Scope 3  カテゴリ9の定義と算定方法を解説

企業にサプライチェーン（原材料調達から製造・流通・販売・廃棄）全体での脱炭素化が求められる中、自社での排出量以外を指す「Scope 3」の削減に向けて取り組む企業が増えています。

この記事では、Scope 3のうち、カテゴリ9「輸送、配送（下流）」の定義や算定方法について解説します。

Scope 3 カテゴリ9とは？

そもそもScope 3とは？

企業を対象とした温室効果ガス排出量の算定・報告に関するデファクトスタンダード（事実上の標準）である「GHGプロトコル」では、サプライチェーンの温室効果ガスの排出量を3つの区分に分けています。

Scope 3とはこのうち、燃料や電力などの使用に伴う自社の温室効果ガス排出量であるScope1（直接排出）、Scope 2（間接排出）以外の排出量を指します。

Scope 3はさらに、サプライチェーンの「上流」と「下流」に分けられます。上流は原則として自社が購入した製品やサービスに関する排出量で、カテゴリ1〜8に分類されています。一方、下流は原則として自社が販売した製品やサービスに関する排出量で、カテゴリ9〜15に分類されています。

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カテゴリ9「輸送、配送（下流）」とは？

自社が販売した製品の最終消費者までの物流（輸送、荷役、保管、販売）に伴う排出量（自社が費用負担していないものに限る）を指します。

なお、自社が有するトラック等で運行する輸送はScope 1または2として算定し、自社が費用を負担する輸送はカテゴリ4として算定するため、注意が必要です。

また、事業活動から出る廃棄物の輸送に伴う排出量はカテゴリ5に分類されます。

基本の算定式

CO2排出量算定の基本式は「活動量 × 排出原単位」であり、Scope 3 カテゴリ9も同様に、この式を用いて算定します。

一方、同じカテゴリ9でも、「輸送」に伴う排出量を求める算定式と「拠点（販売、保管、販売）」に伴う排出量を求める算定式排出量では、算定式における活動量と排出原単位が異なります。

続いては、それぞれの算定式について詳しく解説していきます。

「輸送」の算定式

輸送によるCO2排出量を求める算定式には「燃料法」「燃費法」「トンキロ法」の3つがあり、いずれかを用いて算定します。

算定精度はトンキロ法、燃費法、燃料法の順に高くなりますが、輸送を行う他社からのデータ（燃料使用量や輸送距離、輸送手段・車種など）収集の難易度もこの順番で高くなります。

他社からのデータが困難な場合は、輸送シナリオ（輸送に関する仮定。輸送距離や輸送手段、車種などの算定に必要な情報を想定）を設定し、トンキロ法で算定することも可能です。

輸送シナリオの例：
国内輸送は、10トントラックで500km片道輸送、積載率50%とする

出典：サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン（ver.2.6）

シナリオ設定の際には、排出量が過小評価とならないように、「取引先との位置関係」や「自社の物流拠点への入荷時の車両の種類」に注意しましょう。

「拠点（荷役、保管、販売）」の算定式

エネルギーの使用に伴う排出

物流拠点や販売拠点での荷役、保管、販売について、対象拠点での「エネルギーの使用に伴う排出」は以下のように算定します。なお、複数の荷主が利用する物流拠点等の場合は、面積按分等で、荷主別に排出量を求めることが必要となります。

燃料の使用に伴う排出量の算定式　※燃料種別に算定

電気の使用に伴う排出量の算定式

冷凍空調機器使用時の冷媒の漏えいによる排出

物流拠点や販売拠点での荷役、保管、販売について、対象拠点で冷暖房や冷蔵庫などを使用したことによる冷媒の漏えいで発生する排出量は、フロン排出抑制法の算定方法を適用して算定します。

・通常使用時の漏えい分を、整備時の充填量・回収量から把握し算定する場合
冷媒番号区分ごとの（充填量➖設備時回収量）× 地球温暖化係数

・漏えい率から通常使用時の漏えい量を把握し算定する場合
冷媒区分ごとの｛（排出量算定期間中の稼働機器に含まれる冷媒量×使用時排出原単位）➖回収・適正処理量｝× 地球温暖化係数

地球温暖化係数は、環境省の「フロン類算定漏えい量の報告に用いる フロン類の種類及び地球温暖化係数（GWP）について」で確認することができます。

算定事例を知りたい方は…

Scope 3カテゴリ9の定義と算定方法について解説してきました。

以下の資料では、輸送シナリオをもとにしたトンキロ法での算定事例を紹介しています。

ぜひご参考にしてください。

Scope 3は、多くの企業でサプライチェーン全体のCO2排出量の大部分を占めています。そのため、Scope 1・2の算定に加えてScope 3の算定に取り組むことで、サプライチェーン全体における排出量の実態を可視化することができ、効果的な削減策の策定が可能になります。

一方で、Scope 3はScope 1・2に比べて複雑で、算定に専門知識が必要なほか、データ収集等のコストもかかります。カテゴリ9の算定でも「排出原単位の参照や計算が面倒」「輸送距離や輸送手段が分からないが、どのように輸送シナリオを設定したらいいか分からない」などと悩む企業の担当者が多く見られます。

弊社e-dashならば、こうしたお悩みを「クラウドサービス」と「コンサルティングサービス」の両軸で解消します。まずはお気軽にお問い合わせください。