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木質バイオマスとは?利用方法やメリット、注目される理由を解説

深刻な問題となっている地球温暖化を食い止めるために、世界ではさまざまな対策を行なっています。温室効果ガス、特に二酸化炭素の削減は後回しできない課題であり、各国が知恵を絞ってさまざまな取り組みを進めている状況です。

そのなかの一つに、木質バイオマスのエネルギー利用があります。今回は、木質バイオマスに焦点を当てて、利用方法やメリット、注目される理由を解説します。

木質バイオマスとは?

木 木質 木材

バイオマス(biomass)とは、動植物から生まれた生物資源の総称です。語源は生物(bio)の量(mass)で、現在では「再生可能な有機性資源」のことを指します。

そのなかでも、木材からなるバイオマスのことを「木質バイオマス」と呼びます。現在では、これを熱源や発電に利用する技術が進歩しています。

森林は、つねに光合成によって大気中の二酸化炭素(CO2)の吸収・固定を行っています。木質バイオマスを燃焼するとCO2を排出しますが、森林が適切に管理・更新されていけば、再び光合成によりCO2が吸収・固定化されます。

このことから、木質バイオマスのエネルギーは、トータルで見るとCO2濃度を増やすことのない「カーボンニュートラル(炭素中立)」だと言えます。こうした観点から、再生可能エネルギーの一つとして挙げられています。

木質バイオマスは3種類に分類できる

木質バイオマスは、大きく「製材工場等残材」「建設発生木材」「未利用間伐材」の3つに分類することができます。

「製材工場等残材」は、製材工場などから発生する樹皮や端材、のこ屑などです。「建設発生木材」は、土木工事の建設現場や住宅などを解体する際に発生する木材です。そして、「未利用間伐材」は、間伐や主伐により伐採された木材のうち、未利用のまま森林に置かれているものを指します。

「製材工場等残材」と「建設発生木材」は、そのほとんどが燃料をはじめ、紙パルプ、家畜敷料などの原料として利用されているのに対し、「未利用間伐材」は年間2,000立方メートル発生しています。今後は、この「未利用間伐材」の利用拡大が課題となっており、木質バイオマスのエネルギー利用拡大が期待されています。

木質バイオマスのメリット

木質バイオマスのメリットには、以下が挙げられます。

地球温暖化対策になる

木質バイオマスのエネルギー利用はカーボンニュートラルなので、地球温暖化への対策として有効です。

廃棄物の発生を抑制

未利用間伐材など活用されていない廃棄物を燃料とするので、廃棄物の再利用や減少につながり、循環型社会の形成に大きく寄与します。

エネルギー自給率の向上

日本はエネルギー自給率が低いですが、木質バイオマスがエネルギー源になれば、森林資源が豊富な日本で輸入に依存しないエネルギー源を調達できるようになります。

山村地域の活性化

山村地域において、衰退した林業に代わる新たなビジネスや雇用の創出という経済活性化の効果も期待されます。

木質バイオマスのデメリット

一方、木質バイオマスをエネルギーとして利用する場合のデメリットとしては、燃料の安定的・効率的な確保が難しいという点が挙げられます。

木質バイオマス発電事業で考えてみましょう。発電事業にとって「燃料の調達」は、安定的に低コストで実現されなければなりません。一方、地域の林業・木材産業の事業者にとっては、木質バイオマスは森林整備や素材生産の副産物として発生するものです。

双方にとって、持続可能な流通の仕組みと価格調整の体制構築が必要とする状況になっています。

木質バイオマスの利用方法

バイオマス暖房発電所 バイオマスエネルギー

木質バイオマスは、エネルギーとして利用する方法と燃料を製造する利用方法があります。

エネルギー利用の方法で挙げられるのは、バイオマス発電とバイオマス熱利用です。

バイオマス発電は木質バイオマスを燃料として燃やしたり、一度ガス化してタービンを回し、発電機を動かすことで発電を行います。基本的な原理は火力発電所の仕組みと同じで、熱エネルギーを運動エネルギー(回転エネルギー)に変換し、電気エネルギーを発生させます。

バイオマス熱利用はその名の通り木質バイオマスを燃料として燃やし、熱エネルギーを利用するものです。温泉施設やプールでの給湯、工場やオフィス、宿泊施設、住宅の暖房に利用されています。

バイオマス発電においても熱利用は可能で、コジェネレーション(熱電併給)システムとして導入が進んでいるところです。

バイオマス燃料製造には、木質ペレット、バイオエタノール、バイオガス、バイオディーゼル燃料などがあります。

今、木質バイオマスが注目される理由

カーボンニュートラル

大きな課題となっている地球温暖化は、地球に生きる私たちの誰もが当事者である問題です。私たちが営む生活から排出される二酸化炭素を減らすことが求められています。

かつての日本では、暖を取ったり煮炊きしたりするために、薪や炭が燃料として盛んに利用されていました。

しかし、明治維新後の近代化や高度経済成長期を経て、エネルギーの主役は木材から石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料に代わりました。その結果、便利な生活を手に入れた代償に、膨大なCO2が排出されるようになりました。

現在、地球温暖化の状況を打開するために、世界的に脱炭素化の取り組みが進んでいます。再生可能エネルギーの拡大もその一つですが、かつて私たちが利用していた木質バイオマスをエネルギー源として見つめ直し、新しい技術で活用することに注目が集まっています。

国の支援や補助金について

拡大が期待される木質バイオマスのエネルギー利用ですが、化石燃料との価格競争に打ち勝つためにも、ほかの再生可能エネルギーと同じく国の支援・補助金が必要となります。

バイオマス発電に関しては、「FIT制度」が挙げられます。FITとは「フィード・イン・タリフ」の略ですが固定買取制度のことで、発電した電気を全量固定価格で一定期間(バイオマス発電は20年間)買取を保証するものです。この制度があることで事業の見通しが立ち、事業への投資が進みます。

2022年度の木質バイオマス発電の買取価格は、条件によって1kW/h13円から40円になります。以下、一覧表です。

電源規模2022年度2023年度
バイオマス発電(一般木材等)10,000kW未満24円24円
バイオマス発電(未利用材)2,000kW未満40円40円
2,000kW以上32円32円32円
バイオマス発電(建設資材廃棄物)全規模13円13円
バイオマス発電(一般廃棄物・その他)全規模17円17円

現在の木質バイオマスの利用状況

現在、木質バイオマスのエネルギー利用状況はどれくらい進展しているのでしょうか。

2022年8月1日発表された「令和3年木質バイオマスエネルギー利用動向調査結果」によると、2021年にエネルギーとして利用した木質バイオマスのうち木材チップの量は、1,069万3,197トンとなり、前年に比べ2.7%増加しました。

このうち、未利用間伐材由来の木材チップは順調に利用が進んでおり、2015年には116.8万トンだったものが、2021年には411.4万トンにまで伸びています(※)。

第6次エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)では、2030年バイオマス発電を日本全体の発電量の5%にする目標を立てているので、道のりはまだまだ遠いですが、少しずつ前進していることがわかります。

木質バイオマスの活用が、今後の環境問題改善への鍵となる

気候変動 地球温暖化

日本は資源に乏しい国とされてきましたが、木質バイオマスに関しては資源豊富な国です。木質バイオマスの活用は地球温暖化対策に貢献するとともに、日本を輸入に依存しないエネルギー立国にする可能性も持っています。

脱炭素社会の実現に向けて、木質バイオマスのエネルギー利用についても引き続き期待されています。

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