2021年にCOP26が開催され、世界平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えるなどの目標が合意されました。
本記事ではCOPの意味やCOP27に至るまでの経緯について、詳しく解説します。
目次
COPとは
現在開催中のCOPとは「Conference of the Parties」の略で、日本語では「締約国会議」という意味です。締約国会議は「気候変動枠組条約」の加盟国による会議であり、年に1回地球温暖化を防ぎ大気中の温室効果ガスを削減するために行う会議を指します。2021年に26回目を迎えた、COP26と呼ばれています。
COPの始まりは、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」です。172の政府の代表が参加した大規模な国際会議で、のちに「地球サミット」と呼ばれます。
本会議で気候変動枠組条約が採択され、1994年3月に発効しました。大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的とするもので、本条約にもとづき1995年から毎年、COPが開催されています。
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11月6日から開催されているCOP27について
COP27の概要
COP27は、2022年11月6日からエジプトのシャルム・エル・シェイクにて開催しています。議長国エジプトのビジョンは、交渉と計画から実施へと移行することです。交渉の段階から歩みを進め、これまでの全ての約束を実施するために動き出します。
COP27では地球規模で起こる気候問題の重大性を明確にし、気候変動の課題に取り組むために必要な政治的意思を示す転換点となることが期待されています。
COP27の4つの目標
エジプトは、COP27において4つの目標を定めています。
- 緩和:地球の平均気温上昇を2度未満に抑え、1.5度の目標を維持すること
- 適応:COP26の成果である気候変動への適応に関する世界目標に対し、必要な進展を遂げること
- 資金:資金フローの透明性を高め、開発途上国のニーズを満たすためのアクセスを促進することで、気候資金の面で大きな進展を遂げること
- 協力:政府、民間部門、市民社会が連携して地球との関わり方を変革し、交渉における合意を強化・促進すること
COP27の主な議題
COP27は、11月7日〜8日の世界首脳会議に始まり、11月9日からは、気候変動対策に重要なテーマが日ごとに設定されています。世界各地のステークホルダーによる展示やシンポジウムなどのイベントが開催されます。
11月9日:ファイナンス・デー
現状は、適応に関する資金の割り当てが少ないことが問題となっています。そのため、気候変動による影響がすでに出ている資金に乏しい国にとって、大きな課題となっています。革新的な金融手段、ツール、政策など、気候金融エコシステムのいくつかの側面を議題に取り上げます。
11月10日:サイエンス・デー
パネルディスカッションやイベントにおける新たな成果の発表や、気候変動コミュニティやステークホルダーとの議論が行われます。気候変動対策と科学の関わりを深める機会となります。
11月11日:脱炭素の日
低炭素社会の実現に向けた様々なアプローチや技術が紹介され、どのような解決策があるかを探ります。
11月12日:適応と農業の日
気温上昇による深刻な食糧不足に直面しています。議題は、持続的な食料安全保障や新たな農業生産技術、農家の気候変動に対する回復力の向上などの対応策が焦点となります。また、沿岸地域の生活と保護、損失と損害など、適応に関する議論も行います。
11月14日:ジェンダー・デー
気候変動による被害の大きさは女性の方が大きいことが研究により明らかになりました。こうした格差が開くことのないよう、気候変動対策のプロセスにジェンダーの視点を取り入れるために、気候変動の影響やアクションに関する女性の経験が共有されます。
11月14日:水の日
川の大幅な水位低下、干ばつ、水資源確保のための水紛争といった問題が世界各地で起こっています。世界が深刻な水不足に直面する中、持続可能な水資源管理に関する問題について議論します。
11月15日:ACEと市民社会の日
UNFCCCが採用した用語であるAction for Climate Empowermentは、社会の全ての構成員が気候変動に従事することを目指しています。気候変動および政策対応における市民社会の役割・貢献について紹介します。
11月15日:エネルギーの日
今後の社会システム維持のために、不可欠なエネルギーを調達する方法ついて議論します。再生可能エネルギーやスマートグリッド、エネルギー効率など、気候変動対策を目的としたエネルギーの選択肢を模索します。
11月16日:生物多様性の日
気候変動により、種の絶滅や生息地域の減少・消滅などが起こっています。生物の多様性を保持しつつ、気候変動対策を進めることができる自然を基調としたソリューションについて議論します。
11月17日:ソリューションズ・デー
政府代表、企業、イノベーターがそれぞれの経験やアイデアを共有することで、意識の向上や協力関係の構築をはかります。国家予算のグリーン化や持続可能な都市開発などに焦点が当てられ、都市の気候変動への取り組みを加速させるCOP27議長国のイニシアチブ「SURGe」の発表も予定しています。
首脳会議の成果
11月7日から2日間行われた首脳会議の成果が報告されました。
エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、ベルギーと共同で「世界再生可能水素フォーラム」を立ち上げると発表しました。「世界再生可能水素フォーラム」は、水素の製造・利用を促進し、水素が国際経済にもたらす環境・社会経済的利益を引き出すための官民プラットフォームと説明しました。
また、気候変動の影響を特に受けやすいコミュニティーの支援について、100カ国以上の首脳が約束したと発表しました。
他にも、「シャルム・エル・シェイク適応行動計画」が立ち上がりました。ここでは、気候変動に脆弱な人々を支援するため、2030年までに達成すべき30の成果目標が定められています。
COP26までの経緯
2020年のCOP26開催はコロナの影響で延期となり、2021年10~11月、英国のグラスゴーで開かれました。COPの歴史の中でも重要なのが、京都で開催された1997年のCOP3です。ここで、2020年までの温暖化対策の国際ルールとなる「京都議定書」が採択されています。
その後、COP15では先進国と発展途上国の対立が表面化し、パリで開催されたCOP21では、京都議定書に代わる新たな枠組みが採択されます。
COP26までの経緯について、みていきましょう。
COP3
1997年に3回目のCOPが京都で開催され、2020年までの温暖化対策の国際ルールとなる「京都議定書」が採択されました。
京都議定書の内容は、以下のとおりです。
・先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標が各国ごとに設定される
・2008年から2012年までの期間に、先進国全体で排出量を5.2%の削減、日本は6%(EU8%)の削減が目標
・国際的に協調し、排出量取引、クリーン開発メカニズムなど目標を達成するための仕組みを導入する
京都議定書では先進国に数値目標を義務付けるものの、発展途上国には数値目標などの義務付けていません。
しかし、中国やインドなどのCO2排出量が多い国が途上国の扱いとなっており、数値目標の拘束を受けないため、公平でないとして批判が集まりました。また、2001年にはアメリカが京都議定書からの離脱を表明しています。
COP15
京都議定書の発効後も先進国と発展途上国の対立が続き、2009年にデンマークのコペンハーゲンで開かれたCOP15では対立が表面化します。
コペンハーゲン合意では、世界全体の長期目標として産業化以前からの気温上昇を2度以内に抑えること、先進国による途上国への支援することなどが盛り込まれる一方、具体的な削減目標などは合意されませんでした。
合意は完全には採択されず、「留意」することで決着しています。その背景にあるのは、日本やEUなどの先進国が京都議定書に代わる新たな議定書の策定を求めたのに対し、先進国の対策強化などを求める途上国との間での意見の違いです。審議の透明性をめぐり、一部の国々が採択に反対したという経緯があります。
COP21
2015年にはパリでCOP21が開催され、京都議定書に代わる温暖化対策を進めるための新たな枠組みについて話し合いが行われました。
採択された新たな枠組みは「パリ協定」と呼ばれます。これは、2020年以降の温暖化対策として国際ルールを定め、「世界の気温上昇を2度より低く保ち、1.5度に抑える努力をする」ことを目標にしたものです。
先進国だけを削減義務の対象とした京都議定書とは異なり、パリ協定はすべての国と地域を対象としています。また、京都議定書の目標には法的拘束力がありますが、パリ協定は各国が削減目標を決定して提出するという内容であり、各国は5年ごとに提出・更新することが義務付けられています。
COP26の結果
2021年、イギリスのグラスゴーで開かれたCOP26では、「グラスゴー気候合意」を採択しています。合意の主な内容は、以下のとおりです。
・気温上昇を1.5度に抑える努力をする
・各国は30年の目標を見直す
・石炭火力発電を段階的に削減する
・途上国への資金支援を倍増させ、年間1000億ドルの目標を達成する
・パリルールブックに合意する
合意の内容について、さらに詳しくみていきましょう。
2100年の世界平均気温の上昇を産業革命以前の1.5℃以内に抑える
COP26では2100年までの数値目標を1.5度以内に抑えるとし、2度より厳しい目標に変更することが正式に合意しました。パリ協定で努力目標としていた1.5度の目標を世界共通の達成目標として、この10年間で行動を加速させる必要があるとしています。
目標を達成するためには、温室効果ガス排出量の削減をさらに進めることが不可欠です。気温上昇を1.5度以内に抑えるには45%削減が必要とされ、現状の各国の目標数値を足し合わせてもその水準には達していません。そのため、COP26では1.5度目標の達成に向けて、2022年末までに各国の排出削減目標を引き上げることが決まりました。これにより、日本や欧米などの先進国は2030年の排出削減目標を引き上げています。
また、排出量世界3位であるインドは、2070年までに温室効果ガスの排出をカーボンニュートラルにし、2030年には再生可能エネルギーの比率を50%にすると表明しています。
さらに、排出量世界1位の中国と2位のアメリカは1.5度の目標を達成するため、今後10年間の気候変動対策での協力を強化する共同宣言を発表しました。
石炭火力発電は段階的に削減する
COP26では、温室効果ガス排出削減措置を取っていない石炭火力発電について、段階的削減の声明が発表されました。主要国では2030年代まで、世界全体では2040年代までに石炭火力発電廃止するという内容です。
インドなどの反対で「段階的廃止」から「段階的削減」に文言が変更されたものの、石炭の使用削減について合意されたのは初めてのことです。温室効果ガスを排出する石炭火力発電は、気候変動対策を妨げるという認識が世界全体に広がっているといえるでしょう。
すべての国は排出目標を再検討し強化する
COP26ではさらに、すべての国が2022年に「2030年までの排出目標」を再検討して強化することに合意しました。
これまでに提出されたNDC(パリ協定批准国が提出する温室効果ガスの国別削減目標)がすべて実行されたとしても、1.5度目標の達成には遠く及ばないとして、パリ協定の締約国に対し、NDCを2022年末までに提出することを求めるものです。提出にあたっては、2030年目標を再検討・強化することが求められています。
パリ協定のルールブックに合意する
パリ協定のルールブックについても、決定されていなかった同協定6条(市場メカニズム)に関する基本的な基準について合意に達しました。
市場メカニズムとは、温室効果ガスの排出について海外で削減した分を自国の削減としてカウントし、「クレジット」として目標達成に計上する仕組みです。例えば、CO2排出量を減らすための技術をすでに導入している国が、まだ削減努力を要する国に対して技術を提供して排出削減を行い、削減量の一部を自国の削減量としてカウントするというものです。この仕組みにより、世界の排出削減を効率化できます。
ただし、クレジットを国際的に移転する取引では、統一されたルールの設定が必要です。ルールの策定には全会一致が必要であり、これまでは合意が得られていませんでした。しかし、COP26ではようやく実施指針が合意に至り、パリ協定のルールブックが完成する運びとなったのです。
脱炭素社会に向けた各国の動き
COP26を経て、脱炭素社会に向けた各国の動きは加速しています。日本では脱炭素をキーワードに予算を組み、アメリカはバイデン政権のもとで積極的な政策を打ち出している状況です。イギリスは脱炭素化への取り組みで主導権を握るための活動を進め、世界最大のCO2排出量国の中国もカーボンニュートラルの実現を目指しています。
脱炭素社会に向けた各国の動きを紹介します。
日本
日本はCOP26では2030年までの期間を「勝負の10年」と位置付け、積極的な気候変動対策を各国に呼びかけました。さらに、すでに表明していた600億ドルの資金支援額に加えて100億ドルを追加拠出し、148億ドルの適応支援の倍増などを表明しています。
今後の脱炭素化に向けた動きも加速しており、次年度予算のキーワードを脱炭素として予算折衝が行われました。国内では「地域脱炭素ロードマップ」にもとづく地方自治体の脱炭素への取り組み支援や、脱炭素化に資する事業への民間投資の呼び込みを図ることに予算が認められています。
アメリカ
バイデン政権の発足からアメリカの環境政策は大きく転換し、環境対策を重視する政策を積極的に推し進めています。トランプ政権時に離脱したパリ協定へ復帰し、環境サミットを主催するなど、気候問題を政府の最優先課題のひとつに位置付けています。
COP26では、中国との共同声明を発表しました。地球温暖化の原因となっているメタン排出量の削減やクリーンエネルギーへの移行、脱炭素への取り組みにおいて協力するという内容が織り込まれています。
政府は2030年の新車販売の50%をゼロエミッションカーにすることや、2035年までには発電部門の炭素排出量をゼロにするなどの目標を掲げ、実現に向けてさまざまな施策を行っています。
イギリス
COP26の議長国であるイギリスは、世界の脱炭素化への取り組みで主導権を握るべく、活動を進めています。自国の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにするための新戦略を打ち出し、35年までに国内の電力すべてを再生可能エネルギーや原子力など非化石燃料でまかなう新しい目標です。
また、イギリスは洋上風力発電の有効利用などを進めており、30年間で温室効果ガスの42%削減に成功する一方、GDP(国内総生産)を67%伸ばしました。環境保護と経済成長が両立できる可能性を示すものといえるでしょう。
さらに、2024年までに石炭火力発電からの完全撤退を表明しており、2040年までにはガソリン車およびディーゼル車の新車販売を停止することも決定しました。EVなど、CO2を排出しない「ゼロエミッション車」に移行する宣言に署名しています。
中国
中国は世界最大のCO2排出量国です。脱酸素に向けては、2060年までにカーボンニュートラルを実現させることを目標に掲げています。
COP26では世界第1・第2の温室効果ガスの排出国としてアメリカとの共同声明を発表し、協調姿勢を国際社会にアピールしました。
国内でも脱炭素社会に向け、2030年までに太陽光発電と風力発電の設備容量を12億キロワット以上に引き上げる計画や、水素開発への投資・EVの普及拡大など積極的な取り組みが行われています。
COPを理解し脱炭素経営を目指そう
国際社会はCOPを通し、地球温暖化を抑制して持続的に発展するための話し合いを重ねてきました。京都議定書やパリ協定などの合意を積み重ね、COP26ではさらに高い目標を掲げて各国が達成を目指しています。
脱炭素はすべての企業にとって課題であり、脱炭素経営について積極的な取り組みが期待されているといえるでしょう。
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