.1台分
火力発電天然ガス95万トン20万トン天然ガス専用船 4.75隻
火力発電石油155万トン20万トン石油タンカー 7.75隻
火力発電石炭235万トン20万トン石炭運船 11.75隻
引用:資源エネルギー庁|原発のコストを考える

また、太陽光発電の場合、約58km2の敷地が必要となります。1kWhあたりの発電コストを比較すると、原発は約10.1円、石炭は約12.3円、天然ガスは約3.7円、石油は約30.6〜43.4円となっています。

原子力発電のデメリットと対応策

デメリット

原子力発電は電力供給の一角を担っていますが、その裏にはデメリットも存在します。この章では、原子力発電が抱える問題点とそれに対する解決策を解説します。

①万が一事故が発生した際の被害が大きい

原子力発電所にて万が一事故が発生した場合、その影響は広範囲に及びます。現在でも原子力発電の安全確保が重要となっており、日本では独立性を持つ原子力規制委員会を設置する取り組みを行っています。

また、従来の安全指針と、IAEAの基準や他国の規制とを比較し参考にしており、更なる安全性を追求しています。特に、日本に多い地震や津波などの自然災害や、火災や火山噴火、斜面崩落等も含めたリスクを総合的にヘッジする新規制基準が導入されました。放射線の厳重な管理も行われ、事故リスクの低減に努めています。

(参考)原発事故の実際の例

原発事故は、7段階の「国際原子力事象評価尺度(INES)」により、その影響や規模が判断されます。実際に起きてしまった原発事故を基に、その規模や当時の状況を知ることができます。

  • チェルノブイリ原発事故:1986年に発生。INESはレベル7(最大レベルの「深刻な事故)
  • 福島第一原発事故:2011年に発生。INESはレベル7

これらの事例をもとに、原発の安全管理の重要性を再確認しましょう。

②使用燃料の処理(最終処分)方法が課題となっている

これまでも使用済み燃料の処理方法については、大きな問題とされていました。使用済み燃料は適切な処理を経て全体の約96%が再利用され、残りの約4%はガラス原料と溶かし合わせて高レベル放射性廃棄物と呼ばれる物質に加工されます。この物質からは放射線が出ているため、適切に扱う必要があります。

そこで、日本や各国では、地層処分という方法で放射性廃棄物を処理しています。この方法は、放射能レベルが低くなるまで、地層深くに埋める方法です。人の生活に影響が出ないよう、人工的なバリア(物質加工や専用の容器など)と天然のバリア(岩盤や地表からの十分な距離)で隔離を行っています。

今後も原子力発電を安定的に利用するためには、核燃料サイクルの推進が重要となっており、最終処分の方法や安全性についてはすべての原子力利用国での共通の課題となっています。

引用:資源エネルギー庁|放射性廃棄物について

③大きな初期投資が必要である

原子力発電の初期投資額は、他の発電方法に比べて大きいといわれています。しかし、原子力発電は40年~60年と長期間にわたり、安価な燃料で稼働できるため、結果として莫大な電力を生み出すことが可能です。
ただし、投資回収を図るためには、安全を確保しながら、設備利用率の向上と定期検査の効率的な実施が必要となります。

立地地域に寄り添った原子力政策が必要

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エネルギー政策や原子力政策の推進には、地元地域の理解と協力が不可欠です。しかし、福島第一原発の事故以降、原子力に対する信頼が低下してしまっています。そのため、万が一の事態に備えて避難計画を具体化し充実させることや、訓練を通じて原子力防災対策を強化し、改善を図ることも重要です。

また、原子力の必要性について理解を深める活動も行われています。これらは、地域と原子力との共存共栄を目指すために、国が掲げている取り組みです。

原子力発電の歴史と、導入が進められた理由

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この章では、原子力発電の背景や歴史を通じて、その導入がどのように進められたのかを概観していきます。

発電用原子炉の開発(1950~1970 年代)

第二次世界大戦後、原子力の平和利用を目的とし、アメリカが先駆けて濃縮ウラン・軽水炉の開発に成功しました。特に、1953年12月にアイゼンハワー大統領が「原子力平和利用宣言」を発表したことが大きな転機となりました。核軍備拡張競争(軍拡競争)への歯止めを求めるアメリカ国民の声を背景に出されたこの宣言により、IAEA(国際原子力機関)の設立が進められました。

その後、1973年の第一次オイルショックを契機に、石油への依存のリスクが再認識されたこともあり、多くの国々が原発導入を進めました。

原子力事故による脱原発(1970~1990年代)

スリーマイル島原発事故やチェルノブイリ原発事故をきっかけに、脱原発の動きが広がりました。これらの事故は深刻な影響を及ぼし、特に米国では新規原発の建設が停止されるなど、原発利用の停滞が見られました。

原発への回帰(1990年代~2000年代)

アジア地域の経済成長や地球温暖化問題への対応として、原発建設の動きが再燃しました。特に1992年の地球サミットでは、二酸化炭素(CO2)の排出削減が強調され、これを背景に多くの国々が原発の建設を進めることとなりました。

福島第一原発事故を受けた世界の変化

2011年の福島第一原子力発電所事故は、世界の原子力政策に大きな変革をもたらしました。世界的なエネルギー需要の増加や、地球温暖化防止対策の観点から原子力発電は今後も必要とされています。

今後も原子力を上手に利用するためには、安全性の確保が最優先されており、それに加えて「経済性」や「運転性」を高めた次世代の原子炉技術の開発も盛んに行われています。この動きは、「原子炉の物理」の進展とともに、今後のエネルギー戦略の中心となるでしょう。

主要国の原子力発電における方針

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原子力発電のメリットを生かしつつ安全に稼働することが求められる中、世界の主要国においてどのような原子力発電の運用方針を打ち出しているかを確認しましょう。

日本での稼働方針

安全を最優先に考え、日本の原子力の利用は現在も進行しています。東日本大震災後、すべての原発は一度停止されましたが、その後に再稼働したのは5基のみです。その他、新規制基準に適合すると認められた原発は9基、さらに審査中のものが12基となっており、原発再稼働には地元の声を優先し慎重になっています。

アメリカでの稼働方針

アメリカは99基と、現在世界で最も多くの原発を稼働させています。更に新たなプロジェクトも複数進行していますが、過去30年以上新規建設がなかった影響で、建設費の増加などの課題が浮き彫りになっています。

イギリスでの稼働方針

イギリスでは、2050年までに温室効果ガスを大幅に削減する目標を法律で定めたことで、原発の稼働状況に注目が集まっています。現在稼働中の15基の原発は、2030年までにほとんどが閉鎖される予定ですが、総発電量の約2割を占めていることもあり、温室効果ガスを排出しない電源の確保が重要となっています。

フランスでの稼働方針

フランスでは現在58基の原発が稼働しており、国内の総発電量の約76%を占めています。そのため、フランスでは当初、2025年までに原発の割合を50%に縮減する方針を掲げていましたが、達成時期を5〜10年程度延期することを公表しました。

ドイツでの稼働方針

福島第一原発事故を受けて、ドイツでは脱原発の方針として、2022年までにすべての原発を閉鎖する決断をしました。実際に、2023年4月には全ての原発の稼働を停止し、「脱原発」を達成しました。今後は再生可能エネルギーの利用を拡大しており、安定的な電力供給が求められています。

韓国での稼働方針

2017年に文在寅大統領の下、韓国は脱原発の方針を打ち出しました。60年以上の期間を設けて漸進的に進めると国民に説明されています。原発を減少させたことによる発電の減少分については、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを大幅に増やす予定です。

「火力発電」と「原子力発電」のメリット・デメリットを比較

はてなマーク 電球

日本はエネルギー資源に乏しい国として、さまざまな発電方法に依存してきました。特に火力発電は、日本の主な発電方法の一つとして位置付けられています。

ここでは、これまで紹介してきた原子力発電のメリット・デメリットと、火力発電を比較する表を基に、具体的に考察してみましょう。

【火力発電と原子力発電の比較】

特徴メリットデメリット

火力発電
石炭・石油や天然ガスを燃焼させて発電日本での発電割合の約7割を占める資源の調達が比較的容易発電所の立地も柔軟に可能短期間での設備増設が可能二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出が多い燃料コストの変動リスクがある

原子力発電
ウランを燃料として加工し、核分裂を利用して発電日本での発電割合の約3割を占める二酸化炭素(CO2)排出量が少ないそのため、環境への影響が少ないと言われる長期間、安定して発電が可能事故のリスクや放射線被害が大きい使用済み燃料の処理問題がある大きな初期投資が必要

火力発電は柔軟性がありながらも環境問題が懸念されてます。一方、原子力発電は環境負荷が低いものの、安全性やコスト面での課題が挙げられます。

どの発電方法を選択するかは、これらのメリット・デメリットを総合的に判断し、将来のエネルギーミックスを考えるうえでの重要なポイントとなります。

原子力発電のように二酸化炭素を排出しない発電方法

ECO 電球

地球温暖化の対策として、二酸化炭素を排出しない発電方法が注目されています。中でも再生エネルギーは、環境に優しく、持続的なエネルギー供給が可能です。

ここでは、主な再生可能エネルギーの特徴を簡単に解説します。地球環境の保護を考える一歩にしましょう。

  • 太陽光発電
    太陽の光を電気に変換するシステムです。太陽電池パネルを利用し、光を直接電気エネルギーに変えます。日照の豊富な地域では特に有効な方法とされています。
  • 風力発電
    風車を回す風の力を電気に変える方法です。風速が一定以上の地域が適しており、大規模な風力タービンが設置され、高効率で電力を供給することができます。
  • バイオマス発電
    有機物を燃料として利用する発電方法です。木材や農業残渣を利用し、燃焼させてエネルギーを取り出します。循環型の資源利用が魅力とされます。

これらの発電方法は、持続可能で地球に優しい電力供給を実現する為に、重要視されています。2050年のカーボンニュートラルを目指すために、積極的に導入が進められています。

原子力発電のメリット・デメリットを理解し、発電方法の未来を考えよう

夕日と風力発電

原子力発電は、大量のエネルギーを安定的に供給できる点がメリットとして挙げられます。これにより、多くの国々でエネルギー需要を確保するための主要な手段となっています。一方で、放射線のリスクや廃棄物の処理、事故の危険性などのデメリットも存在します。実際に起こってしまった原発事故は世界的に影響を与え、社会的な共通課題となっています。

原子力発電のメリットとデメリットを理解した上で、持続可能で安全なエネルギー供給の方法を模索し続けることが、私たちの未来をより良くする鍵となります。

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