現在、世界が環境問題について注目をし、私たちも様々な単語を耳にする機会が増えてきました。よく聞く単語に、SDGsや脱炭素、カーボンニュートラルなどがあります。これら3つにはどのような違いがあるのでしょうか。この記事では、具体的にどのような意味の言葉なのかや企業の取り組みなどを含め解説します。
目次
SDGsと脱炭素とは?カーボンニュートラルの違いも詳しく解説!
まず、SDGs・脱炭素・カーボンニュートラルの違いについて解説します。それぞれどのような意味の言葉で、どういった違いがあるのでしょうか。
SDGsは持続可能な開発目標のこと
SDGsは、Sustainable Development Goals(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)の略称で、一般的に「エス・ディー・ジーズ」と呼ばれます。意味は、持続可能な開発目標というもので、2015年9月に開催された国連サミットにて採択されました。具体的な国際目標として、2030年を期限とした17の国際目標と169のターゲット・231の指標が定められています。
SDGsは全世界が協力をして達成するべき目標です。地球環境の問題だけに限らず、貧困・飢餓・教育などの解決や不平等の解消、働き方改革などと言った、人々の生活に寄り沿った目標も含まれます。社会・経済・環境について、持続可能で誰ひとりとして取り残されることのない未来のために大切な目標です。
脱炭素はCO2の排出を実質ゼロにすること
脱炭素とは、地球温暖化の原因である温室効果ガス(CO2など)の排出量を実質ゼロにすることです。カーボンニュートラルとも呼ばれます。脱炭素社会の実現に向けて世界各国で対策が行われており、木を植えたり森林を管理したりすることによって温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしようと試みています。
SDGsとカーボンニュートラルは密接な関係にある
SDGsの目標項目13には、気候変動に関する内容が盛り込まれています。現在、世界中で気候変動が引き起こされていますが、これは温室効果ガスの影響によるものです。つまり、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルと気候変動を阻止するSDGsは密接な関係があることがわかります。カーボンニュートラルを実現した社会にするための具体的な方法として、公益財団法人 日本ユニセフ協会は次のような項目を挙げています。
・開発途上国が気候変動への対策を行うことができるように「緑の気候基金」を立ち上げ、基金を使えるようにする。
・開発が遅れている国・小さな島国などで、女性・若者・地方・社会から取り残されているコミュニティに重点をおいて、効率的な計画・管理・能力向上ができる仕組みをつくる。
SDGsと脱炭素の目標は?現状についても詳しく紹介!
SDGsと脱炭素の目標はどのように立てているのでしょうか。また、現状はどのようになっているのかについて解説します。
SDGsの主な開発目標
SDGsには以下の17の目標があります。それぞれの企業や地域にとって適合する項目を選び、積極的に目標達成に向けた取り組みを行うことが大切です。
SDGsの17項目
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤を作ろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任、つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
特に環境問題の目標は、相互に密接な関わりがあります。環境省では、気候変動の抑制や、持続可能な消費と生産ができるサイクルの構築などを施策として展開しています。
日本が掲げる脱炭素の目標
2020年10月、日本は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを宣言しています。国民の生活スタイルに起因する「衣食住」「移動」などによる温室効果ガス排出量は国全体での温室効果ガス排出量の6割を占めており、現状を変えていく必要があります。
具体的な目標
・2025年度:地方自治体・地元企業・金融機関・環境省を中心に、100か所の脱炭素先行地域での先行的な取り組みを実行
・2030年度:温室効果ガスを2013年から46%削減(さらに50%削減への高みに向け挑戦)
・2050年度:年間12億トンを超える温室効果ガス排出量を実質ゼロにする
地方創生という観点では、人々が安心して暮らせる「持続可能なまちづくり」「地域活性化」などに着目しています。暮らしの基盤を維持・再生するため、人口減少が進んでいる地域へのテコ入れが必要です。また、「環境未来都市」を構想し、持続的な経済社会システムを持った都市・地域づくりを目指しています。未来を生きる世代が安心して生活できるような社会を実現するため、今から取り組むことが大切です。
世界の国々が定める脱炭素の目標
世界各国では、どのような動きがあるのでしょうか。ここでは、「イギリス」「スウェーデン」「アメリカ」について紹介します。
イギリス
イギリスは2019年にSDGs進捗状況に関するレビューを発表しました。その中で、他国よりも脱炭素化を進めて来たもののより一層の努力を迅速に取り組む必要があると述べています。
そこで、2050年までに温室効果ガスの準排出量をゼロにする取り組みである「ネットゼロ」を目標として発表し、「グリーン産業革命のための10項目計画」にて、「洋上風力」「水素」「原子力」「電気自動車」などの分野に力を入れています。
スウェーデン
2021年6月時点のSDGs達成・進捗状況において、フィンランドが1位、スウェーデンが2位でした。2030年までに北欧閣僚理事会で決定した計画において、北欧諸国は世界で最も持続可能で統合された地域になることを目標にしています。スウェーデンは2030年までにエネルギー効率を50%高め、2040年までに再生可能エネルギーを用いた発電にする目標を設定しました。現在は、再生エネルギーで動く交通機関の促進を行っています。
アメリカ
アメリカは、気候変動が生存基盤への脅威であると考え、コロナや経済危機、人種平等などの課題と並んで重要であるとしています。具体的には、気候変動への対応・クリーンエネルギーの活用・雇用の増加を同時達成する目標を掲げています。クリーンエネルギー分野の目標では、2035年までに洋上風力の再生可能エネルギー生産量を増やし、国土・海洋の30%を保全するとしています。
日本の企業が行っているSDGsの取り組みを紹介!
日本企業が行っているSDGsの取り組みは、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、以下3社を紹介します。
SDGsの取り組み事例
- 日本航空(JALグループ)
- パナソニック ホールディングス
- NTT東日本
日本航空(JALグループ)
JALでは、全てのSDGsの項目に尽力しています。
例えば、目標1の『あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる』という観点で、国際的な機内食ガイドラインを元とした機内食の開発を行っています。また、食を通じた寄付活動を行ったり、WWF(世界自然保護基金)が提唱している「未来の食材50」を使用した機内食の提供を行ったりしています。
パナソニック ホールディングス
パナソニックは経営理念に基づいて、「事業による価値提供」「責任ある事業活動の推進」「会社と社員による社会貢献」を行っています。
事例のひとつに「サスティナブル・スマートタウン」というものがあります。これは、目標11の「住み続けられるまちづくりを」、目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」の観点から計画されています。100年先の未来を見据えたサスティナブルな街を作る計画で、広大な敷地に1,000世帯の住宅、様々な施設、集会所などがあり、暮らしを起点にした街を支えるサービスも充実しています。
NTT東日本
NTT東日本は持続的な発展が可能な地域社会を実現する点に着目し、4本柱を立ててSDGsに取り組んでいます。「地域活性化への貢献」「脱炭素・循環型社会の実現」「高品質で安定した通信サービスの提供」「多様な社員が成長できる職場づくり」です。
中でも、「多様な社員が成長できる職場づくり」においては、目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」、目標8の「働きがいも経済成長も」、目標10の「人や国の不平等をなくそう」に着目しています。リモートワークの拡充・定着、自律的な自己啓発によるキャリア開発の促進、多様なキャリア形成に向けたチャレンジ機会の提供などを行っています。
日本の企業が行う脱炭素の取り組みを紹介!
日本企業が行う脱炭素の取り組みについて紹介します。
日本企業の取り組み事例
- トヨタ自動車株式会社
- ダイキン工業株式会社
- オリックス株式会社
トヨタ自動車株式会社
トヨタは2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表しました。クルマが引き起こす環境問題へのマイナス要因をゼロに近づけ、さらに社会に対しプラスをもたらせる挑戦を行っています。
マイナスをゼロにするチャレンジの中に、「ライフサイクルCO2チャレンジ」「新車CO2ゼロチャレンジ」「工場CO2チャレンジ」があります。クルマの製造や物流、走行に関してCO2排出をゼロにする取り組みや、新車平均CO2排出量を90%削減することなど、大きな目標を立て開発に取り組んでいます。
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業株式会社はパリ協定に賛同して「環境ビジョン2050」を策定し、2030年までの削減目標を設定しました。
長期的には2050年までの社会変化を予測して環境課題解決のための問題などを特定した上で、ダイキンの持つ資源を活かした計画を決定しました。
「環境ビジョン2050」では、温室効果ガス排出量を自社のライフサイクル全体から削減する活動などに取り組んでいます。IoT・AIなどのイノベーションを活用し、環境課題の解決に貢献できる安心で健康的な空気空間を提供する開発を進めています。
オリックス株式会社
オリックスでは、再生可能エネルギー(太陽光・バイオマス・地熱・風力)の普及に取り組んでいます。世界各地で再生可能エネルギー発電所プロジェクトを推進したり、国内で太陽光発電所を運営・管理するサービスを提供したりなど、脱炭素社会への移行を推進しています。
再生可能エネルギー事業では、「メガソーラー発電事業」があります。自治体・企業などが保有している利用されていない土地(遊休地)を借りて、大規模な太陽光発電所を建設しています。安全かつ安定した事業運営を行うことに尽力を注いでいます。
日本が抱えるSDGsと脱炭素の課題を解説!
SDGs・脱炭素について、日本はどのような課題を持っているのでしょうか。次の2点について解説します。
日本の課題
- SDGs認知ランキングで日本が最下位
- COP26で日本は化石賞を受賞
SDGs認知ランキングで日本は最下位になっている
2019年から2020年にかけて、日本はSDGs認知ランキングで最下位でした。当時の日本では、半数以上の人が「SDGs」という言葉を聞いたことがないという回答結果があり、SDGsの普及率の低さが深刻な問題でした。
2022年現在、SDGsの認知度は86%にまで上昇しました。今後さらに、理解や共感が深まるのではないかと期待できます。2018年や2019年の調査では、SDGsという言葉すら耳にしたことがない人が多くいたのが現状だったため、大きな進歩であると言えるでしょう。
COP26で日本は化石賞を受賞している
「COP26」とは、国連気候変動枠組条約を結んだ国々が開催した会議の第26回目を指します。2021年に実施され、史上最大の4万人が参加したそうです。
この会議で、日本は「化石賞」を受賞しました。化石には、「化石燃料」と「考え方が古く化石のようだ」という意味が入っています。これは素晴らしい賞ではなく、地球温暖化に対して消極的な国に対して授与されるものです。日本は気候変動問題に対して前向きな取り組みを見せていない国と判断されてしまいました。
受賞理由は、水素・アンモニアを利用した「火力発電のゼロ・エミッション化」を表明し、石炭などをはじめとした火力発電を維持するとしたためです。石炭火力の廃止が気温上昇を抑えるために必要な政策と条約締結国は考えているため、石炭火力を続けるとした日本に対して化石賞が贈られたのです。
しかし、日本が維持する「革新的ゼロ・エミッション 石炭火力発電では、石炭をガス化した上でタービンを動かし、排熱を利用して発電を行います。このガスに含まれる水素を回収することで燃料電池などのエネルギーに活用でき、高効率の火力発電ができるとされています。「火力発電のゼロ・エミッション化」でどのように地球温暖化防止に貢献していけるのかが重要となってきます。
日本がSDGsと脱炭素を達成するための取り組みやすい対策を紹介!
日本がSDGsに取り組み、脱炭素を達成するための対策はあるのでしょうか。具体的に、以下3点について紹介します。
取り組みやすい対策
- 国際指標への参加
- 再生可能エネルギーの活用
- カーボン・オフセットの活用
国際指標への参加
SDGs達成に向け、国連ではグローバル指標を活用することになりました。国際指標を設けることで各国の進捗状況を把握しやすくし、着実にSDGsの達成を推進していくことができます。また、SDGs達成に向けたロードマップなども展開しているため、企業や個人が取り組むべきことが明確化され、身近なことにも目を向けられるようになります。
例えば、2021年のSDGsの平均スコアはパンデミックなどが原因で低下しているため、SDGsの進展ができていないという結果が出ています。
原因として、貧困国やSDGsに取り組みにくい環境にある国のパンデミックからの回復が遅いことなどが考えられます。まずはコロナ禍を乗り越え、戦争の終息など目の前の課題を乗り越えることがSDGsの達成に重要です。
再生可能エネルギーの活用
再生可能エネルギーを活用することで、脱炭素を目指せるようになります。再生可能エネルギーは、主に太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスなどのことで、CO2などの温室効果ガス排出がないという特徴があります。2017年度の再生可能エネルギーが占める電源構成比率は16%でした。これは、ドイツやイギリスと並んで低い水準です。2030年度に向けて、この比率を22~24%に引き上げることを目標にしています。
再生可能エネルギーを主力電源にするためには、再生可能エネルギーを「長期的に安定した電源」にする必要があります。また、再生可能エネルギーを使うためには時間と費用がかかるので、これらの課題を解決することが必須です。
カーボン・オフセットの活用
カーボン・オフセットとは、温室効果ガス排出の削減努力を行うことを前提とした活動に投資することです。欧州や、米国、豪州などで取り組まれている活動で、日本国民の間でも広がりつつある取り組みとなっています。
e-dashなどのツールを利用することで、カーボン・オフセットを気軽に活用できるようになります。
e-dashとは、脱炭素化への取り組みをサポートするプラットフォームです。カーボン・オフセットについて手軽に取り組めるようなサービスを展開しています。日頃の生活、経済活動から排出される温室効果ガスを可視化することで、具体的な数値目標を立てたり温室効果ガス削減のための対策を考えたりすることができます。目的の用途に応じて利用できる点や高品質で信頼度が高い点から注目を集めています。
SDGsと脱炭素の達成を目指そう
SDGsと脱炭素がどういった意味か、またどういった具体的な活動があるのかお分かりいただけたでしょうか。SDGsや脱炭素化はまだ日本での認知度が低く、どのように取り組んでいくべきか試行錯誤されている段階です。世界各国でも取り組まれている重要課題なので、日本で暮らす私たちも脱炭素社会についての問題に向き合い、SDGsに取り組んでいきましょう。