「2030年までに気温が1.5度上昇する」と聞いたことがある方もいるかもしれません。地球温暖化が進行しており、この流れが加速するのであれば、どのような影響を受けるのでしょうか。
本記事では、2030年までに気温が1.5度上昇すると言われる理由や、気温上昇がもたらす地球への影響、更に個人でもできる対策について解説します。
目次
早ければ2030年前後に1.5度気温が上昇する?
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年の「第6次評価報告書」で、2030年前後に、産業革命前から比べて1.5度、地球の平均気温が上昇することを公表しました。
2018年の報告書では2030年〜2052年の間に1.5度上昇する予想であったため、かなりその時期が早まったことがお分かりいただけるでしょう。
また、2018年の報告書では、人間活動が温暖化に与える影響について「支配的な原因だった可能性が極めて高い」と評価されていましたが、今回は「疑う余地がない」とされ、初めて人間活動が原因であることが断定されました。
平均気温が1.5度上昇すると、自然に大きな影響を与えることになり、人間のみならず多くの生態系も壊しかねません。
そのため、世界中で気候変動に対する対策が急ピッチで求められているのです。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは?
世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織で、各国の気候変動に関する政策に科学的な基礎的な情報を与えることを目的としています。現在、195の国と地域が参加しています。2007年のノーベル平和賞では、アル・ゴア元米副大統領と「気候変動に関する政府間パネル」が共同で受賞しました。
気温が2度上昇することによる影響と1.5度の場合との違い
このまま2度上昇へ進んでしまうのか、もしくは1.5度上昇で止められるのかで、どの程度違いがあるのでしょうか。
そもそも産業革命以前から1度以上気温が上昇しており、まもなく1.5度上昇することを考えると、自然にはかなり大きな影響が与えられています。
しかし、気温上昇を1.5度に抑えることで、2度上昇するよりもその被害はかなり減ることが考えられています。平均気温が2度上昇すると、熱波や干ばつ、豪雨などの被害が深刻な状態になってしまうのです。
そのため、2度まで上昇させるのではなく、1.5度の段階で気温上昇を食い止められるように、取り組みが続いています。
異常気象や海面の上昇、生態系への影響について、気温上昇が1.5度と2度とでどのように異なるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
異常気象の増加
すでに、日本でもゲリラ豪雨の増加や台風の巨大化が起きているように、気温上昇が1.5度であっても、多くの被害が発生する可能性があります。
しかし、1.5度で止めておけば、豪雨のリスクの低減につながることが指摘されています。
干ばつの被害も気温上昇が1.5度と2度とでは大きな違いになることも、同時に指摘されているのです。
海面の上昇
気温が1.5度上昇することで、1986〜2005年の水準と比べると海面は26〜77cm高くなるとされています。
気温が2度上昇すると、さらに4〜16cm高くなってしまうため、30〜93cmほど海面上昇することが考えられます。
「あんまり変わらないな」と感じられた方もいるかもしれませんが、たった16cmの上昇を防ぐだけでも、1,000万人もの人々が海面上昇のリスクから逃れられるのです。
たった0.5度が、たった16cmが1,000万人もの人々を救う可能性があるという認識を持っておくことが大切です。
生態系への影響
生物種10万5501種を対象にした分析では、気温上昇が1.5度で脊椎動物のうち4%、昆虫のうち6%、植物のうち8%が生息域の半分以上を失うとされています。
これが2度上昇すると、格段に大きな影響を及ぼすと考えられています。
北極海において海水が凍結しない頻度も大きな差が出ると考えられているため、気温が2度上昇すると、生態系へ大きな影響を及ぼすことはほぼ間違いありません。
【関連記事】気候変動の影響による世界の現状は?原因や対策を分かりやすく解説
今後の気温上昇を1.5度前後に抑えるための対策
では、気温上昇を1.5度前後で止めるためには、具体的にどうすれば良いのでしょうか?まずは温室効果ガスの概要の解説から、個人で取り組める対策まで、詳しく解説します。
温室効果ガスとは?なぜ二酸化炭素の削減が必要なのか?
温室効果ガスとは、大気中に含まれている二酸化炭素(CO2)やメタンなどの総称であり、太陽から放出された熱を大気中に閉じ込める特徴があります。この閉じ込められた熱は逃げ場を失ってしまい、地表が温まってしまいます。温室効果ガス自体は地球の温度を保つのに必要なものですが、量が過剰になると地球温暖化を進行させます。
下記の記事では、温室効果ガスの影響や対策、二酸化炭素(CO2)削減に繋がるサービスを詳しく解説しています。
2030年までに温室効果ガスの43%削減が求められている
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人間活動によって排出される二酸化炭素の排出量を2010年と比べて、約45%減少させることが必要だとしています。
さらには、2050年前後には実質的にゼロにすることも求められています。
2030年になるまでに、すでに10年を切りました。
一人ひとりが具体的な行動を起こすことが大事なフェーズに差し掛かっているため、一人でも多くの国民に二酸化炭素の排出量削減に向けた取り組みに興味を持ってもらうことが重要です。
【関連記事】温室効果ガスが地球に及ぼす3つの影響とは?具体的な種類を交えて解説
一人ひとりが取り組める対策行動
国際エネルギー機関では、以下のような行動を推奨しています。
- 新築建物をすべてゼロ炭素仕様にすること
- 自動車販売の60%を電気自動車(EV)にすること
- 重工業でもクリーン技術を使えるように実証実験をおこなうこと
- 年間1,020GWの、太陽光発電・、風力発電の容量を増加させること
他にも、以下のような行動が考えられます。
- 3R(リデュース、リユース、リサイクル)
- 原料を効率的に使う
- 自動車の利用を控える街づくりをおこなう
このような取り組みに、一人ひとりが関心を持って行動を起こすことで、二酸化炭素排出量の削減に繋がっていくのです。
一人ひとりの行動が気温上昇の緩和につながる
産業革命前から比較して、2030年までに1.5度気温が上昇すると言われています。それにより多くの気候変動問題が起こっており、世界の人々の生活や自然環境が脅かされています。
これ以上、地球温暖化が進行するのを止め、2度まで上昇させないように、一人ひとりが積極的に行動することがとても大切です。
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