地球温暖化問題でよく聞く「二酸化炭素」を知っている人は多いですが、「炭素」という言葉や「脱炭素」について詳しく知っていますか?実際にどのようなものか説明するのは難しいですよね。
この記事では、炭素がどんな成分で何に含まれているかや、脱炭素に関連する環境問題と世界の取り組みについて分かりやすく解説しながら、脱炭素社会を目指すことの重要性をお伝えします。
目次
炭素を簡単に解説
炭素は別名をカーボンといい、簡単に説明すると、燃焼した際に酸素と化合し二酸化炭素を生じる元素のことです。二酸化炭素として大気中に含まれる量は約0.03%で、4番目に多い成分です。
さらに、燃料源や化学薬品の原料となる石炭・石油の成分として生物圏の重要な構成成分を担っており、地殻中では二酸化炭素・有機化合物・炭酸塩として広く分布しています。
動物・植物の生物要素と土砂や水などの無機的要素は絶え間なく構成要素を変化させ、全体のバランスを保っています。
二酸化炭素が問題とされている理由
地球の表面は窒素や酸素・二酸化炭素などの大気が取り巻いており、気温を一定に保つ働きがあります。
しかし、石炭や石油を燃やすことで二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が大幅に増え、宇宙に逃げようとしていた熱が地球上に留まることで、平均気温の上昇・異常気象・海面上昇・生態系の変化などに影響が出ます。
例えば、地球の平均気温が上昇すると海や地面から蒸発する水分が増え豪雨となり、北極や南極では氷が溶けて海水面が上昇し、標高が低い土地や一部の島国では、浸水するところも出てくるでしょう。
さらには、気温が上昇することで熱帯地方にしかいないはずの細菌などによって疫病の発生を引き起こし、生態系が変わる可能性も否定できません。
それに伴い、食糧や水資源の枯渇・健康被害・経済格差の拡大など、私たちの生活では避けられない問題に直面しています。
下記の記事でも温室効果ガスの影響について分かりやすく解説していますので、是非ご覧ください。
カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラル(carbon neutral)は、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を”実質”ゼロにすることを意味し、炭素循環ともいいます。地球上で炭素が化学反応をくり返しながら移動することです。たとえば、植物が光合成で二酸化炭素を吸収し、生育につかいます。その植物が焼かれたり、朽ちたりすると、また二酸化炭素が大気にもどります。これが炭素の循環です。
この循環を保つために、新しく出る二酸化炭素をださないよう、または出ても同じだけ「吸収」または「除去」しプラスマイナスゼロにするという考え方です。
これがカーボンニュートラルの「ニュートラル(中立)」の部分です。
2021年1月20日時点では、日本を含む124カ国と1地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を表明しており、日本政府だけではなくさまざまな企業も宣言しています。
下記の記事では、二酸化炭素の特徴や排出量を減らす取り組みについて解説しています。
脱炭素とは?
脱炭素とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの代表ともいえる「二酸化炭素」の排出量をゼロにする取り組みのことで、二酸化炭素排出が実質ゼロになった社会を「脱炭素社会」と呼びます。
カーボンニュートラルと脱炭素は一見同じようにも見えますが、分かりやすく言うとカーボンニュートラルは「プラスマイナスゼロにする」という意味合い、脱炭素は「完全に炭素を除く」という意味合いです。
近年、地球温暖化が加速しているため世界全体で対策が進められており、日本でも2020年10月に、菅義偉前内閣総理大臣が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と信表明演説の中で述べています。
また、環境省でも、「2050年までに年間で12億トンを超える温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること」が必要だと述べられており、産業や家庭、運輸など部門ごとに温室効果ガスの排出量抑制目標を設定し、改変に取り組んでいます。
脱炭素を世界が目指す理由
世界全体で脱炭素が急務である理由は以下の2点です。
・深刻化する地球温暖化を食い止めるため
・化石燃料が枯渇するため
まず1つ目は「深刻化する地球温暖化を食い止めること」です。地球温暖化が進むと温室効果ガスが大気中に留まり気温が上昇します。気温が上昇すると、降水量が変化し異常気象や自然災害の頻度が増えるでしょう。
2つ目は、「化石燃料が枯渇するため」です。化石燃料は、古代生息していた植物や動物の死骸・プランクトンが長い年月をかけて変化したものです。そのため、埋蔵量は無限ではありません。
2017年末時点で確認されている石油の埋蔵量は、可採年数にすると50.2年分になると言われているのが現状のため、枯渇する前に対策を進めています。
脱炭素化社会に関連するSDGs目標
脱炭素化社会に関連するSDGs目標について詳しく説明します。
【SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」】
地球上のエネルギー問題を解決するための目標です。2030年までに、世界中で安心安全な再生可能エネルギー(水素・太陽光・風力など)を普及させ、世界中の人々に安くて安心なエネルギーを供給できる未来を目指します。
そのためには、石炭など有限で環境に問題があるエネルギーは削減し、良質なエネルギーを安く、多くの人の手に届く未来を築くことが求められています。
【SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」】
日本では、水道・電気・ガス・情報技術などさまざまなインフラが整備されています。しかし、世界全体で見てみると、インフラが整備されている国は多くありません。
このような状況を正すことで、産業や技術革新の土台を作っていこうというのがSDGsの目標9にあたります。
【SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」】
少ない資源で、良質かつ多くのものを得られるような生産と消費をしようという目標です。現在の大きな問題の一つとして、食品ロスや有価物の投棄があり、これらは資源の無駄遣いになります。
こうした問題点を解決するために、リユース・リサイクルの呼びかけや、無駄遣いの撲滅などすべての人々による持続可能な生産・消費形態の実現を目指しているのがSDGs目標12です。
【SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」】
気候変動は世界中で問題視されており、全世界が取り組むべき課題となっています。天候の変化や海面水位の上昇、異常気象など気候変動の影響が徐々に出始めていますよね。
この変動は今後、私たちの生活に大きく影響するため、早急に進める対策の一つといえるでしょう。
脱酸素のために世界が行なっている取り組み
脱炭素社会・カーボンニュートラルの実現のためには、多くの取り組みが必要です。世界では、再生可能エネルギーの促進や水素エネルギーの実現化・石炭火力発電を廃止する等の取り組みが積極的に行われています。
再生可能エネルギーの推進
再生エネルギーは、太陽光や風力・水力・地熱・バイオマスなどの自然の力を利用したエネルギーです。化石燃料の場合埋蔵量に限りがありますが、再生エネルギーは比較的短期間で再生できるため、枯渇することがありません。
また、発電時の二酸化炭素排出を抑えられる点もメリットです。脱炭素社会を目指す私たちにとって二酸化炭素排出量を削減することは必須であり、世界中で再生可能エネルギーの使用が推進されています。
さらにメリットとして挙げられるのが、日本のエネルギー自給率の上昇です。日本での自給率は2019年時点で約12.1%と、ほかのOECD諸国(経済協力開発機構)に比べても低い水準を示しており、そのほとんどを輸入に頼る現状となっています。
二酸化炭素排出量を削減し、エネルギー自給率を上げるという観点から、再生エネルギーの推進は日本にとって今後重要となる課題です。
水素エネルギーの実用化
水素は、酸素と化合することで電気と水を生成します。この力を利用し、発電したり熱エネルギーを発生させたりと、生活のエネルギー源として使用するのが水素エネルギーの試みです。
二酸化炭素を排出させないことだけではなく、電気を使って水から取り出せるのはもちろん、石油や石炭などさまざまな資源から生成できます。
さまざまな資源から生成できるということは、エネルギー資源も多様に利用可能です。日本は水素エネルギーに関連する高い技術を持っており、燃料電池の分野においては、特許出願数が世界で一番多くなっています。輸入に頼らなくてもエネルギー資源を確保できる日も、そう遠くありません。
水素エネルギーはすでに実用化が進んでいる技術で、水素バスや水素自動車・家庭用燃料電池などさまざまなもので普及されています。
石炭火力発電を廃止
イギリス政府は、2024年10月までに石炭火力発電を撤廃すると発表し、脱炭素に踏み切りました。2020年の発電源を見ると43.1%を再生可能エネルギーで賄っており、内訳は風力24.2%、バイオ12.6%、太陽光4.2%、水力2.2%となっています。
石炭は全体の1.8%のみで、日本の火力発電の割合が31%なことを考えるとかなり削減されていることがわかります。
脱炭素社会実現のために、私たちにできること
世界の二酸化炭素排出量の約3.5%を日本が占めており、世界で5番目に多いとされています。また、日本の家庭で使用されている二酸化炭素排出量は14.6%です。これらを踏まえて、個人で取り組める内容をいくつか紹介します。
・電化製品の主電源を切る
・公共交通機関を利用する
・マイバッグやマイボトルを利用する
・再生可能エネルギーの電力会社を利用する
・冷暖房に頼らない
また、一見関係なく見えますが「食品ロスを減らすこと」も大事です。無駄な食材を生産しない、流通させないことで、廃棄処分の際の焼却による無駄がなくなります。
国民全員が少しずつ排出量に注意すれば、それだけ二酸化炭素の排出量を削減できるでしょう。
脱炭素社会実現のために、一人ひとりができることを
企業や個人の取り組みについて紹介しましたが、脱炭素社会の実現には、世界規模で対策を行わなければ、取り返しのつかない被害をもたらしてしまいます。
イギリスやアメリカなどの多くの国ではすでに脱炭素に向けた動きが進められていますが、日本は少し出遅れた印象があるため、政府と企業・個人が一丸となって積極的に取り組んでいく必要があります。
一人ひとりができることを積み重ねれば、良い未来につながるでしょう。
弊社の「e-dash」は、脱炭素への取り組みを総合的にサポートするプラットフォームです。エネルギーの最適化からCO2削減まで、貴社の脱炭素経営をトータルにお手伝いします。低コストでスタートできるプランを用意しているため、まずは気軽にお問合せください。