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脱炭素経営

市場連動型プランとは?電力料金の仕組みや固定単価プランとの違いをわかりやすく解説!

市場連動型プランとは?電力料金の仕組みや固定単価プランとの違いをわかりやすく解説!

電力コストが想定以上に跳ね上がるリスクを懸念している方も多いのではないでしょうか。市場連動型プランの仕組みを正しく理解すれば、自社の電力料金をより柔軟にコントロールできる可能性があります。この記事では、法人向けに市場連動型プランの基本と、固定単価プランとの違いをわかりやすく解説します。自社の電力コスト最適化に向けた情報収集に、ぜひ参考にしてください。

市場連動型プランとは?

市場連動型プランは、JEPX(日本卸電力取引所)の市場価格に応じて電力料金が変動する料金プランです。市場では、まず全国の需要と供給を合成して「システムプライス」と呼ばれる基準価格を仮に計算します。

しかし、送電制約が発生する場合には、地域ごとに「エリアプライス」が設定され、30分単位で実際の取引価格が決まります。こうして形成される市場価格は、電力需要が高い夏や冬は市場価格が上がり、気温が安定している春や秋は下がる傾向があります。さらに、電力需要量だけでなく、電力供給量にも左右されるため、太陽光発電が稼働する日中に市場価格が安くなることが一般的です。

そのため市場連動型プランでは、使用する時間帯や季節によって電力料金が大きく変動する可能性があります。また、電力料金には再エネ賦課金や燃料費調整額、場合によっては電源調達費も加算されるため、コスト変動リスクへの理解が必要です。

JEPX(日本卸電力取引所)とは?
JEPX(​日本卸電力取引所)は電力の安定供給と市場の効率化を目的に2003年に設立された、日本で唯一の卸電力市場を運営する一般社団法人です。電力の需給バランスを調整し、公正で透明性の高い価格形成を支援しています。

市場連動型プランの電力料金の仕組み

市場連動型プランの電力料金は、「基本料金」「電力量料金」「再エネ賦課金」の3つから成り立ちます。このうち電力量料金の単価は、電力需要によって変動する市場価格に応じて決定されます。そのため、電力量料金単価の変動に合わせ、電力需要の低いタイミングで電力を使用することで費用を抑えられます。

市場連動型プランと他プランの違い

 市場連動型プラン固定単価プラン(燃料費調整プラン)完全固定単価プラン
電力料金の決まり方JEPX市場価格に連動し、30分単位で変動する基本料金・電力量料金単価は固定、燃料価格変動に応じて「燃料費等調整額」で月ごとに増減基本料金+電力量料金単価+燃料費調整額が固定
価格変動リスク高い(市場価格に直結して上下)中程度(燃料価格に連動するが、ある程度上限も設定可能)低い(原則料金単価固定)
メリット市場価格が安い時期は大きく電気代を抑えられる燃料価格を反映するため、通常期は安定しやすい使用量が多い企業はコスト安定性を最大限確保できる
デメリット市場高騰時に急激なコスト上昇リスク燃料価格高騰時に調整額が大きくなり、結果的に割高になる場合がある  一般的には料金が高めに設定されるため、市場価格が落ち着いている場合は割高

市場連動型プラン

市場連動型プランは、電力市場の価格変動を反映する仕組みです。そのため、単価が低くなりやすい日中に電力を使用する企業や、夕方以降に電力使用が少なくなる企業では、料金が低くなりやすい傾向にあります。一方、単価が高くなりやすい夜間や早朝に稼働している工場などでは、日中のみの使用に比べて料金が高くなる可能性があります。

市場連動型プランの仕組みを十分に理解し、専任者を置いてリスクとリターンを管理できる体制を整えている企業にとっては、電力コストを戦略的に最適化できる有力な選択肢となるでしょう。

固定単価プラン(燃料費調整プラン)

固定単価プラン(燃料費調整プラン)は、基本料金および電力量料金単価が固定で、火力発電に使用する燃料(原油・LNG・石炭)の価格変動を電力料金に反映させるプランです。3カ月間の平均燃料価格を基準価格と比較し、その差額に応じて「燃料費調整額」が毎月の電力料金に加減されます。燃料価格が高騰すれば電力料金も上昇し、低下すれば料金が下がる仕組みです。

一部のプランでは、燃料費調整額に上限が設けられており、急激な料金の変動を抑えられます。この制度により、電力会社は燃料価格の変動リスクを適切に管理し、利用者は料金の透明性を確保できます。中長期的なエネルギー価格を見ながら運用できる企業におすすめです。

完全固定単価プラン

完全固定単価プランは、契約期間中の基本料金・電力量料金単価・燃料費調整額がすべて固定の料金体系です。市場価格や燃料価格の変動に左右されにくいため、電力料金の見通しを立てやすく、安定した予算管理が可能です。

ただし、使用量に応じて請求額は変動するため、電力の使用量が多くなると支払額も増える点には留意が必要です。

また、電力会社によっては、「完全固定」としながらも一部に電源調達費などが含まれるケースもあるため、契約前に電力需給約款や見積書を確認しましょう。予算管理がしやすく、価格変動リスクを回避したい企業に適したプランです。

市場連動型プランの拡大背景

出典:JEPX information「スポット市場年間平均価格2020年– 2025年

従来の電力料金は、契約内容に応じた固定価格で構成されていましたが、世界的なエネルギー価格の高騰により、多くの電力会社が電力の仕入れコストを固定単価では吸収できなくなりました。

2020年末から、2021年初頭にかけ、電力需要の逼迫と市場価格の高騰を景気に、電力会社は市場価格を反映した料金形態の採用を開始。2023年頃からは燃料価格が下がり始め、市場価格も徐々に下落しました。その結果、電力料金は従来の固定型料金プランよりも市場連動型プランの方が割安になるケースが増え、大手電力会社の一部でも法人向け市場連動型プランの導入が進められています。

電力自由化と市場連動型プランの関係

市場連動型プランの登場には、2016年の電力自由化が影響しています。電力自由化により、これまで固定されていた電力契約が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。また、新規参入した電力会社が増加し、企業間の料金競争がより活発になっています。選択肢が拡大したことで、企業はよりコスト効率に優れた電力調達を検討できるようになりました。

現在では、複数の電力会社や料金プランを比較し、自社のエネルギー使用状況やコスト管理方針に最適化したプランを選択することは、企業にとって重要な経営判断の一つとなっています。

企業が市場連動型プランへ切り替えるメリット

・電力料金が安くなる可能性がある
・環境意識の向上につながる
・不透明な値上げリスクが軽減される

企業が市場連動型プランへ切り替えると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、メリットについて詳しく解説します。

電力料金が安くなる可能性がある

市場連動型プランの電力料金は、市場価格に連動しているため、市場価格が下がった場合には電力コストを抑えられます。日中に稼働する企業は、市場価格の低い時間帯を活用できるため、市場連動型プランへの切り替えに向いています。また、単価が高い時間帯や価格が高騰した場合にすぐに蓄電池や太陽光など別の方法に切り替えられる企業も恩恵を受けることが可能です。

環境意識の向上につながる

市場連動型プランは、自然環境や世界情勢の影響を直接受けるため、電力の需給状況や再生可能エネルギーへの関心が自然と高まるでしょう。結果として、電気の使い方や環境負荷を意識するようになり、環境問題に対する理解や行動が促される点は大きなメリットといえます。

燃料費調整額に影響されない

直近の燃料費が電力料金に反映され、燃料費調整額に影響されないこともメリットの一つです。従来の電力プランでは、3~5カ月前の燃料価格をもとに燃料費調整額が設定され、過去の高騰が現在の電力料金に反映されていました。一方で市場連動型プランでは、燃料費や市場価格が即座に料金に反映されるため、実態に即した価格での電力利用が可能です。

企業が市場連動型プランへ切り替えるデメリット

・市場価格とともに電力コストが上昇することがある
・電力コストの見通しが立てにくい

市場連動型プランへの切り替えには、デメリットも存在します。契約をする前に、注意点も把握しておきましょう。

市場価格とともに電力コストが上昇することがある

市場価格の高騰に伴い電力料金も大幅に上がる可能性があります。発電所の故障や自然災害、燃料価格の高騰・円安の進行などの影響を受け、予期せぬ価格高騰が発生する可能性もあります。そのため、安定した電力料金を確保したい方にはリスクが大きいかもしれません。

電力コストの見通しが立てにくい

市場連動型プランでは、毎月の電力料金が一定ではないため、予算管理がしにくくなり、企業としてはコストコントロールが難しくなります。市場価格が直接電力料金に影響するため、常に市場価格を気にしなければならない点は覚えておきましょう。

高騰リスクを避けたい方は完全固定単価プランがおすすめ

電気代の高騰リスクに備えるのであれば、完全固定単価プランがおすすめです。電力の市場価格や燃料費の変動に影響されないため、契約期間中の電力量料金単価が一定となります。そのため、予算管理がしやすく、長期的なコスト予測が可能です。

一方、燃料費調整プランは火力発電の燃料価格に応じて料金が変動し、市場連動型プランは電力需給に応じて価格が変動するため、高騰の影響を受けてしまいます。企業は自社の電力使用状況とそれぞれのプランの特徴を理解し、最適なプランを選択することが重要です。

企業が市場連動型プランで電気代を安く抑えるには?

ここでは、市場連動型プランで電気代を安く抑えるポイントを解説します。プラン切り替えを検討している方は、安く抑える方法を押さえて賢く運用しましょう。

電力使用のタイミングを調整する

電気代を抑えたい場合、電力使用のタイミングを調整するのが有効です。電力の市場価格は時間帯や季節によって変動し、とくに太陽光発電が活発な昼間や電力需要が低い休日は市場価格が低い傾向にあります。これらの時間帯に電力使用を集中させることで、電力料金の削減が期待できるでしょう。

たとえば製造業では、生産スケジュールを見直すことでコスト削減が図れます。

省エネ設備・太陽光発電などの自家発電設備を導入する

省エネ設備や再エネの導入も一つの手段です。たとえば、日中の使用電力を自社で発電した再生可能エネルギーでまかなうことで、市場価格が高騰する時間帯の購入電力を抑えられます。そのため、エネルギー効率の高い設備への更新や太陽光発電の導入は電力コストの削減に有効です。

また、蓄電池の活用で価格変動の影響も最小限に抑えられるため、省エネと再エネを組み合わせた運用が電気代削減に大きく貢献するでしょう。

再生可能エネルギーについて詳しくはこちら

企業が太陽光発電を導入するメリットについて詳しくはこちら

デマンドコントロールを活用する

デマンドコントロールの活用で、電気代を抑えられる可能性があります。デマンドコントロールとは電力使用のピークを抑え、契約電力(基本料金)の上昇を防ぐ管理方法を指します。

市場連動型プランでは、電力需要が高い時間帯に料金が上がるため、使用タイミングの工夫がコスト削減に直結します。夕方~夜の高価格帯を避け、日中に稼働を移すことで、電気代を抑えられるでしょう。市場連動型プランを活用する際は、こうした需要側のマネジメントを組み合わせることが効果的です。

市場連動型プランに関するよくある質問

市場連動型プランに関するよくある質問をまとめました。ぜひ参考にしてください。

Q.市場価格に影響を与える要素とは?

A.市場価格は、燃料価格や供給量、天候、季節、時間帯などさまざまな要素によって左右されます。

具体的には、燃料価格の上昇や円安による燃料輸入コストの増加、発電設備の故障による供給不足などが、市場価格を押し上げる要因となります。また、雨天や曇天による太陽光発電の出力低下、夏冬の電力需要増加、夜間における発電量減少なども、市場価格に影響を与える重要な要素です。

Q.JPEXで市場価格が決定する仕組みは?

A.市場によって異なりますが、一般的には売り手と買い手の入札の交点で市場価格が決まります。

JEPXには、一日前市場(スポット市場)や当日市場(時間前市場)、先渡市場や掲示板市場があります。その主要となる一日前市場(スポット市場)では、電力の受け渡し日前日に売買価格が決まります。電力会社や小売事業者は、受渡し日の10日前から入札可能で、前日の午前10時に入札が締め切られます。入札された売り手と買い手の希望価格をもとに、需要と供給のバランスをとって30分単位で市場価格が決定されます。

Q.市場連動型プランのある電力会社はどう選ぶ?

A.自社の電力の使い方にあった適切なプランを選びましょう。

市場連動型プランには、月単位の平均価格を基準とするものや、30分ごとの市場価格に連動するものなど、電力会社ごとにさまざまな料金プランが提供されています。まずは自社や拠点の電力の使い方を把握し、適切な電力会社とメニューを選ぶことで、コストの最適化やリスク回避につながります。

電力プランを正しく比較し、賢く電力調達しよう

電力自由化により、これまで以上に多様な電力会社や料金プランから自由に電力を契約できるようになりました。それぞれのプランの違いを理解し、自社の使用パターンやリスク許容度に応じて最適な契約を選ぶことが、電力コスト最適化の第一歩です。長期的なエネルギー戦略を見据え、正しく理解し、賢く選ぶ視点で、電力調達を見直していきましょう。

弊社の「e-dash」は、企業の脱炭素化に向けた支援の一つとして、電力料金の見直しや実質再エネ化の対応支援を行う、電力契約最適化サービスも提供しています。

電力契約の切り替えを検討している方はお気軽にご相談ください。

以下の資料では、弊社のサポート内容について詳しく説明しています。こちらもぜひ参考にしてください。

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