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脱炭素経営

【2025年最新】SSBJのサステナビリティ開示基準と企業が取るべき対応をわかりやすく解説!

サステナビリティ開示の重要性が高まる中、日本ではSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が開示基準の確定版を2025年3月5日に公表しました。本記事では、SSBJの設立背景や開示基準の詳細、企業が対応すべきポイントをわかりやすく解説します。今後の適用に備え、必要な準備を進めていきましょう。

SSBJとは?

SSBJ(サステナビリティ基準委員会)は2022年7月に設立された日本におけるサステナビリティ報告の基準策定を担う組織です。ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が定める国際基準と整合する日本企業向けの基準を整備し、透明性の高いサステナビリティ情報の開示を促進する役割があります。

SSBJが定めた開示基準は、2024年3月に公開草案が発表され、2025年3月5日に確定版が公表されました。

ISSBについて詳しくはこちら

SSBJの活動内容

SSBJの主な活動は、日本版サステナビリティ開示基準の開発と国際基準の開発への貢献の2つです。市場関係者のニーズを考慮しつつ、日本の法規制や固有の要件を取り入れながらも、国際比較の公平性を保つ基準の策定を目指しています。

また、日本のサステナビリティに対する考え方を国際基準へ共有し、日本の存在感や影響力を向上させることも重要な活動の一環です。

SSBJの3つの開示基準

1.適用基準(ユニバーサル基準)
2.一般開示基準(テーマ別基準)
3.気候関連開示基準(テーマ別基準)

SSBJによる新しい開示基準は、以下の3つの主要セクションに分かれています。(下図参照)

出典:SSBJ「サステナビリティ基準委員会がサステナビリティ開示基準を公表(公表にあたって)

1.適用基準(ユニバーサル基準)

適用基準は、情報開示の方法や記載場所、報告のタイミング、比較情報などのサステナビリティ関連情報を作成‧報告する際の基本項目を定めています。企業はESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みを開示し、サステナビリティへの対応状況を明確に示すことが重要です。

この基準により、投資家やステークホルダーは企業のESGへの取り組みを容易に比較し、評価ができるようになります。

2.一般開示基準(テーマ別基準)

一般開示基準は、人的資本や生物多様性など、気候変動以外のテーマに関する開示ルールを定めています。開示にあたっては、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4つのコア・コンテンツに沿って情報を開示することが求められます。

現段階でSSBJが公表しているテーマ別基準は気候関連開⽰基準のみであり、人権などのテーマについて開示する場合は、一般開示基準に基づいて情報を開示する必要があります。

コア・コンテンツとは?
企業のサステナビリティに関する重要な情報を体系的に示す枠組みです。具体的には、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つの観点があります。

3.気候関連開示基準(テーマ別基準)

気候関連開示基準は、温室効果ガス排出量や気候シナリオ分析など、気候変動に関連する開示事項を定めた指針です。これは、企業が気候問題に関する情報を適切かつ透明に開示するための基準となっています。企業は、気候変動に対するコア・コンテンツの観点から、関連情報を整理し、説明することが求められます。

SSBJの公開草案から確定基準への変更点

・企業のデータ管理
・GICS分類ルール
・内部炭素価格の開示要件
・Scope 1・2・3に係る開示の要求

SSBJ基準は2025年3月5日に確定基準が定められました。ここでは、2024年の公開草案からの変更点を見ていきましょう。

企業のデータ管理

公開草案最終版企業への影響
温対法などの法令に基づくGHG排出量のデータ(1年以上前のもの)も、サステナビリティ開示に使用可能財務報告とGHG排出量の算定を同期間に修正最新のGHG排出データを収集・管理する必要がある   データ更新の頻度が増え、算定プロセスの見直しが求められる可能性がある

公開草案時点では、特定の要件を満たせばGHG排出量データに1年以上前のデータを使用することができました。今後は同期間に算定した財務報告とGHG排出量の最新データの準備が求められます。ただし、データ収集に時間がかかる場合は情報提供の措置が導入されるため、柔軟な対応が可能です。企業は正確なデータ管理の仕組みを整備し、迅速な開示に備える必要があります。

GICS分類ルール

公開草案最終版企業への影響
ファイナンスド・エミッション(投融資に関するGHG排出量)を開示する際には、GICS(世界産業分類基準)に基づa産業別分類が必須GICS以外の分類方法も認め、企業の負担を軽減する対応を導入ライセンス費用においての負担が軽減    

日本ではGICSのライセンス費用の高さが課題でしたが、GICS以外の産業分類を使用することも可能となりました。ただし、独自の産業分類を用いる場合は、開示の透明性を確保するために合理的な説明が求められます。企業は、自社のビジネスに適した分類を選択し、説明責任を果たすことが重要です。

内部炭素価格の開示要件

公開草案最終版企業への影響
内部炭素価格を複数使用している場合、すべての詳細な開示が必須実際に投資の判断やリスク管理に活用している内部炭素価格のみに限定  内部炭素価格の開示の負担が軽減  

内部炭素価格を目的別に分けている場合、情報開示の省略が認められるようになりました。ただし、投資判断に用いる場合は詳細な説明が求められるため、開示基準を理解した上で適切な情報提供を行う必要があります。企業は、自社の内部炭素価格の活用状況を明確にし、透明性を確保することが重要です。

Scope 1・2・3に係る情報開示の要求

公開草案最終版企業への影響
Scope 1・2・3の合計排出量の開示を要求合計排出量の開示要件を削除・各Scopeの開示は引き続き必要各Scopeの質がより重視される

変更前は、Scope 1~3の温室効果ガス排出量の合計値を開示することが求められていました。

Scope 3は、算定精度や信頼性の点でScope 1・2とはレベルが異なるため、これらを単純に合算した排出量の総計は、情報利用者にとって有用性に欠ける場合があります。とくに、合計値だけが独立して流通してしまうと、投資家に誤解や過度な解釈を与えるリスクがあることが課題とされていました。

ここでの主な変更点は、合計値の開示義務が削除されたことです。これにより企業側の負担は軽減された一方、業種横断的な比較や全体的な排出傾向の把握がやや困難になる可能性もあります。開示の自主性が増した分、企業にはステークホルダーからの期待に応じた対応が求められます。

SSBJ基準の今後の展開

年月今後の展開
2025年3月基準発表、任意適用開始
2027年3月適用義務化(時価総額3兆円以上企業)
2028年3月導入義務化(時価総額1兆円以上企業)
2029年3月導入義務化(時価総額5,000億円以上企業)
203X年導入義務化(プライム全企業)

出典:金融庁「サステナビリティ開示及び保証に係る動向

SSBJ基準は2025年3月から任意適用が開始され、2027年3月には時価総額3兆円以上の企業(2025年3月時点で約70社)に適用が義務化されます。2028年3月には1兆円以上、2029年3月には5,000億円以上の企業へと段階的に拡大されます。プライム市場の全企業への導入時期は未定ですが、適用状況次第で決まる可能性があることも覚えておきましょう。また、スタンダード市場やグロース市場での義務化も未定ながら、任意適用により競争力を高めることが可能です。

SSBJの適用前に企業が取り組むべきこと

SSBJ基準の適用に向けて、企業では様々な準備が必要です。ここでは、求められる3つの事項を解説します。

・サステナビリティ情報の整理
・GHG排出量の算定と連携の強化
・社内の体制整備と教育

サステナビリティ情報の整理

自社のサステナビリティ情報の開示状況を把握し、不足情報を確認することが重要です。とくに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の4つの柱「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標」は、今後の重要な指針となります。スムーズな情報収集のために、TCFDに沿った情報開示の準備や、データ管理システムを構築し、一貫した情報開示ができる体制を整えましょう。

具体例
・GHG排出量・エネルギー使用量データの管理システムの導入
・データ収集の責任・役割を分担
・経営層に対するESGや気候変動リスクに関する教育・研修の実施
・1.5℃・2℃・4℃などのシナリオ分析

GHG排出量の算定と連携の強化

Scope 1、Scope 2、Scope 3のデータを適切に算定・開示し、正確性を確保する必要があります。外部の専門家やコンサルタントと連携し、効果的なデータ管理を進めることも有効です。

具体例】
・自社の排出量データの可視化、具体的な目標設定
・サプライヤーとの連携強化

Scope 1・2算出の重要性と手順について詳しくはこちら
Scope 3算定初級 算定手順と必要なデータについて詳しくはこちら
サプライチェーン排出量について詳しくはこちら

社内の体制整備と教育

企業全体で適切な開示フローを確立するため、全社員の意識向上が求められます。担当者や各部署で管理する情報を明確にし、役割分担を明確化することが重要です。全社一丸となり推進していきましょう。

【具体例】
・SSBJ開示基準についての社内研修の実施
・報告の流れや責任者の明確化など、情報開示プロセスの確立

SSBJ基準への理解と準備を進め、適用に備えよう

企業がSSBJ基準に沿った情報開示を推し進めることは、投資家や消費者が企業の信頼性を判断する重要な指標となり、企業の国際競争力向上や投資家との信頼構築において大きなメリットをもたらします。企業はSSBJ基準の動向を注視しつつ、基準への適応に向けた準備を進め、新たな課題に柔軟に対応していくことが重要です。適切な対応を進めることで、持続可能な成長と企業価値の向上につなげることができます。

弊社の「e-dash」は「脱炭素を加速する」をミッションに、クラウドサービスと伴走型のコンサルティングサービスを組み合わせ、脱炭素にまつわる企業のあらゆるニーズに応える支援をしています。SSBJに沿った開示のサポートも行っておりますので、ぜひお気軽にe-dashにご相談ください。

以下の資料では、SSBJ基準のより詳細な解説や、開示対応に向けた弊社の支援内容を紹介しています。ぜひご参考にしてください。

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