地球温暖化の危機が叫ばれ、将来的には南極や北極の氷が溶けるとも言われていますが、近年の大寒波や大雪のニュースをみると、温暖化ではなく氷河期が来るのではないかとの疑問の声もあります。世界の年平均気温の上昇や地球温暖化が嘘と言われる理由、地球温暖化に対する世界の取り組みについて解説します。
目次
世界の年平均気温は上昇している
地球温暖化の影響で年々気温が高くなっていると言われていますが、実際にはどれくらい温暖化が進んでいるのでしょうか。以下のグラフは世界の年平均気温と平年値(1991年〜2020年の30年の平均値)との差を表したものです。
グラフを見ると変動を繰り返しながら年々上昇し続けていることが分かります。特に1990年半ば以降は高温となる年が多く、着実に地球温暖化が進んでいるといえるでしょう。
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地球温暖化は嘘?矛盾といわれる理由
地球温暖化が嘘だと言われる理由に、「気温の上昇とCO2の因果関係が分からない」「大寒波や大雪など寒冷化を感じさせる現象が起きている」があげられます。
地球温暖化と叫ばれているにも関わらず、大寒波や大雪が増えていることを疑問に感じるのも無理はありません。
ここからは、気温の上昇とCO2の因果関係や、温暖化に向かうのか寒冷化に向かうのかについて解説します。
気温の上昇とCO2の因果関係がわからない
一つ目に、気温の上昇は事実であるが、大気の0.04%に過ぎないCO2が地球温暖化の原因になるとは考えにくく、他の要因があるのではないかとの意見です。
今から約1万年前、現代と同じくらいかそれ以上に気温が高い時代が存在しました。一見、氷期(寒い時期)・間氷期(暖かい時期)と呼ばれる自然サイクルが起きているとも取れます。
しかし、気温の変化を振り返ると2万1000万年前から1万年の間は4〜7℃と緩やかな気温上昇であったのに対し、20世紀後半からその10倍ものスピードで気温が上昇していることがわかっています。
これにより、自然サイクルではなく人間活動の影響が地球温暖化の原因と確実視されています。
大寒波など寒冷化を感じさせる現象が起きている
二つ目に、世界や日本でも歴史的な大寒波や大雪が起きていることから、温暖化ではなく寒冷化になるとの意見です。
地球温暖化の影響で雪が減ると考える方もいますが、地域によっては増えることもあります。
温暖化によって海面水温が上昇することで水蒸気量が増え、気温が上昇すると大気が取り込む水蒸気量が増えます。温暖化によって増えた水蒸気は、強い寒気に出会うと大雪をもたらすことがあり、寒波や大雪が地球温暖化の原因ではないとは言い切れません。
そもそも地球温暖化とは、地球全体の平均気温が上昇するのではなく、平均気温の上昇で予期せぬ異常気象が増え、大きくなることを指しています。
それを考慮すると寒冷化がたびたび起きるのも納得できるのではないでしょうか。
地球温暖化が嘘だとされる理由
地球温暖化が嘘だとされる理由は一つではありません。
最初に、地球温暖化を主張する証拠とされている、気象データや観測データが不正確、あるいは不十分だと指摘する声があります。
他にも、自然現象や太陽、あるいは地球の周期的なものが原因との主張や、地球温暖化は過大に報道されているといったさまざまな意見があります。
ただし、最新の気候変動枠組条約締約国会議において、各国の専門家の意見をまとめた結論として、地球温暖化の原因は人間活動に影響によるものだと疑う余地がないと発表しています。また、地球温暖化が進行することで、地球上の気候変動や海面上昇、生態系の変化や異常気象の発生などが増加するとされています。
化石燃料に代わるエネルギーが現状ない
指摘される問題点の一つに、日本の発電事情があります。
日本の電気の大部分は、化石燃料による火力発電で賄っており、2021年の年間発電電力量の割合では、化石燃料による火力発電は71.7%を占めています。
現状の日本では、発電電力の7割以上を占める火力発電の代替可能なエネルギー生産の方法がありません。
私たちの経済活動および社会活動は、化石燃料による火力発電によって支えられています。
しかし、火力発電を行うと二酸化炭素を始めとした温室効果ガスは増加します。このジレンマを解決できない状況下において、カーボンニュートラルを推進することは矛盾している、という指摘があります。
再生可能エネルギーの導入にはコストが必要
カーボンニュートラルの実現には、温室効果ガスの発生そのものを大幅に抑制する必要があります。
その取り組みにおいて大きな役割を果たすと考えられるものが再生可能エネルギーです。
再生可能エネルギーとは、繰り返し利用できる資源を使い、温室効果ガスを排出せずに生み出すエネルギーです。
発電をするために火力ではなく、太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスなどの力を用います。
これらはクリーンなエネルギーですが、発電に必要なコストが高く普及が進んでいません。
2016年に行われた経産省の研究機関の試算では、2050年に再生可能エネルギーの導入も含む脱炭素実現の技術が利用可能になったとすると、その時点でのコストは年間43兆円〜72兆円と試算されています。
2022年度国家予算の107.6兆円と照らし合わせると、国家予算の7割近くを占める金額をカーボンニュートラルに当てることになり、実現が疑問視されています。
カーボンニュートラルの検証が難しい
カーボンニュートラルは達成の検証が難しいという点も問題視されています。
現在のところ、カーボンニュートラルの指標の一つとなる二酸化炭素排出量は「生産」を基準に考えられています。これは発生した二酸化炭素を、発生させた国の排出量としてカウントするという考え方です。
このような生産ベースの計測は、先進国に有利、途上国に不利となり、平等な検証とならない懸念を伴っています。
多数の先進国がコスト削減を目的として途上国に工場を建てている例を見てみましょう。
この場合、製造された製品は他国へ輸送・消費されるにもかかわらず、生産や輸出の過程で発生した二酸化炭素は、工場のある途上国の排出量に反映されます。
二酸化炭素の負担を担うことなく先進国が製品を消費できるという状況において、カーボンニュートラルは正しく検証可能なのかを疑問視する声があります。
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膨大な投資が必要
カーボンニュートラルの実現において、膨大な投資が必要な点も課題となっています。
再生可能なエネルギーとして挙げられる、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス等が挙げられます。
いずれの発電方法であっても、土地代、エネルギー設備の建設、設備の定期的なメンテナンスなどの様々な費用がかかります。
他にも、設計や配置の改善や発電機の効率化、研究開発には新たな投資が必要となります。
また、再生エネルギーの導入には、エネルギーを使用するために送電線や変電所の建設、エネルギー貯蔵の施設やバッテリー、蓄電池といったインフラの整備が必要です。
政府の取り組みが十分でない可能性がある
政府の取り組みとして、再生エネルギーを除いた化石エネルギーの規制が不足している点も課題として挙げられています。
また、消費者が環境に配慮したエネルギーの選択を行えるような取り組みも必要です。
企業が積極的に取り組めるようにコスト面での支援だけでなく、技術的な支援が必要な可能性があります。
一部のカーボンニュートラル技術が新たな環境問題を生む可能性
例として、バイオマス発電において、バイオマスを生産するために森林を大規模に開発する場合に生態
系の破壊など新たな環境問題を引き起こす可能性があります。
他にも、カーボンキャプチャーにより二酸化炭素を貯蔵する場合に地震を引き起こす可能性があることも指摘されています。
そのため、カーボンニュートラル技術には、環境問題を引き起こさないものが求められています。
一部の地域や産業が影響を受ける可能性がある
カーボンニュートラルの実現に向けて、一部の地域や産業が影響を受ける可能性についても指摘されています。
化石燃料産業や自動車産業、建設産業などの温室効果ガスの排出が多い産業への影響について適切な支援を行う必要があります。
また、日本でもカーボンニュートラルへの取り組みは、地域ごとに行われていることもあり、取り組みの進行度によって経済格差が拡大する可能性が指摘されています。
そのため、影響が大きな産業や地域に対して、適切な支援や対策を行う必要があります。
太陽活動
太陽活動とは、太陽から放出されているエネルギー量に影響するとされていますが、地球温暖化の原因として考慮されていないことが反対意見として挙げられます。
地球温暖化に太陽活動が影響を与える可能性があるという主張は、活動が活発な時期には、太陽風や太陽フレアが増加することから、雲の形成や降水などの気象現象に影響を与える原理と同様です。
ただし、科学的に地球温暖化との関係性については明確に解明されていないため、太陽活動が地球温暖化の主要な原因となっているという主張には多くの疑問が投げかけられています。
地球温暖化についての中国の脅威とは?
地球温暖化についての矛盾とされている理由の一つに、中国などの二酸化炭素排出量や大気汚染が取り上げられています。ここでは、中国の脅威とされているものについて解説します。
大気汚染
発展が著しい中国では工業活動が活発なため、多くの温室効果ガスを排出していることから大気汚染が深刻化しており近隣諸国では大きな問題となっています。
このことから、中国が積極的な温室効果ガス削減の活動に取り組まない限り、近隣諸国だけでなく地球全体の地球温暖化に対する取り組みが弱体化するのではないかといった指摘があります。
エネルギー需要
こちらも上記同様に発展に伴い、経済活動や日々の生活において必要とされているエネルギー総量の需要が増加しています。このエネルギー需要に応えるために、化石燃料の消費が増えることで温室効果ガスの排出量が増加していることが指摘されています。
このことから、中国が化石燃料の消費を抑えて再生エネルギーに移行する重要性が指摘されています。
森林や田畑の開拓
中国は世界でも有数の森林資源を保有していますが、この森林の伐採が進んでいることも問題点に挙げられています。伐採された土地は開発等が進められ二酸化炭素の吸収量の減少や、二酸化炭素排出量の増加が指摘されており、地球温暖化対策が正しく行われているか疑問の声があります。
温室効果ガスの排出量について
世界で最も多くの人口を抱えている中国では、温室効果ガスの排出量が大きな問題となっています。
2021年時点のデータでは、中国が27.5%の温室効果ガスを排出しているとされています。
これは、上位10カ国全体の52.1%の温室効果ガスに対して半数以上を占めており、中国の温室効果ガス排出量が他の9カ国よりも多いことがわかります。
このことから、世界各国が温室効果ガスの削減の取り組みが効果をあげることが難しいのではないかとされている理由になります。
世界各国の温室効果ガス排出量について
2021年時点のデータによると、世界各国の温室効果ガス排出量は以下になります。
- 1位:中国: 14,090百万トンCO2排出(全体の27.5%)
- 2位:アメリカ合衆国: 4,594百万トンCO2排出(全体の8.9%)
- 3位:インド: 2,633百万トンCO2排出(全体の5.1%)
- 4位:ロシア: 1,668百万トンCO2排出(全体の3.2%)
- 5位:日本: 1,151百万トンCO2排出(全体の2.2%)
- 6位:ドイツ: 727百万トンCO2排出(全体の1.4%)
- 7位:韓国: 649百万トンCO2排出(全体の1.3%)
- 8位:イラン: 622百万トンCO2排出(全体の1.2%)
- 9位:サウジアラビア: 619百万トンCO2排出(全体の1.2%)
- 10位:カナダ: 564百万トンCO2排出(全体の1.1%)
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地球は温暖化どころか氷河期になる?
地球のサイクルは現在間氷期で、もうすぐ氷期に移るのではないか説もささやかれていますが、次の氷期は何万年か先だということが科学的に認識されています。
氷期と間氷期が10万年ごとに交互に訪れる理由は、地球が自転する軸が傾き、地球の公転軌道が変化することで、地球に降り注ぐエネルギー量が変動するからです。
現在の間氷期を終わらせるような太陽からの入射エネルギーは、すぐには弱まらないと天文学的な計算で証明されています。そのため近い時期に氷河期が来ることはありません。
それよりも、温室効果ガスが大気に増えることで氷期が訪れない可能性があります。
地球温暖化へ世界で取り組むことが重要
地球温暖化は進行しており、世界全体でCO2を含む温室効果ガスを削減していかなければなりません。
そこで先進国と発展途上国を合わせた190カ国以上のすべての国が2020年以降の「温室効果ガス削減目標」を定め、日本も2030年までに2013年比で26%削減するという目標を設定したのがパリ協定です。
これは、歴史上初めて先進国と発展途上国のすべての国にとって公平な合意となりました。
パリ協定では世界共通の目標が2つあります。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
- 21世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにする
この目標を元に各国が自国の削減目標を5年ごとに提出し、評価を受けたうえで目標を更新します。
企業にとっても地球温暖化対策の重要性は高まる
地球温暖化は嘘で氷河期がくるとの意見もありますが、近年増加している大寒波や年平均気温の上昇は、CO2を含む温室効果ガスの影響が確実視されています。
地球温暖化が進行することで災害が増え、大気汚染や洪水・干ばつ・水不足など人々の生活や経済・生態系に影響が出るため、世界ではさまざまな地球温暖化対策が進められています。
日本では2030年までに2013年比で26%削減を掲げており、達成するためには日本政府と企業が一丸となって、環境に配慮した自動車や製品を生産する取り組みが必要不可欠です。地球温暖化への企業としての取り組みに関心がある企業は、e-dashへご相談ください。