現在、地球温暖化問題は世界的な課題となっています。
日本では、温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を定めています。
そして、企業のCO2排出削減への取り組みに期待が寄せられています。
電力の供給に関しては、2016年4月からの電力自由化により電力会社を自由に選べるようになりました。
今後は、発電時のCO2排出量の削減を意識した電力会社が増えていくことでしょう。
この記事ではCO2排出削減に取り組むうえで知っておきたい「CO2排出係数」の算出方法や削減方法についてくわしく解説していきます。
目次
CO2排出係数とは?
CO2排出係数とは、電力会社が電力の供給量1kWhあたりどれだけのCO2(二酸化炭素)を排出したかを指し示す数値です。
環境省では地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき、二酸化炭素等の温室効果ガスを一定量排出する電気事業者に排出量の報告・公表を義務付けています。
CO2排出係数は、発電手法によってそれぞれ変わってきます。
発電に必要な石油・石炭・天然ガスなどの燃料の違いや地域の電力需要により差が発生するのです。
風力や太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーによる発電については、CO2 の排出がないためCO2排出係数は0となります。(実際の計算では地球温暖化対策推進法に基づき、全国平均値の0.550kg/kwhに設定されています。)
電力使用量が同じである場合、CO2排出係数の低い方がCO2排出量は少なくなります。
わたしたちがCO2排出係数の低い電力会社や、排出係数が小さいプランの電力を選択することで、企業のCO2排出量の削減につながるのです。
CO2排出係数には「基礎排出係数」と「調整後排出係数」の2つの係数があります。
基礎排出係数とは
基礎排出係数とは、電気事業者が供給した電気について、発電の際に排出したCO2排出量を販売した電力量で割った値を指します。
調整後排出係数とは
電気事業者が調達した非化石証書等の環境価値による調整を反映した後のCO2排出係数を指します。
CO2排出係数を算出する方法
CO2排出係数は本来、さまざまな事業活動で発生する単位生産量・消費量等の二酸化炭素の排出量を表す数値ですが、一般的には電力面に限った数値として使われることが多いです。
電力会社の排出係数の計算式
排出係数(kg-co2/kwh)=CO2排出量÷販売電力量
この排出係数は再生可能エネルギー発電の利用や、再生可能エネルギー発電による電力の固定価格買取制度(FIT)を推進することで抑えられます。
CO2排出量を削減するためのアイデア
ではCO2排出量はどうすれば削減できるのでしょうか。
社会全体でCO2排出量削減に向けた動きが活発化している中、考えられる4つの具体策を紹介します。
太陽光発電システムを導入する
太陽光発電システムを自社施設に導入することで、自家消費分の電力を減らし、CO2排出量を減らすことが可能です。
取り組みを対外的に伝えることは企業評価の向上につながるうえ、税制優遇措置等の活用による節税効果も期待できます。
固定価格買取制度(FIT)の要件を満たす企業は、太陽光発電でつくった電気のうち、自家消費では使い切れなかった電気を電力会社へ売電することも可能です。
蓄電システムを採用することで、災害が起きた場合でも蓄電池から一定の電力供給が見込めます。
再生可能エネルギーの活用
再生可能エネルギーとは、石油や石炭・天然ガスなどの有限な資源ではなく、太陽光や風力、水力や地熱といった自然界に常に存在するエネルギーのことを指します。
再生可能エネルギーの大きな特徴は、
「枯渇しない」
「どこにでも存在する」
「CO2を排出しない(増加させない)」
の3つです。
なお、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)については、太陽光発電はもちろん風力発電や水力発電(出力3万kW未満)、地熱発電やバイオマス発電(木質系・一般廃棄物系)を買取りの対象としています。
積極的な省エネ
「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」いわゆる省エネ法は1979年に制定されました。
日本では省エネ法に基づき、2030年を目標とした温室効果ガス(GHG)の削減を掲げており、2050年までには温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡するカーボンニュートラルが宣言されています。
企業においても省エネ推進は不可欠であり、冷凍設備や空調設備の更新、温度制御や照明のLED化、空調機フィンの洗浄などによるCO2排出量の大幅な削減が実現した事例もあるようです。
省エネ法に適した取り組みはCO2の排出量の削減につながるだけでなく、取り組みの成果や過程を自社のホームページやCSR、環境経営報告書などにPRすることで、企業イメージの向上にも期待できます。
環境問題に関わる国内外のさまざまな取り組み
CO2削減を目的とした企業の取り組みは、環境保全に貢献するだけでなく、企業価値を高めるメリットがあります。
環境問題に関わる国内外のさまざまな取り組みは以下のとおりです。
TCFD
TCFDは、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。
TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する項目について開示することを推奨しています。
SBT
SBTはScience Based Targetsの頭文字を取った言葉で、2015年のパリ協定で誕生しました。
日本語では「科学と整合した目標設定」や「科学的根拠に基づいた目標設定」などと訳されます。
ここでいう目標設定とは、いわゆる「2℃目標」です。
産業革命以降の気温上昇を2℃未満に抑えるという国際的な目標に整合するよう、各企業は温室効果ガスの排出削減目標を定める必要があります。
また、5〜15年先の長期的な目標策定が必須であることも特徴です。
CDP
CDPは、英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)です。ここでは投資家や企業はもちろん国家や地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営しています。
CDPは2000年の発足以来、グローバルな環境課題に関するエンゲージメント(働きかけ)の改善に努めてきました。
日本では2005年より活動しています。
RE100
RE100とはRenewable Energy 100%の略称です。
事業活動で消費するエネルギーを、100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブです。
RE100に加盟するには国際的・地域的な影響力が求められるため、大企業向けの取り組みといえます。
CO2排出量削減はできることから始めよう
CO2排出係数は、発電の燃料や地域の電力需要により差が発生します。
わたしたちにできることは、CO2排出係数について理解を深め、CO2排出係数の低い電気事業者を選ぶことで、温室効果ガスの排出量を削減する一助になることです。
また企業としては、自社の排出係数を把握することでCO2排出量削減に向けたさまざまな取り組みを検討できます。
脱炭素社会を実現し、地球温暖化に歯止めをかけるために大切なのは、わたしたち一人ひとりがCO2排出量削減について自覚し、できることからはじめてみることです。
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