
近年、世界的に環境問題への関心が高まり、日本では「2050年カーボンニュートラル」宣言がされました。その取り組みの一つとして、ガソリン車を廃止する案が上がっています。
今回は、日本政府が打ち出したガソリン車廃止の方針や、廃止に向けた日本の目標と世界の動向について解説します。
目次
2035年までにガソリン車が廃止される?

2021年1月、菅元首相の施政方針演説で「2035年までに、新車販売で電動車100%を実現いたします」と発表がありました。この背景にあるのは、地球温暖化対策を目指して採択されたパリ協定です。
日本政府は、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略として「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる」としています。
今後、ガソリン車は徐々に減っていく可能性があると頭に入れておきましょう。
世界のガソリン車廃止の動き

2021年11月に開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、「販売される全ての新車を、主要市場で2035年までに、世界全体では2040年までに電気自動車(EV)などのゼロエミッション車とすることを目指す」との共同声明が発表されました。
この声明には、イギリス・スウェーデンなどの先進国24カ国が賛同し、ドイツのメルセデス・ベンツや米国フォードなどの11の会社や団体が同声明に署名しました。
このように、世界各国でガソリン車を廃止し、環境問題を考慮した自動車を生産する動きが起こっています。
ガソリン車廃止に向けて需要の増加が期待される車

日本で販売されている自動車は、ガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などがあります。
ここからは、ガソリン車廃止に向けて需要が高まると期待されている車を紹介します。
ハイブリッド車・PHEVの特徴
ハイブリッド車とPHEV車はエンジンとモーターを利用して走行する車両のことです。両者の違いは「車内に搭載されているバッテリーを外部から充電できるかどうか」です。
ハイブリッド車はエンジンの発電により充電されるため外部からの充電は不要ですが、PHEV車は車両にコンセントがあるため外部から充電ができます。
ハイブリッド車のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
ハイブリッド・PHEV車 | ・燃費性能が高い・エコカー減税が受けられる・静粛性が高い・加速性能が良い・災害時の予備電源になる | ・車両価格が高い・駆動用バッテリー交換が高額・ガソリン車に比べ中が狭い・充電の手間が必要・選べる車種が少ない |
ガソリン車に比べ燃費が良く、災害時の予備電源としても使えて便利です。一方で車両価格が高く、充電設備が少ないところがデメリットといえます。
電気自動車の特徴
電気自動車(EV)はバッテリーの電気のみを使って動く車です。温室効果ガスの排出量の削減や、世界のエネルギー問題解決をもたらすものとして期待されています。
電気自動車(EV)のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
電気自動車 | ・燃費性能が高い・静粛性が高い・加速がスムーズ・車内で家電が使える | ・車両価格が高い・充電スタンドが少ない・給電に時間がかかる・航続距離が短い |
航続距離が短いにもかかわらず充電設備が整備されていないことが、普及につながらない原因となっているのかもしれません。
大手メーカーの参入による市場の活性化が、価格や性能の改善に大きく影響すると期待されています。
燃料電池自動車の特徴
燃料電池自動車(FCV)は水素を燃料としています。ガソリンは使用しておらず、排出されるのは水(水蒸気)のみなので、地球温暖化対策に大きく貢献します。
燃料電池自動車のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
燃料電池自動車 | ・有害ガスが出ない・ガソリン車と給油時間は同じ・ガソリンよりエネルギー効率が高く、違いは2倍以上・長距離移動が可能・静粛性が高い | ・水素ステーションが少ない・製造コストが高い・静粛すぎて歩行者が気づきにくい・水素の製造過程では二酸化炭素が排出される |
燃料電池自動車は環境問題にも貢献でき、電気自動車よりも充電スピードが早いことが大きなメリットといえるでしょう。
水素ステーションが少ないのがデメリットではありますが、水素ステーションが増えることで今後乗る人も増えるのではと期待されています。
ガソリン車を廃止することのメリットと課題

自動車業界では世界規模でガソリン車を廃止する方向に動いていますが、日本でガソリン車を廃止するメリットと課題はなんでしょうか。
ここからは、ガソリン車を廃止することのメリットと課題について紹介します。
ガソリン車を廃止するメリット
ガソリン車はエンジンを稼働させるために、二酸化炭素や汚染物質を含んだガスを排出しています。しかし、電気自動車や燃料電池自動車は有害物質を排出しません。
また、電気自動車や燃料電池自動車はガソリン車とは違い、モーター走行が可能です。ガソリン車の場合はエンジンを使うため、騒音や振動が発生しますが、モーター走行の場合は、騒音や振動はあまり発生せず静かという特徴があります。
車両価格は高価ですが、ランニングコストが安く、震災時に家庭用の電源(電気自動車のみ)として利用できるなど、さまざまなシーンで活躍できるのも大きなメリットといえるでしょう。
ガソリン車廃止に向けた課題
ガソリン車廃止のメリットを紹介しましたが、課題も多いのが現状です。まず、代替として期待される電気自動車や燃料電池自動車は、ステーションが少なく不便であることが挙げられます。
また、車両価格がガソリン車に比べて高くなっていることも需要が少ない理由の一つであるといえるでしょう。価格差をどのくらい抑えられるかが、購入意欲につながると考えられます。
さらに、選べる自動車の種類が少ないことも課題です。日本では軽自動車が人気の車種となっていますが、ガソリン車の取り扱いしかありません。今後、さまざまな車種で普及することにより、需要も増えるのではないでしょうか。
今後はガソリン車に乗りづらくなる可能性も

世界的にガソリン車の新車販売の規制が始まっているなか、日本でも2030年代半ばには新車の生産・販売規制が入ってくる可能性が考えられます。
また、自動車業界の大手であるトヨタ自動車株式会社と、電気事業大手のパナソニック株式会社が合弁会社を設立し、車載用の電池開発を共同で行うなどの取り組みも加速しています。
ガソリン車の所有は規制がないため乗り続けることはできますが、税金の観点やガソリンスタンドの減少などから、ガソリン車に乗りづらくなる可能性があるでしょう。
カーボンニュートラルに向けて動き出そう
日本政府の「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる」との発言により、自動車業界でもガソリン車の廃止に伴う新しいエネルギーを活用した自動車が作られています。
まだまだステーションの数が少なく、普及が進んでいないのが現状ですが、今後はどんどん環境保全に向けて進んでいくでしょう。
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