あなたは生活の中で、どのくらい珍しい発電方法に出会っていますか?近年、環境に優しいエネルギー源のニーズが高まる中、おもしろい発電方法も続々と誕生しています。
これらのおもしろい発電方法は、単に珍しいだけでなく、さまざまなメリットも持っているのです。それでは、驚きの発電方法やそのメリットとは何か、一緒に見ていきましょう。
目次
日本での発電方法の現状
長年にわたり、日本のエネルギーは主に火力や原子力による発電方法に頼ってきました。これらの伝統的な方法にどんな特性や特徴があるのか。本章では、これらの発電方法の現状、その特性や課題について、具体的に深く掘り下げていきます。
主要な発電手段とその割合
日本のエネルギー発電の主軸として存在するのが、火力(特に天然ガスや石炭)と原子力です。具体的には、火力発電が全体の発電量の中で約60%以上の割合を占め、これに続くのが原子力発電で、約30%程度です。石炭や天然ガスによる火力発電は、エネルギー源としての豊富な供給量と安定性から、日本のエネルギー供給の中心的な役割を果たしてきました。再生可能エネルギーも増加傾向にはありますが、現在はまだ十分な割合ではありません。
従来の発電方法の課題・発電手段の限界
火力や原子力発電は日本のエネルギーを確かに支えてきましたが、大きな課題も持っています。火力発電は、石炭や天然ガスを燃焼させる過程で大量のCO2を排出し、環境への影響が大きいことが問題視されています。石炭は有限な資源であり、将来的には枯渇のリスクが考えられます。さらに、原子力発電には安全性や使用後の核燃料処理といった課題があり、事故のリスクや放射能問題も懸念されています。
これらの問題を解決するために、新技術の開発や従来制度の見直しが求められています。
日本ならでは?日本のおもしろい発電方法
それでは、従来の発電方法から環境にやさしい発電方法へ転換していくために、日本での新しい取り組みを見ていきましょう。日本には他の国にはない、おもしろい発電方法があります。
この章では、「うどん」から発電する方法や、「通勤ラッシュ」で発電する方法など、日本ならではのおもしろい発電方法を紹介していきます。
廃棄される「うどん」から発電!
香川県では、「うどんまるごと循環プロジェクト」という取り組みがあり、廃棄されるうどんを活用して、発電や肥料づくりが行われています。具体的には、廃棄うどんに水を加え、発酵させることで発生したメタンガスを燃やし、発電するのだそうです。
毎日の「通勤ラッシュ」で発電できる?
JR東日本が2006年から行っているのが、「床発電システム」の実証実験です。このシステムは、圧電素子という振動から電力を抽出する装置を床に埋め込み、人が歩くことで電力が発生する仕組みです。JR東日本は通行者が集中する自動改札に設置し、実験を行っています。
「牛の排せつ物」からガスを発生させて発電
牛の排せつ物からもガスを発生させて発電することができます。この仕組みは、「バイオガス発電」と呼ばれます。牛の糞尿をタンク内の微生物で発酵させ、発生したメタンガスを燃やして発電します。この方法は、環境問題の改善に貢献するだけでなく、廃棄物処理量の軽減や悪臭除去にもつながります。
こんなものからも!世界のおもしろい発電方法
この章では、世界各地で実施されている、おもしろい発電方法を紹介します。汗を使った発電やダンスで発電する方法、さらにはウシのげっぷを燃料にして発電する方法など、様々なアイデアが生まれています。
「汗」で就寝中に発電できる(カリフォルニア)
カリフォルニア大学サンディエゴ校のエンジニアグループが、指先に装着して人の汗から少量の電力を生成することができるデバイスを開発しました。薄くて柔軟なバイオ燃料電池となっており、人間が寝ている間でもウェアラブル端末を充電ができる可能性があります。
踊るほど環境に良い?「ダンス」で発電(スコットランド・ベルリン)
「ダンス」での発電は、ヨーロッパのベルリンやスコットランドなどで注目されている新しいエネルギー技術です。
物質が圧力や変形を受けることで電気を発生させる特性がある技術を用いたタイルを、クラブやイベント会場などのダンスフロアに配置しています。来場者のダンスや足元の動きがエネルギーに変換され、それを利用して照明や音響などの電気を供給するエコフレンドリーなシステムが展開されています。
ウシの「げっぷ」を燃料にして発電(アルゼンチン)
アルゼンチン国立農牧技術院(INTA)は、ウシの胃につないだチューブから消化ガスをタンクに集め、その後メタンガスを分離するという新技術を開発しました。メタンガスは温室効果ガスの一種であり、自動車や発電所などで使われている天然ガスの主成分です。この技術は、温室効果ガス排出の削減につながる可能性があります。
風車を浮かせる!「空中浮体式風力発電」(マサチューセッツ工科大学)
マサチューセッツ工科大学(MIT)で設立されたAltaeros Energies社は、「空中浮体式風力発電(Buoyant Airborne Turbine:BAT)」技術を開発しています。
この技術は、風力発電設備を約600m上空にヘリウムガスで浮上させて発電するもので、従来の風力発電設備で到達する高さよりも強く安定した風を受けられる点に特徴があります。同規模風力発電に比べて2倍以上の電力を発電できるとされています。
珍しいアイディアが沢山!次世代の発電方法
珍しいアイディアを利用して、次世代の発電方法も沢山開発されています。環境問題やエネルギー問題に対応するために、日々発電技術が発展していますが、その中でも特に注目すべきものをピックアップしました。それでは、一つずつ見ていきましょう。
音力発電(グローバルエナジーハーベスト)
音力発電とは、音を電気エネルギーに変換する発電方法です。音は空気の振動であ り、その振動が圧電素子に加わることで電圧が発生する仕組みを利用しています。
この技術を開発しているのは、日本発のグリーンベンチャーである株式会社グローバルエナジーハ ーベストです。同社は、音声発電機や発電遮音壁などの製品を開発しており、騒音や廃棄される音 のエネルギーを有効利用することで、環境負荷の低減や省エネルギー化に貢献しています。
Wi-Fi電波から発電(東北大学電気通信研究所・シンガポール国立大学)
Wi-Fi電波からの発電方法とは、身の回りに飛び交っているWi-Fiの2.4GHz帯の電波を活用して発電する技術です。Wi-Fiは無線LANによる通信に利用されていますが、その一方で大量の電波エネルギーが捨てられています。このムダなエネルギーを回収するために、東北大学電気通信研究所とシンガポール国立大学の共同研究チームは、スピントロニクスという原理を活用した磁気トンネル接合という素子を開発しました。
この素子は、2.4GHzの電波を効率的に送受信することができ、直流電圧信号に変換してコンデンサーを充電し、LEDを光らせることに成功しています。
この技術は、電池交換不要な無線IoTセンサーやプロセッサーなどのエッジ情報端末への応用が期待されています。
工場の排熱や車の排ガス熱から発電(ヤンマー、ヤマハ)
工場の排熱や車の排ガス熱から発電する方法は、産業活動や自動車走行によって生じる未利用の熱エネルギーを利用して発電する技術です。
ヤンマーホールディングスは、工場などで出る排熱を利用して発電できる熱電発雍ユニットを開発しました。また、ヤマハは住友商事グループの住友商事パワー&モビリティ株式会社と共同で、自動車排気ガスの熱エネルギーから発電を可能にする排熱発電ユニットの車両実証試験を実施しました。いずれも、工場地帯や車移動の多い日本での導入が期待されています。
再生可能エネルギーの活用技術も高まっている
再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱など自然界に存在するエネルギーのことで、化石燃料に頼らず永続的に利用することのできるエネルギー供給源のことを指します。
一方で、「クリーンエネルギー」という言葉もありますが、こちらは温室効果ガスや有害物質を排出しないエネルギーのことです。再生可能エネルギーはクリーンエネルギーの一種ですが、クリーンエネルギーには原子力発電など「再生可能ではないもの」も含まれます。
現在、再生可能エネルギーの活用技術も高まっており、新しい発電方法やイノベーションが次々と登場しています。この章では、再生可能エネルギーの発電方法の中でも特に注目されているものを紹介していきます。
それぞれの発電方法の仕組みや背景・課題などについて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
「宇宙太陽光発電システム」で宇宙空間で発電(アメリカ)
「太陽光発電」は、太陽の光を直接電気に変換する方法で、再生可能エネルギーの一つとして知られています。一方で、日照時間に発電量が左右されたり、パネルの設置場所を広く要するという課題があります。
このような課題を解決するため、「SSPS」と呼ばれる宇宙太陽光発電システムが注目されています。SSPSは宇宙空間での太陽光をマイクロ波やレーザー光に変換して地球に送る技術として開発されています。この手法は昼夜や季節を問わず、安定的に発電できる点や、広大な宇宙空間での設置が可能な点が特徴です。
現在、多国間での研究・開発が進められ、アメリカでは2020年に実証実験を行っており、SSPS技術は再生可能エネルギーの新たなフロンティアとして注目されています。
風力発電も多種多様に進化している
「風力発電」とは、風力を利用して発電する方法です。風力発電は再生可能エネルギーの一つで、温暖化対策や省エネルギーに有効とされています。しかし、風向きや風速によって発電量が変動することや、発電機の適地が限られることなどが課題とされています。
課題の解決に向け、現在は風力発電の形も多種多様に進化しており、新しい技術が次々と登場しています。
例えば、「垂直軸型マグナス式風力発電機」は羽のない風車で、従来の水平軸型風車と異なり、風向きに関係なく発電することができます。また、「エアドルフィン」は、高性能な小形風力発電機で、低風速でも高い発電効率を実現し、都市部や山間部などの限られたスペースでも設置することができます。さらに、「洋上風力発電」は、海域を利用して設置する風力発電で、陸上よりも強い風を受けることができ、大規模な発電が可能です。
海洋温度差発電
水を使用した発電方法に、「水力発電」があります。この発電方法は、水が高いところから低いところへ流れ落ちる位置エネルギーを使って電気を作る方法です。ダムに貯められた水が取水口か水路を通る際の、流れ落ちる勢いを使って水車を回します。この水車は発電機とつながっており、発電機が回転することで電気を作り出すのです。しかし、水力発電にも課題があります。例えば、ダム建設による環境破壊や、水利権の問題、小規模発電の場合費用対効果が悪いなどが挙げられます。
そこで、ダムの建設を必要としない「海洋温度差発電」に注目が集まっています。海洋温度差発電とは、「OTEC」と呼ばれる海洋温度差エネルギー変換システムで、海水中の温度差を利用して発電する方法です。海水は深さによって温度が異なりますが、OTECでは、この温度差を利用して蒸気タービンを回し、電力を生成します。
OTECは再生可能エネルギーの一つですが、太陽光や風力などと異なり、昼夜や季節に関係なく安定的に発電することができます。また、OTECは海水淡水化や海洋資源開発などの副産物も生み出すため、地域振興や産業育成にも貢献するメリットがあります。
日本でも沖縄県や鹿児島県などで実証実験が行われており、再生可能エネルギーの新たな可能性を拓く技術として期待されています。
「マイナス環境負荷」発電(アイスランド)
「マイナス環境負荷」発電は、地熱発電での二酸化炭素排出を地中に戻すことで、環境にプラスに働く発電方法です。「地熱発電」は地中の蒸気を利用し、再生可能エネルギーとして注目されていますが、二酸化炭素の排出や適地の制約が課題とされています。
これに対し、「マイナス環境負荷」発電は、発生する二酸化炭素を地中に再注入し、これを岩石と固定化させる方法を取り入れています。この技術はアイスランドのCarbFixによって開発され、現地での実証実験が進行中です。成功すれば、環境負荷を削減する新たな発電技術として、全世界の注目を集めることとなります。
おもしろい発電方法や新しい技術を知り、エネルギー資源を守ろう
国内や海外でのおもしろい発電方法はいかがでしたでしょうか。再生可能エネルギーの活用技術についてはまだ実用化されていないものもありますが、今後の研究開発や普及活動によって、エネルギー問題や環境問題に対する有効な解決策となる可能性があります。
私たちはこれらの技術に注目し、おもしろい発電方法や新しい技術を知ることで、エネルギー資源を守り、持続可能な社会づくりに貢献していきたいと思います。
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