地球規模の環境問題がメディアを通じて盛んに報道されています。環境問題のために何かできることはないかと考えている人や企業も多いことでしょう。
最初に代表的な環境問題を5つ解説し、次に日本が実施している取り組みを紹介します。最後に環境問題の解決のために個人や企業でできる取り組みを紹介します。環境問題への課題について取り組み方を考えてみてください。
目次
代表的な5つの環境問題
ここでは代表的な環境問題を5つ紹介します。いずれも人間活動が深刻な状況を引き起こしており、差し迫った問題です。
地球温暖化
地球温暖化とは、世界の平均気温が上昇している環境問題を指します。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が2021年に発表した報告書によると、2011〜2020年の平均気温は、1880年代の工業化前に比べて1.09℃上昇しました。
地球温暖化の原因は、太陽の光を吸収して放熱を妨げる「温室効果ガス」の増加です。人間の活動により二酸化炭素、フロン、メタンなどの温室効果ガスの排出量が増えたことで、温暖化が引き起こされています。
地球温暖化は主に次のような環境問題を引き起こします。
- 海面上昇
海氷が溶けるなどして海面が上昇したことで、生態系の破壊や、高潮・高波による災害増加などのリスクの増加
- 海洋酸性化
海中の二酸化炭素濃度が高まって海水が酸性化し、生態系や漁業への悪影響
- 真夏日の増加
人間や動物などの健康被害のほか、農作物への悪影響
森林破壊
森林破壊とは、人間活動によって森林が失われることを指します。国連の調査では、2015年以降、1週間ごとに東京都の面積と同程度の森林面積が失われるペースで森林破壊が進んでいます。
森林破壊の主な原因は、大規模農業や畜産、紙パルプの生産、発電などのさまざまな需要による森林伐採です。また、近年問題視されている大規模な森林火災も、人の活動が引き起こした地球温暖化が関係していると考えられています。
森林破壊が引き起こす主な環境問題は、次のとおりです。
- 野生生物の絶滅
住む場所を追われた野生生物が減少、絶滅し、生態系の崩壊による間接的な野生生物の減少、絶滅
- 住まいや食料を失う
焼き畑農業や過度な木材の売却など、持続可能でない方法による森林破壊によって住まいや食料を失うケースの増加
- 地球温暖化の加速
二酸化炭素を吸収する森林の減少による地球温暖化の加速
大気汚染
大気汚染とは、地球を取り巻く空気の汚染を指します。空気は国境を横断して移動するため、国単位ではなく地球規模の対策が求められています。
大気汚染の原因は、主に自動車や工場から出る化学物質です。例えば中国やインドで急激に利用が増えた自動車から出る排気ガスは、深刻な大気汚染の原因になっています。
大気汚染が引き起こす主な環境問題は以下のとおりです。
- 光化学スモッグ
工場から出る窒素酸化物や炭化水素が太陽光と化学反応して、光化学オキシダントという有害物質をつくります。光化学オキシダントが待機中にたまることで、光化学スモッグが起き、目がチカチカしたり、のどが痛くなったりするなどの健康被害につながります。
- 酸性雨
工場から出る窒素酸化物や炭化水素が大気で酸性に変わり、酸性雨を降らせます。この結果、森林破壊や作物が育たなくなるなどの被害が出ています。
- PM2.5
P.M2.5は、待機中にある2.5μm以下の細かいつぶ上の汚染物質を指します。非常に小さいため、肺の奥深くに入りやすく、健康への悪影響をもたらします。
- 黄砂
黄砂は東アジア内陸部の砂漠などの砂が強風により巻き上げられ、日本や周辺の国や地域に降りそそぐ現象です。黄砂は自然現象として考えられていましたが、森林の現象や砂漠化など、人間の暮らしによって生じた問題にも関係があり、環境問題であると捉えられています。
海洋汚染
海洋汚染とは、人間が出したゴミやプラスチック、タンカーから漏れた原油などによって海が汚染される環境問題を指します。近年、問題に取り上げられることが多いのは、海に漂うプラスチックを意味する「海洋プラスチック」です。
海洋プラスチックは単にゴミとして海を汚染するだけでなく、海洋生物の命を奪ってしまう物質です。例えば、死んだクジラの胃からストローやビニール袋などの大量のプラスチックが出てくる事例などが増えています。
また、マイクロプラスチック(5mm以下の微細なプラスチック片)が分解されず、増え続けていることによる生態系への影響も懸念されています。
水質汚染
水質汚染とは、海や川、湖などの水質が悪化する環境問題を指します。先の海洋汚染は水質汚染に含まれます。
ただし水質汚染というときは、人間の生活に関連して捉えられるのが一般的です。例えば飲料水の汚染や、農業用水の汚染、工業用水による公害などに関連して扱われます。
したがって水質汚染は、私たちの命や暮らしに直結する、緊急性の高い環境問題です。最も重要な飲み水も、2020年時点で約20億人が排泄物や化学物質によって汚染されていない安全な水を飲めていないとユニセフが報告しています。
環境問題への日本の取り組み
ここまで紹介してきたように、現代社会は地球規模の環境問題をたくさん抱えています。こうした環境問題に対し、日本はどのような取り組みをしているのでしょうか。ここでは環境省や国土交通省などが実施しているプロジェクトを4つ紹介します。
グリーンスローモビリティ
国土交通省が提案しているグリーンスローモビリティとは、低速の電気自動車を活用した小さな移動サービスです。イメージ的にはゴルフカートを4〜6人用に大型化したものや、遊園地内の周遊バスのようにゆっくり動く車を想像するとよいでしょう。
グリーンスローモビリティの目的は、自家用車から低炭素な交通機関へのシフトを促せることです。例えば、高齢者が地元を移動する交通手段や、観光客向けの周遊バスなどに活用されています。
COOL CHOICE
環境省が提案しているCOOL CHOICEは、環境にやさしいライフスタイルを後押しする活動です。例えば、ガソリン車から電気自動車への乗り換え、太陽光発電の導入、環境負荷の少ない商品の購入など、幅広い行動変容が紹介されています。
COOL CHOICEは、脱炭素につながる暮らしを多くの人が具体的にイメージできるようにするために始められました。環境問題を改善するためにできることを探している人は、自分に合った行動のヒントをみつけられるでしょう。
プラスチック・スマート
環境省が実施しているプラスチック・スマートは、プラスチックと賢く付き合っていくための取り組みです。取り組みの範囲は個人や企業、団体、地域などさまざまです。
例えば、身近な行動に注目した「プラスマアクション」では、ペットボトルのリサイクルや、海洋ゴミをリサイクルした「アップサイクル」を購入するなど、すぐにでもはじめられる行動が紹介されています。また、プラスチック・スマートのサイトでは、企業が開発したプラスチックゴミの再利用商品や自治体のプラスチックゴミ回収活動などが掲載されています。
ライフスタイルイノベーション
環境省が主催するライフスタイルイノベーションでは、低炭素型社会を実現する新たなライフスタイルを提案しています。先に紹介した「COOL CHOICE」と重なる部分がありますが、ライフスタイルイノベーションでは「NEB(Non Energy Benefit)」という指標を用いているのが特徴です。
NEBとは、環境に配慮した行動による間接的な便益を評価する指標です。例えば高断熱性住宅なら、暮らしの快適性や健康への好ましい影響が挙げられます。緑化空間なら健康面や心理面、生活満足度の向上などが挙げられるでしょう。
つまり利用側からみたNEBとは、環境へ配慮した行動へのモチベーションを与えてくれる指標です。ライフスタイルイノベーションでは、NEBの評価と情報発信によって環境事業を活性化し、イノベーションを加速することを目指しています。
環境問題解決のためにできること
環境問題の解決のために、何かできることはないかと考えている方は多いでしょう。ここでは環境問題解決のためにできる5つの取り組みを、個人や企業の具体策を交えながら紹介します。
省エネに取り組む
電気やガスなどの消費をできるだけ減らすことは、環境問題の解決につながります。石炭や石油などの化石燃料をできるだけ使わない省エネは、脱炭素につながるからです。
個人でできる身近な取り組みの一つが節電です。例えばエアコンの設定温度を 夏は28℃、冬は20℃に設定することが推奨されています。また、テレビや照明などを小まめに消すのも省エネに効果的です。
企業の取り組みも方向性は個人と変わりません。「廊下の照明に人感知センサーを付ける」「太陽光発電設備を導入する」など、いろいろな施策が考えられます。どこから手をつけたらよいのかわからない場合は、エネルギーの最適化に知見を持った専門業者に相談してみましょう。
5Rを意識した生活をする
5Rとは、Reduce(ゴミを減らす)、Reuse(繰り返し使う)、Repair(修理して使う)、Return(使用済み商品を回収してもらう)、Recycle(再利用する)の5つの行動です。
環境問題を減らすには、たくさんの人が5Rを実践することが重要です。すでに詰め替え製品を使ったり、衣類を繕ったりするなど、行動に移している人も多いことでしょう。
企業側の取り組みとしては5Rを推進する商品や仕組みを提供する必要もあります。例えばプラスチック製の使い捨て商品を止めて耐久性が高くリサイクルしやすいアルミ製の商品に変えるなどです。また、使い終わった商品を自主的に回収してリサイクルする企業も増えてきました。
節水を意識する
節水も環境負荷を減らす行動です。使い終わった水は浄水場できれいにされますが、この際、大量のエネルギーが消費されます。
個人の取り組みとしては、歯磨きや炊事、洗濯など身近な行動を見直してみるとよいでしょう。歯磨き中に水を出したままにしておくことで、30秒間に約6リットルの水をムダにしています。
企業の場合は、自動で止まる蛇口や、節水対応のトイレ、シャワーなどの設備導入が効果的です。この際、専門業者からアドバイスを受ければ、費用対効果の高い設備を導入しやすくなるでしょう。
公共交通機関を利用する
自家用車、社用車の移動を、電車やバスなどの公共交通機関での移動に変えられないか検討しましょう。一度で多くの人を運べる公共交通機関を利用すれば、温室効果ガスの排出量を減らせます。
個人なら自家用車の代わりになるべく電車やバスの利用を心がけます。もちろん徒歩や自転車の移動を増やすのもよいでしょう。
また、企業の間では、マイカー通勤を止めて公共交通機関や自転車での移動を推奨する「職場交通マネジメント(エコ通勤)」が広がっています。職場交通マネジメントでは従業員への呼びかけのほか、自転車通勤者への手当支給や通勤バスの導入などの取り組みが行われています。
小さな取り組みが環境問題解決につながる
現代社会は地球温暖化や森林破壊など、地球規模の差し迫った環境問題を抱えています。しかし、個人や企業の小さな取り組みであっても、実行する人が増えれば環境問題の解決につながります。まずはできることから取り組んでいきましょう。
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