2022年現在の世界では地球温暖化が進行しており、地表面の温度が年々上がり続けています。
その要因として、世界の工業化から地球温暖化が進んでおり、平均気温は2022年現在までの間に約1℃上昇、海面が19cm以上上昇しているというデータもあります。
そこで、日本や海外各国では脱炭素化のために具体的な目標を掲げ、さまざまな取り組みが行われています。
この記事では脱炭素化についてわかりやすくお伝えし、脱炭素化を目指す理由や掲げている目標についての紹介、企業が脱炭素化のために取り組んでいる内容や国民が取り組むべきことについて詳しく解説していきます。
目次
脱炭素化とは?
脱炭素化とは、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの排出を削減してゼロにすることを指します。
温室効果ガスとは
- 二酸化炭素
- メタンガス
- 一酸化二窒素
- フロンガス
などを含んだ地球にとっては有害なガスのことを言います。
世界では18世紀半ばから19世紀にかけて産業革命が起き、これまでの手作業から機械を使用した作業の効率化が進みました。
しかしその反面、温室効果ガスが大量に排出されてしまうという負の部分もあります。
温室効果ガスが今のまま排出され続けていくと、温暖化はどんどん進み、21世紀の末頃には現在よりも最大で4℃以上上昇するのではないかという見解もあります。
地球上で1.5℃以上気温が上昇すると各地で水分が足りなくなり、砂漠化される地域も出てきます。
さらに、水分不足や熱中症などの体調不良や健康被害など人の身体にも影響するでしょう。
また、温室効果ガスによる影響は気温の上昇だけではありません。
前述した海面の上昇により、国が消滅してしまう恐れや台風や豪雨などの異常気象が頻繁に起こりやすくなります。
そして、日本では人口減少が進んでいますが、世界的に見ると人口は増加傾向にあります。
人口が増加することで、1人あたりに排出する温室効果ガスも比例して増加していくため、さらに地球温暖化に歯止めが掛からなくなってしまい、予想されているよりも悪い方向へ進んでしまう可能性があります。
そのため、世界では脱炭素化を図り、温室効果ガスをなくし、地球温暖化を抑えるという目標を立てています。
世界が脱炭素化を目指すのはなぜ?
世界各国で脱炭素化を共通認識として取り組んでいくことを発表していますが、なぜ脱炭素化を目指すのでしょうか。
その理由については前項でも説明したように、地球温暖化を防ぐために脱炭素化を目指しています。
地球温暖化が進むと気温上昇から人体にも影響を及ぼすことや下記のような問題が発生してしまいます。
- 地球温暖化による生態系の変化による食料危機
- 経済への影響
上記で挙げたものを1つずつ説明していきます。
地球温暖化による生態系の変化による食料危機
地球温暖化が進むことで気温が上昇することがわかりました。
気温が上昇することで牛や豚、鶏などの家畜は暑熱ストレスがかかりやすく、疾病に対する抵抗力弱まり、繁殖性や産肉量が減少します。
その結果、食料難におちいるのではないかと一部から推測されています。
最悪の場合、人間同士の食料を巡る争いが勃発してしまうと危惧されています。
経済への影響
地球温暖化による影響は人体だけでなく、経済にも影響を及ぼすともいわれています。
もしこのまま脱炭素化できずにいると、気温は上昇していき、農地面積の減少や異常気象の多発により生産量の減少による農業の損失。
さらに、海面上昇により砂浜の減少による海岸部のレジャーの影響や気温上昇の影響で、夏季の観光快適度の低下により観光業の縮小が推測されています。
気温上昇によって死亡率と疾病率が上がるとともに労働生産性の減少がおきるかもしれません。
その結果、脱炭素化に失敗すると、以下の経済損失が危ぶまれています。
サービス業…−41兆円
引用元:デロイトトーマツ|日本のターニングポイント、気候変動アクションが経済の先行きを左右する
製造業…−17兆円
小売業・観光業…−15兆円
その他…−21兆円
合計…−95兆円
脱炭素社会を知る上で知っておきたい3つの概念
ここまで脱炭素化について説明してきましたが、脱炭素化を知る上で重要なテーマ、概念が3つあります。
その3つとは下記のとおりです。
- パリ協定
- SDGs
- カーボンニュートラル
脱炭素化は日本だけが目指す目標ではなく、世界187カ国の目標とされています。
そして、世界共通で上記の3つの取り組みを目標期限までに行うことが義務付けられました。
ここからは上記の3つの項目について1つずつ詳しく説明していきます。
パリ協定
パリ協定とは、2015年12月にフランスのパリにて行われたCOP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)にて定められた地球の気温上昇を抑制するために世界全体で協力することを誓うという協定です。
2016年から発行したパリ協定ですが、内容については以下のとおりです。
- 世界共通の目標として世界の平均気温を産業革命以前と比較して目標は2℃低く設定、1.5℃に抑える努力を追求する
- 主要排出国(アメリカ・中国・EU各国・インド・日本など)を中心に温室効果ガスの削減目標を5年ごとに提出し、更新すること
- すべての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告・レビューを受ける
- 適応の長期目標の設定と適応計画プロセスや行動の実施、報告書の提出と定期的に更新を行う
- 世界全体としての実施状況を5年ごとに検討する
- イノベーションの重要性の位置づけ
- 先進国による資金の提供と途上国も自主的な資金の提供する
- 二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用
などといった内容が締結されています。
SDGs
SDGsとはSustainable Development Goals、日本語で持続可能な開発目標と言います。
SDGsは2015年9月25日に行われた国連総会で制定されました。
その内容については2030年までに達成するべきとされる持続可能な開発目標として17個の目標と169個の達成基準が設定されました。
17項目の目標の中で脱炭素化とも関連付けられるのは
7,エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
13,気候変動に具体的な対策を
が挙げられます。
「7,エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」では温室効果ガスを出さない再生エネルギーを拡大させる意識付けを指します。
「13,気候変動に具体的な対策を」では読んで字の如し、温暖化が進行しないよう具体的な対策を意識的に行うことを目標として取り組みます。
カーボンニュートラル
カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排気量と温室効果ガスを森林などに吸収させる量を差し引いて温室効果ガスの排気量を実質ゼロにする取り組みを指します。
一見、カーボンニュートラルは脱炭素化と同じような意味合いに感じますが、脱炭素化は場合によっては温室効果ガスを完全にゼロにするという意味合いで使われています。
一方で、カーボンニュートラルは完全にはゼロにすることは不可能に近いと考え、前述のように温室効果ガスの排気量と吸収される吸引量を差し引いて実質的にゼロになるよう目指す取り組みのことをさします。
カーボンニュートラルを達成させるためには温室効果ガスの削減が第一であると考えられています。
脱炭素化に向けた目標を国内外別に紹介
ここからは脱炭素化に向けた目標を国内外別に紹介していきます。
日本の場合
日本では2020年10月に当時総理大臣であった菅義偉首相の所信表明演説にて「2050年までに、温室効果ガス排出を全体としてゼロとする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しています。
そして、日本では脱炭素化のために下記の目標を掲げました。
- 2013年と比較して温室効果ガスの排出量を2030年までに26%削減する
- 省エネルギーを徹底しながら再生可能エネルギーを最大限導入していく
また、2021年4月22日に行われた地球温暖化対策推進本部では、2030年度までに温室効果ガスを2013年度と比較して46%削減を目指すとともに、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていくと表明しています。
世界各国など
世界各国でも脱炭素化に向けてさまざまな目標が掲げられています。
世界の主な2030年までの温室効果ガスの排出量の削減目標については以下のとおりです。
- アメリカ…2005年と比較して50〜52%
- イギリス…1990年と比較して68%以上
- 韓国…2018年と比較して40%
- EU…1990年と比較して55%以上
- インド…2005年と比較してGDP当たり排出量を33〜35%
- 中国…2005年と比較してGDP当たりCO2排出量を65%以上
- カナダ…2005年と比較して40〜45%
- ブラジル…2005年と比較して43%
さらに、日本同様に世界でも温室効果ガスの排出量削減以外にもさまざまな目標を立てています。
アメリカの場合
- 洋上風力発電からの再生可能エネルギーの生産量を倍増させる
- 2035年までに発電部門の温室効果ガスの排出量をゼロにする
EUの場合
- 2050年までに電力はほぼ脱炭素化
- 2030年以降の省エネの向上と高度なバイオ燃料の展開
中国の場合
- 2025年までに新エネルギー車の割合を20%前後に引き上げる
- 2035年までに新車販売の主流を電気自動車にする
脱炭素化のための企業の取り組みと国民が取り組むべきこと
前述では国の目標、公的機関が行っている取り組みについて紹介しました。
続いては国の掲げた目標を達成するために民間企業が行っている取り組みや目標について紹介します。
企業の取り組み
SONY
SONYでは、2040年には全世界にあるSONYグループの電力を再生可能エネルギーに転換していくことを表明しています。
すでにEUや中国などの一部地域では再生可能エネルギーが導入されていますが、日本では温室効果ガスを多く排出していることから世界中で最も難しい課題ととらえられています。
明治ホールディングス
明治ホールディングスでは、省エネ性能を搭載している設備の導入から営業で使用する社用車を2012年度からエコカーに順次切り替えています。
また、保有する車両台数を低減する働きや荷物の運搬に現在のトラック中心の輸送から船舶や鉄道の輸送に切り替えていく方向であることを示しています。
さらに、明治ホールディングスの各事業所や明治ホールディングスが扱う製品を製作する工場では、太陽光発電設備を導入し温室効果ガスの削減に取り組んでいます。
丸井グループ
丸井グループの脱炭素化の取り組みについては、2016年からサステナビリティを掲げ、事業所などで使用する再生可能エネルギーを、2030年までに100%を目指すという目標を掲げています。
店舗としては、2018年から再生可能エネルギーを導入し始め、2018年は1店舗のみの導入となりましたが、2019年には8店舗、2020年には15店舗と徐々に拡大しつつあります。
さらに、丸井グループでは再生可能エネルギーを利用した電力供給サービスを自社のクレジットカードであるエポスカードの会員に向けて提供しています。
積水ハウス
積水ハウスの脱炭素化の取り組みについては、住宅や建築物の省エネ化を図り、自家消費できる再生可能エネルギーの導入を目指す取り組みを行っています。
積水ハウスでは、新築戸建て住宅の建設時にネット・ゼロ・エネルギーハウス、通称ZEHと呼ばれる家庭で消費するエネルギーを、実質ゼロにすることが可能な住宅を業界の先駆者として導入できるよう進めています。
ASKUL
ASKULでは、2030年までに事業所から物流センター、配送車両などから排出される温室効果ガスの実質ゼロ化を目標としています。
取組内容としては、再生可能エネルギーの導入や、電気自動車の導入によって温室効果ガスの排出を実質ゼロに貢献する努力を行っています。
今回、例に上げた企業の他にも石油や石炭といった化石燃料から、再生可能エネルギーを活用していく取り組みや太陽光発電を用いた自家発電などを行っている企業も増えつつあります。
国民が取り組むべきこと
国が設定した脱炭素化の目標を達成するためには、国民が日常生活において脱炭素化実現に向けた取り組みをしていく必要があります。
誰でもできる身近なことから脱炭素化に向けた行動については下記のとおりです。
- 自家用車の使用を控えて公共交通機関を利用する
- 食品ロスをへらす
- 電気をつけっぱなしにせずこまめに消灯する
1つずつ説明していきます。
自家用車の使用を控えて公共交通機関を利用する
2022年現在、ガソリンと電気を使用して走行するハイブリッド車が多くの車会社から販売されています。
さらに、最近では電気だけで走行する電気自動車や水素エンジンだけで走行する水素自動車なども販売され始めています。
ですが、まだまだガソリンのみで走行する車が多いのも事実です。
そこで、自家用車の使用を控えて電車やバスなどの公共交通機関を利用することでガソリンの使用量を1人分ではありますが、減少させることができ、温室効果ガスの排出を削減することができます。
また、すぐにはできないかもしれませんが、将来的にガソリン車から電気自動車や水素自動車に乗り換えることで脱炭素化に大いに貢献できるでしょう。
食品ロスをへらす
食品は消費期限切れの食べ物や食べられるのに捨ててしまった部分などを廃棄物として処分することで廃棄処理する際、焼却するためにガスが使用されます。
ガスが使用されることで当然温室効果ガスも排出されるため、脱炭素化に逆行する形となります。
食品ロスは誰でも簡単に減らしていくことができることだと考えられます。
そのため、食品をなるべく廃棄することなく食べることや食べられる部分を廃棄することなく食べるという意識を付けていくと食品ロスの減少に繋がり、償却による温室効果ガスの排出を防ぐことができるでしょう。
電気をつけっぱなしにせずこまめに消灯する
電気を使用していると温室効果ガスが発生します。
電気は生活するためには欠かすことができないもので、使用せずに脱炭素化を図るというのは無理難題でしょう。
そこで、今まではつけっぱなしにしていた電気を消灯することやずっとつけっぱなしにしていた電気をこまめに消灯することで微力ではありますが、温室効果ガスの削減に繋がります。
1人当たりは微力でも日本全国民が意識付けされれば、膨大な温室効果ガスの削減につながることがわかります。
脱炭素化まとめ
脱炭素化は日本だけでなく、世界中で注目されています。
脱炭素化しなければ、現代を生きる私達はもちろんですが、未来を生きる子孫にも影響していきます。
世界中で温室効果ガスが削減されていかなければ、世界の気温上昇はもちろん。
その他にも異常気象の増加や一部地域の砂漠化、食料危機などといったさまざまな弊害が生じていくこととなるでしょう。
そして、日本では2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロとする、脱炭素社会の実現を目指しています。
日本国民一人ひとりの意識で日本全体の脱炭素化実現に向けて貢献していきましょう。
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