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中国で起きた電力不足問題、日本への影響は?今後はどうなる?

信号機(停電中)

近年、中国での電力不足が深刻化していますが、日本へはどのような影響があるのでしょうか?この記事では、中国で発生してしまった電力不足の原因や、その影響について考察します。

中国の深刻な電力不足の背景とは

漏電ブレーカ

この章では、中国が直面した電力不足の背景や原因を考察します。中国内の現状について、詳しく見ていきましょう。

2021年、中国で大規模な電力不足に陥った

2021年春、広東省を始めとする一部地域で電力不足が発生しました。この問題は夏場には31の省・市・自治区のうち、北京市や上海市を含む20地域にまで拡大してしまいました。その年の発電量も、8月には前年同月比+0.8%へ急減し、9月同+4.9%と低い伸びにとどまりました。

電力不足の原因は石炭価格の高騰

電力不足の主な原因として、石炭の供給不足とその結果としての価格高騰が挙げられます。中国媒炭運送販売協会(CCTD)の情報によると、在庫水準は非常に低く、代表的な発電用石炭価格である「CCTD秦皇島一般炭の価格」は9月末に前年同月比91.7%も上昇していました。

石炭不足はなぜ起きたのか

石炭不足の背後には複数の要因が存在します。

1つ目は、炭鉱の稼働停止です。安全基準の強化や環境対策の強化などを理由に山西省、陝西省などの地域で炭鉱の稼働を停止しました。その結果、2020年の生産量は前年比+0.9%の伸びにとどまり、2021年の9月までの伸びも+3.7%と低い水準となりました。

2つ目は石炭輸入の抑制です。特に豪州産石炭を非公式に輸入禁止にしたことにより、2020年前半に5,588万トンであった豪州からの輸入量は、2021年2021年の前半はゼロとなりました。

3つ目は、国内での石炭需要拡大です。インフラ投資や国有企業の設備投資の促進、そして輸出の大幅拡大により、主要な石炭需要家が生産水準や原材料の調達を増やしたことが影響しています。

電力不足が及ぼした、中国内でのさまざまな影響

夜景

中国の電力不足は、製造業から市民生活まで、多岐にわたる影響を及ぼしました。

広東省の日系企業を対象としたジェトロの調査によると、多くの企業が長時間の電力供給制限を受け、主に自動車や電子部品、金属製品などの業界が大きな打撃を受けたことが明らかになりました。

製造業の生産量を抑制してしまった

電力不足は、製造業の生産量にも大きな影響を及ぼしました。具体的には、7〜9月期の実質成長率は前期比較で急減速し、+4.9%にとどまりました。多くの製造企業、特に鉄鋼業やセメント産業などは、計画停電を受けて操業を調整していましたが、一部では事前予告なしに電力供給の遮断がされてしまったところもありました。

電力企業の生産調整が発生した

制度上では、2020年より電力企業は価格を10%上乗せできるようになりましたが、石炭価格の高騰により多くの企業が採算割れを経験しました。この結果、地方政府は傘下の電力企業の生産調整をせざるを得ない状況となり、深刻な電力供給不足へとつながりました。

街中にも影響が見られた

市民の日常生活にも、電力不足の影響は確実に及びました。給湯器やエレベーターの停止、さらには信号機の運用停止などの事態が発生してしまったのです。多くの市民は、ろうそくや懐中電灯を常備するなど、急な停電への対策に追われる日々となりました。

中国以外の国へも影響がでてしまった

LEDランタン

中国の電力不足の影響は、中国国内だけでなく他国にも及んでいます。中国と密接に結びついているグローバル・サプライチェーンにおける混乱や、産業への影響について述べていきます。

各国のサプライチェーンへの影響

「世界の工場」としての中国の役割は非常に大きいため、その生産が滞ると、グローバル・サプライチェーンに混乱が生じることとなります。

多くの国々が部品供給を受けているため、生産の停滞や遅延が各国でインフレ圧力を高める原因となる恐れが高まっています。

日本の自動車メーカーへも影響がでている

中国の電力問題は、日本の自動車産業にも影響を及ぼしています。特にトヨタは、部品供給の遅延や生産量の低下を経験し、新車の生産や納期が遅れる事態となっていました。

2022年も猛暑で電力が不足している

電気自動車充電スタンド

2022年の夏は猛暑となり、さまざまな地域で電力供給に課題が生じています。その猛暑による電力不足の背景や、それに伴う社会的な影響について取り上げます。

水力発電用の水が無くなってしまった

記録的な猛暑が6月から続いており、四川省のような地域では深刻な電力不足が発生しています。通常、四川省は電力の81%を水力発電でまかなっているのですが、必要な水の半分以上が蒸発してしまう事態が発生。このため、冷房の需要が高まる中、電力供給量が大幅に減少し、工業生産や市民の日常生活に多大な支障をもたらしているのです。

電力不足でEV(電気自動車)が充電できない!?

猛暑による電力不足の影響は、EV(電気自動車)の利用者にも及んでいます。多くの充電スタンドが閉鎖や営業時間短縮を余儀なくされ、ドライバーたちが充電できない事態が発生しています。

北京や上海まで広がり、観光地が打撃を受けた

この電力不足は、首都北京や国際都市上海にも影響を及ぼしています。特に上海市内の有名な夜景スポット、外灘(バンド)地区では、歴史的な洋館のライトアップが中止となり、夜の観光名所としての魅力が大きく損なわれているのです。

電力不足を解消するための中国の取り組み

電球

中国の電力不足問題に対応するため、さまざまな策が講じられました。その主な手段として、

  1. 国家石炭備蓄の放出が行われ、一時的に石炭生産の抑制が緩和されました。
  2. 電力企業や石炭関連の企業に対しての融資拡大が進められ、企業の財政を支援しています。
  3. 持続可能なエネルギーの導入を目指し、再生可能エネルギー事業への支援が強化されています。

また、外国からの電力調達も拡大しており、ロシアからの電力調達の増加の策が講じられました。

2023年現在の状況と今後の見通しに注目

優しく光るデジタル地球儀

2023年現在も中国の電力不足は続いており、猛暑や水力発電用の水不足など、多くの要因が重なる中でこの問題が引き起こされています。しかし、中国政府は電力不足の解消に向けた多角的な取り組みを進めており、石炭備蓄の放出や再生可能エネルギーへの注力、国外からの電力供給の拡大など、短期・長期の両面からのアプローチが試みられています。

中国の電力不足問題が緩和へと向かうことを強く期待し、今後の動向に注目しましょう。

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