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サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を事例と共に解説

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を事例と共に解説

近年、ビジネスの世界でよく聞くようになった言葉が「サステナビリティトランスフォーメーション(SX)」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。ただ、これらの用語の詳細に関して正確に把握している方は、意外と少ないかもしれません。

本記事では、SX・DXの概要や事例について詳細を解説していきます。SX・DXについて理解を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とは?DXとの違いや重視すべきポイントを解説!

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とは?DXとの違いや重視すべきポイントを解説!

まず初めに、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)の概要やデジタルトランスフォーメーション(DX)との違いなどについて確認していきましょう。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)について

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とは、企業が「持続可能性」を重視して、自社の稼ぐ力とESG(「Environment:環境」「Social:社会」「Governance:ガバナンス」)の両立を図って経営の変革を進めていく戦略指針を指します。

現在、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。技術や社会構造、地球環境など様々な環境の変化が起こる中、企業がそれらの変化に柔軟に対応していくため、サステナビリティを高めていくことが重要です。

経済産業省は、サステナビリティ向上の基準となる時間軸を「5年」と「10年」に設定しています。企業のサステナビリティと社会のサステナビリティの双方に目を向け、経営戦略の立案・実行を進めていくことを理想としています。

企業がサステナビリティを高めるためには、十分に利益を出している必要があります。獲得した利益を中長期的なイノベーション創出に投資して、企業のサステナビリティ向上を実施する流れになります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)との違い

サステナビリティトランスフォーメーションと混同しやすい用語として、デジタルトランスフォーメーション(DX)が挙げられます。デジタルトランスフォーメーションとは、AIやIoT、クラウドなどのデジタル技術を活用して、新しいサービスやビジネスモデルを構築することで自社の事業や組織を変革していくことを指します。

DXでは、他社よりも競争優位性を確立することに重点が置かれます。このため、DXでは短期的な成果獲得に繋げる取り組みを実施することが多いです。

これに対して、SXでは中長期の時間軸の中で、企業の持続可能性を重視した取り組みを進めていきます。短期的な成果獲得は、あくまでも中長期的な持続性を確保するための前提です。

SXとDXの目的の違いを把握しよう

SXとDXを「目的」で比較すると、下記の通り整理できます。

SX:中長期的な企業の持続性とESGとの両立

DX:デジタル技術の導入による企業の競争優位性の向上

SXの目的は、企業の稼ぐ力のみを高めることではありません。企業の稼ぐ力をベースにして、企業の持続性とESGを両立して高めていくことが目的です。企業の稼ぐ力を高めるだけでは、必ずしもサステナビリティ向上とは言えません。

DXの目的は、デジタル技術の導入によって企業の競争優位性を高めることです。このため、中長期的な持続可能性はあまり強調されません。競争力を高めることに比重が置かれている分、DXの方が企業の利益獲得に直結する取り組みと言えるでしょう。

サステナビリティが重要視される理由を解説!

サステナビリティが重要視される3つの理由を解説!

次にサステナビリティが重要視される理由について見ていきましょう。

社会の変化に対応できる経営が求められている

企業のビジネスを持続・成長させるために、サステナビリティが求められています。技術革新や地球環境の変化、新型コロナウイルスの蔓延などによって、企業を取り巻く環境は急激に変化しています。サステナビリティを向上させることは、社会の変化に対応可能な柔軟な経営に繋がります。社会の変化を予想することが難しい現代は、企業体制の整備やビジネス戦略の見直しなど、サステナビリティ向上に向けた施策が企業に求められています。

さらに、ビジネスのグローバル化も社会の変化に対応できる経営が求められる理由の一部です。世界中でサステナビリティの伴った経営が重要視されているため、海外の企業と競合する可能性のある企業にとってはよりサステナビリティな経営が事業への大きなインパクトをもたらすでしょう。

日本国内におけるサステナビリティの事例を紹介!

日本国内におけるサステナビリティの事例を紹介!

次に日本国内におけるサステナビリティの事例について紹介していきます。今回紹介する企業は下記の通りです。

  • スターバックスコーヒージャパン
  • ユニクロ
  • 大林組
  • 日産自動車

スターバックスコーヒージャパン

スターバックスコーヒージャパン
出典元:Starbucks Stories Japan|Sustainability Archives

スターバックスコーヒーでは、主に資源・環境面でのサステナビリティ施策を進めています。下記は、スターバックスが取り組んでいるサステナビリティ施策の一例です。

  • 使い捨てカップの代わりに店内マグカップ・グラスを使う、もしくはマイタンブラーを持参することで様々な特典がもらえる『Mug & Tumbler Challenge』を実施
  • ブラジルにおいてコーヒー栽培のためのファーマーサポートセンターを解説
  • 直契約できるすべての店舗(路面店を中心に約350店舗)で使用する電力の再生可能エネルギーへの切り替えを完了

環境や資源に配慮した経営を行い、特にコーヒーと関連したサステナビリティの施策に取り組んでいる点がスターバックスの特徴です。環境に配慮した店舗の拡充も進めており、企業全体で組織的にサステナビリティ向上に取り組んでいます。

ユニクロ

ユニクロ
出典元:UNIQLO|UNIQLO Sustainability / THE POWER OF CLOTHING

ユニクロは「PLANET」「SOCIAL」「PEOPLE」の3つの分野に分けて、様々なサステナビリティの取り組みを行っています。例えば、PLANETの分野では「RE. UNIQLO」というリサイクル・リユース事業を行っています。服を新たな服や素材としてリサイクルをすること、支援衣料としてリユースをすることなど、衣料製品の再利用を進めているプロジェクトです。

ユニクロの各店舗には、不要になった衣料製品を回収する「RE.UNIQLO回収ボックス」が設置されています。ユニクロの顧客から不要な衣料品を回収して無駄なく活用している点が、RE. UNIQLOの特徴です。

大林組

大林組
出典元:大林組|サステナビリティ

建設会社大手の大林組では、取締役会でESGへの取り組みを含めた経営方針を定め、その方針に基づいて各部門が業務を進めています。大林組のサステナビリティへの取り組みとしては、下記の事例が挙げられます。

  • 良質な建設物・サービスの提供(各種研修プログラムの実施、品質に関する技術開発など)
  • 環境に配慮した社会づくり(環境マネジメントシステムの運用、環境法令の遵守、気候関連の情報開示など)
  • 人を大切にする企業の実現(人権尊重に関連した規範や法令の遵守、人権デュー・デリジェンスの実施など)
  • 調達先との信頼関係の強化(CSR調達の推進、建設技能者の人材確保と育成、後継経営者育成教育など)
  • 社会との良好な関係の構築(地球環境への配慮、防災と災害時の復旧・復興、地域社会との共生など)
  • 企業倫理の徹底(企業倫理を徹底するための体制の整備、企業倫理確立のための検収の実施、コンプライアンスの徹底など)

建設業界の大手企業ということもあり、人材取引先や地域社会などに重点を置いたサステナビリティ施策が多く見られます。サステナビリティ向上のために、企業内の組織体制の整備に力を入れている点も大林組の特徴です。

日産自動車

日産自動車
出典元:日産自動車企業情報サイト|サステナビリティ

日産自動車はサステナビリティ戦略として「Nissan Sustainability 2022」を定めています。あらゆるグローバルな事業活動を通じて、社会の持続的な発展に貢献していくことを目指しています。

日産自動車が取り組んでいるサステナビリティの事例として、下記の事例が挙げられます。

  • 電気自動車を活用した脱炭素化・防災力強化に向けて姫路市と連携
  • カーボンニュートラル実現、災害に強いまちづくりに関する包括連携協定を七戸町と締結
  • EVや持続可能な技術への資金調達を可能とするサステナブル・ファイナンス・フレームワークを策定
  • 自動車技術会、東京都市大学と共同して「中・高校生による手作り電気自動車コンテスト」を開催

また、日産自動車はサステナビリティとESGに関する取り組みと結果をまとめた「サステナビリティレポート」を発行しています。レポートは日産自動車の公式ホームページで公開されており、誰でも自由に閲覧することが可能です。

世界のサステナビリティの注目度は?取り組みや事例を紹介!

世界のサステナビリティの注目度は?取り組みや事例を紹介!

日本のみならず、世界各国の企業もサステナビリティ向上に取り組んでいます。世界の企業がサステナビリティ向上のためにどのような施策に取り組んでいるか見ていきましょう。

今回紹介する世界の企業は下記の通りです。

  • アディダス
  • アクセンチュア
  • ユニリーバ

アディダス

アディダス
引用元:adidas

ドイツに本社を構えるスポーツ用品メーカーのアディダスでは、「PEOPLE(人々)」「PRODUCT(製品)」「PLANET(地球)」「PARTNERSHIP(パートナーシップ)」の4項目に分けてサステナビリティ施策を進めています。下記は、アディダスが実施したサステナビリティ施策の一例です。

<PEOPLE(人々)>

  • アディダスグループ従業員の行動規範となる「Code of Conduct」を改訂した。
  • 工場労働者向けSMSホットライン『SMS Worker Hotline』を拡大した。インドネシア・ベトナムの25工場で、160,000名に及ぶ工場労働者への対応を可能にした。
  • 従業員のボランティア活動を推進した。結果、ボランティア活動が合計28,750時間となり、最高記録を更新した。

<PRODUCT(製品)>

  • 調達されるコットンの全てを『サステナブル・コットン』とすることを確約した。傘下ブランドすべてにおける全製品を対象とした。
  • 製品に含まれる再生ポリエステル繊維の使用量を増加させた。

<PLANET(地球)>

  • アディダスグループのサプライヤー各社を対象に、全143回に及ぶ環境監査を実施した。
  • 資源・エネルギー節約のための様々な機能・設備を取り入れたHomeCourt Store(ホームコート・ストア)をドイツのニュルンベルクにオープンした。

<PARTNERSHIP(パートナーシップ)>

  • 現行の環境監査ツールに代わり業界で広く使われている『Sustainable Apparel Coalition(SAC)Higg 2.0 Index Environmental Facility Module(SAC Higg 2.0 インデックス 環境設備モジュール)』を採用した。
  • 化学品管理プログラムのさらなる改善に向けて、bluesign technologiesとの戦略パートナーシップを締結した。

アクセンチュア

アクセンチュア
出典元:アクセンチュア|環境サステナビリティ

アイルランドに本社を構える総合コンサルティング会社のアクセンチュアは、環境問題にコミットしたサステナビリティ施策に取り組んでいます。

アクセンチュアは低炭素社会の実現のために、下記に挙げる投資施策を進めています。

  • 接続可能な航空燃料(SAF)
  • 生物多様性の支援
  • 植林

低炭素社会を実現するためにビジネスと社会双方で共有された価値を明らかにした上で、社員・クライアント・サプライヤー・パートナー間で協業してサステナビリティ向上に取り組んでいる点が、アクセンチュアの特徴です。

ユニリーバ

ユニリーバ
出典元:Unilever|地球と社会

イギリスのロンドンに本社を置く一般消費財メーカーのユニリーバは、2010年に企業の成長とサステナビリティを両立するビジネスプランとして「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)」を導入しました。

サステナビリティが一般的に認知される前からサステナビリティ向上に取り組んできたユニリーバは、サステナビリティに対して意識を高く持っていることが伺えます。実際にユニリーバはUSLPの取り組みを通じて、工場からのCO2排出量を65%、水使用を47%、廃棄物量を96%削減することに成功しています。

さらに、ユニリーバはUSLPの後継プランとして、成長戦略である「ユニリーバ・コンパス」を2021年に導入しました。ユニリーバ・コンパスでは現代の重要な課題に焦点を当てて、期限付きの数値目標や野心的な行動計画が設定されています。

ユニリーバはUSLPでの経験を活かして、今後も積極的にサステナビリティ向上に取り組む予定です。

サステナビリティの実現のために解決するべき3つの課題を解説!

サステナビリティの実現のために解決するべき3つの課題を解説!

最後に、サステナビリティの実現のために解決するべき課題を3つ確認していきます。

  • ESGやSDGsなどへの同時対応
  • 複数の事業を運営する経営方針のあり方
  • 新規事業に対する取り組み方

ESGやSDGsなどへの同時対応

サステナビリティを向上させるためには、ESGやSDGsなどへ同時対応していくことが企業に求められます。SDGsとは、国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」です。ESGはあくまでも企業単独で目標を設定しますが、SDGsの場合は国連が設定した目標基準に合わせてサステナビリティの施策を進める必要があります。

SDGs実現への取り組みは、企業に強制されるものではありません。ただし、サステナビリティの施策を進めていく上で、大企業・グローバル企業であるほどSDGs実現に対して積極的です。企業のサステナビリティの取り組みを世界に向けて発信したい場合は、SDGsへ対応した施策も同時に進める必要があります。

ESG・SDGsへの対応も含めたSX戦略に関しては、『2030年のSX戦略』で詳しく解説されています。こちらの書籍もぜひ参考にしてみてください。

複数の事業を運営する経営方針のあり方

サステナビリティを向上させるためには、複数の事業を運営するための経営方針を固める必要があります。サステナビリティ施策の規模が大きくなるほど、本業とサステナビリティ施策を並行して行う必要があります。本格的に施策を進める場合はサステナビリティ施策のみで事業化できる可能性もあるため、留意しておきましょう。

新規事業に対する取り組み方

新規事業に対する取り組み方も、サステナビリティを向上させる上で重要です。サステナビリティ向上を前提にして新規事業を企画すれば、企業のサステナビリティ向上と新規事業の展開を無理なく両立しやすくなります。新規事業を立ち上げて展開した後にサステナビリティ施策を考える場合では、サステナビリティ施策を実行するのに時間がかかってしまいます。企業のサステナビリティを向上させたい場合は、新規事業の企画・立ち上げ段階でサステナビリティの施策も組み込むようにしましょう。

サステナビリティを実現しよう

サステナビリティを実現しよう

環境が急激に変化していく中で企業が継続して成長していくために、サステナビリティの向上が不可欠です。サステナビリティは大企業・グローバル企業が取り組むものという認識を持たれている方もいるかもしれません。しかし、中小企業・スタートアップ企業の場合でも、サステナビリティ向上に取り組むことで事業の知名度・認知度を高めることに繋げられます。サステナビリティ向上において、企業規模の大小は関係ないと考えて良いでしょう。

本記事で解説・紹介した内容を参考にしつつ、企業のサステナビリティ向上を実現していきましょう。

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