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J-クレジット制度とは?仕組みやメリットをわかりやすく解説

J‐クレジット制度とは、温室効果ガスの排出量削減や吸収量を「クレジット」として承認してもらう国が運営する制度です。地球温暖化問題に向けた取り組みとして、2030年まで継続予定です。本記事ではJ-クレジット制度の概要やメリット、課題点を解説します。

J-クレジット制度とは

地球儀の横にある上昇中のグラフ

J-クレジット制度とは国が運営する制度の1つで、温室効果ガスの排出量削減量や吸収量を「クレジット」として認証する制度です。経済産業省の「国内クレジット制度」と環境省の「オフセット・クレジット制度」が統合する形で、2013年に誕生しました。

実際には目に見えない温室効果ガスの排出量や吸収量をクレジットで可視化することで、他企業との売買が可能になります。地球温暖化問題への取り組みが求められるなか、日本ではJ-クレジット制度を柱にCO2の削減と同時に経済の活性化を図っています。

J-クレジットの仕組み

書類の数字を計算する男性の手元

J-クレジット制度をより詳しく理解するために、次の3つの段階に分けてご説明します。

  • プロジェクトの登録
  • モニタリングの実施
  • クレジットの認証・発行

J-クレジット制度に参加するにあたり、各工程で知っておきたいポイントも確認しておきましょう。

プロジェクトの登録

J-クレジット制度への参加でまず必要なのが、実施を予定している温室効果ガス排出削減・吸収事業プロジェクトの登録です。どのような内容のプロジェクトであるかをまとめた計画書を作成し、登録申請に臨みます。

申請内容はJ-クレジット制度認証委員会によって検討され、必要に応じて現地審査も行われます。無事にプロジェクトが承認されれば、晴れてJ-クレジット制度への参加が認められます。

モニタリングの実施

プロジェクトの登録が完了すると、次は燃料使用量などを計測するモニタリングの段階です。参加企業や自治体は、自分たちが作成したプロジェクト計画書に基づいて活動を行い、温室効果ガスの排出削減量・吸収量を算出したモニタリング報告書をまとめます。

審査機関は提出されたモニタリング報告書の内容を審査し、適切な活動が実施され効果が出ているかを確認します。

クレジットの認証・発行

モニタリング審査を通過できれば、いよいよクレジットの認証と発行です。モニタリング報告書の提出から審査、クレジットが実際に発行されるまでには平均1~2年かかる点には留意しましょう。

J-クレジット制度で発行されたクレジットは、売却してさらなる省エネ活動に再投資できます。また、クレジット創出企業としてのPR効果も期待できるでしょう。

美しい景色と雲でできたCO2の文字

J-クレジット制度のメリット

美しい地球を支える手

J-クレジット制度は、クレジットの創出者と購入者のそれぞれにメリットのある制度です。両者が得られるメリットを正しく把握しておきましょう。

創出者のメリット

クレジット創出者側のメリットは、主に次の4つです。

  • ランニングコストの低下
  • クレジット売却による利益
  • 環境問題に取り組む企業としてのPR効果
  • 新たなネットワークの構築

クレジットは売買可能であるため、利益創出の面が大きく取り上げられがちですが、J-クレジット制度参加で得られるその他の効果にも注目してみてください。

ランニングコストの低下

クレジット創出者への1つ目のメリットは、J-クレジット制度に参加し温室効果ガスの削減に取り組むことが、ランニングコストを抑える成果につながる点です。プロジェクトを進めるためには、省エネ設備や再生可能エネルギーの導入が欠かせません。

利用する設備やエネルギーの見直しによって、ランニングコストが削減されます。

クレジット売却による利益

創出したクレジットは、購入を希望する事業者に対して売却が可能です。つまり、J-クレジット制度への参加で投資した費用の一部を回収できる仕組みになっています。

あるいはJ-クレジット制度で得た売却益を、さらなる環境保護の取り組みに投資する企業も多く、地球温暖化問題への持続的な取り組みが進められています。

環境問題に取り組む企業としてのPR効果

J-クレジット制度に登録したプロジェクトを完遂しクレジットを創出したという事実は、環境問題に積極的に取り組む姿勢をPRするために有効です。

消費者や利用者にプラスの企業イメージを与えられるだけではなく、取り組みに賛同した団体から支援を受けられる可能性もあります。

新たなネットワークの構築

クレジットが新たな企業や事業者との架け橋になる可能性があるのも、J-クレジット制度に参加する大きなメリットです。クレジットの売買をきっかけに、新しいビジネスチャンスに恵まれる事例もあります。

企業としての環境問題への取り組みが認められることで、新たなネットワークの構築がしやすくなります。

購入者のメリット

クレジットを購入する側のメリットは、次のとおりです。

  • カーボン・オフセットへの利用
  • 環境貢献企業としてのPR効果
  • 企業としての評価向上
  • 新たなネットワークの構築

クレジットを生み出す側だけではなく、購入する側にもメリットがあるのがJ-クレジット制度です。積極的にプロジェクトを先導する立場でなくても、クレジットの購入者として地球温暖化問題に取り組むことができます。

カーボン・オフセットへの利用

クレジットを購入すれば、自社の排出した温室効果ガスの穴埋めができます。カーボン・オフセットでは、排出量削減や吸収に成功した温室効果ガスを、別の場所で排出された分にあてがえます。

自社での取り組みが難しい場合でも、環境問題に関われる仕組みです。積極的にカーボン・オフセットを行えば、商品やサービスに付加価値を与える効果も生まれます。

環境貢献企業としてのPR効果

クレジットの購入には、環境貢献企業としてのイメージを高めてくれるメリットがあります。実際にJ-クレジット制度に参加するには、設備投資や再生可能エネルギー導入の費用負担といった問題があります。

しかし、クレジット購入という形であれば、可能な範囲で環境問題に取り組むことが出来るので、企業としての好感度向上に繋がります。

企業としての評価向上

消費者や利用者に向けたPRだけでなく、クレジットの購入は各種企業調査の評価を上げることにつながります。クレジットの購入実績は、地球温暖化対策推進法やエネルギーの使用の合理化等に関する法律の報告にも活用可能です。

企業として評価を受ける場面において、J-クレジット制度の参加はアピールポイントとなります。

ビジネスネットワークの拡大

クレジットのやりとりをするなかで、新たな事業者との出会いが生まれます。これまでに接点のなかった、環境意識の強い企業との関わりができることで、新たなビジネスネットワークに参加できます。

クレジット売買を重ね、創出者と信頼関係が築ければ、新しいビジネス展開が始まる可能性もあるでしょう。

J-クレジット制度に残された3つの課題

青空と風力発電の風車

メリットの大きいJ-クレジット制度ですが、次のような課題があるのも事実です。

  • 登録までに時間がかかる
  • 創出者がメリットを得にくい
  • モニタリングの負担が大きい

参加を検討するに際して知っておきたい、J-クレジット制度の3つの課題を解説します。

登録までに時間がかかる

J-クレジット制度は、すぐに参加できるものではありません。クレジットの創出者としてプロジェクトを登録するには、制度事務局への相談・支援内容や支援対象の確認・計画書の作成・審査といった多くの工程が必要とされます。

プロジェクトの進め方をまとめた計画書を提出してから、正式に承認・登録されるまでには約3~6か月かかるのが一般的です。自社のタイミングだけで、すぐにプロジェクトをスタートできるわけではないのが、J-クレジット制度の1つ目の課題です。

創出者がメリットを得にくい

クレジット創出者にとっては、クレジット売却益を得られるまでの期間が長い点がデメリットとなります。先述したとおり、J-クレジット制度はプロジェクトの登録までに長ければ半年程度、プロジェクトの実施期間をはさみ、モニタリング報告書の作成からクレジットの発行まで約1~2年かかります。

スケジュール全体で見ると、プロジェクトの登録に動き出してからクレジットの創出・売却までには数年単位での時間が必要な計算です。せっかく設備投資に使った費用の一部を回収できるとはいっても、クレジットの売却までの月日がかかるため、創出者がメリットを得にくい状況だといえるでしょう。

モニタリングの負担が大きい

モニタリングの負担が大きいという理由で、J-クレジット制度への参加に積極的になれない企業も多いようです。クレジットを創出するには、プロジェクトの実施と並行して精密なモニタリングをする必要があります。

温室効果ガス排出削減・吸収のための設備だけではなく、モニタリング設備の準備にも費用がかかるのがJ-クレジット制度のデメリットです。特に中小企業にとっては、モニタリング実施の負担が大きくなる傾向があります。

J-クレジット制度に参加して環境問題にコミットしよう

スーツの男性が緑豊かな地球を手に乗せている

J-クレジット制度とは、温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度です。世界各国の対応が求められている地球温暖化問題への取り組みとして、2030年までの実施が予定されています。

クレジット創出者と購入者の両方にメリットがあるのが特徴で、自分にできる範囲での参加も可能です。J-クレジット制度の仕組みや流れ、注意点を正しく把握し、参加を検討してみてください。

J-クレジット制度に参加しプロジェクトを確実に進めていくには、実際には目に見えない温室効果ガスを可視化する必要があります。そんなとき便利なのが、「e-dash」が提供しているCO2排出量削減への取り組みを総合的にサポートするサービスプラットフォームです。

排出量の自動計算や分析はもちろん、環境報告への活用、クリーンエネルギー調達のアドバイスまでご提供します。効率的に温室効果ガス削減に取り組むために、まずは「e-dash」のデモンストレーション利用をお試しください。