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ファストファッションの問題点とは?企業や個人の取り組みも紹介

fast ファスト

ファストファッションは、気軽に衣類などを購入できることから若い世代を中心に人気を集めています。しかし、ファストファッションは環境汚染や人権問題など、多くの問題を抱えていることをご存知でしょうか。

ファストファッションが引き起こす問題は深刻で、世界のアパレルブランドではさまざまな解決策が講じられています。

この記事では、ファストファッションが抱える問題を解説するとともに、問題の解決に向けた企業の取り組みについて紹介します。

ファストファッションとは

ハイヒール カラフルな靴

ファストファッションとは、最先端の流行を取り入れた衣料品を大量生産し、低価格で販売するファッションブランドやその業態のことです。ファストファッションの「Fast(ファスト)」とは「早い」という意味で、素早く手軽に購入できる食事のファストフードが由来となっています。

ファストファッションは大量生産により製作コストを下げることで、低価格で販売することができます。流行の服を安く手に入れられることから、2000年代後半頃より流行し、今やファストファッション・ブランドは世界中に存在しています。

日本におけるファストファッションの現状

黒いシャツを着た男性 両手を広げた男性

現在、日本の小売市場で販売されている衣類のうち、日本製のものはほとんど見られません。約98%は海外から輸入されたもので、主に中国やインド、東南アジア諸国で作られています。なぜなら、人件費が安い国に衣類の制作を発注することで、コストを削減できるからです。

日本における衣類の供給量は年々増加している一方で、衣類一枚の価格は下がっており、大量生産・大量消費が当たり前の状態になっています。それに伴い、懸念されているのが衣類の大量廃棄です。

服を手放す場合、リサイクルに出すか資源として回収する方法があるにも関わらず、約65%はゴミとして廃棄されています。

ファストファッションが引き起こす問題

世界 芽

なかでも、ファストファッションは衣類を低価格で提供できる一方、環境や人権などに関する問題を引き起こしています。どのような問題があるのか見てみましょう。

エネルギーの大量消費によるCO2の排出

原材料の調達や輸送、紡績や染色、裁断、縫製など、衣服を生産するためには多くのエネルギーを消費します。原料調達から製造段階までに産業全体として年間約90,000ktもの二酸化炭素を排出しています。

また、輸送するためにはエネルギーが必要であり、工場で効率よく生産するためには多くの機械を稼働させ、大量のエネルギーを使わなければなりません。

特に、ポリエステルなどの石油から作られる合成繊維は製造過程で大量のエネルギーを消費することから、二酸化炭素排出量が多い原材料です。服1着をつくるのに排出される二酸化炭素排出量は、約25.5㎏にも及びます。

有害物質やマイクロファイバーによる海洋汚染

衣類の製造過程で使用される化学物質や、合成繊維から発生するマイクロファイバーによる海洋汚染も問題です。近年、世界的に問題になっている海洋プラスチックは、合成繊維から抜け落ちたマイクロファイバーも原因の一つとされています。

合成繊維を洗濯すると、何万本もの細かなプラスチックの繊維、つまりマイクロファイバーが抜け落ちます。抜け落ちたマイクロファイバーは、水と一緒に河川へ放出され、海へ到達し、海洋生物の生態系への影響が懸念されています。

また、ファッション産業で使われている染料や加工剤などの化学物質は、自然に分解されず環境中に残留するため、水質汚染が問題視されています。

低価格を実現するための劣悪な労働環境

ファストファッションは衣類を低価格で販売するために、縫製工場などの設備において充分な安全確保ができていないことが多々あります。

そのため、過去には痛ましい事故が発生しており、例えば、2012年にはパキスタンの縫製工場で火災が発生し、防災設備も避難経路もなかったため、約300人もの命が犠牲になりました。

他にも、工場で使用される化学物質の中には有害なものがあり、労働者が長期間にわたって吸入または接触することによる健康被害が指摘されています。

このような労働環境で長時間の労働を強いられているにもかかわらず、労働者へは充分な賃金が支払われていません。

ファッション業界に求められるサステナブルファッション

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ファストファッションによる環境負荷は深刻です。そのため、衣類の生産から着用、廃棄されるまでのプロセスにおいて、環境と社会経済、そして人権に配慮し、将来にわたって持続可能であることを目指す取り組み「サステナブルファッション」が誕生しました。

サステナブルファッションの背景には、2019年の先進7か国首脳会議(G7)で発表された「ファッション協定」が影響しています。

ファッション協定とは、気候変動、生物多様性、そして海洋保護の3つの分野で共通の実践目標を設定し、それに取り組むことを成約したものです。欧米を中心としたラグジュアリーブランドやスポーツブランド、ファストファッションなど、幅広いブランドが参加しています。

ファッション協定が発表されたことで、世界のファッションブランド企業はサステナブルファッションの取り組みに注目し始めました。リサイクル素材の利用や労働環境の改善など、さまざまな取り組みがなされています。

ファストファッション問題の解決のためにできること

地球儀を持つ人

サステナブルファッションが注目され、多くの取り組みがなされているものの、以前としてファストファッションには多くの課題があります。問題を少しでも解決するためには、企業だけでなく消費者一人ひとりのアクションも重要です。

ファストファッションの課題を解決するために、企業と消費者個人でできる取り組みを紹介します。

今持っている服を長く大切に着る

【企業ができる取り組み】 

・長持ちする服作り

ていねいに作られ、長期間に渡って着用できる服の商品企画・開発をしましょう。

・リペアサービスの提供

自社製品が破損した場合、リペアを行うのも有効です。リペアサービスを提供すれば、1枚の衣類を長年着用してもらえるでしょう。

【消費者ができる取り組み】

・1着を大切に長く切る

所有している服をあと1年長く着ることで、日本全体で約4万t以上の廃棄量削減が可能です。

・破損したら手を加える

破損したからといってすぐに破棄するのではなく、リペアなどしながら手を加えましょう。イギリス発祥の修繕方法「ダーニング」などを施し、服をアップサイクルすることもおすすめです。

リユースでファッションを楽しむ

【企業ができる取り組み】 

・サブスクリプションの導入

月額料金制で衣類をレンタルできるサブスクリプションサービスを導入すれば、売れ残ってしまった服から収益を得られます。

・リユースへの参入

着用されていない衣類を買い取り販売するなど、リユース事業を検討してみましょう。

【消費者ができる取り組み】

・服をシェアする

近年、服をレンタルできるシェアリングサービスが注目を集めています。気軽にさまざまなファッションを楽しめるうえ、購入した服が似合わず破棄してしまうという事態を防げます。

・セカンドハンド(古着)を利用する

古着を購入したり、着用しなくなった服は捨てずに古着として販売しましょう。

先のことを考えて買う

【企業ができる取り組み】 

・売れ残りを防ぐ在庫管理

事前予約で販売数を予測してから発注する、売れ行きの良くないものはアウトレットで販売するなどすれば、売れ残りを抑えられます。

・衣類の短期サイクルの見直し

シーズン終了間際にセールを行い、次のシーズンでは前シーズンの衣類が販売されないことが一般的になっていますが、シーズンをまたいでも販売する取組みが推奨されています。

【消費者ができる取り組み】

・本当に必要か考える

「衝動的に購入したけれど一度も着用しなかった」ということがないよう、本当に必要かどうかをよく考えてから購入しましょう。

・長く着られる品質のものを選ぶ

安い服を短期間だけ着るのではなく、品質を重視して作られ長く着用できるものを選ぶことも大切です。

ファッションにもサステナブルが求められる

衣類を撮影する女性

ファストファッションは、流行のデザインの衣類を安く購入できるため、多くの人々に利用されています。

しかし、その背景には、安い賃金かつ劣悪な環境で長時間働かれている人々がいることや、大気汚染や海洋汚染などのリスクをはらんでいることを覚えておく必要があるでしょう。

今や、国際的な課題解決には、ファッションにおけるサステナブルな取り組みも重要です。企業や個人で、どのようなアクションができるか考えてみてはいかがでしょうか。

e-dashでは、サステナブルな取り組みを総合的にサポートしています。組織でサステナブルな取り組みをしたいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。