「グリーン電力証書」という証書があります。再生可能エネルギーによって発電された電力に伴う付加価値を証書として取引する制度です。
今回はこの「グリーン電力証書」の仕組みや、同じような制度である「J-クレジット」、「非化石証書」との違いを解説します。ぜひ参考にしていただき、CO2削減への取り組みを進めてください。
目次
グリーン電力証書とは?
まずは、「グリーン電力証書」とはどのようなものかからの解説です。
グリーン電力は、風力、太陽光、バイオマス(生物資源)、地熱などの自然エネルギーで発電された電力のことです。グリーン電力による発電では、石油や石炭などの化石燃料による発電とは違い、CO2が発生しません。
つまり、グリーン電力には電力としての価値のほかに環境への負荷が少なく、CO2削減、化石燃料の使用抑制など、付加価値(グリーン電力環境価値という)があります。この付加価値を証書にしたのが「グリーン電力証書」で、売買ができるようになっています。
グリーン電力証書の活用事例についてご紹介!
実際にグリーン電力証書を活用している企業があります。そのような企業の中からいくつか選んで、活用事例を見てみましょう。
株式会社エフエム東京の事例
株式会社東京エフエムでは、「EARTH & HUMAN CONSCIOUS」活動を実施中。この活動の一環として、毎週月曜日5:00~24:00を「Green Monday(グリーン・マンデー)」と呼んでいます。
グリーン・マンデーの日時は、放送にかかる電力を風力やバイオマス発電などのグリーン電力の利用で賄うようにしています。
三菱地所株式会社の事例
三菱地所株式会社のグリーン電力証書の活用期間は長いです。2001年には日本自然エネルギー株式会社とグリーン証書電力の第一期契約を結びました。2016年にも契約。このときは、4カ所のプレミアムアウトレットで使用する電力の一部をグリーン電力証書による再生エネルギーに切り替えています。
2022年には、全国のプレミアムアウトレットで、フードコート客席部分やトイレなどの施設共用部で使用する電力全てをグリーン電力証書による再生可能エネルギーによって賄うことにしています。
東武鉄道株式会社の事例
東武鉄道株式会社では、バイオマス発電による「グリーン電力証書システム」を導入し、事業活動に活かしています。活用分野としては、分譲住宅事業になります。
グリーン電力住宅「FRANCA(フランサ)」では、電力使用量に相当するグリーン電力価値を持つものとして販売がされました。
戸建住宅「ソライエ清水公園アーバン パークタウン」の販売センターで使用する電力もグリーン電力証書によるものです。
グリーン電力証書のメリットについて紹介!
グリーン電力証書を活用するメリットがどこにあるのか考えてみましょう。発電事業者にとってのメリットと購入者にとってのメリットを見ていきます。
自然エネルギー発電事業者にとってのメリット
自然エネルギー発電事業者にとってのグリーン電力証書のメリットは、まず売電収入のほかに収入源が得られることです。環境付加価値の提供により、収入が増えます。その結果、増えた収入を設備の運営・改善・増強に使うことも可能です。
また、グリーン電力証書の売却で、多くの企業のCO2削減、環境改善への貢献ができます。
グリーン電力証書購入者にとってのメリット
グリーン電力証書購入者にとってのメリットは以下のようなものです。
- 企業のイメージアップにつながる
- 新たな商品への企画も生まれる
- 自主的なCO2削減目標に利用できる
- 各種報告制度に再エネの使用量として報告できる
まず、グリーン電力証書を購入した企業は、再生可能エネルギーを利用していると見なされるので、CO2削減に積極的な企業として評価が上がります。それが企業のイメージアップにもつながります。
グリーン電力の導入により、新商品の企画が生まれるかもしれません。
各企業では自主的なCO2削減目標を掲げているでしょうが、その達成実現にグリーン電力証書による再生可能エネルギーでの発電が役に立つ可能性があります。
CDP、RE100、SBT、日経環境経営度調査などの報告にも、再エネ使用量として報告が可能です。
非化石証書との違いは?
グリーン電力証書と似た制度に「非化石証書」があります。この二つの違いについて解説しましょう。
グリーン電力証書は、再生可能エネルギーによる発電で生じた付加価値を証書化したもの。一方、非化石証書は非化石燃料によって発電された電力の非化石価値を証書化したものです。
それぞれの付加価値はCO2を削減できるなどの点では共通していますが、対象の電力に少し違いが見られます。グリーン電力証書では、対象がすべて自然エネルギーです。非化石証書のほうは原子力発電も含みます。
直接の購入者も異なっています。グリーン電力証書では企業や自治体が発行事業者から購入。非化石証書は電力会社のみ購入でき、非化石取引市場での入札による購入となります。
「J-クレジット」との違いは?
「J-クレジット」とは、省エネルギー機器の導入や森林経営などにより生じたCO2などの温室効果ガスの排出量と吸収量をクレジットという形で国が承認する制度です。
J-クレジットの活用で、ランニングコストが低減し、売却益が得られ、温暖化対策のPR効果なども期待できます。
グリーン電力証書とJ-クレジットの違いですが、まず認定元が異なります。グリーン電力証書の認定元は一般財団法人日本品質保証機構で、国ではありません。一方、J-クレジットは国が認定しています。
次に、グリーン電力証書では、再生可能エネルギーで発電された電力の付加価値を取引するものですが、J-クレジットはCO2の削減そのものをテーマにしています。
グリーンエネルギー証書の動向について
グリーンエネルギー証書にはグリーン電力証書とグリーン熱証書がありますが、活用例が多いのはグリーン電力証書です。このグリーン電力証書のこれまでの推移と動向をチェックしてみましょう。
グリーン電力証書制度が始まったのは2001年。企業の地球温暖化防止への意識の高まりもあり、注目を集めました。2008年には支援団体の「グリーン・エネルギー・パートナーシップ(GEP)」も国によって設立されています。
その後も様々な追い風があり、2011年まで順調に発行量が増えていきました。
ところが、2012年に固定価格買取制度(FIT制度)が設置されます。再生可能エネルギーの電力を高く安定的に買い取るFIT制度の導入により、グリーン電力証書の利用が減少。2015年までに発行量が大きく減りました。
そこへ2014年にRE100が発足し、再生エネルギー利用が再び活発化。グリーン電力証書のニーズも高まり、発行量が増えていきます。2015年から増加に転じ、2017年には2014年と比べて2倍にまで達しました。
現在もグリーン電力証書のニーズは続いていますが、グリーン電力証書よりも価格が安いFIT制度による非化石証書のほうに事業者が流入しがちです。
今後のグリーン電力証書の動向は厳しくなりそうです。
グリーン電力証書まとめ
今回は、グリーン電力証書についての特集でした。グリーン電力証書は再生可能エネルギーの電力以外の付加価値を証書化したもので売買ができます。
売却する発電事業者にもメリットがあり、購入する企業や自治体にもメリットがあります。ぜひ活用していただき、CO2削減に貢献してください。
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