SDGsには17の目標があり、持続可能な社会を形成するための開発目標としています。
その中で、目標9はインフラに関する目標を掲げており、途上国のみならず日本でも課題とされている部分でもあるのです。
本記事では、SDGs目標9がどのような目標であるのかを解説します。
SDGs目標9が必要な理由や、実際に企業や自治体で行われている取組事例についても解説します。
目次
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の意味
SDGs目標9「産業と技術の基盤をつくろう」では、レジリエント(強じんな)インフラを構築し、持続可能な都市および人間環境を実現していくことを目標としています。
具体的には、水道や電気、道路、鉄道などの生活を支えるインフラを持続可能なものにし、かつ災害にも耐えうる設備にすることです。
先進国ではインフラ整備が進められていますが、途上国ではインフラ整備の遅れが目立ち、災害が発生した際に機能不全に陥ってしまうケースが少なくありません。
そのため、先進国のみならず途上国でもインフラ整備を進めるため、SDGs目標9が設定されているのです。
SDGs目標9のターゲットの内容
SDGs目標9のターゲットは、具体的に以下の表のような目標や、その実現方法が定められています。
なお、9-1など数字で表されているものには具体的な目標、9-aなどアルファベットで表されているものには目標を達成するための方法が書かれています。
9-1 | すべての人のために、安くて公平に使えることを重視した経済発展と福祉を進めていけるように、質が高く、信頼でき、持続可能な、災害などにも強いインフラ※をつくる。それには、地域のインフラや国を越えたインフラも含む。 |
9-2 | 誰も取り残されない持続可能な産業化を進めて、2030年までに、それぞれの国の状況に応じて、雇用と国内総生産(GDP)に占める農業や漁業など以外の割合を大きく増やす。最も開発が遅れている国については、その割合を2倍にする。 |
9-3 | 特に開発途上国の規模の小さな工場や会社が、安く資金を借りるなどの金融サービスをより利用できるようにし、モノやサービスの流れやその市場に、より広く組み込まれるようにする。 |
9-4 | 2030年までに、資源をよりむだなく使えるようにし、環境にやさしい技術や生産の方法をより多く取り入れて、インフラや産業を持続可能なものにする。すべての国が、それぞれの能力に応じて、これに取り組む。 |
9-5 | 2030年までに、イノベーションを進めたり、研究や開発の仕事をしている人の100万人あたりの人数を大きく増やしたり、政府と民間(会社など)による研究や開発への支出を増やしたりして、開発途上国をはじめとする全ての国で、さまざまな産業での化学研究をすすめ、技術能力を伸ばす。 |
9-a | アフリカの国ぐに、もっとも開発が遅れている国ぐに、内陸の開発途上国、開発途上の小さな島国に対し、資金・テクノロジー・技術面での支援を強めて、開発途上国における、持続可能で、災害にも強いしっかりしたインフラの開発をすすめる。 |
9-b | さまざまな産業が発展したり、価値のある商品を創り出したりするための政策を整えることなどによって、開発途上国の国内の技術開発や研究、イノベーションを支援する。 |
9-c | 特に、最も開発が遅れている国で、情報通信技術がより広く利用できるようにし、2020年までに安い値段でだれもがインターネットを使えるようにする。 |
SDGs目標9が必要な理由とできた背景
SDGs目標9が必要な理由には、先進国と途上国の間においてインフラ整備や生活水準に大きな格差があることが挙げられます。
その格差を少なくするために、SDGsの前身としてMDGsが2001年に採択されています。
2015年末をめどに貧困・飢餓の撲滅や感染症の流行防止、初等教育を達成することなどが目標として掲げられ、状況は改善しました。
しかし、MDGsで掲げたことを継続的に実現するためには、インフラを整備する必要があります。
そこで、MDGsに代わる新しい枠組みとしてSDGs目標9を定め、世界から貧困をなくすことを目指しているのです。
SDGs目標9達成のための世界の課題
SDGs目標と9を達成するのは簡単ではなく、世界にはさまざまな課題があります。
ここでは、SDGs目標9を達成するための世界の課題を、以下の2つに絞って解説します。
- インフラ整備が不十分
- インターネット環境の格差
インフラ整備が不十分
世界にはインフラ整備が不十分な国や地域が数多くあります。
例えば、安全な水が飲めなかったり、1日100円程度のお金で過ごさなければいけなかったりする人が多くいるのです。
他にも、道路が舗装されていない、建物の耐久度が高くないなど、安全に暮らすことも難しい場所も少なくありません。
そのような状況で、格差をなくしていくことが難しいため、インフラ整備を充実させることが早急に求められているのです。
インターネット環境の格差
世界ではインフラ整備のみならず、インターネット環境にも格差があります。
国際電気通信連合(ITU)が2021年11月に公開したデータによると、世界で約29億人がインターネットを利用したことがなく、その中で96%もの人が途上国に暮らしている人であると推測されています。
インターネットはなくてはならない存在である現在であるからこそ、インターネットにアクセスできないだけでさまざまなことを損する可能性が大いにあるのです。
そのため、インターネット環境の格差も是正することが求められています。
日本におけるSDGs目標9の現状と課題
世界における課題を見ると、日本では問題ないのではないかと感じる方もいるでしょうが、日本においても課題があります。
ここでは、日本におけるSDGs目標9の現状と課題を、以下の2つの観点から解説します。
- インフラの老朽化
- ICT技術の遅れ
インフラの老朽化
日本ではインフラの老朽化が進んでいます。
高度成長期に道路やトンネル、水道設備などが次々と建設され、日本の成長を支えてきました。
しかし、すでに高度成長期から50年以上が経過していると考えると、老朽化しているインフラが少なくないことは容易に想像できます。
老朽化により故障が頻発するなどのトラブルが発生すると、人々の生活に悪影響を及ぼしかねません。
そのため、日本では老朽化したインフラを修繕することが必要になるのです。
ICT技術の遅れ
日本では、ICT技術の遅れも課題になりつつあります。
以前はIT分野でも先頭を走っていた日本ですが、近年はむしろICT技術で遅れを取っていると指摘されることが増えてきました。
GLOBAL NOTEが公表した結果によると、2021年におけるインターネット普及率は82.91%と、世界で73位となっています。
これには技術者不足や教育の遅れなど、さまざまな要因が含まれており、課題は山積しているといえるでしょう。
SDGs目標9の取り組み事例3選
日本には、SDGs目標9を達成するために、積極的に取り組みを行っている企業や自治体が多くあります。
そこで、ここでは以下の3つの取組事例について解説します。
- 三菱電機
- NTTドコモ
- 長野県伊那市
三菱電機
三菱電機では「e-F@ctory」という取り組みを実施しています。
FA技術(コンピュータ制御を使って工場を自動化すること)とIT技術を組み合わせることで、ものづくりにおいて開発から生産、保守までにいたるまでのサポートが可能です。
「生産現場」「ITシステム」、およびそれらを連携するための「エッジコンピューティング」が相互作用することで、三菱電機による継続的な支援が可能になります。
具体的には、さまざまなシステムの連携が可能になりコスト削減できる、データの可視化ができるためフィードバックがしやすくなります。
さまざまなソリューションも提供しているため、三菱電機では一歩先のものづくりが可能なことも大きな特徴です。
NTTドコモ
NTTドコモでは「5G時代の新たな産業創出に向けた産学官の取組み」を実施しています、
新潟市、新潟大学、国際総合学園新潟コンピュータ専門学校(NCC)、NTTドコモの4者で、5Gなどを活用した地場産業の創出を推進する連携協定を締結しています。
地方からの人口流出が課題になりつつあるなか、地場産業の創出を推進することが目的です。
2021年4月に開始されたばかりの取り組みですが、産業振興センター内にある「5Gビジネスラボ」を拠点に実証実験を進めるなど、成果が着実に出ています。
さらに、5Gにまつわる学生への教育も充実させることで、人材育成も行っています。
長野県伊那市
長野県伊那市では、ソフトバンクとトヨタ自動車が共同出資して設立した会社である「MONET」と協業し、医療Maasを導入しています。
医療MaaSは高齢化に伴い、通院をしなければならないが通院をするのが簡単ではない人が多くいること、医師不足により医師の高齢化・負担増加など、さまざまな問題を抱えていました。
一方、医療MaaSでは看護師などの医療スタッフが乗った移動診察車が導入され、自宅などに行った移動診察車と病院をビデオ通話でつなぐことで診察できるようになったのです。
これにより、患者は通院する手間が省け、医師はより対応が必要な患者に時間をさけるようになるなど、大きなメリットをもたらしています。
持続可能な社会を築くうえでSDGs9の目標達成は欠かせない
持続可能な社会を築くうえでSDGs目標9の達成は欠かせません。SDGsで達成すべき目標の土台となるものであるため、積極的に目標達成に向けて取り組むことが大切です。
個人がインフラを整えるのは簡単ではありませんが、企業が率先して力を合わせることで、日本もインフラの整備が加速することでしょう。
もし、SDGsの達成に向けて活動したい方がいましたら、ぜひe-dashにご連絡ください。
e-dashでは主に脱炭素に向けた取り組みをサポートしていますので、ぜひお気軽にご相談くださいませ。