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エコロジカルフットプリントの意外な真実|日本と世界の現状分析

地球環境保全のアイデア

エコロジカルフットプリントは、人間が地球の自然環境に与える影響を数値化したものです。この指標が増加の一途を辿っていることから、減少させる取り組みが世界的に求められています。

本記事では、エコロジカルフットプリントの意味や算出方法、世界や日本の現状を解説し、具体的な削減方法についても紹介しています。エコロジカルフットプリントについての知見を得て、地球環境の保全に取り組みたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

エコロジカルフットプリントとは

カーボンフットプリント

エコロジカルフットプリント(Ecological Footprint)とは、人間が生活する上で自然資源や環境へ与える負荷を、地球の面積に換算して表現する指標です。エコロジカルフットプリントには「地球の自然生態系を踏みつけた足跡(または、その大きさ)」という意味が込められています。

人々が使う土地や水、食べ物などの資源、電気などのエネルギーは自然由来のものがほとんどです。一方で、自然資源の使用量が過剰になると、地球環境は破壊され持続できません。エコロジカルフットプリントを算出すれば、地球上の資源のうち、どの程度の割合を人間が使っているのかを認識できます。

エコロジカルフットプリントの算出方法

環境保全の数値を算出する男性の手

エコロジカルフットプリントの算出に必要な要素は、人口、1人あたりの消費、生産・廃棄効率の3つです。エコロジカルフットプリントの数値が高いほど、その国や地域の環境負荷は大きく、数値が低いほど負荷が小さいといえます。具体的な計算式は以下の通りです。

エコロジカルフットプリント=人口×1人あたりの消費×生産・廃棄効率

式を見るとわかる通り、人口や1人あたりの消費が増えると、エコロジカルフットプリントの値は高くなります。

生産・廃棄効率とは、ある資源を生産するのに必要な面積、および資源を廃棄する際に必要な面積を示した指標です。生産や廃棄に必要な面積が大きくなるとこの値も増え、最終的にエコロジカルフットプリントの値も高まります。

エコロジカルフットプリントと関連性が高い用語

アースオーバーシュートデーのイメージ

エコロジカルフットプリントを正しく評価するには、関連する概念も知っておく必要があります。ここで、エコロジカルフットプリントと関連性が高い「バイオキャパシティ」、「オーバーシュート」について解説します。

バイオキャパシティ

バイオキャパシティとは、地球上にある自然や生態系が、一定期間内に再生できる資源の供給量を面積で表す指標です。人間は、自然が生み出す酸素や水、食物などの自然資源を消費することで、生活を行っています。

これらの自然資源を供給する量がバイオキャパシティであり、生物生産力とも呼ばれています。具体的な数値は以下の式から算出可能です。

バイオキャパシティ=面積×生物生産効率

バイオキャパシティとエコロジカルフットプリントの値を比較すれば、地球の再生能力に対する自然資源の消費の割合がわかります

オーバーシュート

オーバーシュートとは、人間の自然資源の消費量が、地球の供給量を超えてしまう状態のことです。バイオキャパシティをエコロジカルフットプリントが超過すると、オーバーシュートの状態となります

エコロジカルフットプリントは世界的に増加の一途を辿り、1970年代前半にバイオキャパシティを超過しました。2013年には、世界のエコロジカルフットプリントは地球1.7個分になったとも報告されています。

このように、地球の供給量を超えるほど人間が自然資源を使ってしまうと、いつか資源は枯渇してしまうかもしれません。1年の間で、地球が供給できる自然資源の量を人間の消費量が上回ってしまう日のことを、アースオーバーシュートデーと呼びます。

2022年は7月28日にアースオーバーシュートデーを迎えました。これは過去もっとも早いタイミングです。

世界と日本のエコロジカルフットプリントの現状

地球の自然環境のイメージ

世界のエコロジカルフットプリントは、持続可能なレベルを超えており、地球上の資源を過剰に消費しています。日本では1人あたりのエコロジカルフットプリントが、世界平均よりも高く、生産や消費によって大きな環境負荷を与えている現状があります。

ここで、世界と日本のエコロジカルフットプリントの現状を詳しく解説します。

世界のエコロジカルフットプリントのランキング

まずは世界のエコロジカルフットプリントの現状を紹介します。

以下は2023年3月時点に公開された国別のエコロジカルフットプリントのランキングです。

【世界の国別エコロジカルフットプリントランキング】

1中国5,540,000,000
2アメリカ合衆国2,660,000,000
3インド1,640,000,000
4ロシア連邦774,000,000
5日本586,000,000
6ブラジル542,000,000
7インドネシア460,000,000
8ドイツ388,000,000
9大韓民国323,000,000
10メキシコ301,000,000

※グローバル ヘクタール(gha)単位

出典:Global Footprint Network|Open Data Platform

エコロジカルフットプリントを国別に見ると、先進国や高所得国の数値が高く、地球への負荷が大きいことがわかります。

次に、1人あたりのエコロジカルフットプリントを国別に見てみましょう。

【世界の1人あたりのエコロジカルフットプリントランキング】

1カタール14.3
2ルクセンブルク13.0
3クック諸島8.3
4バーレーン8.2
5アメリカ合衆国8.1
6アラブ首長国連邦8.1
7カナダ8.1
8エストニア8.0
9クウェート7.9
10ベリーズ7.9

※グローバル ヘクタール(gha)単位

出典:Global Footprint Network|Open Data Platform

1人あたりのエコロジカルフットプリントランキング上位10ヵ国は、先進国や高所得国だけではありません。カタールなどの産油国もランクインしています。

石油を産出している国の特徴は、国民1人当たりの二酸化炭素排出量が大きくなりやすいということです。そのため1人あたりのエコロジカルフットプリントが高くなります。

日本国内のエコロジカルフットプリントのランキング

2018年時点の日本のエコロジカルフットプリントは1人あたり4.6ghaでした。もしこの水準で、世界中の人が生活をすると、2.9個分もの地球が必要だと考えられます。

ここで、WWFジャパンが2019年に公表している、県別の1人あたりのエコロジカルフットプリントランキングを見てみましょう。

【県別の1人あたりのエコロジカルフットプリントランキング】

1東京都5.24
2北海道5.11
3香川県5.04
4神奈川県4.98
5徳島県4.90
6京都府4.82
7福岡県4.80
8千葉県4.79
9広島県4.75
10高知県4.74

※グローバル ヘクタール(gha)単位

日本の1人あたりの平均エコロジカルフットプリントは、4.7ghaです。上位10都道府県は、すべて平均を上回っていることがわかります。調査では、これら10都道府県のエコロジカルフットプリントが、日本全体の57%を占めていることも判明しています。

もっとも数値が高い都道府県は東京都です。もしこの水準で世界中の人が生活するとしたら、3.1個分の地球が必要になるといわれています。

エコロジカルフットプリント削減のための3つの具体策

地球環境保全のアイデア

地球が回復できない水準に達する前に、持続可能な世界を目指す取り組みをしなければ、大切な自然環境を残せません。エコロジカルフットプリントの削減も、地球保全の有効な取り組みです。

エコロジカルフットプリントを削減するには、次の3つの策が効果的です。

  1. 生産時の投入資源や食品廃棄を減らす
  2. 環境負荷の少ない製品を選択する
  3. 再生可能エネルギーを導入する

それぞれ詳しく解説します。

生産時の投入資源や食品廃棄を減らす

人間が使う資源そのものを減らすことで、エコロジカルフットプリントを削減できます。大切なのは、必要最低限の資源を使って生産を行っていくことです。生産時の資源を削減するには、生産工程や使っている機械を見直したり、製造過程の副産物を活用したりする方法があります。

廃棄を減らして資源の無駄をなくす取り組みも重要です。例えば、日本の食品ロスは1年で500万~800万トンにのぼるといわれています。このロスをなくすことで、生産・加工・流通に関わる資源消費を削減できます。同時に、廃棄物処理にかかるエネルギーや温室効果ガスも抑制できます。

環境負荷の少ない製品を選択する

環境負荷の少ない製品を選択することも、エコロジカルフットプリント削減において重要な手段のひとつです。環境に配慮した素材を使用した製品を購入することで、間接的に自然資源の消費を減らすことができます。企業の環境保全への取り組みの支援にも繋がる点もメリットです。

 例えば、水産物を購入するときはMSC認証、林産物を購入するときはFSC認証の製品を選びましょう。これらの認証を受けた製品は、持続可能な方法で採れたものであることが証明されています。このような製品を選ぶことで、海洋資源や森林資源の保全を応援できます。

オーガニックコットン製品やフェアトレード製品、リサイクル素材製品を選ぶ方法も、選択肢のひとつです。

再生可能エネルギーを導入する

環境負荷の少ないエネルギー源「再生可能エネルギー」を導入すれば、温室効果ガスの排出削減や持続可能性の向上に繋がります。その結果、エコロジカルフットプリントの削減が可能です。

再生可能エネルギーの種類は、風力発電や太陽光発電、水力発電、ジオサーマル発電、バイオマス発電があります。なかでも風力発電や太陽光発電、水力発電は、エネルギー産生時に温室効果ガスを発生させません。

他の再生可能エネルギーも、化石燃料発電に比べて温室効果ガスの排出量が非常に少ないため、エコロジカルフットプリント削減に貢献できます。

エコロジカルフットプリント削減のために企業や自治体の行動も重要

企業や自治体の環境保全活動

エコロジカルフットプリントを削減するには、企業や自治体単位で行動することも重要です。企業や自治体は、大量生産・大量消費の社会において、エコロジカルフットプリントの大部分を占める活動をしています。

そこで企業や自治体が環境負荷を減らす行動を取ることで、エコロジカルフットプリントの大幅な削減につながります。

エコロジカルフットプリント削減の対策をご検討の際は、e-dashにご相談ください。

CO2排出量の可視化から削減への取り組みを、お客様に合わせて総合的にサポートいたします。