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FIP制度とは?目的やFIT制度との違いをわかりやすく解説

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「FIP制度」とは、どのような制度か知っていますか?FIP制度は、再生エネルギーの売電をより効率的にし、スムーズなビジネスの運営を実現するものです。このFIP制度のメリットは、従来の方法に比べて時間やコストを大幅に削減できる点にあります。それでは、実際にはどのような特徴や利点があるのでしょうか?この記事で解説していきます。

2022年導入の「FIP制度」を簡単に解説

電気 電卓 発電

日本が再生可能エネルギーでの発電を電力市場にどう統合していくのか。新しい取り組みとして、2022年に導入された「FIP制度」の概要や背景を本章で詳しくご紹介します。

「FIP制度」とは?

FIP制度は「フィードイン プレミアム(Feed-in Premium)」の略称で、電気を卸市場で販売する際に、売れた分の電気に対して一定のプレミアムを上乗せできるという制度です。具体的には、再生可能エネルギーを市場で売却した際の売上げに、本制度での補助額を上乗せするシステムとなっています。

FIP制度導入の背景や目的について

再生可能エネルギーが広く普及することや、再生可能エネルギーでの電源構成比率向上を目的に、FIP制度が導入されました。政府はカーボンニュートラルを目指しており、その一環として、2030年までに再エネの電源構成比率を36〜38%まで引き上げるという目標を掲げています。

この目標を達成するための手段として、FIP制度やそれに先行する「FIT制度」が導入されました。

「FIT制度」とは何が違うのか?

電気 比較 電球

それでは、FIP制度に先行して導入された「FIT制度」の内容とはどのように変更されているのか詳しく解説していきます。

これら2つの制度はいずれも、再生可能エネルギーの普及を目的とする日本の主要な取り組みです。この章では、FIT制度の具体的な概要や、課題とFIP制度との相違点についても見ていきましょう。

「FIT制度」とは?

FIT制度は、正式には「フィードイン タリフ(Feed-in Tariff)」の略称で、固定価格での電力買取制度として2012年7月に導入されました。

この制度は、再エネ発電を行う事業者に対し、電力を特定の価格で買い取ることを約束するもので、これにより、再エネ発電への投資意欲を高め、エネルギー転換を促進することが目的とされています。

FIT制度導入後の再エネ発電量の推移

FIT制度が導入されてからの再エネ発電量は、顕著に拡大しています。具体的には、2011年度の10.4%から、2020年度には19.8%にまで増加。この増加率は、再エネ推進策としてのFIT制度の大きな成果を表していると言えます。

FIT制度の課題とFIP制度での解決策

FIT制度の導入により再生可能エネルギーへの関心は集まったものの、課題が浮上してきました。特に、太陽光発電への依存度が高まる中、FIT制度の認定を受けながら発電を開始しないケースが30万件を超えるとの報告があります。更に、国民にはこの制度のコスト負担として「賦課金」が課されている点も指摘されています。

これらの課題への対応として、新たにFIP制度が導入され、特定のプレミアム補充策として位置づけられています。

経済産業省|再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート

FIP制度を理解するためのキーワードをわかりやすく解説

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FIP制度を理解するために、いくつかのキーワードの意味を理解しましょう。本章では、FIP制度を構成する主要な用語やその意味を簡単に説明していきます。これらのキーワードを理解することで、FIP制度の導入の判断材料にすることができるでしょう。

その①「基準価格(FIP価格)」

基準価格(またはFIP価格)とは、再エネ電気が効率的に供給されるための見込みの費用を示すものです。さまざまな要因や事情を基に、あらかじめ設定されます。

FIP制度の開始時の基準価格は、FIT制度の調達価格と同じ水準に設定されていました。

その②「参照価格」

参照価格は、発電事業者が市場取引などから期待する収入の価格を指します。この価格は市場価格の動向に連動し、1カ月毎に修正が行われます。

参照価格の計算は下記の通りです。

①「卸電力市場」の価格に連動して定められる価格②「非化石価値取引市場」の価格に連動して算定された価格③バランシングコスト(後述)「参照価格」(市場取引などの期待収入)

その③「プレミアム」

プレミアムとは、基準価格と参照価格の間の差額を示すもので、再エネ発電事業者が受け取る金額です。事業者は、売電した価格に加えて、このプレミアムを上乗せした額を収入として受け取ることができます。市場の動向や参照価格の変動によって、プレミアムの金額も1カ月毎に更新される点が特徴です。

経済産業省「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」

その④「バランシングコスト」

バランシングは、再エネ発電事業者が制定する発電の見込み、すなわち「計画値」と、実際の発電量「実績値」との調整作業を意味します。計画値と実績値の差異が生じた場合、その差を補うための費用を事業者が支払う必要があり、それをバランシングコストと呼びます。

2022年度の初めには、太陽光や風力発電の事業者に対して、kWhあたり0.5円の支援が交付され、それ以降は年々その額が0.05円ずつ減少していく方針が採られています。

FIP制度のメリットとは?

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本章では、FIP制度が発電事業者や電力市場にもたらすプラスの側面を詳細に説明していきます。

メリット:発電事業者は「プレミアム」でインセンティブが確保される

「プレミアム」の存在は、発電事業者にとって大きなインセンティブとなります。なぜなら、市場価格が変動する中、蓄電池の活用などの工夫で、市場価格が高いタイミングでの売電を増やすことが可能となるからです。

発電事業者は電力の需要と供給のバランスに合わせた発電を行い、収益を最大化することが期待できるのです。

メリット:発電予測技術が高精度に進展する可能性がある

FIP制度では、インバランス費用を削減するため、再生可能エネルギー発電の高精度な予測技術が発達する可能性が高まります。この技術の進展により、再エネの電力市場への統合を促進し、結果として電力システム全体の運営コストの低減というメリットを生み出すと考えられます。

FIP制度のデメリットとは?

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FIP制度のデメリットについて考察していきます。この制度の採用により発電事業者や市場が直面するかもしれない問題点を中心に説明します。

デメリット:利益予想が困難・金銭的な負担が増える

FIP制度では、発電事業者は卸電力市場での売買を避けることができなくなります。そのため、価格の変動により売電収入が減少するリスクが高まります。さ

らに、FIT制度では免除されていたバランシングが、FIP制度では発電事業者にも義務として課せられます。この結果、計画値の設定や、それに伴うインバランスコストの支払いなど、金銭的な負担が増えることとなるのです。

デメリット:高額な運用コストに可能性がある

太陽光発電の場合、日中しか売電の機会が限られるため、蓄電設備の導入が求められます。しかし、発電所での大容量の蓄電池は非常に高価です。この高額な設備投資のため、短期間での投資資金の回収や利益の確保が必須となり、その結果、運用の難易度が高まる可能性があります。

FIP制度の導入で注目されるビジネス

ガラスの瓶に入った硬貨と植物を持つ男性

FIP制度の導入に伴い、新たなビジネスチャンスが浮上しています。本章では、その中でも特に注目されるビジネスモデルについて掘り下げて説明していきます。

「アグリゲーション・ビジネス」が注目されている

アグリゲーション・ビジネスは、複数の発電源や電力需要家の電力を束ね、効率的に電力市場に供給する役割を持つ「アグリゲーター」によって行われるビジネスです。FIP制度では、このアグリゲーション・ビジネスが活性化することを目的とし、バランシングの組成をより柔軟に行うことが認められています。電力供給の効率化とともに、新たなビジネスチャンスの創出が期待されるのです。

FIP制度利用の投資目的では無い「太陽光発電」設備

FIP制度を利用することのメリットは、単なる投資目的だけではありません。太陽光発電設備は投資目的だけでなく、電気代の削減やCO2排出の低減などの目的でもFIP制度を利用できるため、環境保護の観点からも注目されています。

再エネ発電を促進するFIP制度の可能性に期待

SDGsとビジネスマン

FIP制度は、再生可能エネルギーを日本の主要な電源として位置づけ、FIT制度を更に発展させる形で電力市場に定着させることを目的として導入が進められました。

その結果、再エネ発電事業者だけでなく、多様な企業や市民の間でも新たなビジネスの創出や、さらなる再生可能エネルギーの導入が進むことが期待されています。この制度の可能性を最大限に活かし、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた一歩として、全ての関係者の協力と取り組みが求められる時代となっています。


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