再エネ賦課金は、(さいえねふかきん)と読みます。私たちが普段支払っている電気料から自動的に徴収されています。固定価格買取制度の維持を目的に導入されていますが、詳しい概要を理解している方は少ないかと思います。本記事では再エネ賦課金の目的や仕組み、課題をわかりやすく解説します。
目次
そもそも再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、風力や太陽光といった資源が枯渇しないエネルギーのことです。一方で、現代の私たちの生活に必要不可欠な石油や天然ガスのような有限エネルギーは、化石エネルギーと呼ばれます。
地球温暖化を始めとする環境問題の深刻化により、CO2を排出せず半永久的に利用できる再生可能エネルギーへの注目が高まっています。各国に急速な対応が求められる状況において、日本では2030年を目標に温室効果ガスを2013年度から46%削減すると表明しています。
2021年10月には地球温暖化対策計画が閣議決定され、本格的な温室効果ガスの排出削減・吸収対策が進められています。目標を達成するためには、再生可能エネルギーを上手く活用して温室効果ガス自体の排出量を減らす努力が欠かせません。
地球環境の変化と共に、利用するエネルギーの在り方を見直す動きが加速し、再生可能エネルギー活用への取り組みが強化されています。
再生可能エネルギーの種類
半永久的に利用できる再生可能エネルギーは、主に次の5つです。
再生エネルギーの種類 | メリット | デメリット |
太陽光発電 | ・比較的メンテナンスが楽・一般家庭にも設置可能・非常用電源として活用可能 | ・発電量が天候に左右されてしまう・特定のエリアに施設が集中すると送配電系統の電圧上昇の原因となる |
風力発電 | ・大規模開発する場合、比較的コストが安価・時間帯を問わず発電可能・海上でも発電可能 | ・風が弱い場合に発電が難しい・広大な発電設備が必要・風力発電に適した条件の土地が限られている |
水力発電 | ・発電量の調整がしやすい・安定した長期運転が可能・電気エネルギー変換効率が高い | ・降雨量によっては発電が難しい・設備運用開始までのハードルが高い・中小規模設備の場合コストが割高 |
地熱発電 | ・日本の土地環境を利用しやすい・大規模開発も可能で発電量が安定的・24時間稼働で発電可能 | ・開発期間が長くコストも高い・開発エリアの調整が難しい |
バイオマス発電 | ・廃棄物の有効活用に役立つ・天候に関係なく発電可能・安定した電力を確保できる | ・原料の確保や運搬・管理コストが高い・電気エネルギー変換効率が低い |
それぞれの再生可能エネルギーの特徴や問題点を、正しく把握しておきましょう。
太陽光発電
太陽光発電とは、屋根や壁など日当たりのよい場所に太陽電池を用いた発電装置を設置し、光エネルギーから電気を作り出す発電方法です。一般家庭でも空きスペースを使って発電に取り組めるため、大規模発電所から個人の発電設備まで幅広く導入が進んでいます。
自然災害が頻発する日本においては、万が一の場合に非常用電源として利用できる点もメリットといえます。発電設備のメンテナンスも比較的簡易であり、太陽光発電は再生可能エネルギーのなかでも代表的な地位を誇っています。
実際に2017年の時点ですでに、世界的な太陽光発電累積設備容量は4億kW台を突破し、原子力発電を追い越す勢いをみせています。10年前の2007年時点では、900万kWしかなかった点からも、世界的に太陽光発電に積極的な姿勢が伺えるでしょう。
一方で太陽光発電のデメリットは、悪天候の際に発電量が確保できないことです。天候に左右されてしまい、思ったような発電計画が達成できない可能性があるでしょう。
また、太陽光発電施設が一定の地域に集中すると、送配電系の電圧上昇につながり、対策費用がかかってしまう恐れがあります。
風力発電
風力発電とは、風の力を利用して風車を回転させ、その動力エネルギーで電気を生み出す発電方法のことです。陸上・海上問わず発電が行えるため、さまざまな場所が風力発電の候補地となります。
光が届く昼の時間しか発電ができない太陽光発電とは違って、風力発電の場合、風が吹いていれば、昼夜関係なく電力を確保できるのがメリットです。また、程よい風と風車の設備があれば発電が可能であるため、他の方法と比べて発電の効率性が高いといえるでしょう。
ただし、発電設備を確保するには広大な土地が必要で、日本国内では風力発電に適したエリアが北海道や東北に集中している点が課題です。より広域で連携し、風力発電を進めていくための対策が必要とされています。
水力発電
水力発電では、高低差のある場所から流れ落ちる水のエネルギーで水車やタービンを回し、発電を行います。また、水力発電にはダム式と水路式、両者を合わせたダム水路式の3つがあります。
発電施設によって、その土地に合わせた水の運用方法が採用されており、運用方法が異なります。数ある再生可能エネルギーのなかでも、水力発電は電気エネルギー変換効率が高い発電方法であるのが特徴です。
水の流れを調整することで、発電量を調整しやすいのも水力発電ならではの強みであり、山と水に恵まれた日本では古くから採用されてきました。発電設備を整えて運転を開始するまでに、事前の調査や関係者との調整が必須です。
最近では農業用水路や上下水道などの中小規模の施設で発電ができるタイプも登場していますが、相対的なコストは少し高くなります。
地熱発電
地熱発電では、マグマだまりに降り込んだ雨水が水蒸気になるエネルギーを利用し、タービンを回して発電を行います。日本は火山を多く保有する国であり、世界でもトップクラスの地熱エネルギー資源を誇っています。
風土を上手く活用することで、地熱発電によって大規模で安定的な電力を確保できます。天候や日光に左右されることなく発電可能なため、24時間の継続稼働も問題ありません。
地熱発電の課題は、施設の開発に約10年という長い時間と高額なコストがかかってしまう点です。その他に、発電施設に適した土地が公園や温泉施設などと重なりやすい傾向があり、開発計画の調整が難航する可能性があります。
バイオマス発電
バイオマス発電とは、動植物由来の資源を活用して電気エネルギーを生み出す発電方法です。食品廃棄物や動物の糞尿、木材チップなど、さまざまな資源を発酵・燃焼して発生するガスや水蒸気を発電に利用します。
他の再生可能エネルギーのデメリットである天候に左右されることもなく、安定した電気量を確保できるのが強みです。また、バイオマス発電は、生活のなかで発生する廃棄物を有効活用できる面でも優れています。
しかし、発電に必要な資源の確保や運搬、管理のコストが高額になりがちな点には注意が必要です。電気エネルギー変換効率も低めであり、費用対効果の検討が欠かせません。
再生可能エネルギー発電促進賦課金(ふかきん)とは
再生可能エネルギー発電促進賦課金は、電気利用量に応じて自動的に徴収されている費用です。徴収された再生可能エネルギー発電促進賦課金は、再生可能エネルギー発電で得た電気を、電気事業者が買い取る際に発生する費用にあてられます。
再生可能エネルギー発電促進賦課金を正しく理解するために欠かせないのが、2012年に開始された再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT法)です。関連項目を整理して、再生可能エネルギー発電促進賦課金に関する理解を深めましょう。
再生可能エネルギー発電促進賦課金単価
再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、年度ごとに経済産業省資源エネルギー庁が決定・発表します。2022年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、以下のとおりです。
2022年5月から2023年4月分適用単価 | 1kWh当たり3.45円 |
単価は全国一律で、利用した電気量に応じて徴収される再生可能エネルギー発電促進賦課金が計算されます。
再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT法)
再生可能エネルギー固定価格買取制度の施行によって、再生可能エネルギーを使って得た電力を、電気事業者に買い取ってもらえる仕組みが完成しました。電気事業者の力だけではなく、一般家庭や他業種の企業の力を合わせて再生可能エネルギーの普及を進める取り組みです。
電気事業者側では国が定めた単価で電気を買い取る義務が発生し、購入過程で必要となる費用は再生可能エネルギー発電促進賦課金として電気利用者が負担します。制度を利用すれば10年~20年の間、固定価格で安定的に電力を買い取ってもらえるのがメリットです。
固定価格自体も相場より高めに設定されているため、新たに発電施設を設置して再生可能エネルギーを利用した発電に取り組む、多くの家庭や企業を後押ししています。
再エネ賦課金の目的
再エネ賦課金の目的は、再生可能エネルギーの普及を促進することです。自身が再生可能エネルギー発電に関わっていない場合、再エネ賦課金の徴収に乗り気になれない場合もあるかと思います。
しかし、再エネ賦課金を支払うことは、最終的に気球環境を保護する再生可能エネルギーの普及につながっています。再エネ賦課金により、電気事業者は国が指定する固定単価で電気の買取を行えます。
発電に尽力した個人や事業者は固定価格で電気を買い取ってもらえる保証があるため、安定的な利益を出すために積極的に再生可能エネルギーの発電に取り組むようになります。
直接的に発電に関わっていない個人や企業にとっても、再生可能エネルギーの普及が進み化石燃料への依存度が下がれば、電気料金が安定するという大きなメリットを享受できます。
再エネ賦課金(ふかきん)の仕組み
再エネ賦課金をより詳しく理解するためには、次の4つの立場での流れをそれぞれ把握しておくことが重要です。
- 再エネ発電事業者
- 電力会社
- 電気を使用する家庭・工場・会社など
- 賦課金回収・分配機関
再エネ賦課金は電力会社に対して支払われますが、電力会社の直接的な利益として支払われている訳ではありませんので注意が必要です。自社の立場と照らし合わせながら確認してみてください。
再エネ発電事業者
再エネ発電事業者とは、その名のとおり再生可能エネルギーを利用して発電を行う個人や企業です。再エネ発電事業者として認定をしてもらうには、資源エネルギー庁の事業計画策定ガイドラインを確認し申請を行う必要があります。
登録が完了すれば、再エネ発電事業者として電気の買い取りをしてもらえる流れです。発電した電気エネルギーは、自分たちで消費することもできます。
自宅に太陽光パネルを設置している場合、普段の生活に必要な電気エネルギーを再生可能エネルギーで補い、余剰電気エネルギーを売却するなど臨機応変な対応が可能です。
電力会社
電力会社は、一般送電網を介して家庭や企業に電気を提供するのが仕事です。上述したように、供給した電気量に応じて電気代と再エネ賦課金を徴収しています。
再エネ賦課金を含めた費用を使って、再生可能エネルギーで得た電力を買い付けるのも電力会社の役目です。国に対しては、電気利用者から徴収した再エネ賦課金を納付します。
電気を使用する家庭・工場・会社など
電気を実際に使用する家庭・工場・会社は、使用した電気使用量に応じて再エネ賦課金を含めた電気料金を電力会社に支払いをします。再エネ賦課金の単価は毎年変動がありますが、電力会社側ですでに計算・徴収されているため特に気にする必要はありません。
賦課金回収・分配機関
賦課金回収・分配機関は、電力会社から納付された再エネ賦課金を確認し、再エネの買取費用を交付します。
再エネ賦課金(ふかきん)の計算方法
私たちの生活に欠かせない電気、その使用量に応じて発生する再エネ賦課金の計算方法をご紹介します。再エネ賦課金の計算方法は、以下のとおりです。
再エネ賦課金=再エネ賦課金単価 × 1ヵ月の電気使用量(kWh)
自宅や会社の電気使用量が把握できていれば、支払うべき再エネ賦課金の目安を付けられます。例えば、1か月の電気使用量が300kWhの場合、次の計算式となります。
- 1か月の再エネ賦課金:3.45円(2022年度単価) × 300=1,035円
- 1年間の概算再エネ賦課金:1,035 × 12=12,420円
自動計算され徴収される再エネ賦課金ですが、自身でも計算方法を知っておくと安心です。
再エネ賦課金(ふかきん)の課題
再生可能エネルギー普及率向上の効果を期待されている再エネ賦課金ですが、いくつかの課題が残されているのも事実です。主な課題として挙げられるのは、次の2つです。
- 再エネ発電事業者のメリットが大きい
- 再エネ賦課金の値上がりが懸念される
再生可能エネルギーを使った発電に取り組んでいる家庭で、電力の発電・自己消費を行っている場合、再エネ賦課金を支払う必要がありません。
電力の買取が約束されているうえに、他の一般家庭が支払わなければならない再エネ賦課金も免除されているため、再エネ発電事業者のメリットは大きいといえます。
何らかの理由で発電設備を用意できない家庭からすると、再エネ発電事業者になれないことで継続的に恩恵が受けられない状況が生まれます。
さらに、再生可能エネルギー固定価格買取制度を利用する事業者が増えるほどに、再エネ賦課金は値上がりしてしまうのが深刻な課題です。
環境省の報告によると、実際に2012年度制度導入当初0.22円であった再エネ賦課金単価は、毎年値上がりを続けています。制度の恩恵を受けられない層の負担増と、再生可能エネルギー普及にかかるコストの程よいバランスを保つ必要があります。
再エネを活用する際には再エネ賦課金について理解しておこう
深刻な地球温暖化問題に直面している現代では、再生可能エネルギーへの注目が高まっています。再生可能エネルギーを利用した発電に取り組めば、生み出した電気エネルギーを高い単価で売却できます。
実際に発電設備の設置が難しい場合でも、日々の電気料金にプラスして支払っている、再エネ賦課金が再生可能エネルギーの普及に役立っています。企業活動においても、環境保護意識を高く持つことは大切です。
自社の環境に対する意識を高めていくには、目に見えない温室効果ガスを可視化するサービスが効果的でしょう。弊社「e-dash」ではCO2排出量削減への取り組みを総合的にサポートするサービスプラットフォームを提供しています。
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