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企業のサステナビリティの取り組みとは?事例やSDGsとの違いも解説

企業のサステナビリティの取り組みとは?メリットや背景、事例を解説

近年、企業経営や事業活動にもサステナビリティの考え方を取り入れる会社が増えてきました。

しかし、ざっくりとした意味を理解している方のなかでも、サステナビリティについて明確な言葉で説明できる人は少ないようです。この記事では、サステナビリティの定義から企業や個人の取り組み事例などをご紹介します。

サステナビリティとはどういう活動?

サステナビリティsustain(持続する)とability(能力)を合わせた名詞で、「持続可能性」を意味します。

目先の利益だけを追い求めるのではなく、自然環境や社会システムの維持にも目を向けようという理念や活動を表しています。

サステナビリティが誕生した背景

サステナビリティは、1987年に国連で開催された「環境と開発に関する世界委員会」で公表されました。

「将来世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」が重要であるという考えにより提唱されたSustainable Development(持続可能な開発)は、国連の重要課題として議論されました。その後、2015年の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されたことにより、世界中にサステナビリティの概念が広がりました。

サステナビリティとSDGsの違いや関係性

サステナビリティとは、さまざまな物事を長期的な視野でとらえ、持続可能な状態に導くことです。

それに対し、SDGs(持続可能な開発目標)は、よりよい地球環境や国際社会を長く続けるための国際的な取り決めです。

SDGsが具体的(ミクロ)な概念といわれているのに対して、サスティナビリティは巨視的(マクロ)な概念といわれています。

マクロとミクロの両面から相互に補完しており、深い関連性があります。

サステナビリティと近い意味合いを持つCSR

サスティナビリティが誕生した背景には、CSRの普及が挙げられます。

CSR(Corporate Social Responsibility)は、「企業の社会的責任」という意味があり、「企業は利益を追及するだけでなく、社会的な責任を負うべきである」とする考え方です。

CSRとサスティナビリティの違いは、範囲が限定されているかという点です。

CSRが企業を主体とした考え方であるのに対して、サスティナビリティは社会全体を主体にしています。CSRは狭義のサスティナビリティといえるでしょう。

なぜ今サステナビリティの取り組みが重要視されているのか

SDGsとの深い関わり

企業のサステナビリティの取り組みとは?メリットや背景、事例を解説

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsで、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っており、日本でも積極的に取り組まれています。

「持続可能性」というサステナビリティの考え方がSDGsの根底にあります。

サステナビリティが示す環境・社会・経済といった大まかな枠組みに対して、SDGsはそこからさらにテーマを深掘りし、具体的な項目を提示しています。

CSRの普及

サステナビリティは社会全体を持続可能な状態にしていく考え方のことを指し、サステナビリティ持続のための具体的な企業活動は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環とも言えます。

現在、環境の汚染やエネルギー問題、自然災害や人権に関する課題など、人類社会の持続を脅かすようなさまざまな要因が顕在化しています。

CSRは企業自らが社会の一員として社会に貢献する存在であるための指標です。

大企業などによる活動

2010年に国際標準化機構(ISO)は、ISO 26000(社会的責任に関する手引き)を国際規格として発行しました。現在では、様々な業界や業種でサステナビリティへの取り組みが進んでおり、その内容も多岐にわたっています。サステナビリティへの取り組みは企業イメージの向上とビジネスチャンスの拡大につながるため、大企業による活動にも注目が集まっています。

企業事例から学ぶサステナビリティへの取り組み

日本の企業もさまざまな業界や業種でサステナビリティへの取り組みが進んでいます。ここでは、企業のなかでも特に有名な取り組みについて紹介していきます。

【アパレル】株式会社ユニクロ

アパレル業界大手のユニクロのステートメント(宣言)は「服のチカラを、社会のチカラに。」です。

ユニクロでは、プラネット(地球環境)・コミュニティ(地域社会)・ピープル(個性)を3本の柱として、サステナビリティに取り組んでいます

【食品業界】山崎製パン株式会社

山崎製パンは食品ロスを最小限に抑えるため、フードバンクへの商品寄贈を行っています。

また、商品製造過程での無駄をできるだけ減らせるような商品の開発や、製造で使わなかった材料を肥料にする取り組みもはじめました。

さらに、温室効果ガスの排出量増加による異常気象が原因での原料調達量不足に備えて、調達国の分散や新規開拓なども行っています。

【飲食業界】スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

コーヒー大手のスターバックスは、調達や環境、コミュニティや文化といった観点からサステナビリティに取り組んでいます。

主な取り組みは、設定した品質基準による原料調達や、生産者や生産地域に対してフェアトレード(適正な条件での取引)守秘、生産者の労働環境を守ることなどです。

また、リサイクルや紙コップ削減の推進による環境負荷の低減や、コーヒー豆のかすなどのリサイクルは、早くから取り組みをはじめています。

【建築業界】大林組

ゼネコン大手の大林組は、2019年に2040年から2050年の目標と事業展開の方向性を定めた長期ビジョン「OSV2050(Obayashi Sustainability Vision 2050)」を策定しました。

このビジョンは地球、社会、人のサステナビリティの実現を目指しています。

内容は品質管理や環境への配慮、労働環境の整備、安全衛生といったさまざまなテーマが盛り込まれており、建設現場で働く人たちの健康や安全を確保するための取り組みを推進するなどしています。

【自動車業界】日産

日本を代表する自動車メーカー日産は「NissanSustainability2022」に取り組んでいます。自動車業界では、地球温暖化や空気汚染の原因である自動車の排出ガスについて、これまでも対策が求められてきました。

そのような中、日産は電気自動車の開発を進め、2022年度までに新車からの二酸化炭素(CO2)排出量を40%削減するという目標を掲げています。

他にも、生産や企業活動で排出される二酸化炭素や化学物質についての目標も掲げています。

海外企業からも学べるサステナビリティへの取り組み事例

海外企業の取り組みもご紹介します。

【電力】オーステッド(Ørsted A/S)

オーステッドはデンマーク・フレゼリシアに本拠を置く電力会社で、風力発電を中心に世界10カ国以上で事業を展開しています。

オーステッドは世界で最も影響力のあるサステナビリティ指標の一つ、コーポレート・ナイツ社のグローバル100インデックス(2022年度)で、「世界で最も持続可能なエネルギー企業」に4年連続で選出されました。

オーステッドのサステナビリティに関する取り組みは、世界中のどのエネルギー企業よりも早く化石燃料から再生可能エネルギーへと事業を転換したことです。

この取り組みにより、オーステッドは洋上風力発電におけるグローバル・リーダーとなりました。

【バイオテクノロジー】クリスチャンハンセン(Chr. Hansen Holding A/S)

クリスチャンハンセンは、デンマーク首都地域のヘルスホルム(Hørsholm)に本拠を置くバイオテクノロジー企業です。

世界30カ国以上に拠点を持つクリスチャンハンセンは、乳酸菌やビフィズス菌など、食品添加物に使用される培養・プロバイオティクスの分野に強みを持っています。

自社のパーパス(目標)については以下のとおり宣言しています。

Our purpose is to deliver natural innovative solutions that address global challenges by advancing food, health and productivity.

「私たちのパーパス(目標)は、食、健康、生産性を向上させることにより世界の課題に対処する自然で革新的なソリューションを提供することです」(試訳)

引用元:クリスチャンハンセン

このパーパス(目標)のもと、国連のSDGs(持続可能な開発目標)を軸にサステナビリティへの取り組みを進めており、収益の82%がSDGsへの貢献に当てられています。

【石油】ネステ(Neste Oyj)

ネステは、フィンランド・エスポーに本拠を置くエネルギー企業です。

世界10カ国以上に拠点を持つネステは、石油精製や天然ガスの採掘、石油化学製品の生産、再生可能エネルギー事業やバイオ燃料事業などを展開しています。

特に、世界最大のリニューアブル燃料メーカーとして、持続可能な石油代替航空燃料(SAF)の世界展開を拡大しています。また、オランダのマクドナルドとロジスティクス事業を手掛けるHAVIとの連携により、オランダのマクドナルド店舗で使用された調理油を再生可能燃料に変換し、HAVIのトラック燃料として使用する取り組みも発表されました。

【通信機器】シスコシステムズ(Cisco Systems Inc)

シスコシステムズは、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼに本社を置く、世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社です。

シスコが取り組むCSR(企業の社会的責任)は、従業員、地域社会、地球に恩恵をもたらすインクルーシブな未来の実現です。シスコが重点的に取り組んでいる分野は、Cisco Networking Academy などのプログラムやパートナーシップの構築、温室効果ガスの排出量削減と廃棄物を最小限に抑えるための措置、責任あるサプライチェーンを支えとする循環型経済への移行、従業員が成長できるインクルーシブな職場環境の構築やデータとプライバシーの重視です。

【ソフトウェア】オートデスク(Autodesk Inc)

オートデスク は、主にAutoCADに代表される図面作成ソフトウェアを開発している企業です。オートデスクはデータやインサイトの活用により業務効率化を図り、時間とコストの節約や廃棄物の削減につなげています。

また「今世紀半ばまでの温室効果ガス排出量のネットゼロ達成」「気候変動からの地域社会や自然環境の保護」「これらの目標の実現に向けた資金投入」という COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)が掲げる重要な目標を支援しています。

オートデスクは世界各国の気候変動対策の取り組みにおいて、テクノロジーが重要な役割を果たすと信じています。

著名人による個人のサステナビリティへの取り組み

著名人による発信も、サスティナビリティの浸透に大きな影響を与えています。

エマ・ワトソン

エマ・ワトソンは、サステナブルファッションや美容を世界に向けて発信しているハリウッド女優です。

彼女は、ハリウッドセレブのファッションリーダーとして、普段着だけでなく、オフィシャルな場でもオーガニックな方法で生産された製品を着用しています。

さらにエマ・ワトソンはグッチブランドを展開するケリングの取締役に就任し、同社のサスティナビリティ委員会のトップを務めています。

メーガン妃

イギリス王室のメーガン妃も、サスティナブルファッションで有名です。

彼女のチョイスするアイテムは、素材から染色方法、生産工程にいたるまでサスティナブルな取り組みをしており、ロイヤルツアーで身につけたアイテムは、すぐに完売するほどの人気です。

これは「メーガン効果」とも呼ばれており、ファッション業界での大きな影響力を意味します。Instagramではサステナブルファッションの紹介アカウントを開設しており、リユースとして度々同じドレスを着用してパーティーに出席しています。

ヴィクトリア・ベッカム

ヴィクトリア・ベッカムは、2008年に自身のブランドを立ち上げたシンガーです。

デザイナーとしても活躍している彼女は、ブランド立ち上げ当初から一貫してリアルファー不使用を宣言しています。

2019年にはワニなどのレザーも使用しないことを発表し、サステナブルファッションの提案に力を入れています。

企業がサステナビリティを実現するメリット

企業や商品のイメージアップにつながる

現在では多くの企業が自社のHPやCMを使ってサステナビリティへの取り組みをアピールしています。

SDGs(持続可能な開発目標)が注目されたことにより、紙ストローなど環境に配慮した商品やサービスを提供する企業を選ぶ消費者は年々増えているようです。

環境問題や社会問題に積極的に取り組むことで、社会全体に貢献している企業としてイメージアップにつながります。

新しい事業や取引先の開拓につながる

企業がサステナビリティに取り組むことは、新たなビジネスチャンスにもつながります。

たとえば、環境に対する課題を解決するために開発した技術は、新規事業の創出や、新たなサービスを生みだす可能性が高いです。

また、サステナビリティを実現するための取り組みにより新しい視点が生まれ、イノベーションが起こる可能性もあります。

また、サステナビリティに取り組めば、企業同士の関係性も構築できます。

経営資源の見直し

サステナビリティへの取り組みは、経営資源の見直しにも繋がります。

ムダを省くことも、環境や社会を良くするためには必要です。

飲食店でムダな廃棄を減らすための施策を行えば、より環境にやさしい事業を展開できます。

また、アパレル業界であれば、売れ残って廃棄していた商品をボランティアに回すといった活動が社会貢献につながります。サステナビリティに取り組んでムダをなくすことは、自社のコスト削減につながります。

従業員の満足度向上

従業員が健康で働きやすい会社を作ることもサステナビリティへの取り組みのひとつです。

この取り組みは企業の従業員の満足度向上にも繋がります。

長時間労働やパワハラが社会問題となっている日本の企業では、力を入れて取り組むべき課題だと言えるでしょう。

この課題を解決すれば、従業員のモチベーションアップに繋がり、採用においても有利に働くはずです。

企業のサステナビリティへの取り組みは、会社の外側だけではなく、内部にも働きかけができるのです。

サステナビリティに取り組む際の注意点

サステナビリティは利益を最優先にするものではありません。

そのため、サステナビリティによって手間やコストが余分にかかってしまう可能性も考えられます。

サステナビリティに関する新しい取り組みが定着するまで時間がかかるのはもちろん、これまで行ってきた業務の効率が落ちてしまうケースもあります。

また、環境に配慮することでコストが上がってしまう可能性もあります。

サステナビリティに取り組む際は、大企業はもちろん、中小企業はとくに本業に大きな影響が出ない範囲で取り組むことを推奨します。

環境や社会に対する貢献も大事なことですが、企業である以上、利益を出すことが第一目標です。

あくまでも本業を軸にした利益を考え、その中でできる取り組みに抑えましょう。

サステナビリティを測定する指標は2つ

サステナビリティを測定する指標として2つ、GRIスタンダードDJSIがあります。

GRIスタンダード

GRIスタンダードは、UNEP(国連環境計画)の公認団体であるGRI(Global Reporting Initiative)が作成したガイドラインです。

GRIスタンダードにはサステナビリティの国際的なスタンダードが記載されています。

このスタンダードに基づいて作成されたサステナビリティ報告書では、組織が持続可能な発展に対して与えるプラスおよびマイナスの寄与に関する情報が提供されています。

GRIによる報告書の枠組みを適用することで、企業は自社が社会に与える影響を測定できるのです。

DJSI

DJSI(The Dow Jones Sustainability Indices)は、アメリカとスイスの企業によって開発されたサステナビリティを測定するための株式指標です。

DJSIはESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から、世界の主要企業のサステナビリティを評価し、総合的に優れた企業をDJSI銘柄として選定しています。

ESGインデックスとしては最も知名度の高いDJSIは、時価総額が世界上位2,500社およびアジア太平洋地域の時価総額上位600社が評価対象となっています。

事例を参考にできることから考えてみよう

事例を参考にできることから考えてみよう

いかがでしょうか。サステナビリティの活動についてご理解いただけましたか。

サスティナビリティは、誰にとっても住みやすい社会を作るために、欠かすことのできない概念です。

現代の企業は利益を追求するだけでなく、社会的な責任も強く求められています。

サスティナビリティを軽視することは、企業の信用を落とすことにもなりかねません。

そうした事態を防ぐためにも、また、社会的な発展のためにも、サステナビリティについて考えていきましょう。

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