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TNFDとは
TNFDはTaskforce on Nature-related Financial Disclosuresの頭文字をとったもので、
和訳すると、『自然関連財務情報開示タスクフォース』となります。
TNFDは、中央銀行や金融監督当局が企業活動に伴う自然資本の損失がマクロ経済に重大な影響を及ぼし金融市場の不安定化を招く恐れがあるとの考えを示したことに併せ、国連開発会議やWWFなど4機関によって設立された機関であり、企業や金融機関に対し、自然資本関連情報とそれに由来する財務的インパクトの開示を促すことを目的としています。
また世界経済が、いずれ自然環境の変化によって決定的な影響を受け、停滞することを避けるため、自然を保全する活動に企業の資金を流すことを目標としています。
具体的にTNFDはどのようにして、企業による資金使用を、自然環境に悪影響を与えるものから、企業が自然環境を保護する方向へと、変化させようと試みているのでしょうか。
TNFDは企業に対し、自然関連の情報開示及びリスク管理に関するフレームワークを提供することによってこれを達成しようとしています。
近年、投資を行う判断材料として、企業の社会・環境問題に対する姿勢が重要視されています。
企業がTNFDの提供するフレームワークに沿って、自然関連の情報を開示し、リスクに対応することで、投資家たちは企業の環境への取り組みを評価しやすくなります。
環境に真摯に取り組んでいる企業には積極的に投資が集まるようになり、その結果企業が資金調達のためにも、環境を保全する活動に取り組むことを期待しています。
このようにTNFDは、他の認証のようにTNFDが何か企業を判断し認証を与えるというものではありません。
TNFDは企業に対して自然関連の財務情報について開示する方法やフレームワークを提示しています。
今現在そのフレームワークとしてTNFD最終提言v1.0が公開されています。
この最終提言では、生物多様性に関わる自然関連情報の何を特定・分析し、何を公表すべきなのかが示されています。
しかし、生物多様性ということを扱う性格上、企業の影響を定量的に数値化することは難易度が高く、まだまだ検討課題がたくさんあります。
そのため次に紹介する、温室効果ガス排出量の算定を求めるTCFDに比べると客観性・信頼性がまだまだ担保されていません。
TCFDとは?
TNFDと似た存在に、TCFDというものがあります。両者は、扱う対象が異なっています。
TCFDとは、”Task Force on Climate-related Financial Disclosures”の頭文字をとったものでこちらは和訳すると、気候関連財務情報開示タスクフォースとなります。
上記のことからもわかるように、TCFDは「気候変動」に焦点を当てており、TNFDに先立って活動を始めています。
気候変動に着目しているため、生物多様性全体に着目するTNFDに比べると指標と目標が「温室効果ガス排出量」のみとなるため比較的取り組みやすく、日本でも一部上場企業を中心にTCFDの枠組みにしたがって開示する企業が増えてきています。
またサステナビリティの国際的開示フレームワークとなるISSB基準がTCFDの考え方を引き継ぎ、今後自然資本を含む個別テーマごとの基準策定も進めていることからも、各テーマでTCFDに倣い、一定程度共通の枠組みが用いられる可能性が高いと考えられます。
実際、TNFDが開示を提言している項目が14個ある内の11個はTCFDと重なる要素が含まれています。
TNFDの開示提言に関する4つの柱
ここからは、提言の具体的な解説に移ります。
提言はガバナンス・戦略・リスクとインパクトの管理・指標と目標の4つの柱からなっています。
ガバナンス
「ガバナンス」は四つの柱の最上位に位置付けられており、
自然と関わり合う企業の管理体制に関する開示について求めています。
TCFDからは新たに、先住民族、地域社会、影響を受けるステークホルダーとの関係を説明する、という項目が付け加えられました。
戦略
自然関連の依存、インパクト、リスク、機会が、組織のビジネスモデル、戦略、財務計画に与える影響を開示します。TCFDからは新たに、企業活動・資産の所在地の開示が求められるようになりました。
リスクとインパクトの管理
組織が、自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を、特定、評価、優先順位付けし、監視する手順を開示することを求めています。
指標と目標
重要な自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を評価し管理するために使用される測定指標とターゲットを開示することを求めています。
以上が求められているのですが、これらのうちリスク・機会の評価アプローチに関しても、TNFDは提示しています。
そのフレームワークが、LEAPと呼ばれているものです。
LEAPについて
LEAPとは、Locate(発見)、Evaluate(診断)、Asses(評価)、Prepare(準備)という4つの単語の頭文字を併せた造語のことです。
Locate
まずこの段階で、自然との接点を発見します。
自社のビジネスモデルとバリューチェーンの広がりと自然との接点を見つけ、
自然の脆弱性が高いところと接している場所を特に洗い出します。
Evaluate
Locateで発見した、自然との接点において
どれくらいの依存と影響があるのかを特定します。
Assess
企業にとって、自然への依存とそれによる影響がどれくらいのリスクであるかを評価します。その際、そのリスクを軽減することとリスクの優先順位づけを行います。
Prepare
最後に対応し報告します。この段階で達成すべき指標と目標を設定し、開示に向け準備を行います。その際は戦略とリソース配分、目標設定とパフォーマンス管理、報告、公表がその中身になります。
以上のような、LEAPの枠組みに従って開示を行うことがTNFDでは求められています。
まとめ
TNFDについて本記事では解説しました。
TNFDは何かしらの認証を行う機関ではなく、企業に情報開示の項目とそれを行うためのフレームワークを提供する機関であるというところに特徴があります。
2024年1月現在、TNFDの枠組みに従って情報を開示すると表明した企業は世界で320社あります。
日本は最も参加する企業が多い国であり、80社が開示することを表明しています。
2位であるイギリスが46社であることを踏まえると、日本はTNFDの枠組みに従い開示する企業が今後増えていくと予想されます。
またすでに開示を行った企業は投資家から好意的な反応を受け取っています。
今後は温室効果ガス排出量にとどまらず、さまざまな指標の開示が求められる可能性があるため、その動向の試金石となりそうです。