ENEOSは石油・石炭・天然ガスなどの精製・販売を中心に行っている会社です。
ガソリンスタンドで、給油をしたことがある方もいるでしょう。
ENEOSは化石燃料を扱っていることから、二酸化炭素の排出問題について積極的に取り組んでおり、「2040年のあるべき姿として低炭素・循環型社会を実現し、自社排出分のカーボンニュートラルに取り組む」という方針を打ち出しています。今回は、このENEOSのカーボンニュートラル計画に注目し内容を紹介します。
目次
カーボンニュートラルとは?
ENEOSのカーボンニュートラル計画について説明する前に、カーボンニュートラルとは何を意味しているのかについて解説します。
カーボンニュートラルは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を実質0にすることを指します。
実質0というのが重要な点で、「温室効果ガスの排出そのものをなくす」ことではありません。
排出温室効果ガスと、植物などが吸収する分を差し引いて0にすることがカーボンニュートラルの定義です。
カーボンニュートラル社会の実現には、政府、企業、個人の協力が必要であり、持続可能な地球環境を築くための重要な目標とされています。
ENEOSグループのカーボンニュートラル計画について
ENEOSのカーボンニュートラル計画について解説します。2022年5月13日、ENEOSでは「ENEOSグループのカーボンニュートラル計画について」を発表しました。
次のような目標を設定しています。
2040年のありたい姿である低炭素・循環型社会の実現へ貢献する
引用元:ENEOS|ENEOSグループのカーボンニュートラル計画について
今後の日本政府のCO2削減への取り組みや国際的な議論の行方を見つつ、新しい計画を策定しています。
スコープ1※1とスコープ2※2において、CO2排出量を2040年度までにネット0にし、2030年度までに2013年度比46%排出量削減を目指すとしています。目標達成のためにCCS※3事業やCO2回収、貯蓄に取り組むとしています。
※1.燃料の燃焼などによる直接排出
※2.電気、熱、蒸気などの使用による間接排出
※3.二酸化炭素の回収・貯蔵技術で、排出された二酸化炭素(CO2)をほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入すること
政府や他企業とも歩調を合わせ、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて舵を切っています。
ENEOSが目指すCCS事業:CO2回収・貯留の取り組み
ENEOSはCO2排出削減のために、CO2回収・貯留(CCS)事業を強化しています。この技術は製油所から排出されるCO2を地下に貯蔵するもので、2030年までには300万トンのCO2貯蔵を目指しています。
この大きな目標達成のため、ENEOSはJパワーと提携し、新たな準備会社を設立。西日本地域での事業展開を計画しています。さらに、地域自治体と密接に連携して地下貯蔵可能な地域の調査を開始し、CCS事業の普及とスムーズな実施を推進しています。
ENEOSのCO2除去とJ-クレジット活用:森林との連携で新たな環境価値を創造
他にも、2050年までのカーボンニュートラルの目標達成に向け、CO2除去事業とCO2削減に両面で取り組んでいます。その一環として、森林由来のJ-クレジットを活用し、新潟県農林公社と協力しています。
新潟県の森林業では人材不足が問題になっていましたが、ENEOSがJ-クレジットを購入し、その収益を森林整備に投入することで、森林のCO2吸収力を高める取り組みが可能になりました。
ENEOSは、自社のCO2排出をオフセットするために森林由来のJ-クレジットを活用し、全国的に森林由来クレジットの生成と利用を推進します。これにより、各地域での収益が森林管理に還元され、国内の森林資源保全に貢献しています。
ENEOSの水素事業:カーボンニュートラルへの鍵
CO2を排出しない水素エネルギーの用途は多岐に渡り、カーボンニュートラル実現に重要な要素となっています。
そこで、ENEOSグループは持続可能な成長のために、「次世代エネルギー供給事業」の一部として、水素を中心にした新規ビジネスを推進しています。
具体的には、CO2排出のない水素サプライチェーンの構築、地元で生産・消費されるエネルギー供給システムの展開、そして運輸部門向けの水素・合成燃料供給事業の拡大などを進めています。
製油所を水素供給の拠点として活用し、ENEOSが持っている豊富な知識と既存のインフラを最大限に活かすことで、地元産業のニーズに対応することが可能となっています。
これらのENEOSの水素ビジネスは、カーボンニュートラル社会への大きな一歩となり、高い期待を寄せられています。
ENEOSの合成燃料:カーボンニュートラルな次世代燃料
ENEOSグループは、全国47カ所で水素ステーション事業を運営し、商用車を中心に燃料電池車の普及を促進しています。
また、再生可能エネルギー由来のCO2フリー水素の製造・販売を目指し、水電解装置の設置を計画しています。
合成燃料は既存のエンジンや燃料供給インフラに対応できるため、電動化や水素利用が難しい領域でも活用できます。これにより、カーボンニュートラルな燃料としての使用が期待されています。
ENEOSグループは、合成燃料の普及と拡大に向けた取り組みを推進しており、効率的な製造プロセスや高性能な触媒の開発にも重点を置いています。
企業がカーボンニュートラルへ取り組む主なメリットとは?
eneosをはじめ多くの企業がカーボンニュートラルへの取り組みを行っています。企業がそのような取り組みをするメリットは何か、解説します。
発電コストなどの開発コストを削減できる
第1は発電などでかかる開発コストを削減できることが挙げられます。太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入で、発電コストが下がる可能性があります。自家発電の設置で、今後予想される化石燃料の高騰に向けての準備もできます。
太陽光発電などの自家発電装置を設置するコストはかかりますが、長期的に見れば採算も取れ、プラスに転じます。導入コストさえ準備できれば、企業の財政改善にも大きく貢献します。
また、カーボンニュートラルに関する補助金や助成金を受けられる場合もあり、取り組みコストが生じてもサポートを受けられます。
企業の信頼性・イメージの向上になる
企業がカーボンニュートラルに取り組む2つ目のメリットは、信頼性・イメージの向上になることです。地球温暖化への懸念が深まる現代では、カーボンニュートラルに積極的に取り組んでいる企業は評価も上がります。
環境に優しい企業なら信頼できる、優れた会社であるとのイメージも生まれます。
逆に言えば、今どきカーボンニュートラルに取り組んでいない企業では、人々の見る目も悪くなる可能性が高まります。環境問題の改善に懸命に取り組んでいる証明を実施することで、企業イメージアップにつながります。
ESG投資の対象になる
企業がカーボンニュートラルに取り組む第3のメリットは、ESG投資の対象になることです。ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素を重視した投資です。
従来は、企業の財務情報を注視しながらの投資が主でしたが、最近はカーボンニュートラルの問題があるため、ESG投資が積極的に実施されています。
企業がカーボンニュートラルへ取り組む方法について
実際に企業がカーボンニュートラルに取り組むための方法を紹介しましょう。
省エネルギー(省エネ)の推進
まずは省エネルギーの推進です。エネルギーの浪費をやめ、節約することで温室効果ガスの排出を削減できます。例えば、LED照明(蛍光灯など)、インバーター(流量調整方法)、ヒートポンプ(廃熱回収)などの設置によって、大きなエネルギー削減効果が期待できます。
2022年9月14日からは省エネ最適化診断の受付も開始されました。エネルギー利用を最適化する新しい診断サービスを受けられるようになります。
再生可能エネルギー(再エネ)への切り替え
化石燃料で発電していたのを再生可能エネルギーによる発電に切り替えることでもカーボンニュートラルを実現できます。再生可能エネルギーの主なものとしては、太陽光、風力、水力がありますが、そのほかにもバイオマス、地熱、太陽熱、地中熱などさまざまです。
実施の方法としては、自社で再生可能エネルギーの施設を設置するのが第1です。第2の方法は、再生可能エネルギーで発電された電気を小売電気事業者から購入することです。第3の方法は、グリーン電力証書やJ-クレジットなど、再生可能エネルギーの環境価値を購入することが挙げられます。
ネガティブエミッション
カーボンニュートラルというと、最初から二酸化炭素などを排出しないようにすることが課題となっていますが、そのほかに大気中の二酸化炭素を回収して・除去する方法もあります。ネガティブエミッションという技術で可能になります。
具体的な技術としては、次のようなものです。
- BECCS:バイオマスエネルギーの燃焼により発生した二酸化炭素を捕集・貯留する技術
- DAC:大気中の二酸化炭素を直接捕集する技術
- 土壌炭素貯留:有機物を土壌に貯蔵・管理する技術
- バイオ炭:有機物を熱分解により炭化しを土壌に埋設することにより炭素を固定する技術
ほかにもありますが、これらの技術を活用することでカーボンニュートラルの実現を目指します。
カーボン・オフセット
二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量削減を目指していても、達成できないことがあります。その場合に、排出量に見合った温室効果ガス削減活動に投資することで埋め合わせをするのがカーボン・オフセットです。
日本の環境省でもカーボン・オフセットフォーラム(J-COF)を設立し、情報収集・提供・相談支援などを行っています。カーボン・オフセットで本来の二酸化炭素削減努力がおろそかになってはいけませんが、どうしても排出量削減が実現できないときは、埋め合わせで対処してください。
ENEOSカーボンニュートラルまとめ
二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量増加で様々な問題が発生しています。気候変動もそのうちの一つで、各国で甚大な被害が起きています。このような事態を受けて、民間企業でもカーボンニュートラル実現への取り組みを実施中です。今回はその中のENEOSの例を取り上げてみました。
ぜひこの例も参考にしていただき、皆様の企業でも積極的にカーボンニュートラルへの取り組みを行ってください。
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