オンサイトPPAは再生可能エネルギーを長期的に購入する契約で、初期費用がかからず太陽光発電を導入できるモデルです。オンサイトPPAの特徴や取り入れることで得られるメリット・デメリットについての解説や、オフサイトPPAとの違いもご紹介します。
目次
再生エネルギーとオンサイトPPAとは
オンサイトPPAは、再生可能エネルギー発電設備を所有する企業や投資家が、電力を消費する企業や自治体、政府など(以下、電力需要者)に対して、一定期間にわたって電力を供給する契約です。
契約期間が数年から数十年に及ぶ場合があり、供給量や価格だけでなく、契約終了時に施設を譲渡するか買い取りを行うかといった細かい条件まで契約に含まれます。
契約条件は、電力需要者と再生可能エネルギー発電事業者が互いに合意したものであり、一般的には、市場価格よりも安価な価格で電力を供給することが条件になります。
電力需要者にとってオンサイトPPAのメリットは、再生可能エネルギーを利用することで、二酸化炭素排出量を削減することができるため、環境負荷を低減することができます。
他にもメリットとして、再生可能エネルギーの電力を調達することで、エネルギー価格の変動リスクを低減することも大きな魅力の一つだといえます。
再生可能エネルギー発電事業者にとってのメリットは、オンサイトPPAの契約を行うことで定期的な安定した収益の確保があります。
また、再生可能エネルギー発電設備を新規に建設する場合には、PPA契約があることで、融資を受けやすくなる場合があります。
オンサイトPPAの特徴として、契約者間でエネルギーの価値を決定することが挙げられます。
再生可能エネルギーとは?
カーボンニュートラルの実現に向けて、重要な要素として再生可能エネルギーがあります。
再生可能エネルギーは、字の通り再生可能な資源から得られるエネルギーを指しています。
そのため有限である化石燃料に対して、再生可能エネルギーは無制限に利用することができます。一部の技術を除いて、再生エネルギーは基本的には、地球温暖化や環境破壊を引き起こさないために開発・利用されています。
再生可能エネルギーには、太陽光や風力、水力や地熱にバイオマスといったエネルギーが挙げられます。発電量が天候や季節に影響を受けるなどの課題もありますが、自然の力や過程が動力源となっていることが無制限に利用できる理由といえます。
それぞれについて簡単に説明すると以下の通りになります。
- ・太陽光発電は、集めた太陽光を利用して太陽光発電システムによって電力を生み出します。
- ・水力発電は、水の流れを利用してダムや水力発電所によって電力を生み出します。
- ・風力発電は、風を利用して風力発電機によって電力を生み出します。
- ・地熱発電は、地下から湧き出る熱を利用して電力を生み出します。
- ・バイオマス発電は、有機物を燃やすことによって発生する熱エネルギーを利用して電力を生み出します。
地球温暖化対策として、再生可能エネルギーは綺麗で地球に優しいため持続可能な社会の実現に向けて重要なエネルギー源として使用されています。前述の通り、再生可能エネルギーはエネルギーの安全保証に繋がるだけでなく、国内のエネルギー自給率を引き上げる効果も期待されています。
オンサイトPPAとオフサイトPPAはなにが違う?
PPAには、オンサイトPPA以外にオフサイトPPAという種類も存在します。
オンサイトPPAは発電事業者が所有する太陽光発電設備を敷地内に設けています。一方、オフサイトPPAの場合は敷地外に設置される仕組みです。
他にも、以下のような違いがあります。
オンサイトPPA | オフサイトPPA | |
供給方法 | 発電事業者から需要家 | 発電事業者→小売電気事業者→需要家 |
設置スペース | 必要 | 不要 |
発電規模 | 小規模~中規模 | 中規模~大規模 |
発電量の増量 | 設置スペースにより制限がある | 増量しやすい |
再エネ賦課金 | なし | あり |
非常用電源としての利用 | しやすい | しにくい |
次項からは、上記表の内容をふまえたオンサイトPPAのメリット・デメリットを解説します。
オンサイトPPAのメリット
まずはオンサイトPPAのメリットを紹介します。オンサイトPPAのメリットは、下記の3つです。
- ● 再エネ賦課金がかからず電気料金を節約できる
- ● 初期費用やメンテナンス費用が無料
- ● 補助金を利用できる
- ● エネルギー価格の変動リスクを低減
- ● 企業好感度の上昇
順番に解説します。
再エネ賦課金がかからず電気料金を節約できる
オンサイトPPAには、再エネ賦課金がかからないという大きなメリットがあります。太陽光発電によって発電された電気は、小売電気事業者や送配電事業者を介さずに自社の設備へ供給されるため、自家消費分については再エネ賦課金がかからない仕組みとなっています。また、燃料調達費や仲介料など、電力の購入時にかかる費用も一切かからないため、コストの削減に繋がります。これによって、電気料金の節約効果が高く、経済的な負担を軽減することができます。
初期費用やメンテナンス費用が無料
オンサイトPPAでは、初期費用やメンテナンス費用を自社で用意する必要がありません。発電事業者がこれらの費用を負担するため、コスト削減につながるだけでなく、点検作業の計画や実施などの手間も省けます。また、太陽光発電設備は一般的に20年以上利用されることが多いため、長期的なコストカットが期待できます。
太陽光発電の維持費や維持管理作業の負担を避けたい企業には、オンサイトPPAがおすすめです。この取り組みにより、企業は自社の維持管理作業や費用を削減することができます。
補助金を利用できる
日本では、再生可能エネルギー関連事業への補助金制度があり、オンサイトPPAを含む取り組みにも適用されます。補助金を有効活用することで、コスト削減につながり、電気料金の負担軽減につながることができます。したがって、電気料金の負担を軽減させたい企業は、積極的に補助金の活用を検討することをおすすめします。
エネルギー価格の変動リスクを低減
オンサイトPPAでは自社で発電設備を所有することにより、エネルギー価格の変動リスクを低減することができます。自社で発電した電力を利用することで、外部のエネルギー供給に頼らなくても済むことも大きなメリットです。エネルギーコストが高い事業や企業ほど、価格の変動を抑えることで経済的なメリットを享受することができます。
企業好感度の上昇
近年では、持続可能な社会への取り組みへの関心が高まっていることも重要です。取引先や顧客に再生可能エネルギーの発電や利用をアピールすることで、企業好感度の上昇にもつながる可能性があります。
オンサイトPPAのデメリット
次にオンサイトPPAのデメリットを紹介します。オンサイトPPAのデメリットは、下記の4つです。
- ● 発電事業者からの審査がある
- ● 契約期間は15〜25年と長期になる
- ● 契約終了後のメンテナンス費用は自己負担となる
- ● 電力が余った場合でも売却できない
順番に解説します。
発電事業者からの審査がある
自社でオンサイトPPAの導入を考えていても、設置場所の条件や経営状況によっては設置が困難な場合があります。オンサイトPPAを導入するには、発電事業者の審査を通過する必要があります。この審査では、発電量や設置場所について評価されます。発電量が十分でないと判断された場合や、設置が困難な場所だと見なされた場合は、発電事業者に断られてしまいます。また、PPA契約期間は20年程度と長期間にわたります。需要家として長期契約することになるため、経営状態によっては審査に通過できない可能性があります。したがって、慎重に検討し、十分な調査を行った上で導入を決定する必要があります。
契約期間は15〜25年と長期になる
一般的に、オンサイトPPAの契約期間は15〜25年の長期になります。これは、PPA事業者が太陽光発電設備のイニシャルコストやメンテナンス・管理費用を月額の電気料金で回収し、利益を得る必要があるためです。長期契約が一般的であるため、需要家への電気料金の負担を抑える代わりに、導入する企業は長期的な計画が必要になります。
もし需要家の都合により、太陽光発電設備を処分することになった場合、PPA事業者に違約金を支払わなければなりません。そのため、オンサイトPPAの導入を検討している企業は、計画をしっかりと練ってから導入する必要があります。
契約終了後のメンテナンス費用は自己負担となる
前述の通り、オンサイトPPA契約の期間は通常15〜25年ですが、契約が終了するとメンテナンス費用は自己負担となります。自家消費や売電が可能なことは大きなメリットですが、長期間使用する場合には老朽化が避けられません。定期的なメンテナンスが必要となるため、コストを考慮する必要があります。
電力が余った場合でも売却できない
電力が余った場合、売却できない点もオンサイトのデメリットです。
オンサイトPPA契約では、設置された太陽光発電設備はPPA事業者の所有物となり、契約期間が満了するまで売却することはできません。さらに、発電した電力は自家消費以外に利用できないため、使い勝手が悪くなる可能性があります。
オンサイトPPAモデルの導入事例
近年、オンサイトPPAモデルの導入事例が増加しています。
例えば、中部電力・Looopは、イオンモール津南やイオンモール松本など3カ所でPPAモデルによるサービスを提供しています。
将来的には、イオンが全国の約200カ所の店舗でオンサイトPPAモデルによる太陽光発電設備の導入を検討しているとのことです。また、JFEエンジニアリング株式会社や新潟市、株式会社第四北越フィナンシャルグループが設立した新潟市の地域新電力でも、市内施設に247.5kWの太陽光発電設備を導入する事例があります。
今後も、オンサイトPPAの導入事例が増加することが予想されます。
オンサイトPPAのメリット・デメリットを理解しよう
オンサイトPPAを導入することで、初期費用やメンテナンス費用が抑えられ、電気料金を節約できるといったメリットがあります。
また、再生可能エネルギーでつくった電力を活用するため、電気購入量を削減するなど環境貢献を実現できます。環境問題への取り組みをアピールできるため、企業好感度の向上も期待できるでしょう。
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