「CCUS」という取り組みを知っていますか?「CCS」と似た名称ですが、どちらも二酸化炭素(CO2)を削減する方法として注目されています。
簡単に説明すると、CCUSは二酸化炭素(CO2)を回収し、有用に再利用または貯蔵する技術のことを指します。CCSは再利用のプロセスは含まず、貯留する点に重きを置いています。実際の取り組みでは、二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に削減できるだけでなく、新たなビジネスチャンスやエネルギーの効率化にも寄与しています。
実用化に向けた取り組みが進行中のため、これらの技術は完全には確立されてはいない状況ですが、その効果や影響についてはさまざまな研究が検討されています。どのようなメリットがあるのか、それぞれの詳細とあわせて詳しく見ていきみましょう。
目次
「CCUS(シーシーユーエス)」とは?「CCS」との違いも解説
気候変動対策の一環として、火力発電のCO2排出量の低炭素化が求められる中、注目される取り組みが「CCUS」と「CCS」です。この章では、これらがどのように二酸化炭素(CO2)を削減するのか、そして両者の違いについて詳しく解説していきます。
【CCUS】は二酸化炭素を「利用する」取り組み
「CCUS」は「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略称で、二酸化炭素(CO2)を回収した上で利用する技術を指します。
米国では、この技術を活用し、CO2を古い油田に注入する方法が進行しています。この取り組みにより、残った原油を地中から押し出しながら、二酸化炭素(CO2)は地下に貯留されます。そのため、二酸化炭素(CO2)の削減を実現しつつ、石油の増産のチャンスともなっているのです。
【CCS】は二酸化炭素を「地中に圧入する」取り組み
一方、「CCS」は「Carbon dioxide Capture and Storage」の略であり、日本語での呼称は「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。主に大型の発電所や化学工場からの二酸化炭素(CO2)排出を対象に、これを他の気体から分離し、地下深くに安全に貯留・圧入する技術を指すものです。
「CCUS」が重要視される背景とは
近年、火力発電の二酸化炭素排出が増える中、その対策として「CCUS」の重要性が高まっています。導入の背景や、なぜCCUSが注目されているのかを解説していきます。
火力発電による二酸化炭素の排出量が多くなっている
化石燃料、特に石油や石炭をエネルギー源とする火力発電は、発電の過程で多量の二酸化炭素(CO2)を排出しています。日本の火力発電の割合は72.9%と非常に高く、このままでは「2050年のカーボンニュートラル」の目標達成が難しいという状況が見受けられます。
こうした背景から、火力発電の減少や低炭素化が国の方針として打ち出されており、そのための具体的な取り組みとして「CCUS」の存在が注目されています。
二酸化炭素の循環利用が重要になっている
しかしながら、火力発電からの完全な脱却は難しい現状があります。そこで、火力発電からの二酸化炭素(CO2)排出量をおさえる「低炭素化」や、排出された二酸化炭素(CO2)を循環利用する方法に目が向けられています。
具体的に、経済産業省が2022年5月に公表した「CCS長期ロードマップ検討会中間とりまとめ」では、2050年の年間CO2貯留量を1.2億t~2.4億tとしており、2030年までの「CCS」事業の開始を政府の目標として掲げています。
「CCUS」実現のための必要技術
「CCUS」実現のためには、特定の技術が欠かせません。その核となる技術について、具体的なプロセスや方法を紹介していきます。
①分離・回収(Capture)
二酸化炭素(CO2)を効率的に取り扱うための最初のステップは、分離・回収です。二酸化炭素(CO2)を含むアミン溶液を120℃に加熱することで、二酸化炭素(CO2)とアミンが分離します。この加熱工程により、二酸化炭素(CO2)を高い純度で回収することができるのです。
②有効利用(Utilization)
次に、回収した二酸化炭素(CO2)の有効利用方法についてです。二酸化炭素(CO2)を資源として利用するためには、燃料やプラスチックに変換する方法と、二酸化炭素(CO2)をそのままの形で利用する方法が考えられます。これにより、二酸化炭素(CO2)を循環経済の一部として活用する道が開かれるのです。
③貯留(Storage)
最後に、二酸化炭素(CO2)の貯留です。地下800メートルより深い位置に存在する、隙間の多い砂岩から形成される「貯留層」を活用します。この層に二酸化炭素(CO2)を注入し、地下深くで安全に保管することが可能です。
「CCUS」や「CCS」活用への課題
「CCUS」や「CCS」の技術を活用していく中で、いくつかの課題やハードルが存在しています。この章では、それらの課題と、それに対する取り組みや解決策を紹介していきます。
二酸化炭素(CO2)分離・回収にコストがかかる
「CCUS」を実現するための一つの大きなハードルは、二酸化炭素(CO2)の分離・回収にかかるコストです。特に、既存の技術を用いた場合、経済的な負担が大きくなることが懸念されています。
しかし、経済産業省が開発を支援した固体吸収材を使用することで、これまでの技術の半分以下のコストで二酸化炭素(CO2)を分離・回収する方法が期待されています。関西電力の舞鶴発電所では、この新しい技術の実証試験を行うことが決まり、今後の動向が注目されています。
二酸化炭素(CO2)を貯留するための地層を見つける必要がある
CCSの推進には、大量の二酸化炭素(CO2)を安全に貯留するための適切な地層の確保が必要です。ただし、適切な地層を見つけることは容易ではありません。このため、経済産業省と環境省は、平成26年度より共同で二酸化炭素(CO2)の貯留に適した地層の調査事業を進めています。
さらに、貯留した二酸化炭素(CO2)が漏えいしないような設備や仕組みの確立も、CCSの成功のためには欠かせない取り組みとなっています。
日本国内での「CCUS」・「CCS」の取り組み事例を紹介
日本国内でも「CCUS」や「CCS」技術の実用化に向けた取り組みが活発に行われています。本章では、いくつかの企業の実際の取り組み事例を取り上げ、その内容を詳しく紹介していきます。
東京ガス(横浜市および三菱重工グループと共同)
東京ガスは、横浜市と三菱重工グループとの協力のもと、二酸化炭素(CO2)分離・回収技術の開発に取り組んでいます。この共同研究は、二酸化炭素(CO2)の排出量削減を目指し、都市ガス供給をより環境にやさしくするための重要なステップとなっています。実際の技術実証やシステムの構築を進める中で、次世代のエネルギーシステムに対する取り組みを強化しています。
日本製鉄
日本製鉄は、2050年を目標に「カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、二酸化炭素(CO2)排出の削減に努めています。このビジョンのもと、持続可能な製鉄技術の開発や、二酸化炭素(CO2)の有効利用・貯留技術の導入を進めています。
日揮ホールディングス
日揮ホールディングスは、炭素回収技術の開発と導入に積極的に取り組んでいます。特に、CCUS技術を利用したプロジェクトや、新たなエネルギーシステムの構築においてリーダーシップを取っています。これらの取り組みを通じて、環境負荷の低減と持続可能な社会の実現を目指しています。
ENEOSホールディングス(電源開発「Jパワー」と共同)
ENEOSホールディングスは、電源開発のJパワーと協力して、二酸化炭素(CO2)分離・回収技術の開発に取り組んでいます。これにより、炭素排出量の大幅な削減を実現することを目指しています。環境技術の進化とともに、新しいエネルギーソリューションの提供を進めています。
三菱重工グループ
三菱重工グループは、「CO₂NTAIN(とる)」「CO₂NNECT(つなぐ)」「CO₂NVERT(つかう)」という三つのコンセプトを軸に、二酸化炭素(CO2)排出削減に関する技術開発を進めています。これらのコンセプトを通じて、二酸化炭素(CO2)の捕捉から利用までの一貫した取り組みを行い、持続可能な社会の構築を目指しています。
まとめ
日本国内では「CCUS」という技術を活用して環境問題への取り組みを進めています。二酸化炭素(CO2)の排出量に一層気を付けていきたい昨今、これらの取り組みを通じて、私たちの未来をより良くするための方向性が見えてくるでしょう。
環境保護や地球資源を守るための継続的な研究や開発が期待される中、持続可能な社会の実現に向けた道筋が示されています。
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