ゼロエミッションとは、廃棄物や温室効果ガスの排出をゼロに近づける取り組みであり、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて重要な概念です。本記事では、脱炭素の推進に携わる担当者が押さえておくべきポイントを網羅的にまとめました。カーボンニュートラルや脱炭素との違い、国・自治体・企業の具体的な取り組み事例、身近な施策から先進技術まで幅広く解説します。
目次
ゼロエミッションとは?
ゼロエミッションとは、産業活動や日常生活から排出される廃棄物や温室効果ガスの排出量を可能な限りゼロに近づける取り組みです。1994年に国連大学によって提唱された当初は、廃棄物の埋立処分量ゼロを目指す概念でした。
近年では、気候変動対策の文脈において、温室効果ガスの排出を「正味ゼロ(ネットゼロ)」にするという意味でも使われるようになっています。たとえば、東京都が掲げる「ゼロエミッション東京」や、経済産業省の「ゼロエミッション火力」のように、CO2排出実質ゼロを目指す取り組みの総称としても定着しつつあります。
2050年カーボンニュートラル実現を目指す日本において、脱炭素推進担当者が理解すべき重要な概念といえるでしょう。
カーボンニュートラルとの違い
| ■簡単にいうと… ・ゼロエミッションは「排出そのものをゼロに近づける取り組み」 ・カーボンニュートラルは「排出量と吸収量を差し引きして実質ゼロにする」考え方 |
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引き、実質的な排出量をゼロにすることを目指す取り組みです。排出を完全にゼロにするのではなく、吸収量との差し引きで実質ゼロを目指す点がゼロエミッションとは異なります。
なお、「脱炭素」という言葉はカーボンニュートラルとほぼ同義で使われることが多く、主にCO2排出削減を目指す取り組み全般を指します
ゼロエミッションが重要視される理由
ゼロエミッションが重要視される背景には、「無限で劣化しない地球」から「有限で劣化する地球」への社会的意識の変化があります。大量生産・大量消費型社会によって深刻化した廃棄物処理問題と気候変動問題への対応が、世界的に求められています。
ゼロエミッション実現には、サーキュラーエコノミーや3Rといった資源循環の考え方が基盤となります。単に廃棄物を減らすだけでなく、資源を循環させる社会システムの構築が不可欠です。
ゼロエミッション実現に向けた取り組み例
ゼロエミッション実現に向けて、国や自治体、企業がそれぞれの立場から様々な取り組みを進めています。ここでは代表的な事例をご紹介します。
国による取り組み
国による主要な取り組みとして「ゼロエミ・チャレンジ」が挙げられます。これは経済産業省が経団連やNEDOと連携し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けたイノベーションに挑戦する企業をリスト化し、投資家等に活用可能な情報を提供するプロジェクトです。
また、環境省では「地域脱炭素ロードマップ」を策定し、自治体と連携して地域からの脱炭素移行を支援するなど、各省庁が連携して取り組みを推進しています。
脱炭素社会実現に向けてチャレンジしている企業を投資家などに紹介し、民間資金を誘導する狙いがあります。2021年10月のTCFDサミット2021では、上場・非上場企業あわせて約600社の「ゼロエミ・チャレンジ企業」が発表されており、企業にとっては投資家へのアピールや企業イメージ向上につながる機会となっています。
参考:環境省「地域脱炭素ロードマップ」
自治体による取り組み
自治体レベルでも、ゼロエミッション実現に向けた独自の戦略が進められています。
たとえば東京都は「ゼロエミッション東京」を宣言し、2050年までにCO2排出実質ゼロに貢献する「脱炭素型ゼロエミッション」戦略を策定しました。再生可能エネルギーの基幹エネルギー化やZEV(ゼロエミッション・ビークル)の普及促進など、14の政策を体系化しています。
2030年までに都内の乗用車新車販売に占めるZEV割合を50%まで高める目標を掲げ、購入補助金や充電インフラ整備を推進しています。
| 【自治体による取り組み事例】 | |
| 北九州市の「エコタウン事業」 | 廃棄物の再資源化を中心に、企業間での資源循環を推進し、2016年度には年間CO2排出量43.3万トンの削減に成功しました。 |
| 横浜市の「Zero Carbon Yokohama」 | 廃棄物削減とリサイクル率向上を推進するとともに、再生可能エネルギーの導入や公共施設のZEB(Net Zero Energy Buildingの略。建物の年間エネルギー収支を「省エネ+創エネ」で正味ゼロにする概念)化を進めるなど、資源循環と脱炭素を統合的に推進しています。 |
企業による取り組み
企業によるゼロエミッションへの取り組みは、業種や規模を問わず広がりを見せています。製造業では生産工程の見直しによる廃棄物削減、エネルギー業界では再生可能エネルギーの導入拡大などが進められています。
国が公式に発表している「ゼロエミ・チャレンジ企業」には、さまざまな業界から革新的な取り組みを行う企業が選定されており、先進事例として参考になるでしょう。
| 【企業による取り組み事例】 | |
| 株式会社小松製作所小山工場 | 2000年11月より11年間継続して産業廃棄物のゼロエミッション活動を維持継続するとともに、社員の全員参加による徹底的な分別活動を実施している。 |
| ホンダエンジニアリング株式会社 | 研究開発で使用された化学物質の含まれる工業用水を再利用するための「工場排水のフル循環システム」を独自技術を駆使して構築するとともに、産業廃棄物のゼロエミッション活動を推進している。 |
引用:環境省(掲載:公益財団法人廃棄物・3R研究財団)「3R 活動先進事例集 2017」
ゼロエミッション実現に関連した技術
ゼロエミッション実現には、さまざまな技術の活用が不可欠です。ここでは、近年広義のゼロエミッションとして定着している「温室効果ガス排出実質ゼロ(脱炭素)」を実現するために不可欠な技術を中心にご紹介します。
排出削減・エネルギー転換(身近な取り組み)
企業がすぐに取り組める技術として、再生可能エネルギーの導入が挙げられます。太陽光・風力・地熱などのクリーンエネルギーへの転換により、化石燃料由来のCO2排出を削減できます。自家消費型やPPA方式など、導入方法も多様化しており、企業規模や予算に応じた選択が可能です。
省エネ機器への更新や建物改修も効果的な施策です。高効率空調への切り替えやLED照明の導入、建物の断熱性能向上などは、補助金制度を活用することで初期投資の30~50%を軽減でき、投資回収期間を大幅に短縮できます。
さらに、電動化の推進も重要な要素です。EV(電気自動車)や電動フォークリフトの導入により、ガソリンや軽油の使用から脱却し、運輸部門のCO2削減に貢献できます。
排出処理・吸収(先進技術)
大規模な排出削減を実現する先進技術として、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)が注目されています。発電所や化学工場から排出されるCO2を分離・回収し、地中深くに貯留したり資源として利用したりする技術です。日本政府は2050年までに年間120~240百万トンのCO2貯留を目標としています。
また、BECCS(Bio Energy with Carbon Capture and Storage)は、バイオマス燃焼により発生するCO2を回収・貯留する技術です。バイオマス燃料は元々大気中のCO2を吸収した植物由来のため、燃焼時のCO2を回収・貯留すれば大気中のCO2を実質的に削減でき、「カーボンネガティブ」を実現できます。
グリーン水素・アンモニアは、再生可能エネルギーで製造する水素やアンモニアを燃料として活用する技術を指します。発電時にCO2を排出せず、火力発電のゼロエミッション化に貢献します。
これらは先進的な技術として、今後の普及が期待されています。
CCUSの仕組みと具体的な取り組み事例について詳しくはこちら
ゼロエミッションの現状と課題
出典:環境省「廃棄物分野における地球温暖化対策について」(2024年9月20日)
廃棄物分野における温室効果ガス排出量は2000年代以降減少傾向にあり、着実な改善が見られます。しかし、ゼロエミッション実現に向けてはまだ多くの課題が残されている状況です。
主な課題としては、企業への浸透度合いやリサイクルの質向上などが挙げられます。とくに中小企業における取り組みの遅れや、技術開発コストの高さ、再生可能エネルギーのインフラ整備不足などが障壁となっています。
ゼロエミッションの実現のために企業に求められること
企業には、資源循環システム構築への積極的な参画が求められています。単独での取り組みには限界があるため、産官学の連携や異業種連携によって資源が循環する社会システムを作り出すことが必要です。
同時に、資源循環への取り組みは単なる環境対策ではなく、企業の中長期的な競争力を強化する重要なビジネス戦略でもあります。日本の先進的な技術やソリューションを内外に発信することで、新たな事業機会の創出にもつながるでしょう。
資源循環への取り組みと並行して、脱炭素(温室効果ガス排出実質ゼロ)の観点における具体的な取り組みとしては、再生可能エネルギーの導入、省エネ設備への更新、電動化の推進などが挙げられます。
ゼロエミッションに関するよくある質問
| Q.ゼロエミッションの達成のための具体的なステップは? Q.東京都以外でのゼロエミッションに取り組む自治体の事例は? Q.ゼロエミッション化に向けた補助金制度にはどのようなものがある? |
Q.ゼロエミッション達成のための具体的なステップは?
A.まず現状のCO2排出量とエネルギー使用状況を把握し、削減目標を設定します。次に優先順位をつけた実行計画を策定し、省エネ設備導入や再エネ調達などの施策を実施しましょう。定期的に効果測定を行い、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していくことが重要です。
Q.東京都以外でのゼロエミッションに取り組む自治体の事例は?
A.北九州市では企業間で廃棄物を資源として融通し合う「ゼロエミッション工業団地」を形成し、年間43.3万トンのCO2削減を実現しました。横浜市では市役所が電力を100%再エネ化したほか、市民・企業向けの脱炭素宣言制度や省エネ診断を無料提供し、市全体での取り組みを促進しています。他自治体も参考にできる先進モデルです。
Q.ゼロエミッション化に向けた補助金制度にはどのようなものがある?
A.国による省エネ設備導入補助金やZEV購入補助金、自治体独自の再エネ設備導入支援などがあります。東京都では「ゼロエミッション東京の実現に向けた技術開発支援事業」として、ベンチャー・中小企業の技術開発に補助金を提供しています。最新情報は各自治体のウェブサイトで確認できます。
2050年カーボンニュートラル実現に向けてゼロエミッションに取り組もう!
ゼロエミッションはカーボンニュートラル実現に向けた重要な概念であり、企業の脱炭素推進に欠かせない取り組みです。国や自治体、先進企業の事例を参考にしながら、自社に適した施策を段階的に進めていくことが求められます。
ゼロエミッションの実現には、自社のCO2排出量の「見える化」が不可欠です。弊社の「e-dash」は「脱炭素を加速する」をミッションに、クラウドサービスと伴走型のコンサルティングサービスを組み合わせ 、脱炭素にまつわる企業のあらゆるニーズに応える支援をしています。脱炭素への取り組みを強化したい企業の皆さまは、ぜひe-dashにご相談ください。
